ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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第35話 みんなの想い

活動を休止すると聞いて3日が経ち、いよいよことりが海外へ出発する日が刻一刻と迫ってきている。

 

オレはパソコンにインカムを繋ぎ穂乃果、ことり、海未の2年生組を除いた7人によるインターネット電話のボイスチャットルームを作って事のあらましを聞いていた。

 

状況を整理すると、まずはことりの留学を聞いた穂乃果とことりを除いた7人のメンバーは海外へ旅立つことりの送別会を兼ねたライブをやろうと提案。

 

しかし、穂乃果はそれを拒否。

 

理由を聞くと、学校存続という大きな目標を達成した今、スクールアイドルの活動を続ける意義がないと主張。

 

さらに、今から練習してもラブライブの覇者となったA-RISEの足元にもすら届かないと吐き捨てた。

 

それを踏まえ、改めて穂乃果はどうしたいのかと問いただしたところμ'sの脱退を宣言。

 

それを聞いた海未は激怒し、穂乃果をぶん殴ったらしい。

 

そして穂乃果と海未がいなくなってから、絵里ちゃんが活動停止を提案した。

 

『これが今日の放課後に起きた出来事の全てよ』

 

『壮大、ごめんなさい。どうしたらいいのか分からなくて活動休止という形にしてしまって……』

 

真姫がメンバーを代表して事情を説明し終え、すかさず絵里ちゃんが落ち込んだ声で謝ってきた。

 

「いや、オレの方こそごめん。絵里ちゃんには辛い選択をこうも連続で選ばせてしまって……」

 

絵里ちゃんに嘘や偽りのない言葉で絵里ちゃんをケアする。

 

推測でしか言えないが、海未の他にも激怒したメンバーもいれば絵里ちゃんのように戸惑いや驚きを隠せないメンバーも出たはずだ。

 

『ふんっ!あんなやつに賭けたにこがバカだったわ!』

 

実際、にこちゃんはまだ怒り心頭といった様子がボイスチャットから伝わってくる。

 

「それで何だけど、みんなに聞きたいことがあるんだ」

 

そう。

 

今この状況はμ'sにとって、大きなターニングポイントに立たされている。

 

「みんなはこれからどうすべきだと考えてる?」

 

これからどうすべきか。

 

選択肢は大きく分けて2つ。

 

1つ目は、スクールアイドルを続けるという選択肢。

 

2つ目は、スクールアイドルを辞めるという選択肢。

 

正解なんて存在しないこの問いは、自分で選択しなければならないという極めて酷な質問だ。

 

音ノ木坂学院の存続が決まった今、穂乃果やことりのようにμ'sから脱退したとしても誰も責めることなど出来ないしμ'sというグループの存在意義も大きく揺らいでいる。

 

さぁ…、みんなはどの選択をするのか……。

 

『私は続けるわよ』

 

一番早く答えたのはにこちゃんだった。

 

メンバーの中で誰よりもアイドルに情熱を捧げる彼女らしい答えだった。

 

『たとえにこだけになったとしても、続けて絶対にラブライブに出場する。それがたとえどんなに辛い道のりだったとしても……よ。だからにこはアイドルを続ける!』

 

『それは凛と!』

 

『私も同じだよ?にこちゃん』

 

『凛、花陽……』

 

次に答えを出したのは、凛ちゃんと花陽ちゃん。

 

彼女たちも続けたいという意思を示した。

 

『実は凛たち、にこちゃんにスクールアイドルを続けてみないか?って誘われて今日まで悩んでた………。でも、A-RISEが歌って踊ってる姿を見てやっぱりアイドル続けていたいって強く感じるようになったんだにゃ』

 

『それと同時に私たちもこのメンバー全員であのステージに立ちたい!!って思ったんだ……』

 

彼女たちの答えも得た。

 

『……実は穂乃果とことりがいなくなるのなら抜けようと思ってた』

 

説明を終えて、今の今まで黙っていた真姫が口を開き始めた。

 

『えぇっ!?真姫ちゃんもやめちゃうの!?』

 

『ダメだよ真姫ちゃん!凛たちと一緒にアイドル続けようよ!』

 

「黙れ」

 

『にゃっ!?』

 

『ひぃっ!?』

 

真姫の発言に驚いた花陽ちゃんと凛ちゃんが騒ぎだしてので、ドスを聞かせた声を出して黙らせる。

 

「……今真姫が大事な話をしようとしているんだ。静かにしろ」

 

『『はい……』』

 

「話の腰を折って悪い。……続けてくれ」

 

『……最初は穂乃果に熱烈な勧誘を受けて鬱陶しかった。でも、穂乃果の熱意やひたむきさといった私に持っていないものを全て持っている穂乃果に、そしてμ'sにだんだん興味が湧いてきて入ったの』

 

最近は少しだけ自分の気持ちに素直になってきているのも、この子が誰よりもμ’sの事が大好きであるのはメンバーの誰だって分かる。

 

『でも、活動停止になっていざ1人になって音楽室でピアノを弾いていても心にポッカリと空いた穴は埋まらなかった。だから、私はμ'sのままでいたい……!だって…、穂乃果やことりがいるμ'sが大好きなんだから……』

 

素直になった真姫が抱えていた想いは、これほどまでに真っ白で真っ直ぐな想いだった。

 

「……絵里ちゃんはどう?」

 

『私は…、生徒会長としての重責に押し潰されそうになったとき、壮大が言ってくれた言葉やみんなが差し伸べてくれた手に救われたと思ってる』

 

まず始めに言葉にしたのは、1番遅く加入した絵里ちゃんだからこそ言える言葉だった。

 

加入した順番は最後だけど、きっと誰よりもμ’sに救われたのが絵里ちゃんだと思う。

 

だからこそ、絵里ちゃんは他でもないμ’sの為に歌って踊って来たんだと思う。

 

だからオレは次の言葉を予測しながら、絵里ちゃんの言葉を待った。

 

『私を含めたこの9人……壮大を入れて10人がとても大好きよ。だから1人でも欠けたらそれはμ'sじゃない。だからもし元に戻らなければ私は辞めるわ』

 

絵里ちゃんならきっとそうだろうと思った。

 

でも、と絵里ちゃんは言葉を紡ぐ。

 

さっきの言葉では終わらないみたいだ。

 

「でも……?何?」

 

『でも、それは穂乃果とことりがいなくなったらの話。もし理想や夢を望んでもいいとしたら、私はμ's全員で踊り続けたい』

 

『えりち、そんなに心配しなくても大丈夫』

 

最後に口を開いたのはのんちゃん。

 

『ウチは……信じてるんよ。きっとμ’sはなくならへんって……。だからウチは待つよ、皆が戻ってきてくれるのを』

 

ボイスチャットだから表情こそ分からないが、きっとのんちゃんは気丈に笑っているはずだ。

 

でも、メンバーの誰よりも人の気持ちに敏感なのんちゃんはきっと学校祭から続く騒動に気を病んでいるに違いない。

 

だからオレは、この言葉をそのまま受け止めるのが一番の優しさなんだと思い、何も言及をすることもなくのんちゃんの言葉を信じた。

 

 

 

 

 

しばらくしてチャットルームはほとんどのメンバーが退出するが、1人だけ残っているメンバーがいた。

 

『壮大……』

 

「なんだ、真姫か……。まだ退出していなかったのか?」

 

『これから少し夜風に当たりたい気分なのよ。……一緒にどう?』

 

星を見るのが好きな彼女からまさかのお誘いだった。

 

「……真姫がいいと言うのならご一緒させて貰おうかな?」

 

『何よその言い方、あなたらしくもないわね……。神田明神で待ち合わせってことでいいかしら?』

 

「分かった」

 

普段なら断るところなのだが、明日から休日でさらにここ最近でこれだけの事が立て続けに起きていて正直気が滅入っていたのでそのお誘いに乗ることにした。

 

 

 

神田明神について境内の方へ歩みを進めると、すでに真姫は空を見上げ星を眺めていた。

 

「わりぃ、遅くなった」

 

「別にいいわよ。私が誘ったんだし」

 

隣、座ったら?的な感じで真姫が座っているところの隣にポンポンと叩いたので隣に座って星を眺める。

 

車が通る音や居酒屋で働いているキャッチのお兄さんやお姉さんの声が聞こえるなか、2人で座ってるここだけはハサミで切り取ったように静かだった。

 

「……壮大にも感謝してるのよ?」

 

何の脈略もなく話し始めた真姫の方を見る。

 

うっすらと頬が赤いのは少し肌寒いからだけではないと思うが、生憎茶々を入れるような雰囲気ではないことを悟る。

 

「何の話だ?」

 

「さっきの話の続きよ。私がこうしてμ'sのメンバーとしてこの場にいることは穂乃果だけじゃなく壮大のおかげでもあるの」

 

「……」

 

「みんなの前では言えなかったけどね……」

 

彼女はそう前置きしてから話を続ける。

 

「穂乃果に誘われてどうしようか迷っているとき、ここで練習してる穂乃果たちを見ようとして希に捕まって…。今思うと懐かしいわね……」

 

そんなこともあったなぁ……。

 

何でのんちゃんが真姫の胸をわしわししていたのかは、未だにサッパリだけど……。

 

「その後壮大が私に『音ノ木坂を守りたいと心から願う穂乃果たちに力を貸してやってくれ』って頭を下げてくれて、それで決心ついたの。だから……」

 

「その話はもういいだろ? 」

 

オレは真姫の話を強引に断ち切った。

 

「どうして?」

 

「……恥ずかしすぎる」

 

あの時は真姫を説得するのが必死になりすぎていたからか、今こうやって話すととても恥ずかしいことをしたんだなぁ……と実感してくる。

 

「それで?これからが本題なんだけど……、あなたはこれからどう行動するつもりなの?」

 

どう行動するつもり……か。

 

他の人には悟られなかったが、やはり幼馴染というべきだろう。

 

オレがこの状況を変える一手を打つことを予測していたみたいだった。

 

確かに1・3年生の意思は確認したが、まだまだやらなければならないことはたくさん残されている。

 

穂乃果と海未の仲直りの仲裁に、穂乃果とことりの仲直りの仲裁……。

 

さらに追求するとなると、何故海未は穂乃果の事を殴ったりしたのかも聞かなければならない。

 

とてもじゃないが、ことりが日本を発つまでに間に合うとは到底思えないほどやらなければならないことがある。

 

でも、最優先でやらなければならないことが1つだけある。

 

「穂乃果の本心を聞く」

 

穂乃果がどう思っているか、だ。

 

「……理由を聞いてもいいかしら?」

 

理由か……。

 

そんな大層なものではない。

 

「海未とことりと仲違いをしている今、穂乃果の心の壁をぶっ壊せるのはオレしかいないからだ」

 

我ながら柄じゃないクサい台詞だと思う。

 

でも、答えとしてはベストな答えだと思う。

 

「そう」

 

答えを聞いた真姫は静かに立ち上がり……、

 

「壮大にしては悪くない答えなんじゃない?」

 

そう微笑んだ。

 

 

 

 

 

~Side 高坂 穂乃果~

 

 

朝日が目を瞑っている穂乃果の瞼を貫通して、光を感じたので渋々と起き上がる。

 

μ'sを脱退すると宣言してから海未ちゃんとは一言も話していない。

 

今日から土日と続くので、海未ちゃんの冷たい視線を感じなくて済むと思うとホッとする。

 

気分が優れないのでもう一度布団を被り、目を閉じよう……

 

ーーーピーンポーン

 

としたが、インターホンが鳴り目を閉じることを阻まれた。

 

きっと亜里沙ちゃんかお母さんに用があって家にやって来たのだろうが、どちらにせよ穂乃果には関係無い。

 

また目を閉じて、寝ようとするが……。

 

 

 

 

 

「よう、穂乃果。気分はどうだ?」

 

 

 

そーちゃんが穂乃果の部屋のドアを開けて、穂乃果の部屋にズカズカと入り込んで来た。

 

 

 

 

 

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