ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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第36話 穂乃果と海未の想い

昨夜、星を眺めた帰り道の途中で雪穂に電話をしてみたら穂乃果は学校にも行かずに部屋に引き込もってばかりなのだそうだ。

 

「お姉ちゃんがいつまでも暗い感じでいられると調子狂うから壮にぃ!なんとかして!」

 

とのことだった。

 

そんなに酷い状態なのかと思い、アポ無しで穂乃果の部屋に特攻をかけたらベッドの布団を被ろうとしている穂乃果がいた。

 

その顔はひどくやつれていて、目の下にはクマが出来ている。

 

「……こんな朝早くから穂乃果に何の用?」

 

眉間にしわを寄せて不機嫌そうな顔つきになり、オレを睨み付けている。

 

「出掛けんぞ」

 

「行きたくない」

 

穂乃果を外に出そうと提案するが間髪入れずに否定し、布団を被ろうとする。

 

どうしてもμ'sに関係する人物が見たくないようで、オレを部屋から追い出そうとしているみたいだ。

 

「いつまでも部屋に引きこもってると余計元気が無くなるぞ?」

 

「そんなの穂乃果の勝手じゃん……」

 

「そうかもな。でも、幼馴染として放っておけねぇんだ」

 

「幼馴染として…放っておけない……?幼馴染だからって何やってもいいとでも思ってるの!?そう思ってるんなら放っておいてよ!!どうせ穂乃果の事なんて何とも思ってもないんでしょ!?」

 

布団から出てきたと思えばいきなり身体を押され、背中から思いっきり押し倒れた。

 

その上に穂乃果が馬乗りのように跨がってマウントポジションの態勢になり……、

 

 

 

 

ーーーパシィィィン!!!

 

 

 

 

 

振り抜かれた穂乃果の右腕はオレの左頬を的確に捉えた。

 

叩かれたオレの左頬は熱を帯び始め、鋭い痛みが後からやって来た。

 

「……そうやっていつまでも殻に閉じこもってるつもりか?」

 

オレは穂乃果の瞳を見て、睨み付ける。

 

「じゃあどうすればよかったの!?穂乃果がことりちゃんの様子に気が付いていればこんなことにはならなかったの!?こんなに苦しまなくて済んだの!?ねぇ!!教えてよ!!!」

 

穂乃果の青い瞳から頬を伝って涙がオレの頬に落ちる。

 

「さあな。少なくともいつまでも悲劇のヒロインぶってる奴に答える義務なんてないな」

 

「いつ穂乃果が悲劇のヒロインぶってるって言うの!?」

 

 

 

 

 

 

「今この状況のことだろうが!!」

 

 

 

 

 

 

オレの身体に跨がっている穂乃果を力づくでどかし、壁に押しやる。

 

壁に背をつけた穂乃果を逃がさないように肘と前腕を使って、穂乃果の顔に近付ける。

 

「みんなラブライブに出られないことを受け入れて次のステージへと歩き始めている!それは海未もオレも、ことりも同じだ!なのにお前はいつまで経ってもウジウジ悩みやがって!!みんなをバカにするのも大概にしろ!!!!」

 

「……!!」

 

「その後のこともそうだ!いきなり辞めるなんて言い出したり、A-RISEに勝てる訳がないなんて言い出してみたり!!オレが知ってる穂乃果という奴はそんなことは絶対言わねぇ!!」

 

「…………」

 

「お前がすべきことは何だ!?お前はどうしたいんだ!?答えろ!高坂 穂乃果!!」

 

オレは穂乃果へ思いの丈を全てぶつけた。

 

「……ぃ」

 

少ししてから穂乃果の口が小さく動いた。

 

「聞こえねぇよ!もっと大きな声で話せ!!」

 

 

 

 

 

「見ていたい……!!ことりちゃんやみんなと一緒に!歌いたい!

踊りたい!みんなと一緒の夢を見ていたいよ!!!」

 

 

 

 

 

ようやく聞けた嘘や偽りのない穂乃果の本心。

 

それはみんなと同じ答えだった。

 

「でも!ことりちゃんはもうすぐ海外へ行っちゃうんだよ……?穂乃果、遅すぎたんだよ……。この気持ちに気付いたことも…、ことりちゃんが海外へ行ってしまうって知ったことも……」

 

穂乃果は力なくペタンと女の子座りで座り込み、両手で顔を覆う。

 

オレもまた、穂乃果と同じように彼女との目線に合わせるように座り込む。

 

「穂乃果、顔を上げろ」

 

穂乃果は涙も拭わずに顔を上げ、オレを真っ直ぐに見つめる。

 

確かに知るのも気付くのも遅すぎたかもしれない。

 

だが、それでもお前にはまだやれる事は残っている。

 

「全てを諦めるのにはちょっと早すぎじゃねぇのか?」

 

「えっ……?」

 

「いいか?よく聞いとけ。」

 

今から言うことは穂乃果にしか出来ないことだ。

 

オレはそんな一か八かの賭けを…、穂乃果がやらなければならないことを全て伝えた。

 

「……これで全部だ」

 

「分かったけど…、もし失敗しちゃったらどうするの……?」

 

「必ず成功させろ」

 

これは失敗なんて許されない。

 

失敗したらオレたちの絆が修復不可能になるくらい粉々に壊れてしまうだろう。

 

「どうだ?やるか?」

 

「……やるよ。何もやらないで後悔するよりやって後悔したい!」

 

「分かった。なら、オレは少し用事が出来たから帰るわ」

 

「そーちゃん!」

 

部屋を出るため立ち上がろうとするも、後ろから穂乃果に抱き付かれる。

 

「……ありがとう。穂乃果のために怒ってくれて」

 

「うっせ……。余りにも見ていられなかったから部屋にやってきただけだ……」

 

オレは穂乃果の腕を優しく解きながら、照れ隠しをしながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂むらから出て、最後の布石を打つために家に戻ってきた。

 

部屋に戻ってきたオレはスマートフォンを操作して電話をかける。

 

『もしもし、園田です』

 

「おっす。数日振りだな、海未。」

 

電話をかけたのは海未だ。

 

「調子はどうだ?」

 

『あまりいいとは言えませんね……。竹刀を振っても矢を射ってもイマイチ集中しきれません……』

 

世間話をそこそこにオレは海未に聞きたいことを聞き始める。

 

「ことりはいつ出発するんだ?」

 

『明後日です』

 

「……!!随分とまた急だな……」

 

『えぇ。早く行って生活に慣れておきたいからとの事みたいです』

 

今月末に出発すると思ったいたのだが、想像していたよりも遥かに時間が無くなっていたみたいだ。

 

このことは穂乃果に伝えないとな……。

 

「あと穂乃果とケンカしたって聞いたけど……、理由は何だったんだ?あくまでこれは推論でしか無いけどスクールアイドルを辞めるなんて理由だけで怒った訳じゃないんだろ?」

 

そんな単純な事で何日も話をしないなんて子ども染みた真似を海未がする訳がない。

 

もしそんな子ども染みた真似をしているなら穂乃果と海未は等の昔に絶交している。

 

『きっと、穂乃果は自分の心に嘘をついているんです』

 

「そう思う根拠は?」

 

『これでも壮大と同じくらい長い間穂乃果を見てきているからなんとなく分かるんです。穂乃果があんな形でスクールアイドルを辞めたいって言い出すなんて…、A-RISEに勝てっこないなんて言い出す訳ないんです!』

 

長年幼馴染として穂乃果の側に立ち、いつも一緒に時を過ごしてきた同性の幼馴染だからこそ言える理由だった。

 

『だから私は怒ってるんです。自分の本当の気持ちに嘘をついているのが分かるから……』

 

辛そうに震える声が電話越しに聞こえる。

 

ことりの留学を表面上では応援こそしているが、本心は行って欲しくないと思っているはずだ。

 

「最後に1つ。……キミはμ'sとしてどうありたい?」

 

みんなはこれからどうすべきだと問いかけてきたが、海未にだけはどうありたいかを問いかける。

 

『私の心は決まっています。穂乃果が引っ張っていってくれる夢の先が見たいです!μ’sのみんなと…、そしてことりも一緒に!9人で!』

 

「ならオレのささやかな願いを聞いて欲しい。実はな……」

 

 

 

 

 

 

「……と言うわけだ」

 

『はぁ……』

 

事情を説明し終えると、溜め息が聞こえてきた。

 

「何だよ?」

 

『いいえ?あなたって人はホントお人好しで損な人なんだなぁって思っただけです』

「オレの事は別にどうでもいいじゃねぇか。だから穂乃果の話を聞いてやってくれ」

 

『あなたの熱意に免じて話だけは聞いてあげることにしますが、本当に大丈夫なんですか?』

 

きっと自分に正直に打ち明けられるのかを心配しているのだろう。

 

不安そうな声が聞こえてきた。

 

「大丈夫でしょ?」

 

なんせ穂乃果は……、

 

「ああ見えて度胸と根性があるやつだから……」

 

さぁ、穂乃果。

 

あとはお前次第だ……。

 

 

 

 

 

 

~Side 高坂 穂乃果~

 

私はお昼休み、ファーストライブをやった講堂のステージの真ん中に一人で立っている。

 

昨日、そーちゃんが帰った後部屋のクローゼットから練習着を引っ張り出して楽しかった日々を思い出した。

 

もう迷わない。

 

私はことりちゃんと一緒に歌いたい…、スクールアイドル続けていたいんだってちゃんと自分の口から伝えたい。

 

でも、その前にもう1人自分の口からこの気持ちを伝えないとね…。

 

 

 

ーーーガチャッ……

 

 

 

1つしかない講堂のドアが開いた。

 

私が呼び出した人は、コツコツと靴音を鳴らして階段を降りる。

 

そして私が見える位置で止まった。

 

「ごめんね?海未ちゃん。急に呼び出しちゃって……」

 

「……いえ」

 

まず急に呼び出したことを謝る。

 

心臓が高鳴り、呼吸が浅くなる。

 

「……ことりちゃんは?」

 

「5時30分のフライトで日本を発つそうです」

 

まだ時間はあるなんて悠長なことは言ってられない。

 

ここからは時間との戦いだ。

 

ことりちゃんが日本を発つフライトに間に合わなければ、全て水の泡だ。

 

「私……、μ'sを抜けたから誰も悲しまない事をやりたいって考えてたの。自分勝手にならずに済んで、でも楽しくて、沢山の人を笑顔にして、頑張ることができて……。でも、そんな方法あるわけがなくて……」

 

「穂乃果……?」

 

「でも、そーちゃんに言われて本当の気持ちに気付いて、ここに立ってみて思い出したんだよ……。ことりちゃんと海未ちゃんともっと歌いたいって、スクールアイドルやっていたいって!!」

 

「……」

 

「学校のためとかラブライブの為とかじゃなく穂乃果は好きなの!歌うのが!踊ることが!仲間と一緒にスクールアイドルやることが!!これからもきっと迷惑をかけるかもしれないし、夢中になり過ぎて誰かが悩んでいるのに気づかない時もあると思う!入れ込み過ぎて空回りする時もきっとあると思う!!でも!!追いかけていたい!!だから、あの時辞めるなんて言ってごめんなさい!だから、私をもう一度μ'sの仲間に入れてください!」

 

私は海未ちゃんに頭を下げる。

 

きっと許してはくれないと思うけど、言いたいことは全て言えた。

 

だからこれから海未ちゃんがどんな事を言われても、それを受け入れられる準備は出来ている。

 

けど、海未ちゃんは……

 

「……くすっ。ふふっ……あはははははは!!」

 

何故かお腹を抱えて笑い出した。

 

なんで!?なんで笑うの!?

 

「う、海未ちゃん!?」

 

「あはは……ご、ごめんなさい」

 

笑った拍子に出てきた涙を拭いながら、穂乃果に近づいてきた。

 

 

「でもね、はっきり言いますが……穂乃果にはずっと前から迷惑をかけるかけられっぱなしですよ?」

 

「えっ?」

 

久々に笑顔になった海未ちゃんの言葉を頼りに記憶を遡っていくが、心当たりがない。

 

「ことりとよく話していました。穂乃果と一緒にいるといっつも大変な事になる……と。決して口にはしませんが壮大もきっとそう思ってると思いますよ?」

 

海未ちゃんの表情はとても嬉しそうだ。

 

 

「どんなに止めても夢中になったら何にも聞こえてなくて。大体スクールアイドルだってそうです。私は本気で嫌だったんですよ?」

 

「海未ちゃん……」

 

「どうにかして辞めようと思っていました。穂乃果の事恨んだりもしましたよ?」

 

「ご、ごめん……」

 

「ですが、穂乃果は連れていってくれるんです」

 

「ど……、どこに?」

 

「私やことりでは勇気が無くて行けないようなすごいところに!」

 

海未ちゃんは穂乃果の隣に立ち、まっすぐ穂乃果の事を見つめる。

 

「私が穂乃果を叩いたのは、穂乃果がことりの気持ちに気付かなかったからじゃなく穂乃果が自分の気持ちに嘘をついているのが分かったからなんです。穂乃果に振り回されるのはもう慣れっこなんです♪」

 

そうだったんだ……。

 

そうやって海未ちゃんは穂乃果の事を見ていてくれていたんだね……。

 

「だからその代わりに連れていってください!私たちの知らない世界に!!!」

 

「海未ちゃん……」

 

思わず涙がこぼれそうになり、ゴシゴシと目を拭う。

 

「さぁ!ことりを迎えに行ってあげてください!!」

 

「……!うんっ!!!」

 

 

 

 

 

 

校門を飛び出すと、1台のタクシーが停まっていた。

 

「高坂 穂乃果さんですね?」

 

タクシーの運転手さんは私に声を掛けてきて、私は頷く。

 

「松宮 壮大さんから『リボンをつけたサイドテールの娘を国際線ターミナルまで送ってやってください』との言伝により、お迎えに上がりました」

 

「えぇ!?」

 

そーちゃん、穂乃果が知らない間に何やってるの!?

 

「さぁ、早く乗ってください。大事なお友達がまっているんでしょう?」

 

「は…、はい!!」

 

 

 

 

 

 

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