ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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第30話 μ'sの練習withインターハイ王者

「…大……!……きて……さい!」

 

誰だ?オレの眠りを妨げようとしている奴は……。

 

「壮大……!起きて……さい!」

 

もうちょっと寝かせてくれよな、全く。

 

「壮大!朝ですよ!起きてください!!」

 

誰だオレを無理矢理に起こそうとしている奴は!

 

嫌だ!誰がなんと言おうともオレは絶対目を開けねぇぞ!!

 

「意地でも目を開けないつもりですか、そうですか……。かくなるうえは…はぁっ!!!」

 

寝返りを打ったと同時に何だか宙に浮いている感覚があるけど、気のせいだよな。

 

オレはそのまま寝返りを打った。

 

 

 

 

「死ぬかと思った!!あと数センチずれてりゃオレの身体がボロボロになるところだったじゃねぇか!!」

 

「まさか壮大が空中で身体を捻るとは思いませんでしたから」

 

オレを投げ飛ばした正体は海未だった。

 

何でも朝御飯ができても起きて来ず、気を使って起こさなかったのだがメンバーのみんなが朝御飯が食べ終わるまで起きてこなかったからこうして起こしに来たらしい。

 

なんて手荒い起こし方だ!

 

「お前オレが半身不随になってたらどうするつもりだったんだよ!?」

 

「大丈夫です。壮大は頑丈ですから」

 

「いくら頑丈でも急所は鍛えようがねぇぞ!?」

 

昨日は寝てても起こさなかったのに、何で今日は起こすの?

 

「合宿ですからメンバーと行動を共にするのは当然ではありませんか?」

 

さらっと心を読むな!!

 

「早く朝食を食べてください。片付けが終わりませんよ?」

 

何だかおかんみたいになった海未にそそのかされ、テーブルに乗っていた朝メシを食べ始める。

 

「今日の予定はどんな感じだ?」

 

味噌汁を啜りながら、オレの隣に珍しく正座ではなく女の子座りをしている海未に今日の予定を聞く。

 

おっ、この味噌汁美味いな。誰が作ったんだろう?

 

「今日は午前中に練習をしますが、午後は特に考えてないですね…」

 

「…まさかとは思うが、昨日書いていたメニューをやるのか?」

 

ランニング10kmならともかく、遠泳10kmやるってんならみんなの体力が尽きて溺れてしまいかねない。

 

「冷静に考えてみて、自分でもさすがにアレはないなと思います」

 

だろうな。

 

「せっかく目の前に砂浜があるので、そこで体力強化を中心とした練習をしたいと思います。……参加しますか?」

 

悪くない考えだ。

 

意外と砂浜での走り込みは脚全体に効くし、柔らかいからアスファルトやコンクリートに比べて負担は少ない。

 

なにより不安定なところで走るので、体幹の強化と左右のバランスを整える機会になりそうだ。

 

「……じゃあ、オレも参加していいか?」

 

「ええ、いいですよ?では私たちは先に練習をしていますので準備できたら砂浜に来てください」

 

海未は立ち上がり、練習へと行ってしまった。

 

オレも準備に取りかかるとしますかぁ!

 

使った食器を洗って、自分の部屋に戻り練習着に着替えて砂浜に向かった。

 

 

 

外に出ると思っていたよりも暑かったので、着ているシャツを脱ぎ捨てハーフタイツに日差し避けのスポーツタイプのサングラスをかけて砂浜に降りる。

 

砂浜ではメンバーが汗を流しながら走っていた。

 

「うぃっす」

 

「そーちゃん、遅いよー!」

 

「そーくんおはようだにゃー!!」

 

近寄って挨拶すると、μ'sの元気印である穂乃果と凛ちゃんが立ち止まって挨拶を返してくれた。

 

「ホレ、ドリンクだ」

 

「ありがとう!……ぷはー!生き返るー!!凛ちゃん、まだまだ行くよ!」

 

「分かったにゃー!!そーくん、ドリンクありがとうだにゃ!」

 

2人に向かってドリンクが入ったボトルを軽く放り投げると、ゴクゴク飲んでからまた走り出した。

 

「海未、今はどんな練習だ?」

 

「誰かと思ったら壮大ですか……。まずは軽めのランニングってところで、あと20分で終わります」

 

一番後ろでマイペースに走っている海未に寄り添う形で走りながら聞くと、ランニングだと教えてくれた。

 

「その次は?」

 

「目印となるコーンを100メートルくらい先に置いてダッシュをしようかと……」

 

「ちょっとそのメニューのやり方、オレに任せて貰っていいか?」

 

「どうやるのですか?」

 

「それはやる前のお楽しみ。まぁ、悪いようにはやらないさ」

 

海未は生返事をしてから走るペースを上げ、前を走るメンバーの後を追い掛けた。

 

 

 

「次のメニューは100メートルダッシュを10本ほどやろうと思いますが、その前にやり方の説明を壮大からお願いします」

 

100メートルのダッシュをする前に、海未の前フリを受けてメンバーの前に立つ。

 

前に立つと分かるのだが、みんながオレを見ているので何だか少し緊張する。

 

「では次の練習をする前に、ちょっと聞いてみたいことがあるんだが……穂乃果?」

 

「えっ?穂乃果?」

 

急に呼ばれた穂乃果はビックリしていた。

 

「ただただ走るのってさ…、ぶっちゃけ結構疲れるし何だか地味だよな?」

 

「うーん…、本音を言うと一人で走ったりするとすぐ飽きちゃうんだよねぇ……。」

 

「素直でよろしい」

 

実際オレも一人でランニングしたりしていると、集中力が途切れるとすぐ歩いてしまったりしてしまう。

 

「そこで、この練習では2人1組で競争してもらおうと思う」

 

「「「「「競争?」」」」」

 

メンバーが首を傾げる。

 

「そう、競争だ」

 

「それってどうやるのかしら……?」

 

絵里ちゃんはどうやるのか疑問に思っているみたいだ。

 

「絵里ちゃん、いい質問だ。簡単に言うと2人1組になってゴールした時点で勝った人は自分が走った時より1つ前に、逆に負けてしまった人は1つ後ろに下がるっていった感じだ」

 

「つまり、入れ換えていくってことでいいのかな?」

 

「そういうこと」

 

花陽ちゃんが聞いてきたことに同意する。

 

「ハンデとしてオレと同じ組になった人は、オレより何秒か先にスタートしてからオレが走るってことにしようと思うが、異論がある人はいないかー?」

 

「はーい!」

 

元気よく手を上げるメンバーが1人いた。

 

「はい、凛ちゃん」

 

「走り終わった時点でトップに立っていた人には何か賞品みたいなのを希望するにゃ!」

 

「おー!!凛ちゃん、それいいねー!!」

 

「ことりも凛ちゃんにさんせーい!!」

 

メンバーみんなが凛ちゃんが提案した案件に賛成のようだ。

 

「じゃあ、オレに勝った人は今日の夜メシ期待してもらうってことでいいかな?」

 

「「「「「やったぁ!!!」」」」」

 

「では、みんなのやる気が出てきたところで練習を始ようか。一人ずつオレの手に持ってる割り箸を引いていってくれー!!」

 

みんな箸を引いてペアを決めていき、練習を再開する。

 

のんちゃんと海未を先頭にして、真姫と花陽ちゃん、にこちゃんとことり、凛ちゃんと穂乃果と、オレと絵里ちゃんの組合わせで始まった。

 

オレに勝ったのは1本目で走った絵里ちゃん、4本目で走った海未。

 

そして意外にも7本目で走ったのんちゃんも足が速かった。

 

穂乃果もかなりいいところまでいったが、ゴール直前で転んでしまい本気で悔しがっていた。

 

そして最後の10本目の相手は……

 

「凛ちゃんか……」

 

「やったにゃ!最後の最後での直接対決だにゃ!」

 

凛ちゃんとオレの頂上対決となった。

 

オレとしては最終対決で凛ちゃんと走りたかったから、少し気合いが入る。

 

「ふっふっふ…、そーくんには悪いけどこの勝負、凛が貰ったにゃ!」

 

「おいおい…、自分で言うのもアレだけどインターハイ王者に勝てると思ってんのか?……ハンデは?」

 

「そんなのいらないにゃ!…と言いたいところだけど、確実に勝つために必要なタイムは……1.5秒だにゃ!」

 

「分かった。じゃあ行くぞ!よーい…、スタート!!」

 

「にゃあっ!!」

 

凛ちゃんは文字通り砂塵を上げて走り出す。

 

そして凛ちゃんがスタートしてから2秒足らずしてから…、

 

「らぁっ!!」

 

疲労しきっている脚の筋肉の残り少ないエネルギーをフルに使い、ぶちかます。

 

凛ちゃんの足の速さは今まで大会を通して見てきた女子の短距離選手の中でも、トップを争うほどの走力を誇っている。

 

なかなか追い付かねぇ……!!

 

けど、ここで負けるなんてことはほんの少ししかないけどインターハイ王者としてのプライドが許さない。

 

1歩1歩力強く、そして確実に前に進める。

 

そしてラスト10メートルで凛ちゃんの横に並ぶ。

 

「にゃにゃっ!?」

 

驚く凛ちゃんを横目に、さらに加速を決め込む。

 

そして凛ちゃんよりもほんの少し前でゴールした。

 

「はぁっ……!はぁっ……!!」

 

「にゃぁぁあ……、負けたにゃあ……」

 

腰に手を当てて顔を上げ、粗い呼吸を繰り返すオレとオレの横でペタンと座り込む凛ちゃん。

 

「やっぱりそーくんは速いにゃー……」

 

「凛ちゃんも…、マジで速かった…。負けるかと…、思った…ぜ……」

 

お互い相手を讃えるようにオレは凛ちゃんに手を差し伸べ、凛ちゃんはオレの手を掴んで立ち上がる。

 

みんなもオレと凛ちゃんの競争を目撃して唖然としている。

 

「壮大?もしかして、さっきの凛以外で走ってたのって力をセーブしていたの……?」

 

絵里ちゃんがボトルを渡しながら聞いてきた。

 

「まさか…、でも凛ちゃんの競争はかなりギリギリだったよ…」

 

「ハ、ハラショー……」

 

ボトルを握りつぶすように中身を口に含んでから答えると、絵里ちゃんの口からロシア語が飛び出していた。

 

「んじゃ、クールダウンして終わりかな?日も高くなってきて熱中症になると大変だしね」

 

みんなは何も言わずに頷き、各々でクールダウンを始めた。

 

 

 

 

「はぁー…、疲れたぁ……」

 

昨日は寝れなかったが、今日はみんなそれぞれ割り当てられた部屋で寝ることになって1人部屋のオレはベッドの上で横になっていた。

 

お昼を食べてからさらに一人で砂浜を走ったり、海で軽く泳いだりと身体を動かしていた。

 

メンバーのみんなは近くを散歩したり、持ち込んだボードゲームをやったりと各々の時間を過ごしていたみたいだった。

 

そして夜メシの時間、オレは今日の勝者の賞品としてお手製の甘さを控えめにしたカスタードプリンを振る舞った。

 

絵里ちゃんは「ハラショー!!」と、海未は「甘過ぎずにサッパリしていておいしいですね」と、そしてのんちゃんは「何か負けた気分になるんやけど、気のせいなんかな?」と言いながら食べていた。

 

残念ながら負けたメンバー(特に穂乃果と凛ちゃん)の捨てられた子犬のような目に勝てず、結局みんなに振る舞った。

 

あぁ…、何だか眠気が……。

 

オレは襲いかかってきた睡魔に抗えず、そのまま眠ってしまった。

 

 

 

 

 

ーーーコンコンッ!

 

 

「んっ……?」

 

突然ドアから強めのノックをする音が聞こえた。

 

時間を見ると夜の11時半だ。

 

確か部屋に入ったのは8時少し過ぎだったから、およそ3時間半眠っていた計算になる。

 

「はーい……、開いてますよー」

 

半分うとうとしながら、ドアの向こうにいる人に応答する。

 

すると静かにドアが開けられ、来客者を見る。

 

「ちょっと、いいかしら……?」

 

「……絵里ちゃん?」

 

オレの部屋に訪ねてきた来客者の正体は、絵里ちゃんだった。

 

 

 

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