ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
穂乃果が言ったとっておきの方法。
それは…、
「お帰りなさいませっ♪ご主人様っ♪」
「ぅお帰りなさいませ!ご主人様!!」
「お…、お帰りなさいませ…。ご主人様…。」
実際にメイド喫茶で働きながら考えると言うことだった。
そしてオレはと言うと…、
「お帰りなさいませ、お嬢様」
何故か執事服を着せられ、ことりたちの威力ある『お帰りなさいませ』攻撃を崩壊しそうな本能を鋼鉄の理性で防御していた。
まずはことり。
メイド喫茶でアルバイトをしているだけあって、様になっている。
『メイド服』という史上最強の装備の1つを身に付けていると言うこともあって可愛さ5割増しだ。
続いて穂乃果。
何だか江戸っ子みたいな居酒屋の店員さんみたいなしゃべり方だ。
でも当の本人は楽しそうだから……、まぁいっか。
よくよく見てみるとことりのメイド服もいいけど、穂乃果が着ても似合うってのもまたなんともなぁ…。
そして最後は海未。
恥ずかしがりやな海未が、精一杯振り絞った『お帰りなさいませ』。
今もメイド服の裾をギュッと握り締め、恥ずかしさのなかにあるどこかそそられる危険なギャップ…。
さしずめ『恥ずかしがりながらも主人に遣えるメイドさん』と言ったところだろう。
こんな3人組は今、ありとあらゆる男性の理性を破壊させる兵器と化している。
あ?何でオレは平気なのかって?
言っただろ?鋼鉄の理性で抑え込んでるって。
「やっほー!遊びに来たよー!!」
「わぁ……!!穂乃果先輩たち可愛い!!それに壮大さんもカッコいい……です」
カランカランとドアについているベルを鳴らして入ってきたのは、凛ちゃんと花陽ちゃんだ。
「あら?どこかで見たことがある人だと思ったら壮大じゃない」
「んあ?そういう真姫こそ何でここにいるんだ?」
「私だけじゃないわよ?」
どういうことだ?と聞く前にその答えとなりうる人たちが入ってきた。
「アキバにこんなところがあったなんてねぇ……」
「えりち!これ見てみて!!」
「へぇ、意外とキレイなお店じゃない」
「では早速、取材を……」
「や、止めてくださいっ……!」
凛ちゃんたち1年生組に遅れてやってきたのは、絵里さん、希さん、にこさんの3年生組だった。
そして入店早々にビデオカメラを取り出した希さんは海未を取材しようとしていたが、海未がそれを顔を赤くしながら断っていた。
「どうしてまたメンバー全員がここに?」
「それはね、ことりがみんなを呼んだの」
オレの疑問に答えてくれたのは、人数分のグラスにピッチャーに入っている氷水を入れていることりだった。
何で呼んだのか分からないが、ことりなりの考えがあるんだろうから追求はしないでおこう。
おっと。メンバーの影に隠れて見えなかったが、他のお客様もお見えになられているようだ。
「ことり。それオレが代わりにやるからことりは今来たお客様の接客を頼む」
「ありがとっ。じゃあ、行ってくるね?それと、今は『ミナリンスキー』だよっ?」
「あぁ、分かった」
オレに先輩らしく注意をしてからことり…、ミナリンスキーは入り口の方向に歩いていった。
「いらっしゃいませ!ご主人様っ♪」
一般のお客様はミナリンスキーの案内に従って、座席に案内された。
「こちらメニューになります。御注文がお決まりでしたら近くの店員さんをお呼びください。」
流石秋葉原の伝説のメイド『ミナリンスキー』と呼ばれるだけのことはあり、その持ち前の可愛らしい外見と、お客様を座席に案内してメニューを渡すという動作だけでも気品あふれる動作には見惚れるものがある。
家に帰ったらことりがメイド服姿でいて…、
『お帰りなさいませ♪お先にお風呂にいたしますか?それとも食事になさいますか?』
何て言われてみろよ?お前ら理性保てると思うか?
ちなみにオレは絶対無理だね!その場で食事(意味深)を始めてしまうかもしれねぇ自信があるッ!
「壮大、鼻血出てるわよ?」
「え?」
真姫に指摘されて、オレはそこで初めて鼻血を出していることに気が付いた。
「マジか……。やっぱり最近チョコレートと落花生食い過ぎてんのかな?」
「あなたチョコレートとか自分から進んで食べないでしょ?分かりやすすぎるのよ、まったく……。気持ち悪い」
おい。さりげなく罵倒するのをやめろ。
そして凛ちゃんとにこさんも何も喋らないでオレをゴミみたいな目で見るのやめろ。
ただでさえ女子高生の知り合いが少ないのにそんな扱いされたら欲しい玩具買って貰えないからグズり出す子どものように泣くぞ?
オレそんな経験ないからどう泣いていいのか分かんねぇけど。
そんなこんなで仕事の内容を覚え始めた頃、厨房の数が足りなくなってきたからと言って厨房でオーダーされた品物を作っていると洗い場の方向からことりと穂乃果の話し声が聞こえてきた。
「ことりちゃん何だかいつもとちょっと違うね……。なんかこう、イキイキしてるっていうかキラキラしてるっていうか……。」
「そ……そうかな?」
「そうだよ!いつも以上にイキイキとしてるもん!」
確かに普段よりかはイキイキしててキラキラしてるように見えるわな。
「何かね、この服を着ていると『できる』っていうか…。この街に来ると不思議と勇気が貰えるの。もし、思いきって自分を変えたいと思ってもこの街なら何だか変われる……、受け入れてくれる。そんな気がするの!」
おっ……。もしかしたら今のがヒントになりうる言葉だったんじゃないか?
「ことりちゃん……、今のだよ!!」
「えぇっ!?」
「今ことりちゃんが言った言葉や気持ちをそのまま歌にすればいいんだよ!!この街を見て、μ'sのメンバーを見て、いろんなものを見て…。そこでことりちゃんが感じたことや思ったことをそのまま歌詞にすればいいんだよ!!」
流石だな、穂乃果…。
オレは今しがた出来上がったオムライスをお皿にのせてから、休憩するために持ち場から離れた。
ことり、あとはお前次第だぞ……?
秋葉原でのゲリラライブ当日、オレは遠目から離れてライブを見守っていた。
そしてセンターを務めることりが歌い始める。
作詞したことりならではの可愛らしくも元気が貰えるナンバーに仕上がった。
普段は海未が作詞をしているが、ことりのような可愛らしい詞も嫌いではない。
曲名だが、みんなで話し合っても決まらないという話を聞いて、オレは今しがた歌っている曲をこう名付けた。
『Wonder Zone』……、不思議な場所ってな…。
ライブが終わり、オレと穂乃果たちの4人は神田明神から沈みかけている夕日を眺めていた。
「よかったな、ライブ成功に終わって」
「そうだね~、ことりちゃんのお蔭だよ!」
「そ、そんなことないよ…。みんながいてくれたから、みんなで作った曲だから…」
「いいや、ことりのお蔭だ。ことりがありのままの気持ちを歌詞に乗せたからこそ『Wonder Zone』が出来上がったんだ。それは胸を張って誇ってもいいくらいだ」
そ、そうかな…。と言って照れることり。
「ねぇ、こうやって並んでいるとあの時のこと思い出さない?」
あの時のこと……?
ファーストライブの時か。
「うん」
「そうですね。あの時は穂乃果や私、ことりに壮大しかいませんでしたからね……」
海未の言葉に同意するかのように穂乃果とことりが賛同するように頷いた。
「私たちっていつまで一緒にいられるのかな……?」
「ことり……?」
「ことりちゃん?どうしたの急に……?」
ことりのいきなりの発言にオレと穂乃果は驚いた。
「だってあと2年も経たないうちに高校生活も終わっちゃうでしょ?」
「それは仕方のないことですが……」
ことりと海未の発言を聞いて、思うことがあるのか穂乃果はいきなりことりと海未の肩を引き寄せた。
「大丈夫だよ!ずーっと一緒だよ。だって私、これからもずっとずっとことりちゃんや海未ちゃん、そーちゃんと一緒にいたいって思ってるもん!大好きなんだもん!」
「……穂乃果ちゃん」
「穂乃果……」
「これからもずーっと一緒だよっ!!」
「……うんっ!」
「はいっ!」
なかなか嬉しいことを言ってくれるじゃねぇか。
この関係がずっとずっと続いてくれたらいいな…。と思っていたオレたちだったがその考えは甘かったことを思い知ることになるとはこの時はまだ知らなかった。
なぜなら、この時穂乃果に呼ばれたことりの笑顔になるタイミングがほんの少しだけ遅れていたことなんてこの場にいる誰もが知らなかったからだ…。