ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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第26話 最終日後編 想いとバトン

200Mの決勝からおよそ3時間が経ったスタジアム。

 

高く上っていた耐用が傾き、影の長さも徐々に長くなっていく時間にインターハイ最後の種目『リレー競技』が行われようとしていた。

 

「「「「…………」」」」

 

先輩3人は目を閉じて誰も喋らない。

 

キャプテンもチーフも副部長もオレも黙り込んで一言も発しない。

 

このレースが終わると、オレ以外の3人は高校陸上に幕を降ろさないといけない。

 

そして、ついにその時が来た。

 

「……よし、1回集まろう」

 

キャプテンの言葉にオレたちは集まり、小さい円を作る。

 

「お前ら、ここまでよくやってくれた」

 

「「「押忍」」」」

 

「笑っても泣いても、これで最後だ!」

 

「「「押忍!」」」

 

「俺たちの力、全部出しきるぞ!!」

 

「「「押忍!!」」」

 

よし、行こう。

 

先輩たちのラストレースに。

 

 

 

~Side 星空 凛~

 

 

いよいよ最後のレースだにゃ。

 

そーた先輩たちの学校のメンバーはキリッとしていて、笑顔ではない。

 

かといって、特別緊張しているというわけでもないみたいだにゃ。

 

笑っても泣いてもそーた先輩の今年のインターハイはこれで最後。

 

そーた先輩、頑張って……!!

 

凛は祈るように手を組んだ。

 

 

 

~Side 副部長~

 

 

小学校の頃、学年で1番足が速かった俺は先生の薦めで陸上部に入った。

 

でも大会に出るともっともっと速い奴等がいて、同世代の奴等には負けたくないという一心でここまで走ってきた。

 

でも、運に恵まれず全国規模の大会に出ることができなかった。

 

そして高校最後の年に、念願のインターハイに出られることになった。

 

『On your marks……』

 

俺はみんながいたからこそ、ここまで来れたんだと思う。

 

『Set……』

 

だから、今はみんなから貰ったその恩を返すときなんだと思う。

 

ピストルの合図と共にスタートする。

 

スパイクピンでトラックを踏み潰すように蹴り、その反発力で身体を前へ前へと運ぶ。

 

2走のキャプテンにドンドン近付いていく。

 

そして、手に持っていたバトンを渡す。

 

「行けぇぇ!!」

 

俺はいろんな思いをバトンに乗せ、キャプテンの背に向かって叫んだ。

 

 

~Side キャプテン~

 

バトンを受けた俺は、バックストレートを走った。

 

短距離陣には圧倒的な速度を誇る絶対的エースがいなかった。

 

俺は元々ハードラーだからピュアスプリンターではない。

 

だが、松宮が何かをキッカケにしてここまで成長してくれた。

 

インターハイ決勝。

 

だが、俺の心は穏やかだった。

 

ベストを尽くして、第3コーナーで待ち構えるチーフにバトンを渡す。

 

俺の役目は終わった。

 

さぁ、行け。

 

 

Side out

 

 

~Side チーフ~

 

 

副部長、キャプテンと渡ったバトンは今俺の手の中にある。

 

バトンパスを終えた段階で俺たち立華高校は今何位なのかを確認した。

 

今のところ前に3人いて、右隣に1人いるポジションだった。

 

カーブを曲がる際の遠心力で身体が投げ出されそうな感覚を脚全体で堪える。

 

アンカーの松宮が何か叫んでいる。

 

オイオイ……、何でそんな心配そうな顔してんだよ。

 

安心しろよ。ちゃんとお前のところまでバトン運んでやっからよ。

 

松宮が手を伸ばしながら進行方向に向かって走っているのが見えた。

 

俺は差し伸べられている手の中に押し込むようにバトンを手渡した。

 

俺たちの想い、しかと受け取れ……!!

 

Side out

 

 

 

先輩たちが繋いできたバトンはオレの手に握られている。

 

今まで受けてきたバトンの中で1番重くて、暖かかった。

 

オレは最後の力を振り絞って脚を前に運ぶ。

 

何レーンの誰を抜いたとか、タイムがどうとかなんて今は関係ない。

 

ただ、先輩たちが繋いできたバトンをフィニッシュラインまで持っていくことだけを考えた。

 

終わって欲しくない。

 

でも、スタートすれば必ずフィニッシュがやってくる。

 

このレースにその時がやって来た。

 

フィニッシュラインを大きく越えて、今大会で見納めとなるこの会場名物の大型電工掲示板を見た。

 

オレたち立華高校の名前は、2つめにあった。

 

だが、オレには悔しさなんてものはなかった。

 

「松宮ぁ!!」

 

キャプテンたちがオレのところにやってきた。

 

「よくやった!」

 

「ナイスランだったぞ!!」

 

先輩たちがバシバシと背中を叩き、わしゃわしゃとオレの頭を乱暴に撫でる。

 

「先輩……」

 

オレは先輩たちから少し距離を取り……、

 

「2年間、ありがとうございました!!!」

 

少しだけキョトンとした先輩方は生意気言うなと言わんばかりに更なる追撃をしてきた。

 

今は、この喜びを分かち合ってもバチなんて当たらねぇよな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿舎に帰り、今大会最後のミーティングが始まる。

 

「「「…………」」」

 

「おーい、そんな悲しそうな顔すんなや。どっちが引退するんか分かんねぇじゃねぇか」

 

先輩たちのほとんどはこのインターハイで引退する。

 

これが悲しいわけねぇじゃねぇか。

 

まず始めにマネージャーさんのお話から始まり、難関大学を受けるため受験勉強に専念する長距離の先輩と続きます、残りはチーフと副部長とキャプテンの3人となった。

 

「んじゃ、まずは俺から行かせてもらおう」

 

立ち上がったチーフがオレたちの前に出る。

 

「俺はこの学校に来てよかったと思ってる」

 

チーフは厳かに話し始める。

 

「最初は練習もキツくて『こんな学校来るんじゃなかった』った思った。1年の頃から大会には出ていたが予選落ちを繰り返して、『スパイクやランニングシューズなんて見たくねぇ』って思ったときもあったし、『なんでこんなに頑張ってんの結果が出ねぇんだ』って苛立った時もあった」

 

普段からクールなチーフからそんなことがあったなんて想像できない。

 

「でも、走ることに対しては決して腐らなかった。どんなときでもずっとだ」

 

真剣に話すチーフを見るように、オレは顔をあげた。

 

インターハイに来ている下級生たちもみんなチーフを見つめていた。

 

「勝てないときもある。ベストを尽くしても運に見放されることもある。だが、決して腐るな。走ることに好きでいろ。努力を怠るな」

 

1つ1つの言葉に力が込められていた。

 

「努力は必ず報われるなんて言葉があるが、あれは『正しい方向性が保たれた努力』は必ず報われるって意味だとオレは思う。間違った方向の努力なんていざというときは平気で裏切るぞ。でも、神様ってのは正しい努力をしているやつには褒美を与えるんだ」

 

何処かで聞いたことのある言葉だ。

 

確か…、

 

「周りには天才がいて、萎えるかもしれない。でも、教えてやるよ」

 

最も大切なことがある。

 

「いいか?才能よりも努力よりも大切なものがある」

 

それは…、

 

「御託はいいからやれ、お前ら」

 

とりあえずやれ。

 

やってみて、ダメだったらどこがダメだったのかを探していく。

 

「無駄なものなんてこの世には存在しない。やってみようと思ったことは全部やれ。いいな?」

 

「「「「「はいっ!!!」」」」」

 

「よし、俺からは以上だ!」

 

オレの目から自然と涙が出てくるが、決して頭を下げなかった。

 

「んじゃ次は俺だな」

 

副部長がアッサリと切り出した。

 

「言いてぇことずっと考えてきたけど、結局何も思いつかなかった。言いてぇこといっぱいありすぎて何言っていいか分かんねくなった」

 

副部長らしいっちゃ副部長らしい飄々としたスピーチだ。

 

「だが、これだけは胸を張って言える。今までありがとう!」

 

それだけを言って副部長は下がっていった。

 

「はー…、俺でラストか」

 

キャプテンが重たい腰を上げ、オレたちの前に立った。

 

「キャプテンとして、部長として、お前らを率いてきたわけだが。まぁキツイね。面倒なことばっかだった」

 

部長はとても面倒だからな。

 

「全体練習のメニューは俺が考えていたからさ。その負担もあったし」

 

でもさ、とキャプテンは繋ぐ。

 

「練習はどうしてか好きだった。お前たちとやる練習はすごい楽しかったし、何よりも俺の財産になる場所だった。これからも、立華高校陸上競技部はそういう場所であってほしい。みんなが練習を楽しみにできるような…、そんな場所にしてほしい」

 

これがキャプテンからの最後の通達だった。

 

これは下級生全員で成し遂げなければならないことだ。

 

「あと1メートル伸ばすため、あと1秒を削るために練習を楽しめ。あと1歩届くか届かないか、あと1メートル届くか届かないかの局面で笑えるようになれ」

 

「「「「「はいっ!!!」」」」」

 

「以上だ!3年、起立!!」

 

3年生の先輩たちは、背筋を伸ばして立ち上がる。

 

「礼!」

 

「「「「「ありがとうございました!」」」」」

 

「下級生、起立!!」

 

下級生を代表して、オレが流れてくる涙を拭かずに声を出す。

 

「……礼!!」

 

「「「「「お疲れさまでしたっ!!」」」」」

 

この瞬間3年生は引退し、チームを引っ張るバトンはオレたちに受け継がれた。

 

 

 

 

 

 

インターハイ全日程が終わった翌日、オレたちはバスに揺られて東京に帰っていた。

 

他のみんなは疲れてしまい、よく眠っているがオレは目が冴えてしまい眠れなかった。

 

そう言えばμ'sのメンバーにメッセージの返信してねぇな……。

 

うーん…、後でいっか。

 

とりあえず留守番電話をかけてきてくれた凛ちゃんにメッセージを返信する。

 

そーた『応援ありがとう』

 

するとすぐに返事がきた。

 

りん『お疲れさまにゃー!≧ω≦/』

 

りん『最後のリレー感動して、凛、思わず泣いちゃったにゃ!』

 

そーた『……そっか』

 

りん『にゃん?どうしたのかにゃ?』

 

そーた『なんつーか、終わっちゃったな。って………』

 

りん『なんかそーた先輩らしくないにゃ』

 

そーた『……そうだな』

 

りん『ゆっくり休んで、また練習見に来てください!みんな待ってますから!』

 

オレは凛ちゃんからの返事を返すことなく、窓から見える景色に目を向けた。

 

さらなる熱き戦いのスタートというべきか、向こう側にはキレイにアーチがかった虹が映し出されていた。

 

 




以上で駄文という名のオリジナルストーリーはおしまいです。

次回からまた本編に戻り、いよいよ1期放送分のクライマックスへと差し掛かります。

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