ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
久々に執筆したのでクオリティー低下は免れませんでしたぁぁあ!
屋上に上がり、暫定リーダーに就任した凛ちゃんの初練習。
にこちゃんと真姫と花陽ちゃんの前に立ち、緊張した表情をする凛ちゃんが口を開いた。
「そ…、それでは、練習を始めたいと……思います」
……。
いくら緊張しているとはいえそれはないでしょ…。
いつもの元気ハツラツ天真爛漫な凛ちゃんはどこ行った?
まるで他人から借りてきた猫状態だ。
「えーっと……、では最初にストレッチから始めますわ」
「ちょちょちょ、凛ちゃん?」
どう考えても違和感バリッバリな口調で話す凛ちゃんを止める。
「ど、どうされましたか……?松宮さま?」
「あのさ…、いつも通りの喋り方でいいんだぞ?って言うかなんか変」
「喋り方?なんのことでしょうか?」
……ダメだ。
こりゃ重症だ。
「はぁ…、疲れたにゃあ…」
「……お疲れさま」
歩きながら溜め息混じりに漏らした言葉に同情するように労いの言葉をかける。
凛ちゃんはあのあと口調はいつもの調子に戻ったのたが、リズムを取る手拍子がバラバラだったりにこちゃんと真姫の意見の食い違いによる口論の仲裁をしようとしたら逆に意見を求められてしまったり、と臨時のリーダーに抜擢された練習の初日にしてクタクタになってしまっていた。
「うぅ……やっぱ凛にリーダーなんて無理だよ」
「そんなことないよ。私がリーダーやってたら緊張しちゃって声も出せてないよ」
「そうよ。今いるメンバーの中で一番元気があって皆を引っ張ることができて穂乃果みたいな性格してるのは凛、あなただけじゃない」
「そんなこと言って…ホントは2人ともリーダーがやりたくないだけじゃないの?」
花陽ちゃんと真姫が揃って凛ちゃんをフォローするが逆に凛ちゃんはジト目で2人を見返しはじめ、やがてその矛先がオレの方向に向いた。
「そーくんも何で真姫ちゃんやかよちんじゃなくて凛にリーダーやらせてみようって思ったの?」
「2人のことを悪く言うつもりはないけど、優しすぎる花陽ちゃんや少しキツめに物事を言ってしまう真姫にリーダーの素質があると思う?」
「そうね。壮大の言うことについて私は否定できないわね…。それに私は凛がリーダーに向いてると思ったから凛を推薦したのよ」
「えぇ?嘘だぁ~。だって凛なんて全然リーダーに向いてないよ…」
「どうして?」
すると凛ちゃんは下に俯きながら答える。
「だって凛は……中心にいるようなタイプじゃないし…」
凛ちゃんが話していると真姫は凛ちゃんの後頭部にチョップを入れ、オレは凛ちゃんのほっぺをキュッと軽く引っ張る。
「ほーふん(そーくん)?ふぁひひゃん(真姫ちゃん)?」
「あなた、自分の事そんな風に思ってたの!?」
「μ’sには脇役も中心もない!μ'sというグループにいる限りみんな一緒だ」
オレは今の発言に対し、言いたいことを言い終えると静かに手を離す。
「それはそうだけど…、でも……」
でもまだ凛ちゃんは何か言いたげな様子で下に俯く。
「凛は別だよ。凛は全然アイドルっぽくないし…」
「それを言ったら、私の方が全然アイドルっぽくないよ!」
「そんな事ないよ。だってかよちんは可愛いし、女の子っぽいし…」
「そんなことない!凛ちゃんの方が私よりも可愛いよ!」
「そんな事ないッ!!!」
こんな言い争いをしていても埒があかないな……。
そんなオレの心情を察した真姫が、ため息をついて話し始めた。
「そんなこと余程のうぬぼれ屋やどこかの中二でもなっていない限り、自分より他人の方が可愛いと思うものでしょ?」
「違うよ!凛は違うの!!」
真姫の言葉で凛ちゃんが返した言葉は、オレの耳にはまるで悲痛な心の叫びのように聞こえた。
「凛……」
「凛ちゃん……」
「引き受けちゃったから、穂乃果ちゃん達が帰ってくるまでリーダーでいるよ。でも向いてるなんて事は絶対ない!!」
凛ちゃんはオレたち3人を残して颯爽と走って帰っていってしまった。
「凛ちゃん、やっぱりまだ…」
「何かあったの?」
「……と言うよりあの様子で何もなければおかしいな」
あの様子ではただ事ではないのは明らか。
だが、何故凛ちゃんはあれほどまで拒否反応を見せるのかが分からないオレと真姫。
「うん。実はね……」
花陽ちゃんはゆっくりと歩いて帰る道の途中で、ポツポツと凛ちゃんとの昔の話を話し始めた。
凛ちゃんは小さい頃から男の子がやるようなスポーツが得意だった事。
一緒に遊んでいた男の子を中心に男の子みたいだと呼ばれていた事。
そんな凛ちゃんが母親から買って貰った少し高めのスカートを初めて学校へ履いてきた時、いつも遊んでる男の子たちに冷やかされた事。
それを期に制服以外ではスカートを一切履かなくなってしまった事。
「なるほどな……」
そう言われると凛ちゃんの私服でスカートを履いてるのは見たことがないし、初夏になる前に凛ちゃんと遊びに行ったときにスカートじゃなくてショートパンツを履いてきたのか…。
「……そんな事があったのね」
「うん。それでも私は凛ちゃんの力になってあげたい!凛ちゃんだって本当はもっと女の子らしくしたいに決まってるもん!」
「花陽……。そうね、なんだかんだいって凛がμ'sの中で一番女の子っぽいものね。……壮大もそう思うでしょ?」
そこでその話題をオレに振るのか!?
「悪い。その質問は答え次第では今後の生き方に大きく関わってくるから黙秘を決め込ませて貰おう」
オレの質問の答えを話題転換のきっかけとしたまま、少し他愛もない会話をしながらオレたちはとある1つの考えを持ちながら帰路についた。
「穂乃果たちが今週末に帰ってこれない……ですか」
凛ちゃんの過去話を聞いた翌日の放課後。
練習終わりの疲労した身体をリカバリーするドリンクを飲んでいたところに電話がかかってきて、応対すると絵里ちゃんからだった。
『そうなの。季節外れの台風の影響で空港やフェリーターミナルは閉鎖、それに伴って飛行機やフェリーも出せないらしいの』
「それじゃあ、今週末のイベントは…」
『残念だけど、やるとしたら6人でやるしかないわね』
随分と急な話になってしまったな…。
オレは頭を抱えつつ、頭をガシガシと掻く。
『だけど問題はそれだけじゃないのよ』
あん?
電話越しの絵里ちゃんは穂乃果たちが参加できないという問題とはまた別な問題を切り出そうとしてきていた。
『先方の方から連絡が入って今度のファッションショーでのライブをやるときのセンターポジションの人はこれを着て欲しいって言われて送られてきた衣装が……ウェディングドレス風の衣装なのよ』
「ほぉ……」
『それで凛が一度はセンターを引き受けると承諾したのはいいものの、衣装を見た途端にセンターは花陽がいいんじゃないか?って言い出したのよ』
昨日の花陽ちゃんの話を聞いて、きっと『こんなに髪が短い凛には無理』だとか『女の子らしくない凛よりかよちんの方がいいに決まってるにゃ』とか言ったんだろう…。
『結果的に言えばその場では今度のファッションショーのライブは花陽がセンターポジションで行くという話で纏まったんだけどって言うことを報告したかったんだけど……』
オレはそこまで聞いて考え込み始める。
凛ちゃんは過去に囚われ過ぎている。
どのような言葉を浴びせられたのかは想像もつかないし、今さら聞いたところでその事実が変わるというわけでもない。
でも、これからやってくる未来は自分次第では無限の可能性が存在しているはずだ。
だからこのガールズファッションショーのミニライブを通して過去の凛ちゃんと決別して新しく生まれ変わった凛ちゃんを見てみたいという気持ちも少なからずある。
「……そこに花陽ちゃん、います?」
『いるわよ?』
「変わって貰っていいですか?」
電話の向こうから『花陽ー!壮大が変わって欲しいってー!!』『はーい!』という声と、少し離れたところから走ってくるであろう足音が聴こえてきた。
『はい、お電話変わりました。花陽です』
「オレだ、壮大だ。いきなりで悪いんだけどさ、今度のガールズファッションショーのミニライブのセンターポジションのことなんだけど……どうするつもり?」
『うん。真姫ちゃんにも言われたの。「このままで良いのか?」って』
いかにも友達想いのアイツらしい言葉だな…。
「でも凛ちゃん困ってるみたいだし、無理に言ったら可哀想かなって思って…」
「そうか…」
「壮大くんならどうする?」
「オレだったら?」
「うん…」
オレは凛ちゃんと花陽ちゃんとの付き合いが本格的に始まったのはμ'sに加入してからであって、それほど長くはない。
けれど花陽ちゃんは凛ちゃんの過去を知っているし、メンバーの誰よりも付き合いが長い。
だからオレから言えることはこれだけだ。
「……それは花陽ちゃんが決めることじゃないかな?」
『えっ?』
きっと穂乃果に聞いたとしても同じことが返ってくると思う。
オレは花陽ちゃんに諭すような口調で理由を告げる。
「それは花陽ちゃんが決めることなんじゃないかな?って思った。花陽ちゃんはμ'sに入る時凛ちゃんが背中を押してくれた。だから今度は花陽ちゃんが凛ちゃんの背中を押してあげる番なんだと思う」
シチュエーションこそ違えど本質的には花陽ちゃんと同じ。
踏み出す勇気がなかった彼女にほんの少しの勇気を与えてくれた時のように、過去の出来事に縛り付けられてしまった乙女の柵を解き放つ番なんじゃないかとオレ個人は思う。
「当日はガールズファッションショーってこともあるから行けないけど、オレは信じてるよ。凛ちゃんが過去の柵から解き放たれて新しく生まれ変わった凜ちゃんの姿が見られることを…、さ」
『うん!分かった!』
そう言って電話を切った花陽ちゃん。
だが、最後の応答にはこれまでにない強い決意が込められていたような気がした。
Side 星空 凛
ついにやってきたガールズファッションショーのイベント。
舞台袖からファッション雑誌とかで表紙を飾るようなプロのモデルさんたちを眺めていた。
「すごいね〜!」
「さすがモデルね」
かよちんと真姫ちゃんはプロのモデルさんたちを見て感心していたにゃ。
でも凛は女の子らしくないからきっとあんなカワイイ服、似合わないだろうし…。
「みんなそろそろ準備をするわよ!」
そんな時絵里ちゃんの号令がかかったので、一度控え室へと戻る。
「それじゃあみんな!衣装に着替えたら踊りを最後にもう一度合わせるにゃ!」
「「「「「はい!」」」」」
私の話にみんなは返事をして衣装に着替え始める。
「凛ちゃんの衣装、そっちだよ」
「分かったにゃ!」
かよちんに言われて私は衣装が収められている部屋のカーテンを開ける。
「えっ……?」
そこにはかよちんが着る筈だったウェディングドレス風の衣装…センターポジションの人が着る衣装が飾られていた。
「あれ?なんで?これはかよちんが着る衣装じゃ………」
「ううん……。それは凛ちゃんが着る衣装だよ」
後ろを振り向くとかよちんを始めとした他のみんなは黒のタキシードを着ていて、凛待ちの状態だった。
「なんで?センターはかよちんでしょ!?それで練習してきたんだよ!?」
「大丈夫よ。ちゃんと今朝みんなで合わせてきたから。凛がセンターで歌うように」
「そんな……冗談はやめてよ!!」
「……これを冗談で言ってると思う?」
にこちゃんの言う通り絵里ちゃんやかよちんの言葉には冗談なんて微塵も含まれてなかった。
「凛ちゃん」
「かよ……ちん?」
「私はね?凛ちゃんが世界一可愛いと思ってるんだよ? 抱き締めちゃいたいくらい可愛いって思ってるんだよ!?」
「ふぇっ?……えぇっ!?」
突然かよちんから何も事情を知らない人から見れば告白まがいなことを言われたので思わず恥ずかしくなってしまい、視界からかよちんを外すように横を向く。
「私だって凛のことは可愛いと思うわ。みんなも言ってたわよ。凛が一番女の子っぽいって…。それは壮大も同じ」
恥ずかしがって答えてくれなかったけど……、と付け加えながらも真姫ちゃんもかよちんの隣に立った。
そして2人は……優しく凛の背中を押した。
そしてその瞬間、心の中で縛りつけられていた何かが解き放たれる感覚になった。
『続いて本日のファッションショーのゲストは今世間の間では噂となっているスクールアイドル、μ'sのみなさんです!!』
スポットライトに照らされた私はステージ中央へ向かって歩いていき、一礼をする。
『こんにちは!音ノ木坂学院スクールアイドル、μ'sです!!』
礼で下げた頭を上げると歓声が聴こえてきた。
その中には私を見て『カワイイ』だったり、『キレイ……』といった歓声が聞こえてくる。
その声は自分に向けられたものだと気付き、少し気恥ずかしくなってしまう。
『えっと…、ありがとうございます。本来μ'sは9人なのですが都合により今回は6人で歌わせて貰います』
自分の声とともに、残りの5人が自分の横に整列する。
『精一杯歌うので、一番カワイイ私たちを……見ていってください!!!』
その掛け声と共に、新しいわたしへと羽ばたき始める翼を広げた。
Side out
ファッションショーが終わった次の日。
凛ちゃんに『遊びに行っくにゃー!』とご機嫌な様子で誘われたオレは、待ち合わせ場所にて凛ちゃんを待っていた。
「そーおーくんっ♪」
ポケーッと待っていたオレの前に凛ちゃんが現れた。
「えへへぇ……待たせちゃったかにゃ?」
静かに首を横に振ったオレは静かに立ち上がる。
「……さっ、今日はどこに行こうか?」
「うーん……。新しいお洋服買いに行きたいにゃ!」
元気に答えた凛ちゃんはスカートを翻し、オレの手を掴んで元気に駆け出した。
次は順当に行くとハロウィンイベント回(第6話)なのですが、そのお話を飛ばして穂乃果ダイエット回(第7回)をやりたいと思います。
それが終わると徐々にシリアス路線へと……。
わたしのメンタル、持つかなぁ……(遠い目