ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
相変わらず話の終わり方が強引ですけどね…。
それでは、どうぞ!!
雪穂と亜里沙ちゃんが病室から退室していったのを見計らって検診の時間だったみたいで、若いナースさんにオレが目を覚ました事が驚きのあまり急いでナースステーションに戻って報告しにいった。
それからというもの、身体の異常がないかを確かめるためにいろんな検査をするためにストレッチャーに乗せられたまま総合病院内を駆け巡りようやく落ち着いた頃にはすっかり夜になっていた。
今日の分はひとまず終わりみたいだけど、明日になってもまだまだ検査しないといけない物も残っているみたいだ。
ようやくベッドで一息つき、スマートフォンを操作して日本国内最大級の動画投稿サイトへアクセス。
「最終予選…、最終予選っと……。おっ、あったあった」
現在進行形でラブライブ最終予選の東京ブロックのライブ中継がやっており、オレはスマートフォンを横にして視聴を開始する。
今は3チーム目のMidnight Catsのパフォーマンスタイムとなっていて、右から流れてくるコメントを見る限りだとMidnight Catsの前はA-RISEのパフォーマンスタイムだったみたいだ。
やはり、と言うべきなのかA-RISEの圧倒的パフォーマンスを前にし、緊張の渦に巻き込まれたMidnight Catsは緊張で動きに固さが見られる。
何とかパフォーマンスをし終えたMidnight Catsだったが、ミスを挽回しようとする焦りから生まれるミスを、という負のスパイラルを前に心をへし折られ肩を落としながらステージを後にした。
そして最後のグループのパフォーマンスタイム。
最終予選のトリを飾るのは…、
『次のグループは音ノ木坂学院スクールアイドル…、μ'sのみなさんです!!』
~Side 高坂 穂乃果~
最終予選もいよいよ大詰め。
私たちμ'sの出番だ。
ステージから見える人の数はびっしりと埋まっていて、観に来てくださったみんなが私たちの名前を呼んでくれている。
それに答えるように、私はこの最終予選を見に来てくれている人たちに挨拶を始める。
「みなさんこんにちは!音ノ木坂学院スクールアイドルの『μ's』です!これから歌う曲は、この日に向けて新しく作った曲です!たくさんの『ありがとう』を込めて歌にしました!」
新曲。
その単語を聞いて観客は大いに盛り上がった。
私は盛り上がりが収まったのを見計らって挨拶を続ける。
「応援してくれた人、助けてくれた人がいたおかげで…私たちは今、ここに立っています!だからこれは…みんなで作った曲です!」
「「「「「「「「聞いてください!」」」」」」」」
学校が大好きで……
音楽が大好きで……
アイドルが大好きで……
踊るのが大好きで……
メンバーが大好きで……
この毎日が大好きで……
頑張るのが大好きで……
歌うことが大好きで……
μ'sが大好きで……
そして、誰よりも優しくて私たちを支えてくれる彼が大好きだったから……!!
だから…届け!
私たちの想いを乗せた…、この歌を!!
Side out
『Snow halation』
それがオレたち10人で作り上げた新曲のタイトルだった。
冬らしくベルやストリングスを用いた叙情的なメロディーに加え、冬の切なさを押すようなボーカルを載せたナンバーに仕上がっていた。
それを歌い上げるみんなも心から楽しそうに歌ったり踊ったり…。
ハハッ…、海未なんて無邪気な笑顔浮かべながら踊ってるよ。
流れてくるコメントも眺めていたりしているうちに2番の歌を歌い切り、曲は一旦間奏に入った。
この流れからするとラストサビの歌い出し…、そこがこの曲の一番の魅せ処だと直感が告げている。
刻一刻と曲は進行していき、みんなが次々に耳に手を添えるパフォーマンスをしていく。
(行くよ…、そーちゃん……)
聞こえるはずのない声と共にラストサビの歌い出したのは、この曲のセンターポジションとして歌っている寒さなのか、はたまた別の感情によって頬を赤く染めている穂乃果だった。
ラストサビの歌い出しを完璧に歌い切ると…、ステージの飾りだと思われていた青白く光るゲートが瞬く間にオレンジに輝き出した。
「……すっげ」
オレは感動のあまり、言葉にすることが出来なかった。
ゲートの演出や降ってくる雪の白さも相まって、ステージで躍動する9人のメンバーは紛れもなく女神に見えた。
会場と流れてくるコメントのボルテージがMAXになったままみんなは『Snow halation』を完璧なまでに歌い切り、そしてオレは感極まって涙を流した。
まさか穂乃果たちに泣かされるなんて夢にも思ってなかったぜ…。
近くに置いてあった箱ティッシュに手を伸ばし、鼻をかんで涙を拭いたりしていると結果発表の時間帯になった。
映像で見ているオレですら緊張しているのだから、会場にいるみんなはもっともっと緊張しているに違いない。
『優勝グループは……!!』
司会者が優勝グループの発表と共にドラムロールが流れてくる。
A-RISEの3人はどこか達観したような顔付きで…、それ以外の3グループのみんなは自分たちのグループ名が呼ばれることを祈りながら発表を待っていた。
『優勝グループは……!音ノ木坂学院スクールアイドルμ'sのみなさんです!!』
一瞬の静寂の後、オレは両手を握り締めて病室の天井に向かって高々と突き上げた。
勝った……!!
A-RISEに勝ったんだ…!!
~Side 綺羅 ツバサ~
「………」
優勝グループが私たちでは無いことを知った瞬間、私は雪が降り続ける空を見上げた。
私たちは一次予選から今日に至るまで手を抜いてレッスンをしてきたつもりはなかった。
それなのに……負けた、それも生まれて始めて…。
形容しがたい胸の痛みだ…。
とてもではないが、これ以上この場にいては涙が止めどなく溢れてきそうだ。
「……行きましょう。英玲奈、あんじゅ」
「いいのか?ここから立ち去っても……」
「いいのよ。今この場は勝者だけのものよ。敗者は……大人しく退場するべきだわ」
私は優勝した喜びを分かち合っているμ'sのみんなを肩越しに見てから、背を向けて歩き出す。
英玲奈とあんじゅも空気を読んで私の後ろに続く。
勝ったμ'sに負けた私たち。
もし差がついたとするならば、それはきっと……。
Side out
最終予選の生配信も終わり、本格的にやることがなくなったので病室の電気を消して窓からライトアップされている街並みを眺めていると廊下からドタドタと走ってくる音が聞こえてきた。
どこかの病室に入っててお見舞いに来たガキんちょのせいなんだろうが、病院の中走ったら危ねぇぞ?ナースさんに怒られても知らんぞー?と思いつつ、景色を眺め続けてるとその足音がオレの病室の前で止まった。
コンコンコンッ、とドアをノックする音が3回響く。
病室のドアが開き、消していた電気のスイッチが入る。
「……えっ!?」
一番最初に入ってきた真姫が驚きを隠せず、手に持っていた自分の荷物を床に落とす。
「真姫!?どうしたの……です…か……?」
「真姫ちゃん?どう…した……の?」
続いて海未とことりも病室に入ってきて、2人とも真姫と同様に動きが止まった。
「…ぃよっ。真姫、海未、ことり……」
先に入ってきた3人に続いて、残りのメンバーもオレの病室にわらわらと入ってきた。
やっぱりみんな真姫や海未たちのようなリアクションを取ってから、オレが目を覚ました事に安堵の溜め息をつくメンバーもいれば病院だと言うことも忘れて抱きつこうとするメンバーなど様々なリアクションを取っていた。
その中でも穂乃果だけは何もリアクションせず、顔を俯かせたまま病室に入ってきたのは気掛かりだけど…。
「それでそーくんは何時頃に目を覚ましたのかにゃ?」
「何時頃だったかな…。昼過ぎの暴風雪が吹く前だったってのは覚えてるんだが……」
「ってことはことりたちが学校を出る少し前くらいってことだよね?」
「そういうことになりますが、それにしても壮大って意外と薄情なんですね」
「え?」
薄情?
何でそう言われたのか分からず、首を傾げているとにこちゃんが溜め息をつく。
「海未が言いたいのは、最終予選のライブ映像を見たんなら見たって言えってことよ。そうでしょ?」
にこちゃんの解説に海未だけじゃなく、穂乃果以外のメンバー全員が一斉に頷いた。
「あ、いや…。それは……」
「にこちゃんに言い負けそうになってるそーくん初めて見たにゃ」
「ぬぁんですってぇ!?それじゃあにこは常に壮大に言い負けてるってことじゃない!!」
「いつも言い負けてるじゃない」
「なぁっ!?」
一連のやり取りが面白かったのかみんなはクスクスと笑い出すけど、やっぱり穂乃果だけは何の反応もしてくれない。。
うーん…、どうしたもんか…。
「あっ、そうや。壮くん何か食べたいものはない?」
「いや、特にはないですけど…」
「別に遠慮せんでもええよ?それにみんなの分の晩御飯も買ってこないといかんからね?」
そう言ってバッグの中から財布を取り出し始めるのんちゃん。
「じゃあ、のんちゃんのお任せで」
「あっ!それなら凛が選んであげるにゃ!!」
「ほな、みんなで行こっか!!ほらみんなも立って立って!」
何人かは腑に落ちない感じの表情をしてたけど、きっと穂乃果の事で気を遣ってくれたのかみんなはイスから立ち上がって一旦病室から出ていった。
パタン、とドアが閉まって病室の中はオレと穂乃果の2人きりになった。
そして今の今まで閉じたままだった穂乃果の口が開いた。
「どうして…?」
「ん?」
「どうして…あの時私を庇ったの?」
あの時。
穂乃果が聞きたいのはオレと穂乃果が不審者に襲われた時の事に違いないだろう。
でも、改めてどうして?と聞かれても理由が思いつかない。
だから思ったことを繋ぎ合わせ、ありのままに語った。
「何でだろうな…。咄嗟に身体が動いちまったんだよ。今考えてみれば『穂乃果を守らなくちゃ』とか『穂乃果の笑顔だけは守らなくちゃ』とかだったんじゃないかって……」
穂乃果自身は守ることが出来たけど、穂乃果の笑顔までは守ることは出来なかった。
そしてオレの意識が無くなった、と聞いたときは人が変わったように笑わなくなった……正確に言えば笑っているんだけども、心の底からの笑顔ではなかったって雪穂から聞いている。
そして今も……、今にも泣き出しそうな顔でオレを見つめてきている。
「なぁ、穂乃果。もう少しオレの側まで来てくれねぇか?」
手招きをする。
それを見た穂乃果は一旦イスから立ち上がり、オレの真横に来るようなポジションにイスを置いて再度座った。
穂乃果がイスに座るのとほぼ同時に彼女を優しく抱き締めた。
「……どうしたの?」
「ちゃんと守ってやれなくてごめんな、穂乃果」
その言葉を聞いた穂乃果は、みるみるうちに目を潤ませていく。
そして…、
「ぐすっ…、ううっ……うわぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」
火がついたように泣き出した。
「怖かった…!!もう…そーちゃんの声が聞けないんじゃないかって思ってた…!!」
「うん…」
「これがみんなで結果を残せるのはこれで最後かもしれなかったのに…こんなに頑張ってきたのにそーちゃんが隣にいなかったのが何よりも悲しくて……怖かったよぉ!!」
「うん…、うん……」
「うわぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」
それから穂乃果は延々と泣き続けた。
きっと今の今まで誰にも打ち明けることがなかった感情が溢れ出てきているんだろう…。
だからオレは泣き止むまでずーっと穂乃果の頭を撫で続けた。
穂乃果が安心するまで、ずっと…ずっと…。
「ぐすっ……」
暫くしてから穂乃果は泣き止み、涙を拭きすぎて擦りすぎて目の回りが真っ赤になっている。
「涙は止まった?」
「うん……」
鼻をすすりながら答えた。
「改めてだけど……ちゃんと守ってやれなくてごめんな?」
「ヤダ。許さない」
即答で否定され、思わず右肩を下げてしまった。
「なんで!?」
「だってそーちゃん勝手なんだもん!ムカつくんだもん!!惚れた弱味に漬け込んで!!!」
「はぁ!?」
いきなり何訳分かんねぇこと言ってんだよこいつは!!!
「そーちゃんが『それ相応の誠意』ってやつを見せてくれない限り穂乃果は許す気にならないもーんだっ!」
言いたいこと言ったきり、そっぽを向かれてしまった。
っつーかそれ相応の誠意って何だよ!?
穂乃果の大好物のイチゴのタルト1ヶ月分とかそんなんか!?
えぇ~…?
全ッ然思い付かねぇ…。
頭を抱えて悩んでいると、突然肩を叩かれた。
何事かと思い顔を上げると、いつもより優しく微笑む穂乃果がいた。
その表情にドキッとしたのは内緒だ。
「いつまでも鈍感なそーちゃんのために、今回はこれで許してあげる…」
目が合った。
穂乃果は目を閉じたまま、オレとの距離が近くなっていく。
唇と唇が合わさる瞬間…。
___バターン!!!
「にゃっ!?」
「きゃっ!?」
「んっ!!」
……
唐突に病室のドアが開き、いくつかの小さな悲鳴と共にみんなが雪崩れ込んできた。
「穂乃果ちゃん!ウチたちにお構いなく張り切ってその続きをどうぞ!」
のんちゃん…、今のその発言はないと思うなぁ…。
だって勇気を振り絞っていた穂乃果が怒りでプルプル震えてるし。
「じゃ……邪魔しないでよぉーっ!!」
「穂乃果ちゃんが怒ったにゃー!!」
「だから辞めようって言ったのにぃ…、うぅ……ダレカタスケテー!!!」
「こらーっ!!待てー!!!」
凛ちゃんのセリフと花陽ちゃんのいつもの助けを求める叫びと共に一斉に逃げ出し、穂乃果が逃げるみんなを追い掛けていった。
「あっはっはっはっは!!!」
そしてオレも思わず手を叩いて笑い出していた。
こうして数々の想いが交錯した最終予選はμ'sの優勝という結果に終わった。
本戦もあと2ヶ月後と長いようで短いが、少なくとも今この瞬間はみんなで喜びを分かち合っていてもバチは当たらないだろう。
Side ???
「クソッ!クソッ!!クソッ!!!」
俺は贔屓していたA-RISEが負けたことに憤慨していた。
あれだけグッズや握手券をゲットするために巨額の金を費やしたというのに…!!
μ'sとかいうグループについている男を潰したというのに…!!
腹を立てた俺は完璧なる犯行計画を立てようとしていたその時、来客を告げるインターホンが鳴り響いた。
あぁ!?誰だよ!!
苛立ちを隠せないまま、来客に応答すべくアパートの自室のドアを開けた。
「こんばんは」
目の前に立っていたのは黒のスーツに身を包み、黒のサングラスで目元を隠している1人の男だった。
「新聞なら間に合ってるが?」
「いえいえ、新聞勧誘に来た訳じゃないんです。あなたには殺人容疑がかけられています」
まさか……!?もうバレたのか!?
いや、こいつが言っていることがハッタリという可能性もある。
「へぇ…、だったらその証拠を見せてみろ!」
すると男はタブレットを操作し、俺に見せてきた。
流れてくる映像は…、俺がμ'sのリーダーを手に持っていた包丁で刺そうとするところだった。
その映像は隣にいて身代わりとなった男が動かなくなるところで途切れた。
「被害者の近くに落ちていた体毛をDNA鑑定したところあなたのDNAとほぼ一致していました。……言い逃れは出来ねぇぞ?」
男は声色を変え、脅しに掛かってきた。
これから俺はμ'sのメンバーの誰かを殺らなきゃいけないのに……!!
こんなところで…、捕まってたまっかよ!!
「うぉらっ!!」
近くにあったハサミを握り、男の懐を目掛けて突き刺そうとした。
すると男は俺がハサミを持った腕ごといなし、そのまま外に投げられて待ち構えていた警察に捕まってしまった。
「クソッ!離せっ!!」
「男子高校生襲撃事件の犯人、確保!!」
「離せ!!離せぇぇぇぇぇえっ!!!」
男の叫びは虚しく響き、警察が運転するパトカーに乗せられて何処かへ走り去っていった。
Side out
こうして1人の高校生を襲った事件は、ひっそりと終結を迎えたのだった。
いかがだったでしょうか?
第60話を以て第3章『もう一度ラブライブへ!』を終わりにしたいと思います。
このあとすぐにでもテレビアニメ第10話に入りたい気もしますが、何話かサイドストーリーを挟んでからにします。
最終章に入る時にはちゃんと予告しますので!!
もし『こんな話を読んでみたい!』という方は気軽にお申し付けください!!
よろしくお願いします!