ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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INTERLUDE2
SIDE STORY2 立華高校体育祭 前編


「またこの季節が来ちまった……」

 

オレは1枚のプリントを片手に頭を抱える。

 

そのプリントのトップには『立華高校体育祭』という文字が書かれていた。

 

ところでみんなは体育祭と聞いたら何を連想する?

 

クラス対抗で優勝を目指す?

 

うん、確かにそうだな。

 

フォークダンスで気になるあの娘の手を握って甘酸っぱい青春を思い描く?

 

それもたぶん間違っちゃいない。

 

でも、立華高校の体育祭は普通よりほんのちょっとズレているところがある。

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで、明日立華高校の体育祭なんで練習に顔出せそうにないでふ」

 

グループチャットでメンバー全員に事情を説明する。

 

『明日は練習はないわよ?』

 

「え?そうなんですか?」

 

明日は練習がお休みだという事を絵里ちゃんが教えてくれた。

 

『じゃあさ、じゃあさ!明日みんなでそーちゃんの応援行こうよ!』

 

『凛も穂乃果ちゃんの意見にさんせー!!』

 

『ことりもー!!』

 

穂乃果が体育祭の応援にいきたいと提案し、凛ちゃんとことりも穂乃果の提案に便乗する。

 

『そうですね…、他校の体育祭なんてなかなか見れるものではないですし私も見に行ってみたいですね』

 

おや、これはまた珍しい。

 

普段なら止めに入る海未も穂乃果の提案に便乗した。

 

『真姫ちゃんたちはどうするんだにゃー?』

 

話に入ってこない真姫や花陽ちゃん、にこちゃんやのんちゃんはどうするんだろうか?

 

『凛ちゃんが行くなら私も……』

 

『そうね…、久々に壮大が本気で走る姿でも見に行ってやろうかしら……』

 

1年生組はみんな乗り気だ。

 

『そうやね~、ウチも面白そうだから行く!』

 

のんちゃんも行くという結論に辿り着き、残りはにこちゃんだけだ。

 

『えーっ!?にこにーはぁ、プライベートを大事にしたいっていうかぁ~』

 

「じゃあ、にこちゃん以外は来るってことでいいんだね?」

 

『ちょっと!!』

 

「それで競技時間のことなんですけど……」

 

『話を聞きなさーい!!』

 

もう、うるさいなぁ。

 

「結局みんなと一緒に来るんですか?」

 

『行くわ!にこだけ仲間外れなんて許さないんだから!』

 

だったら始めからそう言えばいいのに……。

 

ホント損な性格というか、面倒くさいというか……。

 

「じゃあ、改めて競技時間の事なんですけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~Side 絢瀬 絵里~

 

 

壮大から言われた時間よりも少し早くついた私たちは立華高校にやってきた。

 

席を確保するとほぼ同時に、開会式が始まろうとしていた。

 

『これから、体育祭を開催しまーす!』

 

「「「「「うぉぉぉぉぉお!!!!」」」」」

 

「にゃっ!?ビックリしたにゃあ……」

 

凛が立華高校の生徒の熱気と怒号に驚き、耳を塞いだ。

 

開会式からスゴいわね……。

 

女子校の音ノ木坂では考えられないくらいの熱気に包まれている。

 

『では次に校長先生のお話に入ります。校長先生、お願いします』

 

立華高校の校長先生は静かに段上の上に立ち、マイクをスタンドから離すと……

 

「お前ら!盛り上がっているかぁぁぁあ!!」

 

「「「「「うぉぉぉぉぉお!!!!」」」」」

 

「気合いは十分かぁぁぁぁあ!!!」

 

「「「「「うぉぉぉぉぉお!!!!」」」」」

 

やる気(武器の貯蔵)は十分かぁぁぁあ!!!」

 

「「「「「うぉぉぉぉぉお!!!!」」」」」

 

校長先生の煽りでドンドンボルテージが上がっていっている。

 

「よぉし!!この勢いのままそれぞれ自分のベストを尽くせるよう心してかかれ!以上!健闘を祈る!」

 

『校長先生、ありがとうございましたー!』

 

挨拶らしい挨拶じゃなかった気がするけど、生徒は燃えに燃えているからそれはそれでいいのかしら……?

 

って、何だか私ここに来てからツッコミしかしていないような……?

 

『それじゃ、体育祭の第1種目を始める前にプロローグを始めますので生徒や先生、観客の皆様は学校正門の前にお越しください!』

 

「学校正門の前だって!みんな、早く行こう!!」

 

穂乃果を先頭にみんな正門に向かって移動を始める。

 

……プロローグってなに?

 

私はみんなの後に続きながら、一人首を傾げた。

 

 

Side out

 

 

 

 

立華高校体育祭は開会式が終わってからすぐに競技開始と言うわけではなく、このようなプロローグが行われる。

 

プロローグに出場できる選手は、各部インターハイや甲子園などの全国大会で成績を残した選手や部のキャプテンしか出られない。

 

ある意味立華高校の顔とも呼ばれる人ばかりだ。

 

そんな超人ばかりが揃う中、行われる種目は自転車競技の個人タイムトライアル。

 

よくロードレースの試合の一番始めに行われる距離の短いタイムトライアルなのだが、体育祭で個人タイムトライアルをやる高校なんて全国を探してもきっと立華高校しかないと思う。

 

と言うか、絶対ウチの高校だけだ。

 

しかもみんな自前か自転車競技部のロードバイクを持ち込むという

ガチな戦いになっている。

 

もうすでに何人かの選手はスタートを切っていて、オレの出走もそろそろだ。

 

「次、松宮くん!スタンバイお願いします!」

 

スタート台に立ち、特設コースとなっている道路の遠くを見つめる。

 

スターターの指が5本、4本と減っていき……、

 

「Ready……Go!!!」

 

オレは脚全体の力をふんだんに使い、ペダルを回し始めた。

 

 

 

 

~Side 南 ことり~

 

 

「うわーっ…、みんな速いねー!!」

 

「何だか本当の自転車レースを見てるみたいだにゃー!!」

 

穂乃果ちゃんと凛ちゃんは目の前を高速で走っていく選手に興奮しているようでした。

 

そーくんがスタートした時刻から5分、この特設コースの全長はおよそ3km。

 

さっきこのプロローグ……?と言う競技を調べたところ自転車ロードレースのレース形式の1つで、選手個人個人の身体能力が大きく左右される競技なのです。

 

そして私たちがいるところはゴールまでおよそ1kmのところで応援しています。

 

本来の形式であれば『フラムルージュ』というゲートがあるのですが、代わりにあと1kmの看板が立てられていました。

 

「そろそろ壮くんが来る頃やね……」

 

希ちゃんが選手が走ってくる方向を見ながら呟いています。

 

このポジションは目の前に陸上でよく使われているタイム計測の機械が置かれていて、そーくんのタイムが一番上で1秒また1秒刻まれていき、トップの選手まで残り20秒切っていました。

 

「壮大が来ました!」

 

海未ちゃんが小さく叫ぶと、私たちはやって来る方向を見ました。

 

そーくんは自分を奮い立たせるように叫びながら凄いスピードでやってきました。

 

「そーちゃん頑張れー!!」

 

「あと1kmです!ファイトです!」

 

「そーくんファイトだにゃー!」

 

「そーくん!頑張ってー!!」

 

「っしゃぁぁあっ!!!」

 

そーくんは私たちの応援に反応して叫んでから、ゴールに向かって突き進んでいきました。

 

タイムは……、現段階でトップと1秒以内の2位につけていました。

 

あと少し、そーくん頑張って!

 

 

Side out

 

 

 

『最速勝負を制したのは3年体育科の別所さんでーす!!』

 

「うっしゃぁぁあっ!!!」

 

「はぁっ……!はぁっ……!!」

 

タイムトライアルを走り終え、まだまだ吹き出てくる大量の汗が頬を伝って地面に落ちる。

 

途中で穂乃果やことりの応援が聞こえたような気がしたけど、レースに集中しすぎて声援に叫んでしまった。

 

結果は3位だった。

 

いや、言い訳をさせてくれ。

 

ゴールした段階でトップに立っていたんだがオレの1つ後ろでスタートした人がタイムを上回って、さらに最後に来たこの別所先輩がオレたちよりも20秒も上回ってゴールしたんだ。

 

何でも話を聞くと、別所先輩は今年のインターハイの個人タイムトライアルのチャンピオンで2位になった人もトラックレースのチャンピオンらしい。

 

そりゃ勝てるわけねぇだろうよ……。

 

「壮大、お疲れさま」

 

「真姫か……」

 

パンプアップした脚を何とか動かしていると、みんなの分のジュースを両手一杯に持っている真姫を見かけた。

 

「何個かこっちに寄越しな」

 

「ありがとう。助かるわ」

 

腕の中に収まりきれていない飲み物を何個か持つ。

 

「惜しかったわね」

 

「嫌みか?」

 

「まさか。久々に本気の顔つきの壮大が見られたわけだし」

 

みんながいるところに歩きながら、さっきのタイムトライアルの話をする。

 

「そんなにレアか?」

 

「えぇ。いつもムカつくほど飄々としてるし、あなたがスポーツしてるときくらいしか真面目な顔付きが見られないもの」

 

酷い言われようだ……。

 

オレだってスポーツしてるとき以外でも真面目な顔付きするわ。

 

「ありがとう。ここでいいわ」

 

「そうなのか?」

 

「えぇ。後は階段上るだけだから」

 

ここでいいと言われたので、持っていたジュースを真姫に渡す。

 

「他に何の種目に出るの?」

 

「午前中はこの後すくに行われる借り物競争エキストラだけで、午後はトラック競技とリレー種目だけかな?」

 

「そう、みんなと一緒に見させて貰うわね?」

 

『それでは借り物競争にエントリーしている選手はスタート地点へお越しくださーい!』

 

真姫の後ろ姿を見送ったところでちょうど収集が始まったので、スタート地点へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

男女混合競技となっている借り物競争エキストラ。

 

普通の借り物競争なら紙に書かれたお題をこなすだけと聞こえはいいのだが、中には無茶振りとも言える物も混ざっている。

 

さらに『エキストラ』とついているので、普通の借り物競争ではないと予想しやすいだろう。

 

どのような競技なのか口で説明するよりも、今スタートした人たちの様子を見てもらった方が速い。

 

 

 

「誰か『昨日発売されたエロゲ』持っているやつはいないかー!?」

 

「はぁ!?『大胸筋矯正サポーター』だとぉ!?素直にブラって書けっつーの!!」

 

「『シンデレラ城』!?砂で作ればいいの!?」

 

 

……ご覧の有り様だ。

 

 

仮に1つ目のお題がクリアしたとしても……、

 

「えっと…、『女子生徒1人連れてきて壁ドン』……?」

 

「『ヤンデレの演技をせよ』って誰と演じればいいの!?」

 

……もはやゴールさせる気ねぇだろ、これ。

 

 

結局1組目はみんな途中棄権(リタイア)という散々な結果で終わってしまい、続くオレが走る2組目。

 

『さぁ!第1組目は全員リタイアという何ともヘタレな結果は水に洗い流して、2組目行ってみましょう!』

 

こんな思っていたよりも害悪な種目はさっさと終わらせるのが吉だ。

 

オレは数十メートル先に置かれている封筒を、恐る恐る拾い上げ封筒の中身を見る。

 

「『ショートカットの美少女』……?」

 

『おおっとぉ!たった今入った情報によりますと、松宮選手が引き当てたお題はショートカットの美少女です!!』

 

何でそんなすぐに実況席に情報が入るんだ?とツッコミたいところだが、オレは『条件に当てはまるであろう』人物に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「凛ちゃん!!」

 

「にゃにゃっ!?」

 

オレは『ショートカットの美少女』の凛ちゃんの元にやって来た。

 

「えっ?あ、あれ?そーくん何でここに来たのかにゃ?」

 

「そんなん決まってんだろ?凛ちゃんが『ショートカットの美少女』だからだ。ホラ、早く行くぞっ!」

 

オレは「凛は美少女じゃないにゃー!!」とジタバタしながら抵抗する凛ちゃんの手を引っ張りレースに復帰する。

 

『松宮選手が手を引いている娘は何とも可愛らしくもどこか活発な印象を抱かせる女の子だぁぁあ!!もしかしたら私かも……?と思っていた子猫ちゃん共残念でしたぁー!!』

 

凛ちゃんは実況の謎テンションのシャウトを聞いて顔を真っ赤にして俯き、オレの手に引かれて走っている。

 

そして女子生徒の大半からの妙に鋭い視線を感じ、いつもより体力がゴリゴリと音をたてて削っていく。

 

凛ちゃんのためにも、そして何よりオレのためにも早くレースを終わらせよう。

 

そして問題の2つ目のお題のところにやって来た。

 

オレはゆっくりと封筒の封を切る。

 

そこには『連れてきた女の子をお姫様だっこ♪』と書かれていた。

 

「凛ちゃん……」

 

「にゃんっ?」

 

手招きしてこちらへ来させる。

 

凛ちゃんは首を傾げながらてこてこ近づき……、

 

「ちょっと横向いて貰ってもいいか?」

 

「こう?」

 

「おっけー、そんな感じだ。ちょっとだけ我慢していてくれ……よっ!!」

 

「にゃあっ!?」

 

凛ちゃんはいきなり取った行動に驚きながらも、ほとんどの女の子の憧れである『お姫様だっこ』を目の当たりにしてモジモジしている。

 

その小動物を思わせる何とも初々しくも可愛らしい仕草に、観客の男子勢が歓喜に沸き立つと同時に血の涙を流している一方で女の子の夢である『お姫様だっこ』を目の当たりにできた女性陣からは羨望のため息と嫉妬のあまりにハンカチを加えながら引っ張り、引っ張りすぎたハンカチが音を立てて破ける音が聞こえてくる。

 

そんな凛ちゃんとオレにとって居心地が悪すぎる空気から逃げるようにフィニッシュしたオレたちは、すぐにみんなが待っている観客席とは別の方向に向かって全速力で走り出した。

 

 

 

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