ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
あなたは悪くない、あんな車間距離で停めた車が悪いんや…。
ってな訳でどうぞー!!
音ノ木坂学院から帰るついでに破格の値段で商品を売っていると有名なスーパー『ハナマルストア』に立ち寄った。
A-RISEに少しでも近付くにはどんなトレーニングを積ませたらいいか…と言った考え事をしながら買うべきもののリストに沿って買い物カゴに商品を入れていく。
そして豚バラ肉のパックを取ろうとしたところで、オレが手を伸ばしている方向の反対側から小柄な手が伸びていた。
「あぁ、すみません。よろしければどうぞ」
ここで争ってご近隣の方たちに悪いイメージを植え付けるのはよろしくない、と思ったオレは素直に豚バラ肉を譲った。
「こちらこそすみません。ではお言葉に甘えて……ってぇ!?壮大!?」
「あれ?にこちゃん?」
意外や意外。
豚バラ肉のパックを譲った人の正体は、練習に出ず早抜けをしたにこちゃんだった。
「何であんたがここにいんのよ!?」
「いや、何でって言われましても…。買い物ですけど?」
手に持っているカゴを指差しながら説明すると、それもそうね……にこちゃんは呟いた。
そしてにこちゃんは入口に背を向けているけど、にこちゃんの後をつけていると思われる穂乃果たちの姿が視界の隅に入った。
これは素直に言った方がいいのか?
いや、別に穂乃果たちはにこちゃんの後をつけているとまだ決まった訳じゃないし…。
『ハマりすぎだにゃー!!』
『μ'sメンバー矢澤にこ。練習を早退して足繁く通うマンションとは!?』
『ダメです!それはアイドルとして一番やっちゃいけないパターンです!』
……。
そんな考えとは裏腹に、1年生組の声が店内に響くような声量で喋り込んでいた。
「……にこちゃん」
「えぇ。悪いんだけど、買うもののリストはこれよ。そしてお金なんだけど立て替えて貰っていいかしら?」
にこちゃんは俺に買うもののリストと買い物カゴを渡され、穂乃果たちから逃げるように走り去っていった。
『あぁっ!!逃げた!?』
穂乃果たちがにこちゃんの後を追い掛けるように店内へ。
そしてそのままオレの近くを通り過ぎ、『STAFF ONLY』という扉の前で立ち往生していた。
そしてそれを尻目に買い物を続けることした。
触らぬ神になんてやらってやつだ。
~Side 矢澤 にこ~
ハナマルストアの裏口から出ると、そこには絵里が立っていた。
「流石にこ。裏口に回るとはねぇ……」
「ヒィッ!?」
ドヤ顔をしながら詰め寄ってくる絵里に気をとられ、後退りした私は後ろに控えているある意味天敵とも言える存在に気が付けなかった。
「さぁ!大人しく訳を聞かせてーな!!」
「ひゃあっ!?」
希に無駄な抵抗を取れなくするために私の胸を鷲掴みにされてしまい、無慈悲にも希の手が女の子にとって快感を得るポジションを的確に捉えられてしまった。
「ひうぅ……」
「早く答えんともーっと激しいの行くでー?」
蕩けてしまいそうな快感を目を閉じつつ唇を噛んで堪えていると、希が更なる追撃を浴びせようとしていた。
だけど!伊達に何回も希にわしわしされていないわよっ!!
「はぁっ!!」
力一杯しゃがみこんで希のわしわしから抜け出し、ハナマルストアから遠ざかる。
いくら走っても走っても希は追い掛けてくる。
人込みに紛れるように逃げても、アイドルのパネルにカモフラージュしても、変装として貸出し用学ランに着替えても、だ。
「ホンットしつこいわねぇ!さっさと諦めなさいよッ!!」
「嫌や!キミがッ!理由を話すまでッ!追いかけるのをやめないッ!」
ネタをブッ込んでくる希はさておき、体力に自信がない私はこのまま逃げ続けたとしてもここに姿を現していないメンバーの誰かに捕まるのは最早時間の問題だ。
どうやって振り切ろうかを考えていたら、近くに小さなパーキングがあった。
そこに停まっているのはハイエース2台で、その車間はとても狭い。
私の胸の大きさと希の胸の大きさを考えると……確実に逃げ切るとしたら手段はこれしかないっ!!
私は90°方向転換し、狭い車間をスルスルと抜けていく。
希も私に倣って車間を抜けようとするが、大きすぎる胸がつっかえてしまい通ることは叶わなかった。
後は人目につかないところまで逃げ切れば……私の勝ちねっ!!
Side out
~Side 星空 凛~
「「希ちゃん!」」
「「希!」」
穂乃果ちゃんと凛と真姫ちゃんと海未ちゃんで聞き込みを頼りににこちゃんの後を追い掛けていると、パーキングで何かをしようとしている希ちゃんを見つけた。
「希ちゃん!にこちゃんは!?」
穂乃果ちゃんの声を聞いて頬をちょっぴり赤く染めていた希ちゃんはゆっくり振り返り、ジト目で何かを見始めた。
穂乃果ちゃんや真姫ちゃんも希ちゃんの視線を辿っていくと…、凛の胸を見ていることに気がついた。
「なんか不本意だにゃーっ!!!!」
希ちゃんに指示されたのは『パーキングに停まっている車の間を抜けろ』と言うものだった。
凛は動きの邪魔なるから胸の大きさなんて気にしてないけど、いくらなんでもこの扱いは納得がいかないにゃ!!!
現に車の間を抜けているとき、希ちゃんは『んふっ♪』とイタズラが上手くいった子どものように笑っていた。
こんな扱いを受けたのは元はと言えばあそこで逃げたにこちゃんが悪いんだにゃ!!
凛が受けた屈辱……にこちゃんに八つ当たりしてやるにゃ!!
「もう!!にこちゃーん!!って、いないにゃあ……」
悔しいけどスルスルと抜け出し、パーキングの向こう側に抜けたときには既ににこちゃんがどちらに逃げたのか分からず人通りも全く無かった。
にこちゃんを見失い、さらに不憫な扱いと辱しめを受けた悔しさに思わずアスファルトに両手と両膝をつけて頭をガクッと項垂れるしかなかった。
Side out
「あら、みなさんお揃いで」
「壮大…?どうしてここに?」
にこちゃんの分の買い物袋と自分の分の買い物袋を引っ提げ、歩いているとにこちゃん以外のメンバーが屯っているところを通りかかった。
みんなはどこか疲れた表情をしていて、その顔つきをみればにこちゃんに逃げられてしまったと言うのが分かった。
「にこちゃんに逃げられたんですね…」
「えぇ…。しかしあそこまで必死なのはなぜなのでしょう?」
「にこちゃん意地っ張りで相談とかほとんどしないから…」
真姫、お前がそれ言うか?
真姫以外の誰もがそう思っていて凛ちゃんがみんなを代表して『真姫ちゃんにそっくりにゃー!』と笑われながら言われ、まさかブーメランとして返ってくるとは思ってもいなかった真姫は顔を赤くしてそっぽを向いた。
「いっそにこちゃんの家にでも行ってみます?」
「押しかけるの?」
「私はそれも良いかなって思うよ」
オレの提案に絵里ちゃんが聞き返し、穂乃果は賛同してくれた。
「だって、そうしないと話してくれそうにないから…」
「それにオレの場合は買ったものと立て替えた分のお金を交換して貰わないといけねぇし」
「でもにこっちの家の場所なんてうちですらは知らないんよ?」
「そっかぁ……、そうだよねぇ…」
この案は『この中に1人でもにこちゃんの家の場所を知っている』ことが前提条件だったのだが、ここにいる誰もがにこちゃんの家の在処を知らないためこの案件は自然と不採用となってしまった。
目的は違えどもにこちゃんに会わないといけないという共通の目的がある以上、協力してにこちゃんを探し出さないといけない。
「えぇっ!?」
次なる方法を考えていると、花陽ちゃんがビックリした様子で叫び声をあげた。
「花陽ちゃん!?」
「かよちんどうしたにゃ!?」
花陽ちゃんの隣でハンカチを敷いてその上に座っていた凛ちゃんが立ち上がりながら聞くと、花陽ちゃんは橋の方向を指差した。
オレたちは一斉に花陽ちゃんが指差した方角を向いた。
「にこちゃん!?」
指された方からにこちゃんによく似た小柄な少女が歩いてこちらに向かってきていた。
「でもちょっと小さくありませんか?」
「そうね…」
「いや、あれはにこちゃんじゃない。よく見ると髪留めのリボンの色が黄色だ。それに歩幅も歩くペースもにこちゃんに比べて狭いし遅い」
海未と真姫は自信が無い様に否定するも、にこちゃんとにこちゃんによく似た少女の違いを目に見える範囲で報告する。
「そーくん考えすぎだにゃ~。あれはにこちゃん……じゃないにゃ!!」
そしてにこちゃんによく似た少女がオレたちの横を通り過ぎようとしたところ凛ちゃんがようやくにこちゃんじゃないことに気づき驚きの声をあげ、その声を聞いた少女は足を止めた。
「あの……、何か?」
「え!?いや、あの……」
凛ちゃんは慌てふためき、その様子を見かねた花陽ちゃんは凛ちゃんを落ち着かせようとしている。
するとその子は、穂乃果たちを見てふと思い出したような声を出す。
「もしかして貴女方、μ’sの方たちでは…?」
「えっ?もしかして私たちの事を知ってるの?」
「はいっ!いつもお姉様がお世話になってます、矢澤 こころです!μ'sの矢澤 にこは私のお姉様なんです!!」
「「「「「「「「えぇぇぇぇっ!?」」」」」」」」
こころちゃんの言葉にみんなの驚愕し、オレは小さいながらにこちゃん以上に礼儀正しいこころちゃんに驚きを隠せなかった。
まさか、にこちゃんにこんなにも礼儀正しい妹ちゃんがいたなんて……!!
いかがだったでしょうか?
「なんか不本意だにゃーっ!!!!!」←実はこれとそんな扱いを受けた凛ちゃんの心情をやりたかっただけ。
次回もよろしくお願いします!