ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
テレビアニメ第9話分始まります。
今話から話の内容が徐々に増えて行くことが予想されます。
それでは、どうぞ。
「…………」
最終予選当日。
朝から東京にしてはかなり珍しい雪が降っていた。
希のμ'sに対する思いをみんなに打ち明け、そこからみんなで出しあったキーワードを入れ込んだ新曲を作ってダンスや歌のレッスンに明け暮れて来た私たち。
練習もサボることもなく、できることは全てしたつもりだ。
かといって今日まで順調にやって来たか、と問われればみんなはきっと首を横に振るはずだろうと私は思う。
何故なら今まで私たちとラブライブ優勝という目標を共に歩んできた壮大の意識がまだ戻っていないのだ。
峠は越えたというものの、顔にこそ出さないけれどみんな壮大のことを心の底から心配しているに違いない。
だから今日は最終予選が終わったら、みんな一緒に迷惑も承知で壮大の病室へと押し掛けるつもりだ。
そのためにはまず最終予選で現王者であるA-RISEや他のグループにも勝たなくては…。
でも…、私たちは本当に勝てるのだろうか?
「……お姉ちゃん?」
寝起きの状態から櫛で髪を鋤いてからいつもつけているシュシュでいつもの髪型にしていると部屋のドアが開き、廊下から亜里沙がやって来た。
「亜里沙…。おはよう」
「おはようじゃないよ!行かなくていいの?穂乃果さんたちはもう出たって雪穂が…」
亜里沙が話してきたのは穂乃果たちの行動の事だった。
私は亜里沙に事情を説明する。
「大丈夫よ。穂乃果たちは今日学校で説明会があってそこで挨拶しないといけないから、1度学校に行って、それから会場に来るのよ?」
私はそう言いながら外を眺めて体をゆっくり伸ばす。
すると…、
「ねぇお姉ちゃん?」
「ん?なぁに亜里沙?」
「……緊張してる?」
「えっ……?」
「バレエのコンクールの時と同じ顔…してる」
亜里沙に指摘され、ガラス越しに映る自分の顔をみる。
そこには私の表情はμ'sに入る前の……『生徒会長としての責務を果たさないといけない』と考えていた頃の表情になっていた。
すると亜里沙が近づいて私の左手をギュッて握りしめてきた。
亜里沙の手の温もりが私の手から伝って身体や心にじんわりと温もりを感じた。
「大丈夫!みんなお姉ちゃんの味方だよ!」
その時、私が抱いていた緊張感や恐怖心が消えていく。
そうだ。
私はもう1人じゃない…。
「ありがとう、亜里沙」
私は頬を緩ませ、亜里沙の頭を優しく撫でる。
すると玄関に備え付けられているインターホンが鳴った。
玄関のドアを開けると…、
「希…」
マフラーと手袋を身に付けた希が立っていた。
「まだ着替えてなかったん?」
そう指摘され、まだ寝ていたときの服装だったことに気が付いた。
「ちょっと待ってて…、すぐ用意してくるわ」
「えりち…」
妙に深刻そうな声で呼び止められたので振り返る。
「もしかして緊張してる?」
「…さっきまでね!」
希を待たせちゃ悪いから急いで着替えるために中に戻る。
「あっ…、準備ができるまで中に入って待ってる?」
「じゃあ…お言葉に甘えてっ!」
どうやら希でもこの寒さは堪えるらしい。
希は笑顔で私の家に入った。
~Side 星空 凛~
「寒いにゃーっ!!!」
凛はかよちんと一緒に真姫ちゃんの家の前で真姫ちゃんが来るのを待っていた。
かよちんはタイツを履いているけど、凛は膝下のソックスを履いていて足が剥き出しになっているので余計に寒く感じる。
なのでその場で真姫ちゃんを待ちながら足踏みをする始末。
うぅ……、こんなことになるのならかよちんと同じタイツを履いてくればよかったにゃ…!!
「こんな天気でホントにライブなんてやるのー!?」
「予定通りあるみたいだよ?」
「えぇー!?」
ホントにやるの!?
こんな天気なのに!?
「お昼頃から晴れる予報だし大丈夫じゃないかって…」
「寒いだけでも辛いにゃーっ!!」
その場で飛び跳ね、理不尽だけどお天道様に抗議する。
「でも、凛ちゃん」
「ん?」
「頑張ろうねっ!」
かよちんに言われさっきまでかんがえていたことが何処かへ吹き飛んでいった。
「もちろんにゃ!」
寒いけどこの日のために…、みんな同じ夢に向かってここまで来たんだ。
かよちんに向かってグッと握り拳を作ると、真姫ちゃんの家の門が開いた。
「お待たせ」
「お待たせじゃないにゃ!!遅いよー!!」
ようやく準備が整った真姫ちゃんが凛たちの前にやってきた。
「言ったでしょ?だから待っててくれなくてもいいって…」
「むーっ…、にゃっ!!」
凛はそんなつれない態度を取る真姫ちゃんの両頬を挟み込んだ。
「冷たっ!!」
「待たせた罰だ…よっ!!」
真姫ちゃんがパタパタ暴れながら抗議するけどそんなこと知ったこっちゃないにゃ!!
「離しなさいよ!!それにしょうがないでしょ!!」
手を離すと右手には傘を持っているけどその他に買い物袋がぶら下がっており、左手には小さな赤いお弁当袋を持っていることに気が付いた。
「…どうしたの?」
「これ…。マ…、お母さんがみんなにって……」
「……これは?」
「カツサンドよっ!!」
真姫ちゃんが凛たちに押し付けるようにお弁当袋の中に入っている物を強調する。
カツを食べて試合に勝つって奴かにゃ……?
真姫ちゃんのお母さんもシャレが聞く人みたいだにゃ!!
「それに…、凛と花陽も壮大のお見舞い行くでしょ?」
「「えっ……?」」
「今日が最終予選なんだもの。試合前に自分の心を確認するのも悪くないでしょ?」
凛たちは一度顔を見合せてから、真姫ちゃんの提案に対して大きく頷いた。
Side out
~Side 矢澤 にこ~
「にっこにっこに~!」
「にっこにっこにー!」
こころとここあが最終予選を控えているにこのために応援してくれている。
でも何だか違うような気がする…。
ここは1発お手本を見せないといけないわね……!!
「にっこにっこにー!!」
「「おぉー!!」」
フフン!にっこにっこにーはこうやってやるものよ!
こころとここあが感嘆している声を聞き、少し鼻が高くなる。
「やっぱり本物は違うね!!」
「えぇ!さぁ、もう一度お姉さまにエールを送りましょう!」
「うんっ!にっこにっこにー!」
「にっこにっこにー!」
こころとここあが一生懸命にこにエールを送っており、その感激のあまり両腕を広げてこころたちを包み込むように抱き締める。
「絶対最終予選突破するからね!」
「そうですよね!お姉さまがいてのμ'sですもんね!」
「ぅえっ!?」
「一緒になったと言ってもお姉ちゃんがセンターなんでしょ?」
「えぇっとぉ……、当然でしょ!?私が居なければμ'sは始まらないんだから!」
同い年の絵里や希に比べて一回りも二回りも小さい胸を張って宣言する。
はい、そこ。
何か言いたいことがあるならいいなさいよ。
私だって好きで貧乳になった訳じゃないんだからね?
誰かに向かって言い訳していると、ベランダに続く窓が勢いよく開いた。
「ヒィッ!?」
私は驚きのあまり、ビックリした拍子に思いっきり尻餅をついてしまった。
「いったぁ…、って!?虎太郎!?」
「静かにしなよ!」
ここあが注意するも、虎太郎は『出来た』の一言だけしか言わなかった。
「え?」
出来た?
何が出来たというのだろう……?
ベランダまで見に行ってみると、そこには私をセンターにした横一列に並んだ9体の雪だるまが飾られていて、少し離れたところに少しだけサイズが大きい雪だるまも飾られていた。
「これって…」
「μ's……」
虎太郎も虎太郎なりに私たちへのエールを送っているのだろう。
それを察した私は虎太郎の頭に手を添えてお礼の言葉を述べる。
「ありがと」
「頑張れ~…」
「うんっ。お母さんに会場まで連れてきて貰いなさい」
隣に座っていたこころにも虎太郎と同じように頭の上に手を添える。
「私がセンターで思いっきり歌うから!」
「ホント!?」
ここあが『センター』という単語を聞き、目を輝かせる。
だってμ'sは……。
「だってμ'sは……全員がセンターだから!」
意気込みをこころたちに語っていると、インターホンが鳴った。
「誰だろ?」
「私が見てくるわよ」
玄関のドアまで駆けていき来客を確かめるように小さく開けると、思わず眉間にシワを寄せる。
何故ならそこには…、
「にこっち!おはよ!」
防寒具を身に纏った絵里と希が立っていたからだ。
「なんであんたたちが来るのよ……」
門前払いで玄関のドアを閉めようとするも、希のローファーでドアを閉めないように妨害する方が速くて思わず驚嘆の声をあげた。
「希がね…3人で行きたいって」
「なんで!?」
声を荒げて理由を聞き出す。
なんで3人で行きたがっているのか意味が分からない。
「うちやないよ…、カードがね。一度くらい3人で行かないと後悔が残るかもしれないって…」
「何よそれ……」
相変わらずのとんでも理論ね…。
「相変わらず素直じゃないでしょ?」
素直じゃないのは希だけじゃないわよ。
まったく…、この2人はいつも素直じゃないんだから。
少しくらいにこみたいに素直になってもいいんじゃないかしら?
「待ってて。すぐ準備するわ」
ドアを閉めようとするけど、このまま冷え込んでいる外で待たせるのも気が引けてしまった。
「外寒いんだから…、中……入ってなさいよ」
「ふふっ…、それじゃあお言葉に甘えて上がらせてもらうわ」
「ほな、お邪魔するでにこっち!」
「ふんっ!」
感謝の言葉に私は小恥ずかしくなり、そっぽを向く。
そして私は絵里や希を待たせるのも悪いと思い、最終予選の会場へ向かう為の準備をしに部屋に戻る。
まぁ、でも…。
絵里と希…3人で一緒に行くのもなんだか悪くない気がしてきたわね…。
「あっ……。ねぇ、えりち。にこっち……」
「ん?」
「何よ?」
「えっとね…、会場に行く前にちょっと寄りたい場所があるんやけど……」
Side out
「「「あ……」」」
「「「ん……?」」」
西木野総合病院内…壮大の病室の前。
希が『壮大のお見舞いをすることで自分たちの心を確認しよう』、と提案してきて私たちは壮大のお見舞いにやってきた。
スライド式のドアを開けるためドアの取っ手に手をかけようとすると、反対側からも取っ手に手をかけようとしている人がいた。
「絵里ちゃん…?」
「希に…にこちゃん?」
「凛に花陽…真姫まで!?」
「どうしたん?凛ちゃんたちもお見舞い?」
事情を聞いてみると、凛たちも私たちと同じ考えだったようだ。
ここにいても仕方ないので壮大の病室に入る。
ベッドの上で横になっている壮大はまだ目を覚ましておらず、私たちは壮大を取り囲むように立つ。
「壮大。今日はいよいよ最終予選よ。今日で夢の続きが見られるのか決まるわ」
6人を代表して私が壮大に語りかける。
「正直私は今日を迎えるのが怖かった。『もしかしたらA-RISEや他のグループに負けるんじゃないか』って……」
心が押し潰されそうにもなったこともある。
でも、朝起きたときに亜里沙の顔や希の顔を見て恐怖心は無くなった。
「でも、私たちが今までやって来たことが無駄じゃないって事を私たちが証明してみせるわ」
じゃないと…、私たちの晴れ舞台見逃すことになるわよ?
目を覚ましてないから聞いていないかもしれないけど、私から壮大に言いたかったのはこれだけ。
その後もそれぞれが自分の想いを目を覚まさない壮大に伝え、みんなで顔を見合わせてから壮大の病室を後にした。
オレの心音に合わせて電子音が鳴り響く。
ついさっき誰かが来ていったみたいだ…。
でもそれが誰なのかは分からない。
そして冷えきっていたはずの感覚が徐々に戻ってくるのが分かった。
そして…、
「うぅっ……」
瞼に光が差し込み、眩しさで目を開いた。
オレは人知れず誰にも気付かれずに長き眠りから目を覚ました。
壮大、復活!
でもまだメンバーのみんなは壮大が復活したことは知りません。
なんで伝えないのかって?
だってせっかく結束が強くなっているのに目を覚ました、って連絡が入ると緊張の糸が切れちゃうかもしれないじゃないですか。