ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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あらかじめ言っておきます。

この話はかなり重いです。

そして絵里ちゃんファンを始めとした大多数の人に対して多大な不快感を与えてしまいます。

本当に申し訳ありません。

それでも読みたい方はどうぞ。


第6話 勇気と激昂

観客席に…、講堂にはオレたち以外に誰もいない。

 

時刻はライブ開演定刻。

 

にも拘らず誰もいない。

 

非常とまで言える静寂に支配された講堂のステージにポツンと立っている3人。

 

この場に置かれた状況を目の当たりにした3人は徐々に困惑し始めている。

 

瞬きをして、嫌でも自分が置かれている状況を理解した。

 

いや、理解せざるを得なかった。

 

そして理解した真実を受け入れざるを得ない状況に追い込まれた。

 

『誰も自分たちには期待してなどいなかった。』

 

もしオレがあの場に立っていたら発狂したくなる。

 

真実はいつも残酷だ。

 

無音という毒はゆっくりそして確実に体内を駆け巡り、無関心という槍が肌を突き刺す。

 

視線がないという鈍器がガラスのハートを容赦なく壊し、静寂という磔に身体を縛り付けられる。

 

今、ステージ上にいる3人はどのような痛みに襲われているのか。

 

いたいけな少女たちの純情を泥のついた土足で踏みにじるだけのストーリーを考え出したシナリオライターがいるのならぶん殴ってやりたいくらいだ。

 

いや、本当に殴られるべき人物はオレなのかもしれない。

 

中途半端に期待させておいて、結果的には彼女たちを傷つけてしまった。

 

オレはただあいつらの力になりたかっただけなのだ。

 

なのにこんな結末って…。

 

 

「そりゃそうだ…。世の中そんなに甘くないっ!」

 

穂乃果が声を張り上げるが、いつもの元気な穂乃果の声ではなかった。

 

ことりと海未も言葉にこそ出さないが、いつも以上に細く華奢に見えた。

 

もし可能なら今すぐにでも飛び出して抱き締めてやりたいくらいだ。

 

『すまなかった。』『もっとお前たちに協力してあげられれば。』後悔と自責の念が次々と浮かんでは消え、消えては浮かんで…。

 

そんなオレたちだったが、一人の救世主が現れる。

 

 

 

 

 

 

「はぁっ……!はぁっ……!!あ、あれ……ライブは?」

 

 

 

 

 

 

いつぞやの時に会った小豆色のフレームのメガネをかけた女の子……、花陽ちゃんだった。

 

 

花陽ちゃんはまだ状況が理解できず、困惑しているようだ。

 

「……やろう。」

 

下を向いて唇を噛み締めていた穂乃果が顔をあげた。

 

その目には涙はなく、男のオレでもカッコいいと思えるくらい前をしっかりと見据えたいい目付き顔つきになっていた。

 

「やろう…、全力で。その為に今日まで練習してきたんだから!!」

 

穂乃果の想いが届いたことりと海未も震える喉から言葉を紡いでいく。

 

紡がれた言葉は束となって勇気という糸を作り出す。

 

勇気という糸を編み込まれたものが穂乃果たちを包み込んだ。

 

それはオレの心にも例外がなく伝わった。

 

そうだ。オレが信じてやらなくて誰が信じてあげるんだ。

 

終わったことなんてその時に考えりゃいい。

 

もしあいつらを嘲笑したり卑下にするやつがいたら、例え女でも容赦無くぶん殴るってやろう。

 

だから、今はあいつらの想いを歌に乗せて聞こう。

 

こうしてμ'sの記念すべきファーストライブが静かに幕を上げた。

 

 

 

 

 

 

ファーストライブは終演を迎えた。

 

セットリストはきっと真姫が作曲し、海未が作詞したであろうナンバー『START:DASH‼』。

 

タイトルの通り、μ'sの駆け出しとなるナンバーだった。

 

未熟な小鳥のように『夢』という大空へ羽ばたくのを夢見て挑戦しようとするが力が足りずに『挫折』を経験し、『挫折』を乗り越えて『希望』が生まれ輝かしい『未来』へと変わっていく熱き情熱が感じられた。

 

最初は座って聞いていたが、次第に立ち上がり気付けばオレは涙を流していた。

 

そして講堂内では小さな拍手が送られていた。

 

最初から聞いていた花陽ちゃんと途中から入ってきた凛ちゃんだ。

 

講堂の出入り口には東條さんと様子を見に来た真姫がいた。

 

そして真ん中ら辺に黒髪をリボンでツインテールに結ってる人がコソコソとライブを聞いていた。

 

……そこまでして聞きたいのなら普通に座って聞けばいいものを。

 

どこかのツンデレ姫みたいな人だ。

 

「……それで?どうするつもり?」

 

すると階段を伝って音ノ木坂学院の制服に身を包んだアイスブルーの瞳を宿した金髪の女の人が降りてきた。

 

直感で分かった。

 

この人が音ノ木坂学院の生徒会長さんなんだ、と。

 

「続けます!」

 

穂乃果は迷いも躊躇いもなくハッキリと続行を宣言した。

 

「何故?これ以上やっても意味なんて無いと思うけど……?」

 

氷のような冷たい言葉は鋭さを増して穂乃果に襲い掛かる。

 

「やりたいからです!」

 

しかし、穂乃果は氷の鋭さを含んだ言葉を吹き飛ばした。

 

「私、もっと歌いたい!もっと踊りたい!そう思ってます!そんな気持ち初めてなんです!!やってよかったって本気で思ってるんです!!」

 

穂乃果の純粋で無垢な気持ち。

 

技も飾りもないドがつくほどストレートな言葉が故に何にも染まらない純白な言葉となってこの広い空間に響く。

 

「だから今はこの気持ちをそのまま真っ直ぐに信じてみたいんです!確かにこのまま見向きもされないかもしれない、誰からも理解されないかもしれない。……でも!一生懸命頑張って、私たちがとにかく頑張って、この想いを届けたい!!今、私たちが届けたい……、この想いを!!!」

 

「けど、今のあなたたちの実力がこれよ。」

 

生徒会長さんは講堂を見渡す。

 

「観客も満足に集められない、興味も惹いて貰えないようではいくらあなたの想いが強くても心に響かせられるのは無理だと思うけど……?」

 

 

 

 

 

 

 

「果たしてそうと言い切れるのでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

オレはステージ横からバッ!とステージを飛び降り、穂乃果と生徒会長さんの間に立つ。

 

「……あなたは?校内は関係者以外立入禁止な筈ですが?」

 

「名前を知りたければまず自分の名前を名乗るのが筋ではないでしょうか?それに入校許可なら理事長先生を通じて許可されています。証拠にホラ、腕章がありますでしょう?」

 

疑いを晴らすため入校許可証を生徒会長さんに見えるように制服の袖をキュッと内側に絞る。

 

「……絢瀬 絵里。ここ音ノ木坂の生徒会長よ。」

 

「ありがとうございます。オレは立華高校体育科2年の松宮 壮大と申します。ちなみに後ろの3人とは幼馴染に当たります。」

 

自己紹介をすると同時に穂乃果たちとの関係に首を突っ込まれそうなので先に答えておく。

 

「……あなたの幼馴染たちの『思い付きの行動』の結果がこのような有り様な訳についてどう思うの?」

 

今この人穂乃果たちの行動を『思い付きの行動』って言ったのか?

 

……人の努力をよく知らないでよくもまぁいけしゃあしゃあと。

 

っといけないいけない。

 

他校……しかも女子高で問題を起こしたらきっとオレの立場が一気に地に堕ちるだろう。

 

ここは言葉を選んでいかないと…。

 

「ではお聞きいたしますが、絢瀬さん。あなたは廃校と聞かされてからの約1ヶ月間……あなたは行動に移されましたか?」

 

「なんですって……?」

 

明らかに絢瀬さんの表情に怒りとイラつきが浮き上がってきた。

 

「オレも後ろの幼馴染……高坂の話を通じて音ノ木坂学院が廃校の危機に曝されていることを聞きました。ですが彼女たちは『スクールアイドル』という手段を用いて廃校問題に待ったをかけようとしています。」

 

「……何が言いたいのよ?」

 

「まぁ、最後まで話を聞いてくださいよ。……あなたの口振りからしてあなたは大層責任感が強い人だと見受けられます。ここからは推論ですが大方『生徒会長として独自に動かせて欲しい』…。そういう風に理事長に直訴していらっしゃるのでは無いでしょうか?」

 

「……っっ!!」

 

……ビンゴだ。

 

「ですが理事長から断られてしまい、あなたがあの手この手とやきもきしている時に高坂たちのあなたの言う『思い付きの行動』に目くじらを立てている……と。ハッキリと申し上げますがそれは……ッッ!!」

 

 

 

 

 

ーーースパァァァンッッ!!

 

 

 

オレは講堂内に響いた音によって最後まで言葉を言い切ることが出来なかった。

 

音が響き渡ってから1拍置いて、オレは叩かれたことに気が付いた。

 

「何よ……、人の気も知らないでさっきからよくいけしゃあしゃあと!!他校の生徒であるあなたに私のことや学院のことをとやかく言われる筋合いなんて無いわ!!」

 

クソが……。頭に来たぞこの野郎。

 

そっちがその気ならこっちだって言わせて貰おうじゃねぇか。

 

敬語なんて必要ない。

 

むしろ使うに値しない人物と判断した。

 

なら遠慮なんかいらねぇ。

 

「テメェ、今いけしゃあしゃあとっつったよなぁ…。」

 

言葉を切り一度息を深く吸い込み……、

 

 

 

 

 

 

 

 

「ならなんで穂乃果たちの行動を支えてやらねぇんだッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありったけの叫び声にしてぶちまけ、講堂内の空気がビリビリと振動する。

 

それを受けて穂乃果たちやまだ残っていた凛ちゃんと花陽ちゃんは肩を震わせた。

 

 

 

 

 

 

「さっきスクールアイドルを『思い付きの行動』って言ったよなぁ!!穂乃果たちだって考えに考え抜いた結果がスクールアイドルっていう答えを出したんだよ!!!それにテメェ生徒会長だろ!?だったら何で生徒の活動を応援してやらねぇんだよッ!!理解してやらねぇんだよッ!!!そんな奴に穂乃果たちの行動を『思い付きの行動』とかいけしゃあしゃあと言う資格なんてどこにもねぇんだよッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

オレは入校許可証をブレザーごと引き千切った。

 

安全ピンに止められたブレザーの一部分がビリッと破け、引き千切った入校許可証を絢瀬に向かって思いっきりぶん投げる。

 

投げられた入校許可証は絢瀬の肩に当たり、力なく落ちた。

 

 

 

「穂乃果、ことり、海未…。わりぃ、先に帰らせて貰う。ライブすげぇカッコよかったぞ。」

 

「そーちゃん!!」

 

「そーくん!!」

 

「壮大!!」

 

オレは穂乃果たちにライブの感想を簡単に伝えると制止を振り切り、あとにする。

 

「そーた先輩……。」

 

「壮大さん…。」

 

「凛ちゃん、花陽ちゃん…。ゴメンね?怖がらせちゃって。ライブ見に来てくれてありがとう。後でライブの感想聞かせてくると嬉しいかな…。」

 

「「はい…。」」

 

オレは講堂から出ると右には真姫が、左には東條さんがいた。

 

「壮大…。」

 

「真姫…、ありがとな。あいつらの為に曲作ってくれて。」

 

「べ…、別に…。」

 

そう言ったきり髪の毛先をクルクルといじりだした。

 

「……あれでよかったん?」

 

「いいんです。穂乃果たちの行動を貶した罰です。……それと、お騒がせしてすみませんでした。」

 

「ううん…。……また来てな?」

 

「……考えときます。」

 

オレは東條さんの言葉に素直に頷くことが出来ず、音ノ木坂学院を後にした。

 

こうして穂乃果たちの旅立ち…。μ'sのファーストライブはオレのせいで滅茶苦茶にしてしまった…。

 

 




いかがでしたでしょうか?

これにて第1章が終わりです。

アニメで言うと第3話までと言ったところでしょうか…。


それではまたの更新まで御待ちくださいませ…。


はぁ…。どうしてこんな重い話を書いてしまったのか…。

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