ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

33 / 121
お気に入り件数が100件を越えました!

記念ストーリー描かなきゃ。(使命感)

では、改めてどーぞ!!


第31話 悩みと心の靄

「どうしたんすか?こんな夜遅くに…?」

 

「えっと……」

 

今から言うことが言いづらそうに言葉を詰まらせる。

 

よく見ると昼の時とは違い、心なしか震えているように見えた。

 

「とりあえず廊下で立ち話もなんなので入ってください。お茶を入れますから」

 

 

 

 

 

 

ポットで少し温めのお湯を沸かし、紅茶のティーバッグを入れたマグカップにお湯を注ぐ。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

絵里ちゃんはマグカップを受けとり、紅茶をちびちびと飲み始めた。

 

「落ち着きました?」

 

「少しだけだけど、落ち着いてきたわ」

 

「それはよかったです」

 

オレの部屋は、少しの間だけ無音の空間と化する。

 

「……何も聞かないのね」

 

先に沈黙を破ったのは絵里ちゃんだ。

 

「えぇ、だいたいは見当はついてますから。……もしかして、暗所恐怖症ですか?」

 

返事は無い代わりに、首が縦に動いた。

 

暗所恐怖症とは、端的に言うと暗闇を病的に怖がることだ。

 

その症状としては酷い場合だと息切れ、過度の発汗、吐き気、震え、動悸、発話・思考の不明瞭、現実感の喪失などが見られる。

 

通常はヒトという生き物は、夜生活するものではないので本能的に暗闇に対して恐怖を覚える人は多いらしい。

 

たしかに、真っ暗闇の中だと個人差はあれども不安を感じるものだ。

 

だから悩み事をするなら昼間のうちにしておけと提唱する臨床心理学者も少なくはない。

 

「昨日は大丈夫だったんですか?」

 

「えぇ……普段はほんの少し怖いくらいだけなんだけど、寝る前にみんなが怖い話をしようってなって…、それでそれぞれ割り当てられた部屋に戻ったんだけど、目を瞑ると怖くて怖くて……」

 

「分かりました。無理に聞いてすみません」

 

絵里ちゃんが事情を説明するごとに肩を震わせて、目には涙が溜まっていくのを見て説明を止めさせた。

 

なるほどな。

 

怖い話を聞いてお化けとかが出るんじゃないかという恐怖と、暗所という自分の気持ちを不安にさせる場所に一人でいる状況が作り出されてしまったと言うことか…。

 

「よく、我慢しましたね……」

 

オレは絵里ちゃんを優しく抱き締め、絵里ちゃんの頭をオレの胸元に持っていく。

 

「ぐすっ……」

 

絵里ちゃんを抱き締めてから数秒後、オレが着ている服が温かく湿っていく。

 

背中に手を回して『もう、大丈夫だよ』というようにポンポンと背中を叩き続けた。

 

 

 

 

「すぅ……、すぅ……」

 

泣き疲れたのと、今日の練習の疲れで絵里ちゃんは安らかな笑顔で眠ってしまった。

 

それもオレの服をガッチリ掴んで……。

 

「…………」

 

眠りにつくタイミングを完全に逃したオレは、寝れなくなってしまった。

 

だってよくよく考えてみろよ?

 

オレのすぐ横には日本人離れした抜群のプロポーションを持っていて、μ'sのお姉さんポジションの絵里ちゃんがこんなにも無防備で眠ってるんだぞ!?

 

どうする!?どうするよオレ!?

 

『どうするってやることは決まってるじゃないか』

 

お前誰だよ!!!

 

それにやることって何さ!?

 

『僕はキミの脳内の天使さ。やることって何かって?そりゃ性的な意味で食べることに決まってるじゃないか!!』

 

威張って言うなぁぁぁあ!!!

 

『そうだ。お前はこの人に手を出してはいけない』

 

お前誰だよ!!!(2回目)

 

『俺はお前の脳内の悪魔だ。もう一度言うぞ?お前はこの人に手を出してはいけない』

 

おぉ…。

 

悪い立場のはずである悪魔が正論を言っていることに感動し、涙を流した。

 

『そんな!?またとないチャンスなんだよ!?それをわざわざ自らの手で捨てるというのかい!?』

 

あったりめぇだバカ野郎。

 

今この場で絵里ちゃんに手を出した瞬間、オレはμ'sとの関わりを止めるようなもんだ。

 

だから天使には永久に退場を願おうか。

 

『ちくしょー!!絶対また来てやるからな!このヘタレ!!』

 

誰がヘタレだ!誰が!

 

天使は根も葉もないことを言い残し、オレの脳内から完全に消え去った。

 

そして気づけば悪魔も消え去っていた。

 

はぁ……、何だかドッと疲れたな。

 

「失礼しまーす……」

 

オレは絵里ちゃんに向かって物凄く小さな声を出し、ベッドに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

外から聞こえる小鳥の鳴き声で目を覚まし、枕元に置いている時計で時間を確認する。

 

現在の時刻は、朝の5時を示していた。

 

まだまだ2度寝ができるような時間帯なのだが、このまま目を閉じても眠れそうにないので静かに起き上がってから何の気も無しにベッドを見た。

 

オレの隣でギュッと服を掴んでいた絵里ちゃんは、普段の生活では絶対に見せない大人びた容姿とは真逆のあどけない表情を浮かべている。

 

さらに起きている時は白いリボンで纏められているサラサラの金髪が微かに漏れる朝日に照らされて、ベッドと言うキャンパスに1つの絵画が書き上げられているみたいだ。

 

その絵里ちゃんは規則正しい寝息を立てていて、起きる気配は感じられない。

 

オレは音を立てずに部屋のドアの開け閉めを行い、階段を降りて玄関へ。

 

玄関を出てから、歩いて目の前のビーチに降り立った。

 

夏といえどもまだ早朝。

 

海から吹き付けてくる浜風が優しく撫でるようにオレの身体に流れていくのがとても心地よく、軽く走ろうかな?と思っていたが、このまま海岸沿いを歩いていくのも悪くはないだろう。

 

すると、別荘の方向から歩いてくる人がいた。

 

「あれ?壮大くん?」

 

「おはようございます、のんちゃん」

 

やってきたのはのんちゃんだった。

 

「何してたん?」

 

「軽く走ろうかと思ってましたけど、風が心地いいので海岸沿いをお散歩です」

 

「うちもご一緒してもええ?」

 

断る理由もなかったので頷くと、のんちゃんも履いていたサンダルを脱いで手に持ってからオレの横に並んで散歩する。

 

「……」

 

「……」

 

オレものんちゃんも特に話すこともなく、お散歩を続ける。

 

普段なら2人っきりで沈黙が続くと、大なり小なり気まずくなるのだが何故だかこの沈黙を何の苦もなく受け入れている自分がいることに驚いている。

 

「……」

 

「……」

 

「……普段からこんな朝早くに起きてるんですか?」

 

そう言えばオレはのんちゃんのことは知らないことの方が多すぎる。

 

神田明神でアルバイトをしていて、音ノ木坂楽員の生徒会副会長でいて、今ではかけがえのないμ'sのメンバーであること以外ほとんど知らない。

 

「ううん。普段はもう少し起きる時間は遅いけど、ちょっと考え事をしててね……」

 

「やっぱり最上級生になると悩みは尽きないものなんですか?」

 

「ふふっ…。それは実際にならんと分からんもんやで?まっ、うちにも色々あるんよ」

 

「オレ夏休みが終わると部活では最上級生なんですけど…?」

 

適当にはぐらかされたけど、どうやらのんちゃんは顔には出さないが気苦労が絶えないタイプのようだ。

 

のんちゃんのようにあらゆることに気が付いてしまう人間は大きなグループの中で人一倍苦労する。

 

そして今悩んでいることも大体予想がつく。

 

「昨日の朝、今日みたいに海を見てたらみんなが来て真姫ちゃんにお礼を言われたんやけど……あれで良かったのかな?って思ったりもするんよ…?」

 

やはり真姫のことだった。

 

だからあんなに積極的に真姫に絡んであげてたのか…。

 

「別に良かったんじゃないですか?昨日も一昨日もどこか楽しそうだったじゃないですか」

 

「そう…かな?」

 

「えぇ。真姫も口は素直じゃないですけど、根は誰よりも優しいとてもいい娘なんで」

 

「そうやね……」

 

のんちゃんは返事をしてから、海を眺めた。

 

オレものんちゃんに習って横に立ち、水平線を眺める。

 

その際にチラッと横目でのんちゃんを見た。

 

のんちゃんの微笑みは朝日というエフェクトを加え、とてもキレイに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…、これで全部か?」

 

場面は流れて、太陽が水平線の向こうに沈みかけた頃。

 

オレの横にはことりがいた。

 

「ごめんね?ことりが一緒に行きたいってわがまま言っちゃって……」

 

「いいって。穂乃果や凛ちゃんだと必要ない物まで買っちゃいそうだし……」

 

合宿の最終日ということで、オレたちは最後の夜メシでバーベキューをするために肉や海鮮類の買い出しから戻る道中にいた。

 

絵里ちゃんと一緒に寝たというのがメンバーにバレてしまい、海未に制裁を喰らったり真姫に罵倒されたりされたが、絵里ちゃんが必死にオレのフォローをしてくれたので事なきことを得た。

 

それでも納得しなかった凛ちゃんはこの買い出しに着いていきたいと騒いでいたが、にこちゃんが手伝いをしてほしいと言ってキッチンに連行されていった矢先にことりが着いていきたいと言ったのでことりをお供にして買い出しに出たのだ。

 

「そーくん、合宿楽しかったね♪」

 

ことりがいつもの笑顔で、オレの顔を覗き込む。

 

「そうだな…、来てよかったよ。そう言えばまだメイド喫茶のバイトは続けてるのか?」

 

「前よりは入るシフトを減らしてるけど、いろんなタイプのメイド服があって全部可愛いんだー!」

 

「着るのが楽しい?」

 

「それもあるけど、いろんな工夫が施されてるのを見るのも楽しいんだよっ?」

 

「ホントに服が好きなんだな…」

 

「うんっ♪」

 

楽しそうに話すことりに、ふと思ったことを聞いてみた。

 

 

 

 

 

「将来はやっぱり服飾関係につくのか?」

 

 

 

 

 

しかし、質問の答えは返ってこなかった。

 

よく見てみるとことりは楽しそうな表情から一転し、少しだけ陰りのある表情になっていた。

 

「ことり?どうしたんだ?」

 

「っ!?う、うん。今のところはその道を考えてるよ」

 

「そっか」

 

明らかにことりは動揺している。

 

でも、これはかなりデリケートな問題だからいたずらに問い詰める必要はないだろう。

 

「そーくん、変な質問してもいいかな?」

 

「何だ?」

 

するとことりが真面目な表情でオレの前に立った。

 

 

 

 

 

「もしどうしても叶えたい夢が叶うかもしれないチャンスが来たら、そーくんなら自分の夢を追いかけますか?それとも、今いるその場所や友達を選びますか?」

 

 

 

 

何故だかこの質問を聞き終わった瞬間、ほんの一瞬だがことりと穂乃果が泣き崩れ、ガラスみたいな物が粉々に壊れるような映像が見えた気がした。

 

けど、何故その映像が流れてきたのか意味が分からなかったオレは質問の返答をした。

 

 

 

「夢……かな?」

 

「どうして?」

 

「もし夢を叶えられるかもしれないチャンスを逃してこれからこの先後悔するよりも、チャンスに挑戦してから後悔した方が絶対いいと思ったから……じゃダメか?」

 

「ううん。何だかそーくんらしいなーって」

 

「そうか?」

 

「うん♪ごめんね?変な質問しちゃって」

 

「これくらいお安い御用だ。さ、そろそろ行こう。早く行かないと凛ちゃんに噛まれそうだ」

 

「そうだねっ♪」

 

オレたちはまた他愛の無い話をしながら、歩いて別荘へ戻っていった。

 

でも、バーベキューで凛ちゃんに焼いた肉を食べさせても真姫に感謝の言葉を言われても、心のもやはいつまでもねっとりと残っていた。

 

 




需要があるかどうか分からないけど、(今更)オリ主プロフィール


松宮 壮大(まつみや そうた)

7月20日生まれ

身長:177cm

体重:70kg

趣味・特技:読書、スポーツ全般、片腕で腕立て伏せができる

好きな食べ物:食べられるものなら全部


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。