ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
サイドストーリーというより、テレビアニメ2期のプロローグと捉えていただければいいかなーって感じです。
体育祭の代休で普段忙しくて出来なかった洗濯や掃除を一通り終わり、やることもなく『さぁ、これからどうしようか……?』と思っていたところに絵里ちゃんからの呼び出しコールを受けて少し洒落た雰囲気の喫茶店に足を運んだ。
「……はい?」
そこで絵里ちゃんの口から漏れた一言に、オレは思わず耳を疑った。
いや、オレが聞いたのは幻聴だ。
冗談にしてはあまりにもタチが悪すぎる。
「絵里ちゃん。申し訳ないんスけど、もう一度言ってくれませんか?」
「後期からの生徒会長を穂乃果にしようと思うのだけれど、壮大はどう思う?」
聞き間違いじゃなかったぁぁあ!!!
オレは思わず頭を抱えるハメになったのは、言うまでもないだろう。
「百歩譲って穂乃果を生徒会長に推薦するのは分かりましたけど、何故穂乃果なんです?他にも適任な人はいるんじゃないですか?」
オレは頼んでいたコーヒーを片手に絵里ちゃんに問いかける。
聞くところによると、音ノ木坂学院の生徒会長は昔からの決まりで次の代の生徒会長は前の代の生徒会長の推薦で決めるらしい。
それで現生徒会長である絵里ちゃんの最後の仕事として、次の代の生徒会長として穂乃果に推薦しようということになったらしい。
で、その理由なんだが……。
「穂乃果が音ノ木坂の事が好きのを知っているわよね?」
「はい」
海未とことりの情報だと、音ノ木坂が廃校になるという張り紙を見た途端涙目になりながら気絶したというのはまだ記憶に新しい。
まさかその理由だけで推薦しようとしてるのか……!?
「もちろん理由はそれだけじゃないわよ?」
ですよねぇぇえ!!!
もしそれだけの理由で生徒会長になったらある意味終わりだよ!
「話を戻すわよ?一緒にμ'sの活動をやっていて、皆を引っ張っていける力…カリスマ性って言ったらいいのかしら……?とにかく不思議な力を持っていると思ったから……」
なるほどね……。
「それに廃校になるかもしれないってなったときに誰よりも先に行動し、それを阻止してみせた穂乃果の行動力や決断力…、廃校を阻止しなければという使命感に追われていた私をいい意味で壊してくれたあの直向きさに賭けてみようって思ったの……。それを見事にやってのけた穂乃果に次の生徒会長として今度は学校のみんなに託してみようって思った」
「だから穂乃果を推薦しようとした……。ってことでいいんですね?」
「えぇ。それを踏まえて壮大はどう思うのかなって……」
オレは少し考え込み、結論を出した。
「オレはあくまで立華高校という音ノ木坂学院とは違う学校に通っていますが、それを差し引いたとしても……いいんじゃないですかね?」
「ホント!?」
絵里ちゃんはテーブルに両手をつき、そのキレイな顔をオレに近付ける。
「近い!近い!!絵里ちゃん、近いってば!!」
オレは座ったまま仰け反り、絵里ちゃんと少し距離を置く。
それに気付いた絵里ちゃんは咳払いを1つしてから、向かい側のイスに座り込む。
まったく…、この人は自分がかなりの美人だという自覚がないのか時折無防備に顔を近付けたりする。
少しはこちらの身にもなってほしいものだ……。
「それで?何でそう思ったの?」
「純粋に穂乃果なら生徒会長としての職務を全うしてくれると思っただけですよ。ただ…、」
オレは一旦言葉を区切るようにコーヒーを口にする。
コーヒーカップを置き、今一度絵里ちゃんに視線を向ける。
「知っての通り、あいつは1つのことに夢中になりすぎて回りが見えなくなる時がしばしばあります。でも、絵里ちゃんのことですし何も考えてないというわけでもないんでしょう?」
「もちろんよ。対策はきちんと考えてるわ」
「もし穂乃果が渋ったらほぼオレのところに来ると思うので、その時はオレに任せてもらってもいいですか?」
そう言うと、絵里ちゃんは無言で頷いた。
きっと…、いやほぼ確実と言っていいほどオレの活家に来るはずだから。
~Side 絢瀬 絵里~
「そんで?壮くんはなんて言ってたん?」
「いいんじゃないかって言ってたわ」
次の日の学校、早朝とも言える時間帯に私と希はとある人物を待っていた。
しばらく談笑していると、コンコンと生徒会室のドアを叩く音が聞こえてきた。
「はい、どうぞ」
「し……、失礼します」
少し緊張しながら生徒会室に入って来た穂乃果は、黄色いリボンでまとめられたサイドテールを歩くリズムに合わせてピョコピョコ揺らしてやってきた。
「絵里ちゃん…話ってなにかな?」
「そんなに身構えなくても平気よ。だからまず近くのイスに座ってちょうだい?」
「う、うん……」
穂乃果は私や希が座ってるイスからちょっと離れたところに座る。
「単刀直入に言うわ。穂乃果、私はあなたに次の代の生徒会長を任せたいと思うの」
「え……?えぇぇぇぇぇえっ!?」
私の言葉を聞き、最初は戸惑っていたがやがて大声で叫んだ。
「穂乃果が!?生徒会長に!?」
「えぇ。誰が適任なのかを考えて希と相談して決めたの。『穂乃果が最も適任なんじゃないか』って……』
「ちょ……!ちょっと待ってよ!何で穂乃果なの!?穂乃果、海未ちゃんやことりちゃんに比べて頭悪いし要領もいいとは言えないよ!?」
「それでも私たちは穂乃果に生徒会長を任せたいって思ってるの」
「絵里ちゃん…、本気なんだね?」
「本気よ?」
私の想いが伝わったのか狼狽えた表情の穂乃果は真面目な表情になっていった。
「少しだけ…、考える時間をくれないかな?」
「えぇ。出来るだけ早めに返事をくれるかしら?」
「分かった。じゃあ、また放課後の練習でね?」
それっきり穂乃果は生徒会室から静かに退室していった。
Side out
代休明けの夜…やはりというべきか予想通りというべきか……。
穂乃果はオレの家にやってきた。
「ホレ」
絵里ちゃんに喫茶店に呼ばれた帰り道に寄ったケーキ屋で買ったレアチーズケーキと牛乳が入ったマグカップを穂乃果の前に出した。
「ありがとう……」
穂乃果は一口、二口と口に運んでからフォークを置いた。
「ねぇ、そーちゃん?」
「どうした?」
「もし…、もしだよ?穂乃果が音ノ木坂の生徒会長になるって言ったら笑う?」
「いや?笑わねぇけど?」
驚く要素や疑問に思うことはあるが、なんで笑う要素が出てくるのだろうか。
「他の人にどう思われても穂乃果は穂乃果だろ?少しでもやってみたいって思ってるんならやってみればいいじゃねぇか」
「でも…」
「海未やことりがついているだろ?それとも何だ?穂乃果が生徒会長になったからって海未やことりは無闇矢鱈に押し付けるような奴なのか?」
「そんなことない!海未ちゃんは少しだけ厳しいところもあるけど、海未ちゃんもことりちゃんも優しいんだよ!?」
「そうだ。何も一人で抱える必要なんてないんだ。一人じゃどうしようも無くなったら海未やことりがいる。それだけで十分だろ?」
その言葉に穂乃果は決心が付いたようで、オレを真っ直ぐ見る。
「そうだね……!よくよく考えたらいつまでも考えているなんて穂乃果らしく無かったね!」
「その足りない頭で考えてもろくな結果が生まれないってようやく理解できたか……」
「もうっ!そーちゃん!!」
膨れっ面になってオレの脇腹を小突いてきた。
普段から相当な練習量を誇るオレにとっては、痛くも痒くもない。
「それで?生徒会長になるのか?ならないのか?」
「私、生徒会長やるよ!!」
そうか……。
穂乃果ならきっと……。
「いい生徒会長になりそうだな……」
「えっ?今何か言った?」
「何でもねぇよっ!それ以上そのケーキ食わねぇならオレが食うぞ?」
「ダメー!このケーキは穂乃果のだよ!」
絵里ちゃんには悪いんだが……、やっぱ穂乃果は生徒会長に向いてないかもしんねぇや。
~Side 高坂 穂乃果~
次の日、私は再び生徒会室のドアの前に来ていた。
「すー……はー……」
一度、二度と深呼吸を繰り返し………、
「……よし!」
意を決して生徒会室のドアをノックする。
『どうぞー』
生徒会室の中から絵里ちゃんの声が聞こえたので私はドアを開けた。
「失礼しまっす!」
「あら、穂乃果じゃない。もしかして昨日の返事を聞かせに来たのかしら?」
「うんっ!私、生徒会長やるよ!」
穂乃果の回答を聞いた絵里ちゃんは、嬉しそうな顔をしていた。
そして新生徒会の役員記入用紙の生徒会長の枠の中に穂乃果のフルネームを書いた。
「それじゃあ、新生徒会長頑張ってね!あと、他の役員は決まり次第また連絡するわね?」
「うんっ!ありがとう絵里ちゃん!」
絵里ちゃんの激励に、明るく返事をする。
「それじゃあ、新生徒会長として最初の仕事は……」
そう言うと絵里ちゃんは机の下から400字詰めの原稿用紙を数枚取り出し、穂乃果に渡してきた。
「……何これ?」
「来週の全校集会での新生徒会長の挨拶をして貰うからね?」
………………えっ?