ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
みなさん、少し辛いかもですけど頑張って読んでください。
では、どうぞ。
夏の合宿が終わるとほぼ同時に、夏休みも終わった。
彼女らの新たなる目標となっている『ラブライブ』開催まで残り3週間とちょっととなり、μ'sは全国のスクールアイドルのランキングで19位まで上がってきている。
「……これは驚いた」
つい最近までは30位台にいたのが、ついに出場圏内の20位以内に食い込んできたのだ。
もしかしたら、もしかするかもしれねぇぞ……!
今日はよく分からないけど部活もできないし、午前中で学校が終わってしまったので一度家に帰ってゆっくりしてから久々に一足先に夏休みが終わっていた音ノ木坂学院へと足を運んだ。
管理人さんに会ったときインターハイでの活躍をテレビで見ていたらしく、優勝おめでとうとお祝いされて少し照れ臭かった。
そして練習が行われている屋上へ行くと、ちょうど休憩に入っているメンバーの姿があった。
「うぃっす」
「あっ!そーちゃんだ!!」
「そーくん!こんにちはだにゃー!!」
挨拶しながら屋上へ足を踏み入れると、穂乃果と凛ちゃんのポジティブコンビが挨拶を返してきた。
「お前らは相変わらずなのな……」
「だって19位だよ!?19位!!ねー、凛ちゃん!」
「そうにゃそうにゃ!!」
ラブライブ出場に現実味を帯びてきて、穂乃果と凛ちゃんは今まで以上に燃えていた。
……これ以上あの2人のそばにいると水分が飛んでしまいそうだ。
オレはポジティブコンビから日陰でドリンクを飲みながら、難しい顔をしてノートパソコンに向かっているμ'sの2大クールビューティーのところに歩み寄る。
「こんにちは。真姫、絵里ちゃん」
「あら…、誰かと思えば……」
「壮大じゃない。学校はどうしたの?」
「今日立華高校は部活禁止の午前授業だったので。2人ともパソコンに向かってどうしたんですか?」
「ちょっとこれを見てくれるかしら?」
絵里ちゃんが両手でノートパソコンを持ち、クルリとこちらにノートパソコンのディスプレイをオレに見せる。
写されていたのはUTX高校のトップページ。
そこにデカデカと書かれていたのは…、
「『7日間連続ライブ』……?」
A-RISEの公式ページには、ラブライブ出場に向けた最後の大詰めとしての活動が詳しく記載されていた。
「A -RISEすげぇな……」
「ラブライブ出場チームは2週間後の時点で20位以内に入ったグループ。どのスクールアイドルも最後の追い込みに必死なのよ」
「20位以下に落ちたグループだって、まだ諦めていないだろうし....今から追い上げてなんとか出場を勝ち取ろうとしているスクールアイドルもたくさんいる。だからランキングのボーダーライン上にいる私たちにとってはこれからが正念場になるってことね」
つまり手放しで喜べる状況では無いってことね……。
「でも、今からやれることなんてそう多くはないんだろ?だったら自分たちがやれることを精一杯やるしかない……って、2人なら分かってるはずか……」
この2人がμ'sのブレインと言ってもいいほどだから、分かっていない筈がない。
「ぃよぉっしっ!今できることをもっと頑張らないと!!」
いつの間にかオレたちの話を聞いていた穂乃果は気合を入れ、凛ちゃんも便乗する。
他のメンバーも穂乃果や凛ちゃんほどでもないが、各々気合いが入っているように見えた……、ただ一人を除いて……。
「…………」
ことりだ。
最近どうもことりの様子がおかしい。
どこか上の空でどこか心配そうに穂乃果を見ているのだが、それはラブライブに関してのことじゃないということだけは断言できる。
「海未……」
オレは海未の名前を呼び、ことりに悟られないように視線をことりに向け、すぐ海未に戻す。
「分かりました。今日壮大の家にお邪魔いたします。そこで私が知りうる限りのことを全て報告します」
「分かった」
察しのいい海未はオレが意図することに気づき、頷いてからまた練習へと戻っていった。
「そろそろ時間ね……」
時計を見ていた絵里ちゃんが何か呟いた。
え?なに?これから何か始まるの?
「絵里ちゃん?どうしたの?」
「壮大もついてくる?」
……はい?
「居合道部!!午後2時から1時間の講堂の使用を許可します!」
「「やったぁー!!!」」
居合道部の代表と思われる女の子は、2人で手を握り合って喜びを分かち合っていた。
彼女らの背景には百合の花が咲き乱れているように見えるのは気のせいだと願いたい。
「……何これ?」
そんな風景に軽く引きながら、絵里ちゃんに聞いてみる。
「昔から伝統らしくて……」
絵里ちゃん曰く、来る音ノ木坂学院の学校祭での講堂の使用権は毎年くじ引きで決めているらしい。
そして講堂を使用するにはくじ引きで金のボールを引き当てないといけないらしくて、それ以外の色はハズレで講堂が使えないんだとか……。
そんでアイドル研究部の代表は、部長のにこちゃんだ。
「にこちゃん!がんばって!」
穂乃果に激励され、にこちゃんはズンズンとくじ引きのところへと歩み寄る。
「それではアイドル研究部!どうぞ!!」
さぁ、行け!
行くんだにこちゃん!!
オレたちの想いと希望をその右手に乗せて、夢を掴み取るんだぁぁあ!!!
コンコンコン……
ガラガラからオレたちの想いを背負い、運命を託した結果が高らかに 宣言された。
「どーーしよー!!!!!」
穂乃果が頭を抱え、屋上で叫ぶ。
「だ、だってしょうがないじゃない!くじ引きで決まるなんて知らなかったんだから!」
にこちゃんが言い訳染みたことを言いながら、開き直っていた。
「あー!開き直ったにゃぁっ!!」
「うるさーい!」
凛ちゃんに開き直ったことをつっこまれ、にこちゃんはさらに開き直る。
「ううっ……!なんで……!?なんで外れちゃったのぉっ!?」
花陽ちゃんはフェンスを掴みながら涙を流していて…、
「まぁ、予想されたオチね」
「にこっち…ウチ、信じてたんよ……?」
真姫は髪の毛先をクルクル回しながら素っ気なく返し、のんちゃんも珍しく両膝を抱えていた。
「海未ちゃぁん…、私たちこれならどうなるの…?」
「そんなこと私に聞かれましても…!私だって混乱して頭がいっぱいいっぱいなんです!」
先程に比べて少し元気が出たことりも海未に相談するも、いい返事が返ってこなかった。
そりゃ冷静になれって方が難しい話だ。
「うるさいうるさいうるさ〜いっ!!!悪かったわよーっ!!」
にこちゃんが引いた玉の色は白。
つまりそれは文化祭では講堂は使えないということを意味していた。
そしてオレらは屋上で悲愴感に明け暮れる結果になっていた。
「にこちゃん……」
オレはにこちゃんに話しかける。
するとにこちゃんはオレに向き合った。
「壮大…!あんたならにこの気持ち、理解してくれるよね!?」
「はー…、ホンマつっかえんわ。運も無ければあれもちっちゃいし…、ホンッットに救いようが無いですね?」
「うるさいわね!!!!あとちっちゃいは余計よ!!!!」
にこちゃんにフォローを入れると見せかけ、全力でトドメを刺した。
にこちゃんの何がちっちゃいかって?
そりゃもちろん身長に決まってるじゃないか。(震え声)
とある身体的特徴の事を言っているわけでは断じてない。
「気持ちを切り替えましょう。使用できないのにいつまでも悲観してもしょうがないでしょ?」
絵里ちゃんが手を叩いて、沈んだ気持ちに手を差し伸べる。
「……本音は?」
「にこに運命を託した私がどうかしてたんだわ……」
「ちょっ!?絵里!?」
本音をぶちまけた絵里ちゃんはメンバーの中で最も悔しそうにしていた。
「それでどうするんです?グラウンドも体育館も運動部が使用すると思いますし……」
絵里ちゃん以外のメンバーの中でも、気持ちの切り替えが早かった海未が方針を聞こうとする。
オレは考える間もなく、ある1つの結論に辿り着いた。
「あるじゃん、μ'sにとって最高のステージが」
「「「「「「「「え!?どこに!?」」」」」」」」
「あっ!穂乃果も分かった!」
みんなは驚くが、穂乃果はほぼノータイムで分かったらしい。
「では答え合わせと行こうか。穂乃果、どこがμ'sにとって最高のステージと言えるでしょう?」
「ここだよ!ここで簡易ステージを作ればいいんじゃないかな!?」
そうだ。体育館もグラウンドも講堂も使えない。
なら、
それでもまともなステージじゃないため、客引きや音声のことなどの反発の声も上がる。
それでも物事をポジティブに考え、今まで突き進んできた穂乃果らしく全ての反発をバッサリ切り捨てていく。
「今大切なのは具体的な案件を出すことじゃない…、この提案に乗るか乗らないかのどちらかだ。みんなはどうする?」
するとみんなは、この提案に乗ることを自らの口で意思を表明する。
「よーし!それじゃ、文化祭のライブに向けて練習していこう!!」
「「「「「「「「おー!!!」」」」」」」」
「お、おー」
穂乃果の発声のもと、学校祭のライブに向けて練習が始まった。
練習が終わった夕方、幼馴染組と帰ったオレは普通に家に入る。
そして、荷物を自室に置いてから穂むらへと向かう。
「いらっしゃいませー…、って壮にぃじゃん。どうしたの?」
穂むらの暖簾を潜ると、店頭には雪穂が立っていた。
「雪穂が店の手伝いなんて珍しいじゃん。また欲しいものでも出来たのか?」
「まぁ、そんなとこかな?それで今日はどうするの?」
「12個入りの穂むら饅頭を1箱くれ」
「はーい」
雪穂は屈んでカウンターのショーケースから箱詰めされている穂むら饅頭を取り出す。
「そういえば穂乃果は?」
「お姉ちゃんなら『学校祭のライブ絶対成功させるんだー』って言って走りに行ったよ?」
なら今から海未と話すのには好都合だ。
「そうか。ほいお金」
「ん。お姉ちゃんばかりじゃなくて、たまには私の勉強も教えに来てよね?」
「そのうちな。じゃあ、また来るよ」
「ありがとうございましたー!」
穂むらから出て、家に戻る。
すると玄関には海未がいた。
「今日は穂乃果がお店の手伝いをしていたのですか?」
「いや、穂乃果は走りにいったって雪穂が。お前の好きな穂むら饅頭買ってきたからゆっくりしていきなよ」
玄関の扉を開け、オレと海未は2人で家に入った。
温かいお茶と穂むら饅頭を乗せたお盆をオレの部屋まで持っていき、テーブルに置く。
そしてオレと海未はテーブルを挟んで向かい合い、口を開く。
「……海未は何か知ってるのか?」
「えぇ。この話はあまり広めたくないのですが、壮大も耳にしておいた方がいいと思いまして……」
返事をした海未は、何故ことりがあんなに元気がないのかを海未自身が知りうる限りのことを全て話してくれた。
「そうだったのか……」
海未の口から告げられたのは、ことりが留学するために海外へ行ってしまうということだった。
「それはいつなんだ?」
「学校祭が終わった2週間後…、つまり学校が後期に入るとほぼ同時だと聞いています」
「はぁっ!?」
オレは思わず言葉を荒げてしまった。
学校祭が終わってからってもう
もしラブライブに出場できたとなると、ラブライブ終了直後と言うことになる。
何故こんなことをもっと早く言わなかったんだよ……!!
いや、待てよ?
確かことり自身からそんな感じの事を話したことがあった。
『もしどうしても叶えたい夢が叶うかもしれないチャンスが来たら、そーくんなら自分の夢を追いかけますか?それとも、今いるその場所や友達を選びますか?』
オレは小さく舌打ちをする。
「……あれってそういうことだったのかよ」
「壮大?どうかしたのですか?」
「すまない。もしかしたらことりの留学の件、もしかしたらオレのせいなのかもしれねぇ」
「どういうことですか?」
オレは合宿最終日、ことりとのやり取りをそっくりそのまま海未に伝える。
「そうだったのですか……」
「あの言葉がことりの留学に繋がるなんて思ってもみなかった。海未、ホントにすまない」
「謝らないでください。壮大に非はありませんから」
気づけば外は雨が降り始めていた。
「私は、いったいどうすればよいのでしょうか……」
か細い声で尋ねてくる。
今までずっと一緒で、これからもずっと一緒でいられると思っていたオレたちだっただけにことりの留学はそれほどまでに精神的に与えるダメージは大きい。
ましてや海未にとっては、ことりは穂乃果とオレと並んで初めて出来た大切な友達だ。
オレ以上にダメージがでかいのは容易に想像できる。
そして学校祭のライブも控えている。
「文化祭が終わったらすぐみんなに伝えるしかないだろうな。もちろん事情を知っているオレや海未の口からではなく、留学へ旅立つことり自身の口から……」
「ですが…、ことりが話してくれるかどうか……」
「早かろうが遅かろうが、いずれは話さないといけない時が来るはずだ。もしことりが『これが終わったら話そう』とか考えているとしたらその考えは止めさせるべきだ。オレたちが代わりに事情を説明することなんでいくらでも出来る。でも、それはことりのためにはならない……」
「つまり、ことり自身の口から言わないとダメ……ということですか?」
オレの傘を差した海未の後ろ姿を見つめ、姿が見えなくなったのを確認してオレは空を見上げる。
秋雨が容赦なくオレを濡らす。
雨が上がる気配はなく、時間の経過と共に酷くなっていっている気がする。
雨雲がオレや海未の心をそっくりそのまま写し出されているように見えた。
「……オレたち、いったいどうなっちまうんだよ……」
重たい事実を突きつけられたオレの問いかけに、ベストな解答をしてくれる物はいなかった。