ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

29 / 121
The 3rd Chapter μ'sとしての有り様
第27話 合宿と先輩禁止


インターハイが終わってから2週間…、お盆も終盤に差し掛かろうしていた。

 

松宮家を支える両親は、日本に帰国する余裕がないということでオレはたまにプール練をしたり、雪穂に勉強を教えたりする以外は悠々自適な生活を送らせて貰っていた……のだが。

 

「あん?合宿?」

 

「そう!真姫ちゃんのお家の別荘でやることになったの!」

 

オレがクーラーをつけてうつ伏せになって寝ているところに、穂乃果がどーん!という掛け声とともに乗ってきていきなり合宿をやるなんて言い出した。

 

「……絶対行かねぇ」

 

オレは穂乃果を無視して寝ようと……、

 

「えー!?なんでー!?」

 

したが、穂乃果がオレの肩を掴んで左右に揺すってきた。

 

「おいっ…穂乃果、やめろ……!!そしてオレの背中から降りろ!」

 

オレの脳はお前と違ってわりかし詰め込まれてるんだからやめろっ……!!

 

「そーちゃーん、行こうよー!!」

 

「待て待て!理由を話すから、とりあえず降りろ!」

 

肩越しに穂乃果を見ないといけないから、首が疲れた。

 

穂乃果にしては聞き分けがよく、すぐに降りてくれた。

 

「合宿って泊まりなんだろ?期間はいつからだ?」

 

「明日から3泊4日!」

 

期間長っ!!

 

「なら尚更行けるわけねぇじゃん。だって第一、オレ男だし」

 

とりあえずは一番一般的な言い訳を提示してみる。本当の理由は別にあるけど、当然この意見も俺の中にはある。

 

……だって考えてみろよ?

 

自分の娘がどこぞの馬の骨とも取れない男と泊りがけで旅行するー…なんてことを聞いて黙ってる親がいるか?

 

夏穂さんならまだしも、他の親御さんたちが納得する訳ないじゃん。

 

下手すりゃ俺の親も俺がそこに参加することを許さないかも知れない。

 

もちろん、俺自身人として超えてはいけない一線を越えるつもりは一切ないけど……そういう問題ではないだろう。

 

「大丈夫!穂乃果、そーちゃんはヘタレだってこと知ってるから!!」

 

「おいこのアホの子代表。そんなふざけたことを言う口はこれか?これなのか?」

 

オレは穂乃果の両頬を掴み、ぐにーっと伸ばす。

 

ほーひゃん(そーちゃん)ひはひよー(いたいよー)

 

ならオレの事ヘタレなんて言うんじゃねぇ。

 

いくら穂乃果だからっつっても言っていいことと悪いことがあるんだぞ?

 

「何でまたオレも行くことになってんだ?」

 

「え?だってそーちゃん穂乃果たちのお手伝いさんだよね?」

 

「そうだが?」

 

「つまり、μ'sの一員なんだから合宿に参加すると思って……」

 

なんというとんでも理論だ。

 

「あのな?メンバーだけならいいかも知れねぇけど、もしオレが参加するってなったら親御さんが反対する人が出てくるかも知れねぇだろ?」

 

「それなら大丈夫だよっ!ほら!」

 

穂乃果は普段着のポケットからスマートフォンを取りだし、少し操作してからオレにとある画面を見せた。

 

そこには、保護者了承済みの返事で埋め尽くされたチャットルームの画面だった。

 

誰も反対してねぇし……。

 

「これでも来ないっていうつもりかな?そーちゃん」

 

どうやらオレに逃げ道は用意されていないみたいだった。

 

……不幸だ。

 

 

 

 

 

 

 

合宿出発当日の朝、オレは穂むらの玄関先にいた。

 

穂むらの居住スペース…、というか穂乃果の部屋からドタバタと騒音が聞こえ、時折雪穂の声が聞こえてくる。

 

「もう!お姉ちゃんうるさい!朝なんだからもっと静かにしてよ!」

 

「ごめん雪穂!」

 

雪穂(いもうと)に怒られる穂乃果(あね)……。

 

もうこれ知らない人が穂乃果と雪穂みたら雪穂がお姉ちゃんって言っても通用するんじゃねぇの?

 

「あ!そーちゃん!!」

 

荷物を抱えて上から穂乃果が降りてきて…、

 

「お姉ちゃん!壮にぃを待たせちゃダメじゃん!」

 

続いて寝起きのためかメガネをかけた雪穂が降りてきた。

 

「ごめんね壮にぃ、お姉ちゃんがいつも迷惑かけて……」

 

「ホントだよ。いくつ身体があっても足りねぇよ」

 

「もう!雪穂とそーちゃんも穂乃果をいじめないでよ!」

 

うるせえ。

 

こちとら急に合宿をやるって聞かされて、休みを返上して行くんだからこれくらい恨み節言ってもいいだろ?

 

でもこれ以上穂乃果を苛めると本気で拗ねるので、これくらいにしておく。

 

「穂乃果、着替えと貴重品は持ったか?」

 

「うんっ!」

 

「上着は貸せるけど、それ以外は貸せねぇからな?」

 

「分かってるよ!!」

 

ホントかなぁ……。

 

こういう穂乃果は何だか不安だ……。

 

「そろそろ行くぞ!みんな待たせてるはずだ!」

 

「それじゃ、行ってきまーす!」

 

「あ!壮にぃ、ちょっと待って!」

 

オレと穂乃果は穂むらの玄関から出ようとしたが、雪穂に呼び止められた。

 

「雪穂?どうした?」

 

「お姉ちゃんのこと、よろしくお願いします」

 

雪穂がペコリと頭を下げた。

 

何だかんだ言って雪穂も穂乃果の事が心配なんだな…。

 

「おう。任された」

 

「……♪」

 

「そーちゃーん!早く早くー!!」

 

「今行くから待ってろ!」

 

オレは雪穂の頭をポンポンと撫でてから、遠くでオレを呼ぶ穂乃果の後を追い掛けた。

 

 

 

 

 

待ち合わせの場所につくと数週間ぶりのμ'sメンバーが勢揃いしていた。

 

インターハイで優勝したことを祝福されたりしてると、絵里さんが手を叩いて本題を切り出してきた。

 

「「「「「「「先輩禁止?」」」」」」」

 

「前から気になっていたの。もちろん、先輩後輩って関係は大事だけど……、踊っている最中にそんな事を考えてちゃ駄目だから」

 

「たしかに。私も何かと上級生に合わせてしまう所もありますし……」

 

絵里さんの言葉に海未が納得するように頷いた。

 

古来より日本には上下関係は存在するが、お互いの息を合わせなくてはいけないダンスにおいては邪魔な要素なのだろう。

 

「そんな気配り、全く感じないんだけど?」

 

「それはにこ先輩が上級生って感じがしないからにゃ!」

 

キター!!!

 

不服そうなにこさんに対して凛ちゃんは何の躊躇いもなく、バッサリと切り捨てた。

 

さすが凛ちゃん、オレたちに出来ないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる、憧れるゥ!!

 

でも2つ下からそんな扱いなのは……、きっと愛されているからなんだろう。

 

「じゃあ上級生じゃなければ、なんなのよ!」

 

「えーっと…、後輩?」

 

「ていうか…、子ども?」

 

「マスコットだと思ってたけど」

 

「……ブハッ!!!」

 

にこさんの問いかけに凛ちゃん、穂乃果、希さんが畳み掛けるような一言に我慢できず吹き出してしまった。

 

「こらそこ!笑うな!」

 

怒られてしまった。

 

「反対意見はない?」

 

「あの、オレはどうしたら……?」

 

絵里さんが意見を聞こうとしたので、笑いを堪えつつ絵里さんに聞いた。

 

「ホントはやってもらいたいんだけど、嫌なら無理しなくてもいいわよ?」

 

「そうですね、無理して呼ぶ必要はないですよね?絵里ちゃん」

 

「……ッ!!」

 

さっそく呼び方を変えてみたのだが、絵里さんこと絵里ちゃんは顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。

 

「絵里ちゃん?」

 

「な……何でもないわ。ふぅ…、反対意見がないなら早速始めるわよ!よろしくね!穂乃果」

 

「あ、ハイ!う…」

 

穂乃果にしては珍しく言葉を詰まらせた。

 

穂乃果は意外と上下関係を気にする節がある。

 

聞くところによると、まだ冷たかったころの絵里ちゃんに対し声を少し荒げた真姫を宥めたのは穂乃果だったりする。

 

「う……ぅ絵里ちゃん!!」

 

穂乃果は目をギュッと閉じながら絵里ちゃんを呼び、恐る恐る片目をあける。

 

「うんっ」

 

絵里ちゃんは、笑顔で頷いた。

 

それを見て穂乃果は安心したように大きく息を吐いた。

 

「はぁー……、なんだか緊張するよぅ……」

 

「じゃあ、凛も!」

 

片手をあげた凛ちゃんは自ら立候補した。

 

「ことり……ちゃん?」

 

「うんっ!よろしくね、凛ちゃん♪真姫ちゃんもっ!」

 

「うぇえっ!?」

 

ナイスアシストだことり!

 

相変わらずの天使のような笑顔とともに、どう反応するのか一番リア気になるメンバーに矛先を向けた。

 

それに反応して全員の視線が真姫へと集まる。

 

「べ、別に今呼ぶものでもないでしょっ!」

 

チッ……。上手いこと逃げやがったな。

 

「あっそうだ!」

 

穂乃果が唐突に何かを思い付き、手を叩いた。

 

……何だか嫌な予感がする。

 

「そーちゃん、この合宿中の間だけ穂乃果たち幼馴染組を昔呼んでいたように呼んでみてよ!」

 

ファッ!?

 

「おまっ!何てこと言い出しやがる!」

 

「それはいい案だわ!」

 

穂乃果の提案に便乗する絵里ちゃん。

 

明らかにさっきの不意打ちのようなちゃん付けへの当て付けじゃないですか、やだー!!

 

「穂乃果……?本気で言ってるのか?それ……」

 

「勿論だよ!だってそーちゃんだけ恥ずかしい思いしてないんだもん!」

 

それが本音かこんちきしょぉぉお!!

 

するとさっきまで真姫に向けていた視線はオレに集まっていた。

 

「あ、あの……。壮大?無理にやらなくてもいいんですよ?」

 

「あぁもう!やればいいんだろ!?やれば!!」

 

海未が何か言ってるけど、ここまで虚仮にされて引き下がるような真似はしたくない。

 

オレは何回か深呼吸を繰り返し、意を決めたように口を開いた。

 

「ほのちゃん、ことちゃん、みーちゃん、きーちゃん」

 

「「「……!!」」」

 

呼ばれた幼馴染組は顔を真っ赤にしていた。

 

「あ、あの……」

 

「どうした?」

 

「最後のきーちゃんって……誰ですか?」

 

ここで花陽ちゃんが遠慮がちに聞いてきた。

 

……あっ。やっべ。

 

幼馴染組っつーから穂乃果たちとは別の幼馴染も昔の呼び方にしてしまった。

 

「……私よ」

 

顔を真っ赤にしたきーちゃんこと真姫がプルプル震えていた。

 

「ちょっと!何で私まで呼ぶのよ!こっちまで恥ずかしくなるじゃない!」

 

「そうだよ!それに幼馴染って穂乃果たちだけじゃなくて真姫ちゃんもだったってこと!?」

 

「そーくん、答えてくれないと……分かってるよね?」

 

「穂乃果、ことり、どいてください。ここは私があの破廉恥な輩を始末します」

 

怖い怖い怖い怖い怖い!!!

 

真姫は顔を真っ赤にして、穂乃果は涙目で、ことりと海未は目のハイライトさんが仕事してない。

 

海未にいたっては拳が握られ、手を保護する籠手が装備されていた。

 

「ちょっ!!お前ら落ち着け!そうそう、その手をオレに向かって降り降ろすんじゃねぇぇぇえ!!」

 

海未がグーでオレのボディーめがけて鋭い拳を入れてきた。

 

オレ、なにもしてないのに……。

 

こんなの絶対おかしいよ。

 

 

 

 

 

 

「というわけで、ボロ雑巾みたいな壮大を放っておいて合宿地に向けて出発します!部長の矢澤さんから一言」

 

「うぇっ!?にこっ!?しゅ、しゅっぱーつ!」

 

にこさん改めにこちゃん先輩はいきなり名指しで全体の挨拶を依頼され、考えるそぶりを見せたと思ったら右手を大きく掲げてありきたりな台詞を叫んだ。

 

「にこちゃんってアドリブ弱いんですね……」

 

「なにも考えてなかったのよ!」

 

何とも締まりのない出発式となり、オレたち10人は真姫の別荘に向けて出発した。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。