ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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第44話 一途で強い想い

A-RISEとの邂逅からおよそ2週間経ち、明日はラブライブ一次予選当日。

 

「なぁ、知ってるか?明日ラブライブの一次予選らしいぜ?」

 

「マジで!?くっはー!!A-RISEのライブ見に行きてぇー!!」

 

「だよなぁ!やっぱA-RISEっしょ!」

 

クラス内も一次予選の話で持ちきりで、みんなライブの時間まで待ちきれない様子だ。

 

だが、みんなの口から出てくるのはA-RISEばかりでμ'sという単語は一向に出てこない。

 

まぁ、精々今は頂点からの景色を見ているがいいさ。

 

すぐにでもオレたちμ'sがその景色が見える座をかっさらいに行ってやるから…。

 

 

 

 

 

明日は大事な一次予選だということもあって、振り付けやフォーメーションの確認と簡単なミーティングで終わらせたみたいで、暇を持て余した穂乃果がオレの家にやってきた。

 

「そーちゃんは明日私たちのライブ見に来るの?」

 

暇ならと言うことで穂乃果を背中に乗せて筋トレをしていると、明日の一次予選の事について聞いてきた。

 

「んー…、見に行きたいのは山々なんだがなぁ……」

 

あの時は凛ちゃんに半ば強引に手を引かれUTX高校の校舎内に入ったけど、UTX高校は音ノ木坂学院と同じで女子校だ。

 

つまり男であるオレは学校の一番上の立場の人の許可がないと入ってはいけない存在なのだ。

 

「比奈さんに許可を取っている音ノ木坂と勝手が違うから今回は遠慮しようと思ってる」

 

「そっか…。それじゃあ、しょうがないね」

 

「……わりぃ」

 

「その代わり!私たち全員の想いをそーちゃんに届けられるように精一杯歌い切るから!」

 

フンス!と鼻息を荒くして気合いをいれる穂乃果を見て、例の一件からホントに逞しくなったなぁ……と思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラブライブ一次予選開始まで残り1時間を切った。

 

一人で見るのにも味気ないと思ったオレは、高坂家にやってきた。

 

「こんばんは」

 

「いらっしゃいませー。って壮大くん?」

 

今日の夏穂さんは真面目に仕事をやっていた。

 

いつも穂むらに入ると夏穂さんがお団子を摘まみ食いしている場面しか見ないので何だか新鮮だ。

 

「穂乃果ならいないわよ?」

 

「はい。今日は雪穂とパソコンの画面から応援しようかと思いまして」

 

「あら、そうなの?雪穂なら居間にいると思うわ」

 

「では、お邪魔します」

 

オレは履いてきた靴を母屋の方へ持っていき、玄関の隅に靴を置いてから高坂家の居間に向かう。

 

「おっす、雪穂」

 

「わぁっ!?そ、壮にぃ!?ビックリさせないでよぉ……」

 

居間に入り雪穂に声を掛けると、背筋をピーンッ!と伸ばしながら驚いた。

 

「驚かしちまったか?」

 

「来るなら来るって言ってよ……。今みたいにいきなりやってくるところお姉ちゃんに似てきてるよ?」

 

「何ぃ!?」

 

穂乃果と同類だと!?

 

嫌でも穂乃果と同類にはなりたくはないと思っていたが、とうとうオレも踏み入れてはいけない領域に足を踏み入れてしまっていたのか!?

 

オレが絶望に打ちひしがれていると、居間にもう1人の来客者が入ってきた。

 

その来客者はオレの姿を視界に捉えると猛然と突っ込んできた。

 

「壮大さんっ!!!」

 

「ん……?ぐぼぁっ!?」

 

「あ、亜里沙!?壮にぃ!?」

 

亜里沙ちゃんがオレの鳩尾目掛けて突っ込んできて、それを受けたオレは痛みで気を失いそうになり、雪穂はその光景を見て珍しく狼狽えている。

 

「お久し振りですー!!」

 

「ゴホッ!!ガハッ!!!」

 

亜里沙ちゃんは甘えるように頭を押し付けるのだが、オレには減速無しで突っ込んできただけじゃなく鳩尾をグリグリと捩じ込み、オレの意識を確実に刈り取っていく小悪魔にしか見えない。

 

ヤバい……!

 

意識が……遠……の…く…。

 

「亜里沙!ストップ!!壮にぃが文字では表現できないような白目を向いてる!!」

 

「はわっ!?壮大さん、大丈夫ですか?」

 

「あぁ…、問題ない」

 

「ほっ……」

 

「別に、あの川の向こう側へ渡ってしまっても構わんのだろう?」

 

「壮にぃ!?それ三途の川!!そして露骨なフラグ立てないで!」

 

「……ふらぐ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

雪穂の気付け薬代わりのビンタで目を覚まし、落ち込む亜里沙ちゃんを慰めていると残り時間は僅かとなった。

 

「お姉ちゃんたち大丈夫かな…?」

 

亜里沙ちゃんが心配そうにそわそわしていて、雪穂も口には出さないけど何回もパソコンや時計に視線を送っている。

 

「雪穂、亜里沙ちゃん。そんなに心配しなくても大丈夫」

 

「どうしてですか?」

 

亜里沙ちゃんに質問されたオレは居間の壁にかけられている穂乃果の練習着へ視線を送り、2人もそれに合わせて視線をやった。

 

ボロボロになった穂乃果の練習着がこの2週間の練習量が物語っている。

 

大丈夫。

 

穂乃果たちの『ラブライブで優勝する』という一途で強い想いは、芸術を司る女神たちにきっと届いているから…。

 

そうだろ、穂乃果?

 

 

 

 

 

 

 

 

~Side 高坂 穂乃果~

 

 

パフォーマンス披露直前、私たちμ'sとツバサさんたちA-RISEはUTX高校の屋上に足を踏み入れていた。

 

「いよいよ予選当日ね。今日は同じ場所でライブが出来て嬉しいわ。……予選突破を目指してお互い頑張りましょう!!」

 

「はい!」

 

まず初めにA-RISEのパフォーマンス披露の時間。

 

曲名は『Shocking party』。

 

前回大会の王者としての圧倒的パフォーマンスを披露し、そのパフォーマンスを間近に見ていた私たちへ強烈なプレッシャーを与えた。

 

「す…、すごい……」

 

私たちもそのパフォーマンスに驚き、思わず本音を漏らしてしまった。

 

そしてA-RISEのライブが終わると共にお客さんから歓声が上がる。

 

私たちも自然とA-RISEに拍手を送っていた。

 

「直に見るライブ…」

 

「全然違う…。やっぱりA-RISEのライブには私達……」

 

「敵わない…」

 

「…認めざるを得ません」

 

やがて私たちに絶望の雲が覆い始めた。

 

凛ちゃん、花陽ちゃん、ことりちゃん 、海未ちゃんの4人は俯いてしまった。

 

真姫ちゃん、絵里ちゃん、希ちゃん、にこちゃんも言葉にこそ出さないけど自信を無くしたかのように俯いてしまう。

 

ダメ!こんな空気じゃダメだよ!

 

 

 

 

「そんな事ないっ!!」

 

 

 

 

 

わたしは無意識の内にみんなを励ます様に、重苦しい空気を取り払うように声を出していた。

 

「A-RISEのライブがすごいのは当たる前だよ!!せっかくのチャンスを無駄にしないように私たちも続こう!それにそーちゃんなら『お前らが必死こいて汗を流してきた2週間は何だったんだ?ラブライブで優勝するためだろ!?』って絶対言うよ!?だから、自分に自信持ってやろうよ!!」

 

そうだね、と誰か言った。

 

確かにあいつなら言いかねないわね、と誰かが顔を上げた。

 

やりましょう、と誰かが意気込んだ。

 

そしてみんなにいつもの笑顔が戻ってきた。

 

「確かにA-RISEはやっぱり凄い。でも、私たちは今日に向けてたくさんの練習を積み重ねてきた…。だから今からその成果をお客さんたちに見せつけてやろうよ!それじゃあ、みんな!!今日はその練習の成果をすべて吐き捨ててこよう!!!」

 

「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」

 

「よーし!みんないくよ!μ’s!!!ミュージックー…」

 

「穂乃果ー!!!」

 

入口の方向から声が聞こえてきた。

 

「みんな……!!」

 

その正体はヒデコちゃんたちを筆頭とし、私たちのために駆け付けてきてくれた大勢の応援団だった。

 

「みんなも一緒にいくよ!!μ’s!!!ミュージックー…」

 

「「「「「「「「スタート!!!!」」」」」」」」

 

 

Side out

 

 

 

 

A-RISEのパフォーマンス披露から5分後。

 

いよいよラブライブに賭けた9人の女神たちの挑戦が始まった。

 

ライトアップされたステージで穂乃果が静かに歌い始め、それを海未、絵里ちゃんの順に繋いでいく。

 

アカペラ部分を歌い終わったと同時にμ’sが披露する曲『ユメノトビラ』が流れ始める。

 

みんな笑顔で、そして楽しそうに踊っている。

 

想っていることを言の葉に乗せて、ストレートに歌う。

 

A-RISEを他を圧倒するパフォーマンスと例えるのなら、μ'sは他に手を差し伸べるパフォーマンス。

 

「ハラショー…、すごい……すごいよ、みんな……」

 

「壮にぃ!これ見て!」

 

雪穂は得票数の推移を見せてきた。

 

「……!!こいつぁ、すげぇ……」

 

最初こそ伸び悩んだものの瞬間最大風速と爆発力だけを見るとA-RISEを大きく上回り、ネット上の書き込みでもμ'sを支援する書き込みやスレッドが増えていっている。

 

これ以上得票数やネット上の書き込みを見なくても、結果は目に見えている。

 

そしてμ'sのパフォーマンスタイムは終わった。

 

雪穂と亜里沙ちゃんは手を取り合い、ライブの成功に喜んでいる様子だ。

 

オレも大きな事故が無く終われたことに安堵の溜め息をついた。

 

 

 

 

 

「ただいまー……」

 

ライブが終わり、クタクタな様子の穂乃果が帰ってきた。

 

「お姉ちゃんおかえり!ライブ見てたよー!」

 

「あはは…、ありがとね」

 

興奮した雪穂の感想に対し、簡単なお礼を言う穂乃果。

 

「よっ、お疲れさま」

 

「あっ…、そーちゃん。雪穂と一緒に応援してくれてたの?」

 

「当たり前だ。だって穂乃果昨日言ったろ?『私たち全員の想いをそーちゃんに届けられるように精一杯歌い切るから!』って」

 

それ私の真似?と苦笑いする穂乃果。

 

「そう言えばそうだったね…。どう?私たちの想い、そーちゃんの心に届いたかな?」

 

「あぁ、いいライブだったよ。掛け値無しに」

 

穂乃果はフッと笑うと、オレに抱きつくような形で倒れこんだ。

 

「おい、穂乃果!?」

 

「お姉ちゃん!?」

 

また学校祭の再来か!?と思い、オレと雪穂は穂乃果の様子を伺った。

 

すると、穂乃果から規則正しい寝息が聞こえてきた。

 

「……寝ちゃったね」

 

やれやれ、といった感じで言う雪穂。

 

でも、その表情は姉を心配する妹の顔だった。

 

「そうだな……」

 

今日はもう起こすのはよした方がいいのかもしれない。

 

明日は世間一般も休みだし、きっとライブの疲労を癒すために練習もないだろうし。

 

「じゃあ、壮にぃ。お姉ちゃんの事は頼んだよ?」

 

雪穂は空気を読んでくれたのか、2階にある自室へと向かった。

 

このまま穂乃果に抱き付かれたまま女の子特有の柔らかい感覚と年相応に膨らんでいる2つの女性の象徴の感触(通称ほのっぱい)を楽しみたいのは山々なんだが、男子高校生的観点から見て身体に毒なので通学カバンを後ろに組んだ手で持ち、気持ち良さそうに眠っている穂乃果を背負った。

 

「そーちゃん……」

 

穂乃果に呼ばれたので、ビックリして後ろを覗き込む。

 

だが、えへへ……。と笑いながら幸せそうに眠っていた。

 

全く、一体何の夢を見ているのやら。

 

少なくともその夢が穂乃果にとって幸せな夢であることを祈りたいものだ。

 

 

 




もう1度見直して、ライブシーンで鳥肌(ことり肌)が立ちました。

この調子だと後半になるにつれて涙で文字が打てないかもですね……


ではでは、感想等お待ちしております!

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