ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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オリジナルストーリー第2弾。

でもあまり長くならないように手短に終わらせるつもりです。

ここでシリアス力使いすぎると例のあのシーンでパワー不足になっちゃうかもだし…。

長くなりましたが……それでは、どうぞ。


第56話 片翼を無くした女神たち

~Side 松宮 壮大~

 

「ガッ……!?ハッ……!!!」

 

穂乃果を突き飛ばし、包丁は穂乃果を庇ったオレの脇腹に刺さった。

 

そして間髪入れずにオレの口と脇腹から大量の血が流れてきた。

 

「きゃぁぁぁぁぁあっ!!!」

 

突き飛ばされた穂乃果はオレの血を見て大声で悲鳴をあげた。

 

顔を男に向けたまま目だけ動かして穂乃果を確認すると、着ている服の肘や膝の部分に穴があいているだけで大きな怪我やキズは見当たらない。

 

よかった…。

 

穂乃果に包丁が刺さるという最悪の事態はオレが身代わりになることで回避することが出来た。

 

「ほの…か……」

 

「な…、なに!?」

 

「今すぐ……ここ…、から……全力で…逃げ……ろっ!」

 

穂乃果はコクコクコク!!と首を激しく縦に振ってから来た道を全速力で走っていった。

 

「逃がすかよっ!!」

 

そして男は穂乃果を追いかけようとオレの脇腹に刺さっている包丁を抜こうとするが、男の手首を力が続く限り強く握り締めた。

 

「なぁっ…!?なんだこのガキ!!何処にそんな力が残って…!!」

 

なんだこのガキ、じゃねぇだろ。

 

「いきなり人を…包丁…で…ぶっ刺そうと…する奴に……名乗る名前は…ねぇよ。それにあんた……ミュー……ズの…ファンじゃ……ねぇ…よな?」

 

「ふんっ!ポッと出のスクールアイドルの小娘の分際でツバサ様に刃向かった事をこの身で味合わせてやろうとしただけだ!」

 

だろうと思ったぜ…。

 

オレは男に向かってほくそ笑んだ。

 

穂乃果たちのライブをほとんど全部目を通してきたけど、この男のように丸々と太っている男なんざ見たことが無かった。

 

それに加えて穂乃果はネット生中継で行った最終予選の合同記者会見にて堂々の優勝発言をした。

 

A-RISEのファンからしてみればさっきの男のような考えを持つ輩は少なくはないはずだ。

 

まぁ……、まさかこんな過激な行動に出る奴が近くにいるとは思ってもいなかったけど。

 

何て冷静に考えてる場合じゃあないよな。

 

こうしている間にもドクドクと血が流れていて視界が霞み始めていている。

 

すると男は刺さっている包丁の柄の部分に手をかけた。

 

そして…、

 

「ぐあ"ぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

 

どうやらほくそ笑んだ事が男の怒りの琴線に触れたらしい。

 

追い討ちをかけるように捩じ込み、包丁を抜いた。

 

「……ガハッ!!!」

 

もう一度大量の血を吐き出すと同時にオレは血の水溜まりの中に倒れ込んだ。

 

この男を逃がしてはならない。

 

本能では分かっている筈なのに血を流しすぎたので身体が全く動かない。

 

何か手懸かりを…と思い、懸命に伸ばした右手は何かを掴んだ。

 

だが、それは呆気なく親指と人差し指で摘まんだ指の中に収まったまま血の水溜まりの中に力無く落ちる。

 

寒い…。

 

凍えるようだ…。

 

もう…意識…が…。

 

「ほ…………の……」

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いったいどれくらい走っただろうか。

 

不審者に襲われそうになった穂乃果を助けるために身代わりになってくれたそーちゃんが包丁で刺された。

 

そーちゃんに『逃げろ』と言われ、その命令に従って全速力で逃げ続けた。

 

途中で何度も何度も転び、穂乃果の服もところどころ破けている。

 

一心不乱に逃げ続けていると、目の前に自分の家が見えてきた。

 

私はお店の方の入り口のドアを思いっきり開け放った。

 

「お母さんっ!!」

 

「お姉ちゃん!?そんなに慌ててなんなの?……って!!どうしたのそのキズ!?」

 

店番としてカウンターに立っていた雪穂がボロボロの私を見てただ事ではないと感じ、すぐ私の元に駆け寄ってきた。

 

「お母さんはっ!?お母さんはどこっ!?」

 

「どうしたのさ!そんなに慌てて!!」

 

「そーちゃんが!!」

 

「壮にぃがどうしたのさ!!」

 

「そーちゃんが不審者に襲われて包丁で刺されたの!穂乃果の事を庇って!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

~Side 園田 海未~

 

 

不審者に襲われそうになった穂乃果を庇った壮大が包丁で刺された。

 

私は最終予選に向けた作曲をしていましたが、その事実を聞いて作詞をするときに使う大切な万年筆で放り投げて事情を説明した上で母に運転して貰って搬送された西木野総合病院へ向かいました。

 

「壮大!!!」

 

私が行く頃にはメンバーの全員が壮大の緊急手術が行われているであろう手術室の前にいました。

 

「壮大は!?壮大はどうなったのですかっ!?」

 

「落ち着きなさい海未!!」

 

気が動転してメンバーの誰かに状況を聞き出そうとしましたが、絵里に大声で怒鳴られ物凄い力でイスに座らされました。

 

強制的にイスに座らされると穂乃果のお母様が祈るように手を組みながら座っていて、その隣には雪穂も座っていていました。

 

「……雪穂。穂乃果はどうしたのですか?」

 

「お姉ちゃんなら家について今回の事を伝えると気を失いました。それで今はお父さんがお姉ちゃんの面倒を見てくれています」

 

穂乃果のお父様が近くについていらっしゃるのなら一先ず安心しました。

 

普段は無口ですが、人のためならどんなことでもできるような方ですから…。

 

穂乃果の安全が確保されたことに安堵の溜め息をつくのとほぼ同時に『緊急手術中』というランプが消え、扉の向こう側から執刀医の先生が出てきました。

 

「先生!壮大の具合はどうなんですか!?」

 

私が真っ先に駆け寄り、他のみんなも先生のところへ駆け寄ってきました。

 

「出血を止め、刺された傷口を縫合致しました。しかし、出血があまりにも酷すぎることと、もしもの事ですが傷口が開いてしまった場合こちら側でストックしている輸血パックでは2日とも持ちません。もしそうなると壮大くんの生命が危なくなってしまうというのが今の状況です」

 

「そ……、そんな…!!」

 

執刀医の先生の口から話されたことは私たちが思っていたよりも壮大の容態が危ないという状況でした。

 

「じゃあ凛たちの中でそーくんと同じ血液型の人の血液を使えばいいにゃ!」

 

「無理よ」

 

「……えっ?」

 

凛は壮大に合った血液型の人の血を使えばいいのでは?と提案しましたが、執刀医の先生よりも早く真姫が凛の意見を否定しました。

 

「どうして!?凛たちじゃ無理だって言うの!?」

 

「じゃあ、凛。聞くけどあなたの血液型は?」

 

「……A」

 

「残念だけど壮大はA型でもB型でもない。かといってO型でもないのよ」

 

「じゃあ何型だって言うの!?」

 

「…ボンベイタイプよ」

 

「…!それって……!!」

 

普段学校では保健委員を勤めていることりが反応を見せました。

 

私を含めてことり以外のメンバーはボンベイタイプと聞いても首を傾げる反応しか出来ませんでした。

 

「ことり…教えてください。ボンベイタイプとは一体何なのですか?」

 

するとことりはボンベイタイプについて詳しく教えてくれました。

 

話を要約するとボンベイタイプとは私たちが知っている通常の血液型検査ではO型と分類されるのですが、血清中の抗原では抗Hという極めて特殊な抗原が含まれているので通常のO型の血液では輸血が出来ないとのこと。

 

さらにボンベイタイプは地域差こそありますが、世界で100万人に1人の割合でしかいない極めて稀な血液型なんだそうです。

 

「……だから真姫ちゃんは私たちの血じゃ無理って言ったの。でもまさかそーくんがボンベイタイプだとは思わなかった…」

 

「だから私たちに残された道は1日でも早く壮大の目を覚ます以外信じるしかないのよ。…残念ながらね」

 

真姫が悔しそうに唇を噛み締め、俯いて病院の床を見ていました。

 

「……さぁっ、ここは私たちに任せてみんなは家で休んで」

 

「ですが!」

 

穂乃果のお母様はみんなを返そうとしますが、絵里がそう言うわけにもいかないといった表情で詰め寄りました。

 

「大丈夫よ。壮大くんならきっとすぐに目を覚ますわ。だから今はあなたたちが出来ることを精一杯やりなさい?」

 

「……はい」

 

私たちは穂乃果のお母様に諭され西木野総合病院をあとにしました。

 

それぞれがやりきれない感情を背負って…。

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

閉じていた瞼に朝日が突き刺さり、その眩しさで目を覚ます。

 

身体にまとわりつく布団や毛布を払い、ゆっくりした動作でベッドから降りる。

 

脳裏にこびりついた昨夜の出来事がフラッシュバックし、猛烈な吐き気に襲われてトイレに駆け込む。

 

胃の中には何も入っていないので噎せるだけで終わり、顔を上げた拍子に鏡に自分の顔が写し出される。

 

その顔は本当に自分の顔なのか?と疑いたくなるくらい血の気がなく、やつれていた。

 

もしそーちゃんがこの顔を見たら何と言うだろうか?

 

「……酷い顔」

 

自分で呟いた言葉を笑いながらストレートに言うんだろう。

 

そーちゃんの事を考えただけで少し体調が悪くなってきたのでもう一度ベッドに戻って眠ろうとするが、スマートフォンが何かを知らせるライトが光っていた。

 

私やそーちゃんも参加しているμ'sのグループチャットだ。

 

どんなやり取りが行われていたのか確認すると『最終予選はどうするか』についての議論が広がっていて、これまで通り最終予選に出場する派と今回の事を重く受け止めて辞退する派が丁度半々に分かれて議論していた。

 

ここまで歩んできた足跡を自分たちの手で絶つなんて……!!

 

それじゃあ前と同じ事の繰り返しじゃんか……!!

 

そんなのは絶対に嫌だ!

 

もうみんなの足を引っ張るなんてまっぴらだよ!!

 

 

 

 

もしかしたらそーちゃんが目覚めないかもしれない……?

 

……だったら私たちの歌声で起こしてあげればいいじゃん。

 

もしかしたらそーちゃんの声が聞けなくなるかもしれない……?

 

……だったら私たちが歌にしてそーちゃんの声になればいいじゃん。

 

 

 

 

そう思った私は強い決意を胸に、チャットで自分の意思を送信した。

 

 

 

『出よう。病室にいるそーちゃんに私たちの想いが届くように……!!』

 

 

 

 

 

 




壮大が出血多量により意識不明に陥りました。

それに伴い、オリジナルストーリー部では穂乃果視点に変更。(少年マンガ的展開になる感は否めなませんが…。)


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