ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
「そう言えば座席の割り振りってどうするのかにゃ?」
凛ちゃんがふと呟いた。
確かに総勢10人という大所帯で電車に乗り込み、いざ席に着こうとしたそのとき、新なが浮上した。
このままじゃ同学年同士が固まってしまい、折角の合宿の意味がなくなってしまう。
「んじゃこれでどうだ?」
オレは1から5のハートとダイヤのトランプカードを取り出す。
さらに公平を期すためにカットとシャッフルを繰り返す。
そして絵柄が下になるように向けて、カードを差し出す。
「これを1枚ずつ引いていって、同じ数字同士がペアになるってのはどうだ?」
「そーくん、いいアイディアだね♪」
そう言ったことりを筆頭にドンドン引いていき、オレは最後に余ったカードが自分の手札となる。
オレはダイヤの4だ。
「んじゃ聞いてくぞー。まず1の人ー」
「ウチと……」
「穂乃果だよっ!」
1のカードを引いたのは、希さん改めのんちゃんとほのちゃん。
「2の人ー」
「凛と……」
「にこね」
凛ちゃんとにこちゃんだ。
「さくさく行くぞー。3は誰だー?」
「私と……」
「ことりだよっ!よろしくね、真姫ちゃん!」
真姫とことちゃん。
「4はオレだ。あと一人は誰だー?」
「わ、私です……」
オレとみーちゃん。
「んで絵里ちゃんと花陽ちゃんは5っと……」
「よろしくね、花陽」
「は、はいぃ……」
座席も決まったところで、改めて出発となった。
「インターハイの活躍、見てましたよ?改めて優勝するなんて凄いですね」
電車が動き出してしばらくして、みーちゃんが口を開いた。
「メダルとトロフィーを毎日見てると嫌でも実感するよ。そういうみーちゃんこそつい最近までインターハイだったんだろ?」
確か毎年陸上と同じくらいの日程でやるのに、今年は弓道だけお盆の直前にやったんだそうだ。
「お願いですからみーちゃんはやめてください……。残念ながら力及ばずベスト4目前で負けてしまいました。」
「いや、それでも十分すごいと思うんだが……」
「壮大に比べればまだまだです。やっぱり壮大はすごいですよ」
海未に褒められ、照れ臭くなってしまい頬を掻く。
「くぁ……」
思わず欠伸を漏らしてしまった。
「おや、眠たいのですか?」
「うーん……。みーちゃんと乗ってるのは退屈じゃねぇんだけどどうしても寝ても寝ても疲れが取れねぇんだよなぁ……」
「でしたら起こしますので、降りる駅の前まで寝てもいいですよ?」
「いいのか?オレが寝てしまうと話し相手がいなくなってしまうぞ?」
「ふふっ……優しいんですね。そんな心配しなくても最近買った本がありますので大丈夫ですよ」
そう言うと海未は、手持ちのバッグからカバーがかけられた本を取り出す。
「そうなのか……?じゃあ、お言葉に甘えることにするよ」
「ええ。おやすみなさい」
オレは海未に断りを入れて、重たい瞼を閉じた。
~Side 園田 海未~
「ふぅ……」
本を読んで少し肩がこった私は、持ってきていた本を置いた。
まだ降りる駅に着かないとはいえ、少し喉が渇いたのでお茶を飲もうとしたらトンと右肩に何かが乗ったような重さを感じた。
見てみると、壮大が私の肩に頭を乗せて静かに寝息を立てていた。
本来なら壮大の身体のどこかを叩いて姿勢を直させるべきなのですが、気持ちよさそうに眠っているので起こすのは申し訳ない気がする。
「うーみちゃーん!!トランプしない?」
前から穂乃果が覗き込んできたが、私は人差し指を口の前に当てる。
「あっ……。そーちゃん寝てたんだ……」
「えぇ。お疲れのようだったので眠らせてあげましょう」
「そうだね。元はと言えば穂乃果のわがままで合宿に来てもらったようなものだしね……」
壮大が合宿に参加してもらうようにメンバーにお願いしていた穂乃果は少しだけ申し訳なさそうにしていた。
「なら、壮大が合宿に来てよかったと思えるようにしないといけませんね」
「うんっ!」
Side out
穂乃果たちの呼び方は何とか頼み込んで元に戻してもらった。
理由?今になってちゃん付けで呼ぶような間柄じゃないでしょ?
そんなこんなで海未に起こしてもらって電車を降りてから、真姫の案内のおかげで迷うことなく西木野家の別荘に辿り着いた。
「「「「「「「おぉ~」」」」」」」
「なんじゃこりゃ……」
「ぐぬぬぬぬぬ……」
別荘を見た第一声がこれだった。
にこちゃんは何故かぐぬぬっていた。
そんなに悔しがる必要ないんじゃないかな…?
「すごいよ真姫ちゃん!」
「さすがお金持ちだにゃー!」
「そう?」
真姫は穂乃果と凛ちゃんの賞賛を何でもないと言わんばかりに返す。
何でもなくねぇよ。
目の前にプライベートビーチがある別荘なんてそうそうあるもんじゃねぇぞ?
そんなこんなでメンバーそれぞれに寝泊まりする部屋を案内して回っていって、残りはオレだけとなった。
「真姫?オレはどこで寝泊まりすれば……?」
「壮大はこっちよ。ついてきて」
真姫に案内され、着いた部屋のドアを開けるとストレッチをするのに敷くトレーニングマットと少量のトレーニング器材が置かれた部屋だった。
「これは……?」
「あんたのことだから、きっと寝る前とかにやるだろうと思って執事に頼んで用意してもらったの。生憎これくらいしか用意出来なかったけど……」
「構わねぇさ。むしろ感謝したいくらいだ」
「そう。何か足りなくなったら言ってね?」
それっきり真姫は自分が寝泊まりする部屋へと戻っていった。
もしかして先輩禁止って言ったのは遠回しに真姫と他のメンバーの距離感を縮めるために言い出したのかな……?
真意を知らないオレは荷物を置いて、集合時間までの間ふかふかのベッドの上で寝転がった。
ヤバい。この布団最高だわー……。
「これが練習メニューになります!」
海未は窓に貼った練習メニューを指しながら言う。
練習メニューには遠泳10kmにランニング10km、精神統一や腕立て腹筋20セットと書かれていた。
……トライアスロンの選手の練習メニューか?
遠泳10kmってアイアンマンレースでも泳がねぇぞ…。
穂乃果と凛ちゃんとにこちゃんはそれぞれ水着に着替えていて、既に海で遊ぶ気満々で、まさかこれから練習するなんて思っても見なかった3人の表情は不服そうだ。
「って海は!?」
「……私ですが?」
穂乃果の言葉に海未がキョトンとした顔で返す。
おい。それはボケで言ってるのか?それとも素で言ってるのか?
「違うよ!海だよ!!海水浴だよ!!!」
「それでしたらここに」
海未は満面の笑みで遠泳10kmと書かれているところを指差した。
それを見た穂乃果とにこちゃんは10kmという数字と、その後に書いてあるランニング10kmに顔を引き攣らせていた。
そりゃそうなるよな。
オレもその距離泳げって言われたら全力で首を横に振る自信しかない。
「最近基礎体力をつける練習が減っています。折角の合宿なんですし、ここでみっちりやっといた方が良いかと」
「みんなの体力は持つのか?」
「大丈夫です!熱いハートがあれば!!」
お前はどこの超熱血テニスプレイヤーだ。
何?練習中誰かがへばっていたらその人そっくりに応援するの?
いくら大和撫子の海未でも、暑苦しいこと極まりないな。
「やる気が痛い方向に入っちゃってるわね……。ちょっと、どうにかしなさいよ」
「分かったよ……凛ちゃん!」
「わ……、分かったにゃ!」
穂乃果たちは何やら相談して、海未を説得しようとしていた。
すると凛ちゃんは海未の手を引き、空に何かあると言って指差していた。
その間に穂乃果とにこちゃん、ことりに花陽ちゃんは砂浜の方へ走っていった。
「ちょっ……!!待ちなさーい!」
「仕方ないわね……」
「えぇ……?良いんですか?絵里先ぱ………あ」
絵里先輩と呼びそうになった海未に禁止と言って、海未は口元を押さえて謝った。
「μ'sはこれまで部活の側面も強かったから、こうして遊んで先輩と後輩の垣根を取る事も重要な事よ?」
「それにまだ合宿は始まったばっかだ。1日、2日くらい許してやれよ?」
絵里ちゃんの言葉に海未がイマイチ納得いってない表情をしていたが、オレは海未の頭をポンポンと撫でてから海の中に入ってもいいような服装に着替えるため、一旦別荘の中に入った。
水着に半袖パーカーを羽織り、頭には陸上の練習でかけるスポーツ用のサングラスを身に付けて海岸に降り立つ。
「わぁっ!そーくんカッコいいー!!」
オレの姿を見て、近くにいたことりが反応する。
ことりは緑のビキニを着ていて、手には水鉄砲を持っていた。
「そうか?ことりも随分と似合ってるじゃん」
「えへへぇ……。新しく買ったの!」
そう言って遠くにいる穂乃果と凛ちゃんのところにとてとてと走っていった。
それを見たオレは羽織っていたパーカーを脱いで、サングラスを外しながらパイプのイスにひっかけた。
「あら、全国大会で優勝する人の身体は凄いのね……」
「壮大くん、触らして貰ってもええかな?」
すると、絵里ちゃんとのんちゃんがやって来た。
やっぱ3年生ってこともあってスタイル抜群だ。
絵里ちゃんもロシア育ちと言うべきか、のんちゃんに負けてないお胸を持っているようで……。
おっと、いかんいかん。
禁止とはいえ、年上の女性に対して疚しい目で見ちゃいかんよな……。
「いいっすよ。気が済むまでどうぞー」
許可を出すと、絵里ちゃんとのんちゃんはペタペタと触ってきた。
「見た目以上にハッキリと割れてるのね……」
「如何にも男の子って感じやね!」
「まぁ、鍛えてますし……」
女の子に身体を触られるということがあまりないので、何だか恥ずかしい。
「あー!絵里ちゃんと希ちゃんずるーい!!!」
「凛ちゃん!?」
絵里ちゃんとのんちゃんのやり取りを見ていた凛ちゃんは、浅瀬から走ってきてオレの身体に抱きついてきた。
「あら、凛ったら……」
「意外と大胆なんやね……」
横からなんか聞こえるけど、今のオレはそれどころじゃない。
オレの無骨な肌に凛ちゃんの女の子特有の柔らかい肌が当たっている。
「そーたくんすごいにゃー!」
「凛ちゃん、頼むから離れてっ……!」
「何で?」
凛ちゃんはオレの言ったことが分からなかったのか首を傾げる。
「着てる物の状況!水着!!肌!!!」
「え……?にゃぁぁぁあっ!!?」
ようやく理解したのか凛ちゃんはオレから少し距離を取った。
危なかった……。
これ以上密着されていたら、オレのアレが
「……凛ちゃん?大丈夫かい?」
凛ちゃんをケアしようと近付くと、胸を両腕で隠すように覆いながら涙目でオレを見ていた。
「そーたくんも絵里ちゃんや希ちゃんみたいに胸おっきい人の方が好みなの……?」
「……凛ちゃん?」
「だって、ひんそーな凛にくっつかれるのが嫌だからあんなこと言ったんでしょ……?」
「んなこたぁねぇよ。何ならオレの胸の辺り触ってみな?」
凛ちゃんはオレの胸を恐る恐る触る。
「すごい…、バクバクしてるにゃ……」
「つまり、そういうこと。だから凛ちゃんが落ち込むような要素はないってことだ」
「えへ…、えへへ……」
すると凛ちゃんはいつもの無邪気で眩しい笑顔を取り戻した。
え?なんなの?このえんじぇー。
「ほら!そーたくんも凛と一緒に遊ぶにゃー!!」
「ちょっ!!凛ちゃん!?」
凛ちゃんはオレの手を掴み、海に向かって駆け出した。
「なぁ、えりち?」
「なぁに?」
「何か急にだけど、コーヒー飲みたくならへん?」
「奇遇ね。私もそう思ってたところよ」
……壮大の天然ジゴロはまだまだ続きそう?
※ 6月19日 タイトル変更