ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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第39話 決意の1歩

~Side 高坂 穂乃果~

 

出なくてもいいと言ったら、みんなに驚かれただけじゃなく隣の部屋に強引に連れ込まれ大きな鏡の前に座らされた。

 

「穂乃果…、自分の顔が見えますか?」

 

「見え……ます」

 

「では鏡の中の自分は何と言っていますか!?」

 

「何それー?」

 

いくら穂乃果がおバカだからと言って、その言い方は無いと思うんだけど……。

 

「だって、穂乃果……」

 

「ラブライブ出ないって……」

 

「ありえないんだけど!」

 

絵里ちゃんと希ちゃんが困惑した表情で穂乃果を見ていたら、にこちゃんが穂乃果に詰め寄ってきたので思わず仰け反ってしまった。

 

「ラブライブよラブライブ!スクールアイドルの憧れよ!あんたなら真っ先に出ようって言いそうなもんじゃない!」

 

「そ…、そう?」

 

「何かあったの?」

 

「いやぁ…、別に……」

 

「じゃあ、どうして!?」

 

「穂乃果、なぜ出なくて良いと思うんです?」

 

「私は歌って踊って皆が幸せならそれで……」

 

「今までラブライブを目標にやってきたじゃない!違うの!?」

 

「い、いやぁ……」

 

このままここにいてはみんなに根掘り葉掘り聞かれてしまいそうだし、少し恥ずかしいけどちょうどいいタイミングでお腹の虫が鳴き始めたので帰りに何処か寄って帰ろうと提案した。

 

みんなは少し渋っていたけど、何だかんだで穂乃果の提案に乗ってくれた。

 

凛ちゃんと絵里ちゃんと一緒にプリクラを取ったり、トンタッキーでみんなでハンバーガーやシェイクを食べたり飲んだりしててふと秋葉原の街並みに一際大きな建物…、UTX高校を見る。

 

そのパブリックビューイングって言うのかな……。

 

そこにはA-RISEのプロモーションビデオが流れている。

 

それを見ながら思う。

 

……もう、誰にも迷惑かけたくないから。

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

10月ともなると日が暮れるのが早く、夜の方がどんどん長くなっていく。

 

自転車をゆっくり漕いでいると、少し先に見慣れたリボンでサイドポニーに纏めている音ノ木坂学院の制服を着た女子高生が一人。

 

「よっ、穂乃果」

 

「あっ!そーちゃん!!」

 

穂乃果の隣に並び、ブレーキをかけて自転車から降りる。

 

「練習帰りか?」

 

「ううん、練習は明日から。今日は学校帰りにみんなと一緒に遊んで 帰ってるとこ」

 

「なら、一緒に帰るか」

 

「うんっ!」

 

 

 

 

 

「ちわーっす」

 

穂乃果は店番をするって言って母屋の方から回り込み、オレは穂むらの暖簾をくぐるとまたしても夏穂さんがお団子を摘まみ食いをしていた。

 

「あら、壮大くん。いらっしゃい」

 

「どうも、夏穂さん。また摘まみ食いですか……?」

 

「い、いいじゃない…。穂乃果もまだ帰ってきてないんだし」

 

「お母さん……」

 

夏穂さんの後ろから制服のブレザーだけ脱いで、割烹着に着替えた穂乃果が苦笑いでお店の方に顔だけ覗かせていた。

 

「あら、穂乃果。壮大くんと帰ってきたの?」

 

何しれっとお団子の摘まみ食いを無かったことにしようとしているのだろうか。

 

「穂乃果や雪穂には摘まみ食いするなーって言ってるのに、お母さん一人だけずるい……」

 

「そっち!?」

 

思わずツッコミを入れてしまうほどの衝撃を受けた。

 

「じゃあこれからご飯の支度するから店番よろしくねー。壮大くんもゆっくりしていってね」

 

そう言ってお団子の串を折り曲げ、ポケットに入れた夏穂さんは穂乃果と入れ替わるように母屋の方へ入っていった。

 

「もう、お母さんったら…。そーちゃん何か注文する?」

 

「……餡蜜あるか?」

 

「あるよー。ちょっとだけ待っててねー」

 

 

 

餡蜜を食べながら穂乃果と雑談していたら、母屋の方から穂乃果を呼ぶ夏穂さんの声が聞こえてきたので急いで器に入っている餡蜜の残りを口の中に掻き込みお礼を言ってから穂むらから出る。

 

晩メシを適当に作って、それを食べ終えて部屋でゆっくりしていると穂乃果がやってきた。

 

「どうした?」

 

「うん、ちょっとね……」

 

そう言うと穂乃果はテーブルの近くに座り込んだ。

 

その表情は少し硬く、そして暗かった。

 

「……ラブライブのことか?」

 

『ラブライブ』という単語を聞いた瞬間、少しだけ肩が動いたのをオレは見逃さなかった。

 

きっと学校で何かあったな、これ……。

 

「まさか…、出ないのか?」

 

「うわぁぁん!そーちゃんまでそういうこと言うのやめてよー!!」

 

そーちゃん()()って言うことはここに来るまでにだれかに言われたんだな……。

 

大方雪穂辺りが言ったのだろう。

 

「分かってる……。穂乃果だって分かってるんだよ……」

 

何が?とは言わない。

 

穂乃果は迷っているんだ。

 

ラブライブに出たいという気持ちと、もしかしたら学校祭みたいなことが起こるかもしれないという気持ちが穂乃果の心の中でせめぎあっているはずだ。

 

そんな穂乃果に追い討ち……という訳じゃないが、1つの事実を突きつける。

 

「なぁ、穂乃果?」

 

「なに?」

 

「次のラブライブが開催される時期…、知ってるか?」

 

穂乃果は静かに首を縦に振る。

 

「来年の2月末……」

 

分かっているならいい。

 

「そう。だからどうすればいいか穂乃果でも分かるだろ?」

 

そう。

 

来年の3月で今の3年生は卒業する。

 

それは絵里ちゃんやのんちゃん、にこちゃんも例外ではない。

 

今のμ'sに残されている時間はそう多くはない。

 

あのメンバーで目指せる最後のラブライブということになる。

 

「うん……」

 

「ならいつまでもオレの部屋にいないで一人で考えた方がいいんじゃないのか?」

 

穂乃果は同意するように頷くと、無言でオレの部屋から出ていった。

 

あとはこれで穂乃果の心がどう動くか……だな。

 

 

 

 

 

 

翌日、雨が降りそうな雲り空の中神田明神を通りすぎようとしたら穂乃果とにこちゃん以外のμ'sメンバーがいた。

 

「こんにちは、みなさんお揃いで」

 

「あら、壮大じゃない」

 

挨拶をすると絵里ちゃんが代表して挨拶を返してくれた。

 

他のメンバーの視線の先には、音ノ木坂学院指定の赤いジャージに身を包んだ穂乃果とにこちゃんがいた。

 

「……何やら穏やかな雰囲気じゃあ、ないですね」

 

「えぇ。この階段ダッシュでにこが勝てばラブライブの予選に出る。逆に穂乃果が勝てばラブライブのことは綺麗サッパリ諦めるという賭けに出たのよ」

 

オレも絵里ちゃんたちと一緒に穂乃果とにこちゃんの勝負の行く末を見守ることにした。

 

にこちゃんが穂乃果よりも少し速くスタートを切り、穂乃果がにこちゃんを追いかける形で勝負が始まった。

 

しかし、真ん中辺りを過ぎたところでにこちゃんが階段に足を引っ掛けてしまい転んでしまった。

 

オレは制服の上着を脱ぎ捨て、階段を降りてにこちゃんに駆け寄ると穂乃果との会話が聞こえてきた。

 

「うっさいわね……。ズルでもなんでも出られればいいのよ……!ラブライブに出られれば……!!」

 

「にこちゃん……」

 

にこちゃんの言葉を聞き、昨日と同じような顔つきになる。

 

そして、空から雨がパラつき始めてきた。

 

「にこちゃん、立てるか?」

 

「壮大……。あ、ありがとう……」

 

「穂乃果、勝負はお預けだ。2人とも雨が酷くならないうちに境内に上がろう」

 

 

 

 

 

制服に着替えてきた穂乃果とにこちゃんは、オレたちが雨宿りしている境内への門に戻ってくると同時に雨脚が強くなった。

 

「今回のラブライブは私たち9人…、壮大を含めて10人で出られる最後のチャンスなのよ」

 

合流して開口一番、絵里ちゃんが話を切り出してきた。

 

「3月になったら私たち3人は卒業。こうしてみんなと一緒にいられるのは残り半年……」

 

「それにスクールアイドルでいられるのは在学中だけ……」

 

穂乃果は小さい声でそんな……と呟く。

 

「すぐに卒業する訳じゃないけど、ラブライブに出られるのは今回がラストチャンス……」

 

「このメンバーでラブライブに出られるのは、今回しかないって事でだ」

 

穂乃果はオレや他のメンバーを見て思う。

 

みんなラブライブに出たいんだ……と。

 

「私たちもそう。たとえ予選で落ちちゃったとしてもこのメンバーで頑張った足跡を残したい!」

 

「凛もそう思うにゃ」

 

「やってみても、良いんじゃない?」

 

花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫の1年生トリオも穂乃果を説得する。

 

「……ことりちゃんは?」

 

それを受けた穂乃果はことりに意見を求めた。

 

「私は穂乃果ちゃんが選んだ道なら、どこへでもっ」

 

穂乃果はことりの答えの裏に隠された真意に気付いたようで、目を丸くする。

 

「自分のせいで皆に迷惑を掛けてしまうのでは、と心配しているのでしょう?」

 

「ラブライブに夢中になり過ぎて、前回みたい周りが見えなくなって生徒会長として学校のみんなに迷惑を掛けるような事があってはいけないってか……?まったく、あれはお前だけの責任じゃねぇって結論になっただろう……がっ!」

 

オレは穂乃果の額に1発デコピンを入れる。

 

「全部…、バレバレだね。始めたばかりの時は何も考えないで出来たのに今は何をやるべきか分からなくなる時がある……。でも一度夢見た舞台だもん!やっぱり私だって出たい!生徒会長をやりながらだから迷惑掛けるかもだけど、本当はものすごく出たいよ!!」

 

穂乃果らしい答えだ。

 

フッと笑うと、みんなもそれにつられて笑い出す。

 

「えっ、みんな……?どうしたの?」

 

「穂乃果、忘れたのですか?」

 

みんな一斉に息を吸い込み始め……、

 

「「「「だって可能性感じたんだ……」」」」

 

まず絵里ちゃん、のんちゃん、にこちゃん、海未が歌い始める。

 

「「「「そうだ!ススメ……」」」」

 

続いてことり、凛ちゃん、花陽ちゃん、真姫が続きを繋ぐ。

 

順番的に言うと次はオレか。

 

えっと、この歌の続きは確か……。

 

「後悔したくない目の前に……」

 

最後の『に』の部分を伸ばす。

 

「僕らの、道がある……!」

 

伸ばし終えると、最後の1フレーズを穂乃果が力強く歌い切った。

 

「「「「やろう!」」」」

 

「「「「やろう!!」」」」

 

「穂乃果、やるぞ!!」

 

そんな穂乃果を見て安心した全員は穂乃果に気持ちを伝える。

 

「よーし!やろう!ラブライブに出よう!!」

 

すると穂乃果は雨が降りしきる境内に出た。

 

突然の行動に驚く真姫と、それを止めようとする海未を気にすることなく大きく息を吸い込み……、

 

 

 

 

「雨、止めー!!!!!」

 

 

 

 

 

あまりにも大きすぎる声に山がないのに山彦が聞こえた。

 

そして…、

 

「嘘だろッ!?」

 

先程まで雨を降らせていた雲に晴れ間が差し、青空が顔を覗かせ始めた。

 

「本当に止んだ!人間その気になれば何だって出来るよ!ラブライブに出るだけじゃもったいない!この10人で残せる最高の結果……優勝を目指そう!」

 

「「「「「「「優勝!?」」」」」」」

 

「大きく出たわね!!」

 

「だけど、そんくらいの気持ちじゃなきゃ番狂わせ…、大物食い(ジャイアントキリング)は起こせねぇ!いいねぇ!最ッ高じゃねぇかッ!」

 

いきなりの優勝宣言に驚くメンバーと腹を抱えて笑うオレ。

 

こうして音ノ木坂学院所属アイドル研究部……『μ's』のラブライブ出場と大会での目標が決まった。

 

そしてこれは、後に語り継がれる『奇跡の快進撃』とも呼ばれるスタートの1歩にしか過ぎなかった……。

 

 

 

 




最近テスト勉強やらレポートやらがあるので、 合間を縫って投稿したいと思います。

ツール・ド・フランスではカンチェラーラがまさかのリタイア……。

今年のツールも波乱が起きそうな転回になりそうですね……
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