ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
でも、この話がこのあとの話の中で一番ほんわかするような話かもです。
そして先に言っておきます。
ことり推しのみなさま。
少しだけことりちゃん暴走させてしまいましたが許してください!
(出来ることなら)何でもしますから!
月日は早いもので12月。
一般世間は徐々にクリスマスムードに包まれて行くが、μ'sの面々はクリスマスやらなんやらで浮かれている時間はほとんど無いし気を向けている余裕もない。
「ねぇ、壮大?」
音ノ木坂学院のアイドル研究部部室にて座ってミーティングをしている最中、部長であるにこちゃんが唐突に口を開く。
「どうしたんですか?」
「……あんたの幼馴染はどうなってんのよ!?」
長机をバンッ!!と叩き、怒鳴りながら立ち上がる。
「むっ。にこの発言だと私やことりも含まれているはありませんか」
「それに壮大の幼馴染って言うと私も含まれるわね。生憎私や海未にことりは穂乃果みたいな奇想天外な発言はしないわよ」
海未が真姫が訂正をするように求めるが、にこちゃんの主張は続く。
「なんでA-RISEの前で堂々と優勝宣言なんかしちゃってるのよっ!?」
「えへへ、勢いでつい……」
「勢いでつい…じゃないわよっ!!」
どうしてにこちゃんがこんなにも憤慨しているのには理由がある。
先程まで行われていた最終予選のグループ紹介を兼ねた合同記者会見での出来事。
妙にテンションが高い司会進行役のレポーターのお姉さんが各グループのリーダーから意気込みを一言ずつ貰っていったのだが、その時にμ'sの順番になりリーダーの穂乃果に意気込みをとマイクを向けるとそこで優勝宣言をしたのだ。
その発言を聞いたマスコミやレポーターのお姉さんは唖然とし、にこちゃんは怒り心頭になったと言うわけだ。
ちなみにだけどオレはアイドル研究部の部室に備え付けられているデスクトップ型パソコンで生中継で配信されていた特番を視聴していたけど、流れてくるコメントはμ'sや穂乃果を応援するコメントやA-RISEナメんな!というファンのコメントによる弾幕で凄いことになっていた、とだけ記載しておこう。
「でも実際に優勝を目指してるんだし、問題ないんじゃない?」
「それもそうだな。それについてはA-RISEのリーダーの綺羅も言ってたしな…」
スクールアイドル界で絶対王者に君臨しているA-RISEのリーダーである綺羅 ツバサでさえも『この最終予選は本大会に匹敵するレベルの高さだ』と証言していた。
つまりこれはμ’sが一次予選よりもパフォーマンスのレベルが上がり、正式にA-RISEのライバルとして認められているということを意味していることになる。
A-RISEから同じレベルだと認められていることがみんなは嬉しく思っているのだが、すぐに気を引き締め直して本題に入る。
「それじゃあ最終予選で歌う曲を決めましょう」
司会進行役の海未がミーティングを始めることを告げると、みんなの顔が真剣なものに変わり空気も一変する。
今日のミーティングの最大の目的は『最終予選に向けて歌う曲をどうするのかを決めること』である。
最終予選は一次予選で適用されたルールから変更され、一次予選で使用したナンバーの使用が認められている。
なので最終予選では新曲を披露するのか、それとも一次予選で使用した『ユメノトビラ』で行くのかを決めるということになる。
みんなが自分の意見を纏めるため閉口していたが、まずにこちゃんが意見を切り出してきた。
「私は新曲がいいと思うわ」
「おお!新曲!!」
「面白そうにゃ!」
「確かに新曲だとインパクト面からしてみれば有利に思えるが……」
にこちゃんの意見に穂乃果と凛ちゃんが賛同の発言をする。
しかし、花陽ちゃんと真姫はにこちゃんたちの意見に反対の意を述べた。
「でも…、そんな事で曲を決めるのは…」
「それに新曲が有利ってのも本当かどうか分からないじゃない?」
真姫の意見にも一理ある。
確かに新曲の方が最終予選では有利になるのは間違いなはずなのだが、本当に新曲が有利なのか分からない。
それに最終予選まで残された時間があまりないのに新曲に拘った結果、『新曲は無理でした』となると少ない練習時間で既存曲の練習をするしかなくなるとなると逆に自分の首を自分の手で絞めることになる。
新曲披露は言葉の通り諸刃の剣なのである。
そんな時、のんちゃんが誰もが考え付かなかった事を話し出した。
「例えば…、例えばの話なんやけど…このメンバーでラブソングを歌ってみるのはどうやろか?」
その発言にみんな驚き、アイドル研究部の部室内に電流が流れた。
「なるほど!アイドルにおいて恋の歌……すなわちラブソングは必要不可欠!定番曲の中で必ず入ってくる曲の一つなのに…それが今までμ’sにはそれが存在していなかった!」
花陽ちゃんがいきなり立ち上がったかと思うとラブソングについて熱く語り始め、真姫に「落ち着なさい、花陽」と宥められ凛ちゃんには「凛はこっちのかよちんも好きにゃー」と楽観視していた。
「希…?」
絵里ちゃんは意外な提案をしたのんちゃんに問いかけたが、当の本人は絵里ちゃんに微笑みかけるだけで何も言わなかった。
「でも…どうして今までラブソングがなかったんだろう?」
「あ?んなもん聞かなくても決まってるだろ。μ'sの歌詞担当が歌詞にするのが恥ずかしいだのラブソングを歌うことがハレンチだの思ってそんな歌を作らなかったからだろ?」
穂乃果の問いに間髪入れず答え、それを聞いたとある1人を除いてみんなはμ'sの歌詞担当に目線を向ける。
「なっ……なんですか!!その目は!?」
歌詞担当の海未はみんなの視線が自分に集まっているのを察すると、怯んで1歩後ろへ下がった。
「何ですかその目は、じゃなくてみんなは大抵のアイドルグループにラブソングがあるのに何でそれを歌詞にしなかったのかを聞きたいんじゃねぇの?」
するとみんなは一斉に首を縦に振り、それを見て海未はさらに1歩後ろへ下がるがこんなんでオレたちの追求は終わらせない。
「海未もハレンチだーとか言ってるけどさ、年頃の女の子なんだから恋愛経験の1つや2つくらいあるだろ?」
「何で壮大にそんなことを聞かれなければいけないのですか!!」
「じゃああるの!?」
「あるの!?」
「ヒィッ!?」
海未がオレに反論しようとしたら海未の肩をガシッと掴んで目の色を変えた穂乃果と穂乃果とは逆に目を輝かせている凛ちゃんに墓穴を掘った形で突っ込まれてしまった。
「海未ちゃん!どうなの!?」
「グスッ…、海未ちゃぁん……」
穂乃果は肩を掴む力を強めながら、そしてことりは目を潤ませながら海未に問い詰めていく。
そして問い詰められることに限界を迎えた海未が呻き声を上げながら床にペタン、と力なく座り込んだ。
「…………ありません」
「なーんだ、つまんないのー」
「もー!海未ちゃんったらー!!思わせ振りな態度見せないでよー!」
海未のカミングアウトを聞いて興味が失せて毒を吐く凛ちゃんに、海未の背中をパシパシ叩く穂乃果。
「何であなたたちにそんなことを言われなければならないのですか!!それにあなたたちも私と一緒で恋愛経験なんてないのでしょう!?」
「「「…………」」」
海未の一言に穂乃果とことりと凛ちゃんが何故か顔を赤くさせていた。
え?何この地雷を踏み抜いた感じの空気は……?
「穂乃果…?ことり……?凛ちゃん………?」
「ふぇっ!?な、何でもないよ!ね、ねぇことりちゃん!!」
「そ、そうだよ!凛ちゃんもそうだよねっ!?」
「そ、そうにゃ!!何でもないったら何でもないにゃ!!!」
「アッ、ハイ」
明らかに何かあるのだが、これを追求していたらキリがないと悟ったオレは追求することを諦めた。
人間誰しも自分の生命は無駄にしたくないと思ってるからな。
この空気を強引に変えるために咳払いを1つしてから、みんなの顔を見て話す。
「この状況じゃ新曲…って言うかラブソングはちょっと無理そうかもな…」
オレはそう言ってラブソングを作るの意見を取り止めようとした時、絵里ちゃんが口を開く。
「でも…まだ諦めるのは早いんじゃないかしら?」
「えっ?」
「エリー…?」
新曲をラブソングにするという意見に絵里ちゃんも賛成のようだった。
それには真姫も同じような反応をした。
「そうやね。曲作りに必要なのはイメージと想像力やろうし…」
「けど、ラブソングってことは恋愛でしょ?どうイメージを膨らませればいいの?」
「それは……例えば!」
「はいこれ!御託はいいからさっさと受け取りなさいよ!」
差し出されたプレゼントをおずおずと受け取るオレ。
「べ…別にあなただけにあげたわけじゃないんだから勘違いしないでよね?」
テンプレ的なツンデレ娘の台詞を残し、クルッと後ろを向いてオレから遠ざかっていく真姫。
「はい!おっけー!!」
オレがビデオカメラの録画停止ボタンを押し、撮影が終わったことを言うと真姫による迫真の演技を見ていたメンバーが賞賛し拍手を送っていた。
「真姫ちゃんはやっぱり凄いなぁ!」
「完璧ですぅ!」
「漫画とかで見たことあるにゃーっ!」
「どう?これで満足?」
頬を若干赤らめた真姫がオレに尋ね、コクコクと首を縦に振る。
のんちゃんが提案したのはオレを意中の人に見立て、各々が思い思いのシチュエーションで演技をしていくという極めて単純なものだった。
「さて…、これでみんなの分が撮れた訳だが……。おい、どうした真姫?」
みんなの分が撮れたので部室に戻ろうとしたのだが、真姫に肩を掴まれてしまった。
「壮大の分が残ってるわよ?」
「ふぁいっ!?」
真姫からの予想外なムチャぶりにすっとんきょうな返事をする。
「いやいやいや…。オレの告白シーンなんて撮ったところで何の需要もないじゃんか」
「御託はいいからさっさとやりなさいっ!!」
「そうにゃそうにゃ!!凛たちみーんなやったんだからそーくんもやるべきだにゃー!!」
やることを渋っていたら凛ちゃんを筆頭にほぼみんなからブーイングを受けたので、渋々だがオレの告白シーンを撮影することとなった。
「なんや。あれだけ渋ってたのに、ことりちゃんを相手にして夕暮れ時にやるなんて随分と手が込んでるやん。ホントは壮くんもやりたかったんやないの?」
「……。やりたいやりたくないは別にして、やるって決めたら全力でやるのがオレのポリシーなんす」
普段穂乃果たちが授業を受けている教室の窓際で1番後ろの席、いわゆるギャルゲー主人公ポジションに座って気持ちを高めていく。
気持ちを高めきると、頬杖をついて太陽が沈みそうなっている地平線に目を向けながら撮影OKを出す。
「うっし…、んじゃカメラ回していいっすよー」
「はーい、それじゃあ壮くんの告白シーンまで3、2、1……キュー!!」
カメラが回ったのを確認したことりはオレのすぐ側まで歩いてやってきた。
「そーくん…、来たよ」
「……わざわざ呼び出しといてわりぃ」
「ううん。それは別にいいんだけど……」
「「……」」
やっべぇぇぇぇえ!!!
続きの言葉が出てこねぇぇぇぇえ!!
どうする!?どうするよオレ!!
こうなったら時の流れに身を任せるしかない!!
そう決めたオレは頬杖をついたままぶっきらぼうに切り出す。
「……卒業したら東京から離れるんだって?」
「えっ……?う、うん」
突然のアドリブにことりは拙いながらも何とかついてきてくれた。
「寂しくて寂しくてどうしようもなくなったらオレに連絡しろ。いくらでも話し相手になってやるから」
「……どうして?」
心のからの疑問で首を傾げることり。
それを見計らったオレはイスから立ち上がって右手をことりの頭に、左手をことりの華奢な背中に回して引き寄せるようにしながら優しく抱き締めた。
「どうしてって……。ことりの事が……キミの事が好きだからに決まってんだろ」
「ハ……ハレンチですぅぅぅぅう!!!」
海未の大声が響き、それに呼応してμ'sのメンバーもキャーキャー黄色い声で叫び出した。
「っとまぁ……こんなもんでどうですか?」
「うん……。うちらはいいんやけどことりちゃんが……」
「え?」
「あうあう……。そーくんが……、そーくんが……」
のんちゃんの口振りからしてことりの様子がおかしいと察し、ことりがいる方向を向くと女の子座りをしながらオーバーヒートしていることりの姿が。
「こ…、ことりぃぃぃぃぃい!!!」
あかん!妄想と現実の区別がつかなくなってる!!
「壮くんは責任持ってことりちゃんをニュートラルの状態に戻したってなー」
「ちょっ!?待ってみんな!!オレとことりを置いてかないでぇぇぇぇぇえ!!!」
「自業自得だにゃ」
何だか今の凛ちゃんの言葉にトゲがなかったか!?
「そーくぅん……」
ちょっとことりさん!?
ここ学校なんですけど!?
目の奥がハートになっちゃってるんですけどぉぉぉぉお!!
「ことり!!ここでオレの服を脱がそうとするなって!!ちょっ!まっ!!ぎゃああああああっ!!!」
オレとことりによる告白シーンの撮影が直接の原因で新曲の件はうやむやになってしまい、明日穂乃果の家でもう一度話し合おうということになったらしい。
オレ……告白シーン撮影した意味ねぇじゃん。