ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
今話最終盤辺りから少しだけオリジナルストーリーを挟みます。
では、どうぞ。
真姫と共に絵里ちゃんとのんちゃんを追いかけることおよそ3分。
「……いた」
歩道の真ん中を2人で歩いているのを見つけた。
「でもあの2人…何か話してない?」
オレと真姫は2人のすぐ近くの物陰に隠れ、息を潜めながら絵里ちゃんとのんちゃんの話のやり取りを聞くことにした。
「本当にいいの?」
「いいって言ったやろ?」
「ちゃんと言うべきよ!希が言えばみんなきっと協力してくれるはずよ!」
……どういうことだ?
「うちにはこれがあれば十分なんよ」
希はポケットからタロットカードを取り出してそう言うものの、どういうことなのかこの部分だけ聞いてもさっぱり分からない。
「意地っ張り…」
「えりちにだけは言われたくないなぁ」
この2人のやり取りを聞いていると、ますますこの2人には何かがあるに違いないと思えてくる。
「やっぱり何かあるわね…」
「そのようだな」
そう真姫と話していると2人は信号で立ち止まった。
今が2人に迫る最大のチャンスだ。
「…行くぞ」
「えぇ!!」
物陰から2人同時に絵里ちゃんたちの前に姿を現す。
「エリー!希!!」
「真姫!?それに壮大まで!!一体どうしたのよ!?」
絵里ちゃんはいきなりオレたちが現れたことに心底驚いている様子だった。
「…
「聞いてたの…?」
「はい。真姫と2人でバッチリ聞かせて貰いました」
俺は2人向かってそう言うと絵里ちゃんはまた下を俯く。
やっぱり2人にはオレたちに何か隠していることがあるな…。
「…希!」
考え事をしていると今度は真姫が一歩前に出てのんちゃんに話し出す。
「真姫ちゃん…?」
「希は前に私に言ってたわよね?『面倒くさい人間だ』って!!」
そんなやり取りがあったのか?
それについては全く分からないので会話には入らないでおく。
「………そうやったっけ?」
「惚けないで!!人にあんなこと言っておいて自分の方がよっぽど面倒くさいじゃない……!」
真姫はのんちゃんに言い切ると、今まで下を向いていた絵里ちゃんは顔を上げて話し出した。
「フフフッ、気があうわね…それについては同意見よ。壮大もそう思うでしょ?」
「その話題をオレに振らないでくださいよ…」
いきなり話を振られ、思わず溜め息を漏らしてしまう。
まぁでも…。
「さっきの会話を聞く限りだと同意せざるを得ませんね」
それについては大いに賛同できるけどな。
するとのんちゃんは観念したように口を開いた。
「真姫ちゃんや壮くんにもばれてしまうと、本当のことを言わないといけんなぁ…」
「本当のこと…ですか?」
「何よ……それ?」
本当の事とは一体?
何の事かは予想しかねることだが、絵里ちゃんと話していた事と何か関係があるのかもしれないということだけは理解できた。
「まあここで話すのもなんだからゆっくり話が出来る場所に行かへん?」
ゆっくり話が出来る場所?
オレが海未や真姫とたまに行く喫茶店からだと距離が開きすぎている。
かといってこの辺にはファミレスもファストフード店もない。
「…何処か心当たりがあるんですか?」
のんちゃんは自信たっぷりの様子で頷いた。
「…ここや」
案内されたのはにこちゃんが住んでいるアパートとはまた別なアパートの一室の前。
「ここは…?」
「うちの家や。ここなら他の人に聞かれずに話せるやろ?」
まさかののんちゃんの家だった。
その事実を知ったオレは急に躊躇いが生まれてきてしまった。
「…壮くん?どうしたん?」
「いや、仮にも女の子の家ですからオレみたいな奴が入ってもいいのかなーって…」
「んー?穂乃果ちゃんやことりちゃんのお家に何度も入ってるのに?」
「それとこれとは話が違うじゃないですかっ!!」
からかわれていることに気付いたオレはのんちゃんに噛みつくように反論する。
穂乃果やことりは幼馴染だからいいんだよっ!
凛ちゃんとか絵里ちゃんとか幼馴染の4人以外の家に行くって聞いただけで緊張するんだよ!!
凛ちゃんの家や絵里ちゃんの家に行ったこと無いけどさ!
ってオレは誰に向かって言い訳を言ってるんだ!?
ふーっ、ふーっと威嚇する猫のように様子を伺ってるとのんちゃんが笑い出した。
「フフッ…そんなに身構えなくても大丈夫や。ささっ、早く上がって上がって」
のんちゃんに催促されたオレは小さい声でお邪魔します、と言ってのんちゃんの家に上がった。
うへぇ…緊張するぅ…。
「…壮大?」
「何ですか!?自分ならビビってないっすよ!?のんちゃん先輩の家の雰囲気ならとっくに慣れたっすよ!?」
「自分からビビってるますって認めてるようなもんね。何かもう色々と変わってるし」
「2人きりならともかく私や真姫がいるんだからそんな意識しなくていいでしょ?」
「………」
居心地悪すぎる…。
とびっきりの美女揃いの空間に入れられたオレは居心地の悪さに四苦八苦していて、その家の主はというとキッチンに立って水が入ったヤカンに火をかける。
「みんなお茶でええ?」
「私はいいけど…。壮大と真姫は?」
「お任せします」
「私もそれでいいわ」
「おっけー。分かったー」
のんちゃんは食器棚から人数の湯呑みを取り出し、お茶のパウダーを湯呑みにいれていく。
「1人暮らしなの?」
「そう言えばみんなには話していなかったわね。希のご両親は小さい頃から両親の都合で転校が多かったらしいのよ……」
「そう……」
割と大人数で押し掛けたにも関わらず、のんちゃん以外の家族がいなかったので真姫が聞いてみるとどうやら1人暮らしのようだった。
もしこれでリアクションしにくいような内容の話をされたらきっとここにいられる自信は無かったと思う。
「……そう言えばオレたちってのんちゃんの事詳しく知らないんですよね」
「確かに壮大たちがそう思うのは無理はないわね。希って自分の事をあまり話したがらないから……」
オレたちはお茶の用意をしているのんちゃんを見る。
「ん?どうしたん?」
お茶が入った湯呑みをお盆に乗せてオレたちがいるところへ歩いてくるところだった。
「希が自分の話をあまりしたがらないって話をしていたところよ……ありがと」
オレたちはのんちゃんから受け取ったお茶を飲み、みんなが湯呑みを置くのを見計らって真姫は核心を突いた。
「……ねぇ、ちゃんと話してよ。もうここまで来たんだから」
「そうよ。隠しておいても仕方ないでしょ?」
「別に隠していた訳じゃないんよ?えりちが大事にしただけやん」
「ウソ。μ'sが結成した時からずっと楽しみにしていたんでしょ?」
「そんなこと……ない」
「希!」
「うちがちょっとした希望を持っていただけよ」
またしてもオレと真姫には分からない2人だけの会話が繰り広げられ、痺れを切らした真姫がテーブルを叩く。
「いい加減にして!何時までたっても話が見えないわ!!
「真姫、落ち着け。叫んだら余計に話が拗れる」
「うっ…、そうだけど……」
真姫を宥めにかかり、落ち着きを取り戻した真姫はバツが悪そうな顔をして座り込む。
「……差し支えのないところまでで結構ですので話してもらえませんか?」
オレの一言を聞いてのんちゃんは無言になる。
「簡単に言うとね、希の夢だったのよ。」
「えりち……?」
のんちゃんの代わりに絵里ちゃんが話し出した。
「ここまで来て何も教えないわけにもいかないでしょ?」
「夢…?ラブソングが、ですか?」
絵里ちゃんは小さく首を横に振り、否定する。
「ううん。大事なのはラブソングかどうかじゃない。9人みんなで曲を作りたいって……。」
「1人1人の言葉や想いを紡いで…。本当に全員で作り上げた曲……そんな曲を作りたい。そんな曲でラブライブ!に出たい……それが希の夢だったの。だからラブソングを提案したのよ」
上手く行かなかったけどね……と笑っているが、絵里ちゃんの1つ1つ想いの乗った言葉がオレと真姫の心に突き刺さる。
「言ったやろ?ウチが言ってたのは夢なんて大それた物じゃないって」
「じゃあ……、なんなの?」
真姫がのんちゃんの願いを聞き、それが大それた物じゃなければ何なんだ?と問いかける。
「何やろうね?……ただ、曲じゃなくてもいい。9人が集まって力を合わせて何かを生み出せればそれでよかったんよ……。ウチにとってこの9人……壮くんも合わせると10人は奇跡だったから……」
「奇跡……ですか?」
のんちゃんの言葉に出てきた1つの単語が気になったオレはのんちゃんに聞いてみた。
「そう。ウチにとってμ'sは奇跡そのものなんよ……」
そう言ってのんちゃん本人の口からのんちゃんの知られざる過去の話をしてくれた。
転校、転校の連続でまともに友達も作ることができなかった小・中学校時代。
反対するご両親を説得して1人暮らしをしながら音ノ木坂学院に通うことにしたこと。
そこで昔の自分をそのまま映し出したような当時の絵里ちゃんを見つけ、自分から絵里ちゃんに歩み寄ったこと。
自分に自信が持てない女の子や誰よりも女の子らしいのに殻が破れない女の子…、人付き合いが苦手でいつも1人でいる女の子や自分の夢を諦めざるを得ない状況に立たされていた女の子。
そして廃校の危機から救うために立ち上がった3人の音ノ木坂学院生とその幼馴染である1人の男の子。
9人の女神とそれを後ろから支える1人の男の子が起こす奇跡にかけてみた。
だから人数が揃うまでオレたちの活動を影ながら支えていたのだそうだ。
「確かに歌という形になれば良かったのかもしれない。けど、そうじゃなくてもμ'sは何かもう大きなものをとっくに生み出してる。ウチはそれで十分…。夢はとっくに……1番の夢はとっくに……」
のんちゃんは自分に関する話を終えて、1度目を伏せてからまた目を開けた。
「だから……この話はおしまい。それでええやろ?」
「って希は言うんだけれど……2人はどう思う?」
絵里は笑顔でオレたちに話を投げかける。
「ナンセンスですね」
オレは絵里ちゃんの問いかけに即答し、鼻で笑った。
「今のこの話を聞いて既存曲で行くことに納得する人なんてのんちゃんくらいなもんですよ」
「そうね」
「フフッ……」
真姫と絵里ちゃんは笑いながらスマートフォンを取り出す。
そう言うオレも手の中にスマートフォンが握っている。
「まさか?!皆をここに集める気なん!?」
「いいでしょ?1度くらい招待したって……」
スマートフォンの画面を見せつけるようにする真姫。
そしてウィンク1つ。
「友達……なんだからっ♪」
「おっ邪魔っしまーっす!」
「遅いぞ、穂乃果」
穂乃果を最後にのんちゃんの部屋に10人全員が揃った。
「それにしても意外よね~、希がそんなことを考えていたなんて」
「ええやろ……別に」
にこちゃんが普段はイジり倒してくるのんちゃんにここぞとばかりにからかう。
「ん?これ何だろ?」
凛ちゃんはキョロキョロと回りを見渡すと、写真立てを目をつけてその写真立てに近付いて手にする。
「あっ!それはダメ!!」
のんちゃんが凛ちゃんから写真立てを奪い取り、写真立てを庇うようにしてみんなに背を向ける形で距離を取る。
「あーっ!希ちゃんが赤くなったにゃー!!」
「別にええやろ?うちだって、その……女の子なんやし…」
!?!?
普段はメンバーをからかう側なのにからかわれることに慣れていないためか、モジモジしながら赤くしている……だと………!?
「希ちゃん可愛いにゃーっ!!」
「もうっ!あんまり
のんちゃんがいるベッドに向かってジャンプしてのんちゃんに近付くと、近くにあったクッションを凛ちゃんの顔に当ててガードする。
なんと言うかエセ関西弁を喋るのんちゃんが標準語を話す姿にギャップを感じるぜ!!
ナイスだ凛ちゃん!!
あとで機嫌直しを兼ねてラーメン1杯だけ奢ってやろう!!
「はいはい…、暴れないの」
のんちゃんがバタバタ暴れている間に静かに後ろに回り込んだ絵里ちゃんがのんちゃんをあすなろ抱きで静止させる。
抱き締められたのんちゃんの顔は凛ちゃん相手に暴れていた時とは別の赤さになっていく。
なんなの?なんなのなの?
ここにユリの花で作られた迷路のような花園でも作る気なの?
なんて不純なことを考えていると、視界の隅っこで窓から白い何かが降っているのが見えた。
「……雪だ」
「えっ!?ウソッ!?」
呟きにいち早く反応した穂乃果が窓に張り付くようにして外を見る。
「雪だぁーっ!!」
窓から見ることじゃ我慢できなくなった穂乃果は外に出て、みんな慌てて追い掛ける。
近くの公園に着くと普段はみんなの制止役である海未ですら注意せずに雪を見て想いを馳せている。
そしていつしかオレを含めてみんなが互いに背を向け合いながら円を作り、空を見上げていた。
そして降ってくる雪を両手で受け皿のようにそれぞれの胸の前で作る。
「想い……」
「メロディー……」
「予感……」
「不思議……」
最初に穂乃果が呟いたフレーズに続くように花陽ちゃん、海未、凛ちゃんと続いていく。
「未来……」
「ときめき……」
「空……」
「気持ち……」
真姫、ことり、にこちゃん、絵里ちゃんも続いて残るはオレとのんちゃんだけとなった。
先にオレのところに雪が降ってきたので片手で掴むようにフレーズを呟く。
「……勇気」
そして最後はのんちゃん。
みんなとは違い、空を見上げてフレーズを口にした。
「……好き」
それは誰よりもμ'sの事を想うのんちゃんにとってピッタリのフレーズだった。
それは歌詞担当の海未と作曲担当の真姫に任せ、オレと穂乃果の左側隣に並んで歩いて帰宅していた時の出来事だった。
穂乃果と何気無い会話をしていると前から息を荒くして丸々と太った男が歩いてきた。
「すみません。μ'sの高坂 穂乃果さんですか?」
「はい。そうですが……」
「実はこう見えてμ'sのファンなんです。よろしければ握手してもらえませんか?」
μ'sのファンだと名乗った男はパーカーのフードを深く被っており、こちら側から顔の確認が出来ない。
「はいっ!喜んで!!」
穂乃果は笑顔を浮かべ、左手を太った男に向かって差し出した。
しかし、穂乃果の左側に立っていたオレは見逃さなかった。
その男の手には包丁が握られていたのを。
「穂乃果ッッッ!!!!」
「へっ?」
___ドスッッッ!!!
夜の道に響き渡る鈍い音。
いったい穂乃果や壮大の運命はどうなる!?
何となく煽ってみました。
では、また次回お会いしましょう。