ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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INTERLUDE1 激闘前の僅かな息抜き
第21話 ことりの葛藤


穂乃果にキスされた夜から数日後。

 

あの時の感触や穂乃果の笑顔が瞼にこびりついていまだに悶々としていたオレは、気分転換のために秋葉原の街並みを歩いていた。

 

適当にブラついていると、唐突に思い出したことがあった。

 

それは友達から聞いた話なのだが、秋葉原のとあるメイド喫茶『ミナリンスキー』と呼ばれる伝説のメイドがいるのだそうだ。

 

音ノ木坂のアイドル研究部の部室にも複製品とは言え、サイン色紙が飾ってあっただけに今や秋葉原の名物メイドと言っても過言ではないみたいだ。

 

そして、この話とは関係ないが少し気になる事もある。

 

海未の話によると、最近ことりが部活に顔を出していないらしい。

 

何故顔を出さないのかと聞いても、『用事がある』の一点張りで話したがらないらしい。

 

用事があるとしても、穂乃果たちといつも一緒にいることりにしては少し妙だ。

 

まさか……!ことり……!!

 

『ことりね、あなたのことが大好きなの!』

 

『え?知ってるって?……もうっ!』

 

『そんなあなたに…、ことりの全てを貰って欲しいの……』

 

『あっ……!やぁっ……!!ことり……の!中に……あなたのがっ…ああっ!好きぃっ!大好きっ!!やっ……!やぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』

 

「そんな訳ねぇッッッ!!!!」

 

思わず叫んでしまい、道行く人にガン見された。

 

オレの(知ってる)天使(ことり)が何処ぞの男とデートするわけがない。

 

もしことりが何処ぞの知らない男と歩いていたら、きっとその男をブッ飛ばす自信がある。

 

なんてったってことりはみんなの天使だからな。

 

「およ?」

 

歩いていると、歩道を挟んでメイド喫茶『Love Sweet』の前に通りかかった。

 

いや、ただ通りかかるなら特に気にもしないのだがこの日だけは違った。

 

何故ならグレーの独特な髪型をしたことりがビラを配っていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ことり、今時間大丈夫か?もし大丈夫なら電話ください』っと……」

 

オレは夜、ことりにメッセージを飛ばす。

 

見間違いじゃなければ、『Love sweet』の前でビラを配っていたのはことりだ。

 

すると、ことりからメッセージが届いた。

 

『いいよーっ!今かけるからねっ♪』

 

可愛らしいスタンプと同時にメッセージが届き、息つく間もなくことりから電話がかかってきた。

 

「もしもし、ことり?何してたんだ?」

 

『お風呂上がりの柔軟体操だよ~。そーくんが電話してくれなんて言うのも珍しいね~』

 

いや、オレは今日もっと珍しいもの見れたんだが…。

 

「あのさ、ことり?」

 

『なぁに~?』

 

「お前、『Love sweet』の前で何してたんだ?」

 

『………………。』

 

オレはことりに疑問をぶつけたが、返事がない。

 

僅かに聞こえてくるのは、比奈さんが食器を洗っている音くらいだ。

 

「……ことり?」

 

『あ、あはは……。そーくんったら何言ってるの?ことりがそんなお店の前にいるわけないじゃん』

 

「いや、だってよ……」

 

『きっとそーくんは大会続きで疲れてるんだよ』

 

ほぅ……?

 

意地でもシラを切るつもりか……?

 

なら、こちらサイドにも秘策があることを思い知らせてやろう。

 

「ことり?今正直に話してくれればオレが生地から本気で作ることりの大好きなチーズケーキを振る舞おう。だが、もしこれ以上シラを切ると言うのなら……」

 

『言うのなら?』

 

「比奈さんに頼んでことりの嫌いなにんにく料理のフルコースを一人で完食してもらう」

 

『ふぇぇぇぇん!そーくんの鬼!人でなし!』

 

にんにく料理のフルコースを想像したことりが、それは嫌だと言わんばかりに抗議する。

 

これこそ我が秘策、松宮流Dead or Arive。

 

対象となる人物に一番好きな物と嫌いな物をそれぞれ条件付きで提示し、選ばせる。

 

つまり、ことりに対してはチーズケーキとにんにくを同時に提示させる。

 

『変態!痴漢!元気ッ娘萌え!』

 

ハッハッハ!効かんなぁ!!

 

何だかことりが思い付く限りの罵り言葉を使ってオレを罵っているが、生憎オレには罵られて興奮するような趣味はない。

 

「さぁ、どっちを選ぶ?」

 

『はいぃ…、話しますぅ……』

 

これ以上罵っても無駄と悟ったことりは、罵るのを止めて素直に白状することを決意したようだ。

 

「じゃあ、今日何をしていたのか話してくれるかな?」

 

オレは電話越しのことりに向かってにっこりと微笑んだ。

 

今鏡を見たらオレの笑顔はマジキチスマイルになっているんだろうなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ことりが何故メイド喫茶で働いていたのかを教えてくれ、オレも黙ってことりの話に耳を傾けた。

 

どうやらファーストライブの後からメイド喫茶を始めたらしく、その動機は簡潔にすると『穂乃果ちゃんや海未ちゃんと違って、ことりには何もないから』と言うことだった。

 

「何もない……ねぇ」

 

『うん……。ことりは穂乃果ちゃんみたいにみんなを引っ張っていく力も無ければ海未ちゃんみたいな芯の強さも持ってない……』

 

「だからバイトを通じて何かを見つけられると思った。……と言うことでいいのか?」

 

『うん。ことりはそんな2人の後ろをついていってるだけだから……』

 

確かにことりの言う通り、穂乃果みたいなカリスマ性もなければ海未みたいな厳格な姿勢もない。

 

だからといってことりに何もないと言うわけがない。

 

だからオレは…、

 

「ことり?」

 

『なに?』

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、何か勘違いしてねぇか?」

 

 

 

 

 

 

 

ことりの意見をバッサリと切り捨てた。

 

『どういうこと?』

 

「何もない訳ねぇじゃねぇか。ことりには穂乃果にも海未にも無い物を持ってる」

 

『ことりにしか無い物……?』

 

「『人の心を癒す笑顔と優しさ』だ」

 

 

 

 

 

 

~Side 南 ことり~

 

 

『人の心を癒す笑顔と優しさ』?

 

ことりはそーくんの言ったことに首を傾げました。

 

『これはあくまでオレの考えなんだが、人の笑顔ってただ笑ってりゃいいってもんじゃないって思うんだ。表面上は笑っていても心の中で意地の悪い考えを持っていれば、その笑顔が少し怖いものに返信してしまうんだ』

 

きっとそーくんがさっきみたいにことりに対して2択を迫った時みたいな状態のことをいっているんだと思います。

 

『だけど、普段からおっとりとしていて優しいことりの笑顔は人を癒すだけじゃなく活力も沸いてくるんだ。もう一頑張り行ってみようか!ってね』

 

そうだったんだ…。

 

ただ笑っているだけだったので、全く知りませんでした。

 

『その笑顔があったから秋葉原の伝説のメイドって呼ばれるようになったんじゃないかな?だからことり自身が自分は無いもないって卑下しちゃダメだ。それにことりはさっき穂乃果と海未の後ろをついていっているだけと言ったが、オレからしてみれば2人の後ろを歩んでいるどころかしっかり2人の横に並んで歩いていってるよ』

 

静かに、だけど力強いそーくんの言葉はことりの心に染み渡るような何かがありました。

 

それと同時に何だか勇気が沸いてくるような気もしました。

 

「ありがとう、そーくん。力が沸いてきたよ」

 

『そう?』

 

「うん!」

 

やっぱりそーくんは優しい。

 

本気で怒らせるとすごく怖いし普段はすこーしだけ意地悪でたまに変なことを口走っちゃうところもあるけど、でもいざというときはとても頼りになって誰よりもことりたちのことを考えてくれて…。

 

だから穂乃果ちゃんや海未ちゃんもそーくんのことを信頼するんじゃないかな?

 

「そーくんがことりを見て『頑張ろうっ!』って言う気持ちになることも知れたし♪」

 

『なぁっ!ちょっ!?あ、あれは……!そう!!言葉のあやってやつだ!!』

 

電話だから顔は見られないけど、きっとそーくんは今顔を真っ赤にしてわたわたしているんだろうなぁ…。

 

ふふっ♪かーわいっ!

 

「そーくん♪」

 

『なんだ?まだオレがにんにく料理を食べさせようとしたの怒ってるのか……?』

 

「ありがとっ♪じゃあ、またね!」

 

そーくんの返事を聞くことなく、電話を切りました。

 

そーくん、……大好き。

 

ことりの中に秘めたそーくんの想いを口にすることなく、明日に備えて眠ることにしました。

 

今日もいい夢、見れたらいいなぁ…。

 

 

Side out

 

 

 

 

ことりと真面目な話をした次の日、結局ことりは穂乃果たちにメイド喫茶でアルバイトをしていることがバレたらしい。

 

それを踏まえた上で、絵里さんは何を思ったのか秋葉原でゲリラライブをすることを決意したらしい。

 

さらに、今回の作詞は海未ではなく秋葉原の事情をよく知っていることりが担当することになったのだが……。

 

「うわぁぁぁん!何も思い付かないよぉ~……」

 

だからといって、何もオレん家でしかも休日を使ってやることはないんじゃないか?

 

しかも作詞ノートには、チョコレートパフェとか生地がパリパリのクレープとか何やら不思議なワードが書かれていた。

 

……オレが知らない間に何があった?

 

「なぁ、ことり?」

 

「うぅ……」

 

ことりは瞳を涙で潤わせ、首だけオレがいる方向を向く。

 

え?何この可愛い生き物?

 

比奈さんに『ことりをオレのお嫁さんにさせてください!』って頼もうかな?

 

いや、比奈さんの事だから快諾するだろうな…。

 

あの人仕事だとすごいキャリアウーマンだけど、本質はことり以上の天然さんだからなぁ…。

 

「ことりちゃん!!!」

 

「ピィッ!?」

 

「うぉうっ!?ほ、穂乃果!?」

 

考え事と言う名の妄想をしていると、穂乃果がすごい勢いでオレの家のリビングに入ってきた。

 

あまりにも大きな音を立てるからことりとオレは、ビックリしてその場で身体を竦めるハメになった。

 

そんなのお構いなしの穂乃果は、作詞に苦しむことりの手を取り…、

 

「一緒に考えよう!とっておきの方法で!!」

 

共に作詞を考えることを提案してきた。

 

 

 

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