ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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第2話 高坂家と作曲

あー…。腹減ったぁ……。

 

 

何だか睡眠魔法のようにただただ教科書の文字を読み上げる現代文の教師を横目に窓から外を見る。

 

 

オレが通っている体育科のある高校とはいえ、現代文やら数学といった基幹となる科目はきちんと存在する。

 

 

穂乃果たちの朝練に付き合いうことによって練習量が増えたため、身体の疲労が貯まるペースと回復するペースがまだ追い付いておらず睡魔と朝から練習することが原因で身体のエネルギーが枯渇し、オレの腹は食べ物を欲している。

 

 

ーーーブー…ブー。

 

 

今日の昼メシは何にしようかと迷っているところに、ブレザーのポケットに入れているスマホが何かの着信を告げた。

 

 

オレは前に座っているクラスメートを壁にしつつ、最小限の動きでスマホを操作する。

 

 

送り主は……穂乃果からだった。

 

 

確か今の時間は音ノ木坂も授業中だったはず。

 

 

自習の時間なら話は別だが、授業中になにしとんねんあいつ。

 

 

 

 

 

ほのか:今日学校終わったら時間あるー? (既読)

 

 

そーた:練習終わりでいいっていうなら取れるぞ。 (既読)

 

 

ほのか:ホント!?じゃあ穂乃果の家に来てね!! (既読)

 

 

そーた:りょーかい。ほむまん何個か用意しといてくれ。 (既読)

 

 

 

 

 

 

……今日の練習、軽めのメニューに切り替えようかな。

 

 

そう決めたオレは少しでも体力を回復させるべく、目を閉じた後に夢の世界への扉を強引に抉じ開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちわーっす。」

 

 

練習終わりの帰り道、オレは穂乃果の家でもある老舗の和菓子やである『穂むら』にやってきた。

 

 

やって来たっていっても『穂むら』はオレん家の向かいだから帰宅したも同然なんだがな?

 

 

そして本来なら裏の戸口から入るのだが、オレと海未とことりはお店の出入り口である表口から入っている。

 

 

「んぐ…。んぐ…。いらっしゃー……あら!?壮大くん!?」

 

 

「どうも、お久し振りです。夏穂さん。」

 

 

高坂 夏穂(こうさか なつほ)さんは、穂乃果の母親でありオレの母さんの腐れ縁でもある。

 

 

ちなみに学校からの渡される手紙の中にどうしても保護者の名前を書かなければならない場合は、夏穂さんが代筆でオレの母さんの名前を書いてくれてたりもする。

 

 

そんな夏穂さんはカウンターの向こう側にある椅子に座って、三色団子を摘まみ食いしていた。

 

 

……夏穂さん(この親)ありて穂乃果(あの娘)ありってやつか?

 

 

「ホント久し振りねー!去年の12月以来かしら!?」

 

 

「ですかね…?毎日毎日陸上の練習で時間が無くて…。」

 

 

「おかーさーん?声大きいよー!誰と話してるのー?」

 

 

すると穂乃果とは似ても似つかない女の子が母屋からにゅっと顔を除かせた。

 

 

「よっ、雪穂。」

 

 

「ありゃ、壮にぃだったの?」

 

 

この子は穂乃果の妹の高坂 雪穂(こうさか ゆきほ)

 

 

音ノ木坂中学の3年で今年は受験生だ。

 

 

「雪穂、進路は決めたか?」

 

 

「うーん…。まだ決めてないけどUTX学院に行こうかなーって考えてるとこ。」

 

 

「UTX?雪穂でもあそこは結構難関だぞ?」

 

 

「だよねぇ…。壮にぃが勉強教えてくれたらいいんだけどなぁ~。壮にぃ立華で一番頭いいっておねーちゃんが言ってたよ?」

 

 

「立華の『体育科』の中での話だ。普通科の人たちはもっとすげぇぞ。」

 

 

立華の体育科も結構頭がいいことで有名なのだが、普通科の人間は頭良すぎて常人と違うところがあるからな。

 

 

普通科の友達から聞いた話だけど、普通科のトップクラスの奴なんか新しい教科書が渡された次の日には教科書の半分を、その次の日には教科書丸々1冊解き終えているらしい。

 

 

そんでもって大学の赤本だとかハーバード大とかオックスフォード大とかの過去問を解いているだとか解いていないだとか。

 

 

…オレには絶対できないと思う。

 

 

「まだ3年になって間もないんだし、じっくり考えればいいさ。」

 

 

「ありがとう。ところで、壮にぃ。ちょっと分かんないところがあるんだけど…。」

 

 

「あー…。今日は穂乃果に用があってきたんだ。家が向かい同士なんだしメシ食い終わってからでもいいだろ?」

 

 

「それもそだね。おねーちゃんならことりさんと一緒におねーちゃんの部屋にいるよー。『御免下さい。』あら、海未さんいらっしゃーい。」

 

 

さっきの雪穂と同じように顔をにゅっと出して、お店の出入り口の方向を覗いた。

 

 

すると、そこには矢が入った筒を肩に担いだ海未がいた。

 

 

弓道部の練習に出ていたのか…。

 

 

「よっ、海未。」

 

 

「壮大もいたのですか。」

 

 

「練習が終わって今来たとこだ。」

 

 

「ふふっ。お疲れさまです。」

 

 

「そういう海未こそ。」

 

 

海未と出会ってすぐの時は、オレを見た瞬間穂乃果やことりの陰に隠れて涙目になっていたからなぁ…。

 

 

おにーさんは嬉しいぞ。……同い年だけど。

 

 

「ところで、2人とも。お団子食べる?」

 

 

夏穂さんが練習終わりのオレと海未にお団子を進めてきた。

 

 

さらっと進めてきてるけど、もしこのお誘いに乗ったらつまみ食いの共犯になるのかな……。

 

 

だがしかし!!オレは練習終わりで腹が減っている。

 

 

お団子を貰ってはいけない理由にはならない。なにより夏穂さんが進めてきているから。

 

 

「あ、じゃあ…「いえ、結構です。私たちはダイエットしなくてはいけないので。」……えっ?」

 

 

私『たち』って言ったか!?おいおい、ちょっと待ってちょっと待ってお嬢さん。

 

 

そのダイエットってオレも入ってるのか!?

 

 

オレはステージの上で踊りもしないし歌いもしないぞ!?

 

 

それに今はインターハイ予選に向かって身体を仕上げていく時期だから食べさせてください!!

 

 

海未さんお願いします!!何でもはしないけどオレのできる範囲のお願いなら聞くから!!

 

 

「あのー…海未さん?オレは食べてもいいんだよね?」

 

 

「お邪魔します。」

 

 

「あの、首根っこ掴んだまま引き摺らないで制服伸びちゃう!!お願いだから話聞いてよぉぉぉお!!!」

 

 

 

 

 

「あ、海未ちゃん、そーちゃんいらっしゃ~い。」

 

「いらっしゃーい♪」

 

「穂乃果とことりが数十秒前の海未の発言と全くの正反対のことをしている件について。」

 

「………………。」

 

穂乃果の部屋に入ると、お店にいた夏穂さんと同じようにお団子を食べるアホの子と天使……、もとい穂乃果とことりがいた。

 

 

「お団子食べるー?」

 

「頂きますッッッ!!!」

 

「そーくん、お茶はいかがー?」

 

「頂きますッッッ!!!」

 

オレは穂乃果が差し出してきたお団子を貰い、ことりが淹れてくれたお茶を飲む。

 

はぁー……やっぱ穂むらのお団子には日本茶に限るよなぁ…。

 

……じゃなくて、呆れ返って言葉が出てこない海未が見えないのか?

 

オレ?ハハッ。そんな見えてないわけないじゃないか。

 

だが、食欲は時に回りを見えなくするといったのものだ。

 

 

「あなたたち……、ダイエットはどうしたのですか…?」

 

「「あ。」」

 

素で忘れてたのかよ。

 

まぁ分かって食べてたらそんな反応はしないよな。

 

 

 

 

「努力する気は無いのですか……?」

 

「あるもん!!ただちょっとだけお腹すいたからちょっとだけ食べようと思っただけだもん!!」

 

「と言っている割りにはお団子の串が皿の上に乗っているように見てるけど?」

 

「そう言ってるそーちゃんだってお団子食べてるじゃん!」

 

穂乃果に茶々を入れたら矛先がオレに向かってきたでござる。

 

「バッカお前、運動部所属の男子高校生特有の食欲と代謝ナメんなよ?お団子の2本や3本大したことねぇんだぞ?」

 

と言いつつお団子2本食べ終え、3本目に手をかけよう……としたところで海未にお団子が乗っているお皿ごと取り上げられた。

 

 

「あっ……。」

 

「そう言うわけにもいきません!壮大にも私たちと同じようにダイエットに付き合って貰います!!」

 

「あと1本くらいいいじゃねぇかよぉ…。練習終わってからすぐロードバイクでここまで来たんだからよぉ…。それとも何?最後の1本海未がオレに食べさせてくれるの?」

 

「なぁっ!?ななな何を言っているのですか!?」

 

おーおー。顔を真っ赤にして狼狽えてる海未もまた新鮮だなぁ。

 

オレと言う存在のおかげか男には少し慣れたものの、こういった攻めには耐性はなかったりするのである。

 

「ところで穂乃果?いきなり呼び出して何か進展はあったのか?」

 

 

「うん!ライブで使う曲について目星がついたの!!」

 

 

「……ライブ?」

 

 

あっ……という表情の穂乃果に、またですか……という表情の海未に『あ……あはは…』と渇いた笑い声を上げて困った表情のことりの多様な表情が何とも印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新入生歓迎会の時にライブを……ねぇ。」

 

「はい、今から2週間後の週末に音ノ木坂の講堂でライブをすることにしたんです。」

 

「今日音楽室で歌とピアノがすごく上手くてキレイな1年生の子がいたから、明日作曲ができないか聞いてみようと思ってるんだ。」

 

ほぉ…。1年生で歌とピアノが上手い娘ねぇ…。

 

まさかアイツじゃあねぇだろうな…。

 

もしアイツだったら……作曲は出来るだろうけど、そう簡単に協力してくれるかなぁ。

 

デレが少ないツンデレだし。……それと作曲依頼は関係ねぇか。

 

「それでね!もし作曲してくれるって言ったら作詞の方も何とかなりそうだよねって海未ちゃんとそーちゃんが来る前にことりちゃんと話してたの!ね、ことりちゃん。」

 

「うん!」

 

作詞?まさか穂乃果の友達に詩人か何かに伝がある人がいるのか?

 

何て考えていると穂乃果とことりは徐々に海未に詰め寄っていた。

 

……あっ。このあとの展開読めたわ。

 

けど分からないフリしとこ。面白そうだし。

 

「海未ちゃんさぁ……中学の時ポエムとか書いたりしたことあったよねぇー……?」

 

「えぇっ……!?」

 

穂乃果が海未の中学時代の黒歴史を掘り起こそうとしていた。

 

海未がポエムか…。似合わないってことは無いけどよくポエムを書こうと思ったな。

 

「読ませて貰ったことも……あったよねぇ~?」

 

ことりが超ブラックな微笑みで徐々に海未を追い詰めていく。

 

「…………。……ッ!!」

 

「あっ!!逃げたっ!!」

 

穂乃果とことりの口撃に耐えきれなくなった海未は、部屋のドアを無言で開けて逃走した。

 

しかし、穂乃果とことりがすかさず海未の後を追いかけていった。

 

それに今の穂乃果とことりと海未、オレの100Mのベストタイムよりも速かったんじゃねぇか?

 

レスポンスタイム超速かったし。

 

「壮にぃ?」

 

「あぁ、雪穂か。」

 

「おねーちゃんたちどうしたの?3人とも壮にぃと同じくらいのスピードで外に出ていったけど…。」

 

「気にすることぁねぇよ。ただ、触れてほしくない闇に触れてしまっただけのことだ。」

 

「?」

 

雪穂はオレの言ったことがサッパリ分からないと言ったように首を傾げている。

 

理解できなければ一生理解しない方がいいことだってこの世の中には……あるんだぜ?

 

『海未ちゃーん!!いいから早くそーくんのお家から出てきてよー!』

 

『よくありません!!』

 

『いくら嫌だからってそーちゃんのお家に立て籠るのはよくないんだよー!?』

 

……どうやってカギをかけたはずの我が家に入り込めたんだろう。

 

オレは一人で急須の中に入っているお茶を湯呑みに入れて、ズズズとお茶を啜りながら悟った。

 

聞いたら負けってやつなのかなぁ。……と。

 

 

 

 

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