ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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新年明けましておめでとうございます。
今年もK-Matsuをどうかよろしくお願いします。

さてさて……話の内容ですが割と重い話です。

新年ムードをここで打ち砕かれてもいいというのなら……どうぞ!




第68話 想いを告げるもの、聞かされるもの

ボウリング場で遊んだ後は美術館や遊園地などといった場所を巡ったオレたち。

 

そして残すは…、

 

「次は壮大が行きたい場所?それとも穂乃果が行きたい場所に行くの?」

 

オレと穂乃果が行きたい場所を残すのみとなった。

 

穂乃果に目配せをして、発言を促す。

 

「海に行きたい……」

 

「海!?」

 

「うん!誰もいない海にこの10人だけで行ってこの10人だけしか見られない景色が見たい。……ダメ、かな?」

 

「……壮大はいいの?もし今から海に行ったら壮大が行きたい場所には行けなくなるわよ?」

 

腕時計で今の時間を確認した絵里ちゃんがオレを見る。

 

その視線に気づいたオレは静かに首を縦に振った。

 

「えぇ、別に構いませんよ?それに……」

 

「……それに?」

 

「今から海に行くのでしたら急いだ方がいいと思いますし……」

 

スマートフォンでここから一番近いビーチがあるところへ行く電車の時刻表をみんなに見せる。

 

あと10分程で電車が発車し、これを逃したら次は1時間も待たなければいけない。

 

「話し合っている暇はないっスよ!!」

 

オレが走り出したのを合図にみんなほぼ同時に電車が発車する駅に向かって全速力で走り出した。

 

 

 

 

 

『1番ホーム電車が発車いたします。白線の内側までお下がりください』

 

駅構内に流れるアナウンスが終わると同時にドアが閉まり、徐々に電車が動き出す。

 

「何とか…、間に合ったわね……」

 

「そうだな。ギリギリ間に合ってよかった」

 

「……その割には余裕そうに見えるけど?」

 

「リハビリが順調だってことで」

 

息も絶え絶えながらも恨めしそうに見てくる真姫に電車に乗る前に買っておいたミネラルウォーターを手を渡す。

 

駅構内の階段に誰もいなかったことが幸いし、下り階段のおよそ半分辺りからジャンプして一番乗りで電車に到達した。

 

その時点で発車まで少し余裕があったので自販機でミネラルウォーターを買ったと言うわけだ。

 

みんなはちょっとした冒険に出るような気分でキャイキャイはしゃいでいるなか、1人だけポツンと座って流れる景色を眺めている穂乃果の元へ向かう。

 

「隣…、いいか?」

 

「うん。いいよ」

 

穂乃果から快諾の返事を聞き、隣に座る。

 

「覚悟は……出来てるか?」

 

「……うん」

 

少し経ってから思い切って尋ねてみると、穂乃果は景色を眺めたまま返事をする。

 

その返事を聞いてからお互い何も話さずに電車に揺られていると、目的地の海が見えてきた。

 

電車が駅で止まり、オレたちは電車から降りてから改札を出る。

 

少し歩いていくと近くに荷物が置けるようなベンチがあったので、そこに荷物を置いてから海岸線へと向かう。

 

「「「「「「「「「わぁ……!!」」」」」」」」」

 

海の景色を見てみんなが感激の溜め息を漏らす。

 

「ちょうど夕日が沈むところにゃ!」

 

「スピリチュアルパワーのおかげやね!!」

 

「こういう時は日頃の行いがモノを言うのよね!」

 

凛ちゃんとのんちゃんとにこちゃんが真っ先に海へ走って行き、遊び始めた。

 

「あははははっ!」

 

「きゃーっ!」

 

「冷たーい!!」

 

みんなは冬だということを忘れ、水をかけて遊んだりじゃれあったりするなか穂乃果だけはみんなの輪には加わらずに1人だけ少し離れたところで見ていた。

 

「穂乃果、聞かせてくれ。お前たちの答えを……」

 

「うん……。そーちゃんもちゃんと聞いててね?」

 

穂乃果と一緒にみんなの輪に加わるように歩き出し、海未とことりの手を繋いだ。

 

それに気づいた残りの6人も手を繋いで、夕陽が沈みかける海に向かって横1列になって並ぶ。

 

オレはその後ろでみんなを見守るポジションに立った。

 

「合宿の時もこうやって朝日見たわね…」

 

「そうやね……」

 

絵里ちゃんとのんちゃんは夏の合宿の時の事を口にしていた。

 

夏の合宿、か…。

 

まだ半年前の出来事なのに随分と懐かしさを感じる。

 

ことりの留学騒動や第2回大会の開催……さらには第1回大会の王者にきて絶対王者であるA-RISEを破って本戦に進出することができた。

 

そんな中みんなは数多くの事を学び……時にはメンバー同士の衝突もあったけれど、それを乗り越えて成長してきた。

 

そんなみんなの背中は……とても大きく見えた。

 

少しの沈黙後、とうとう穂乃果が口を開き始めた。

 

「私たち話したんだ。あれからみんなで集まってこれからどうするかを決めたの。希ちゃんとにこちゃんと絵里ちゃんが卒業したらμ’sをどうしていくかって…」

 

「穂乃果……」

 

「1人1人どうするかを考えに考えて意見を出し合った。そうしたらみんな一緒だった……、みんな同じ答えだった。だから…!だから決めたの……!!そうしようって…!!」

 

そして穂乃果の言葉の続きを待った。

 

「言うよ?せー……、うぅっ…!」

 

感極まって言葉を1度詰まらせる。

 

オレはそんな様子を見かねて穂乃果の頭を優しく撫でる。

 

「そー、ちゃん?」

 

後ろを振り向いて確認してきた穂乃果に向かって無言で頷く。

 

伝えたいことが伝わったのか大きく頷いてからもう1度海に向かった。

 

そして……、

 

 

 

 

 

 

「この大会が終わったら!μ’sは…お終いにします!!!」

 

 

 

 

 

声高らかに宣言し、オレは聞いたと同時に天を仰いだ。

 

そうか…。やっぱり終わりにするんだな……。

 

大方予想していた通りだったとはいえ、やはり本人たちの口から出てくるだけあってそれ相応の重みがあった。

 

その重みのある宣言を聞いた3年生の反応は様々だった。

 

下を向くのんちゃんに、下級生たちに目を向ける絵里ちゃん。

 

そしてにこちゃんはオレと同じように天を仰いでいた。

 

「やっぱりこの10人なんだよ。この10人が『μ's』なんだよ…」

 

「誰かが抜けて…誰かが入って…。それが普通なのは分かっています」

 

「でも、私たちはそうじゃない…」

 

「μ'sはこの10人…」

 

「誰かが欠けるなんて考えられない…!」

 

「1人でも欠けたらそれはもう『μ's』じゃない!」

 

1・2年生の6人はそれぞれが思っていることを打ち明ける。

 

「そう…」

 

「絵里!!」

 

「そうやね…」

 

「希まで…!!」

 

絵里ちゃんとのんちゃんはその思いを聞いて、汲み取った。

 

「そんなん当たり前やん。うちがどんな気持ちで……どんな想いで見てきたか…。『μ's』という名前を付けたのか…分かるやろ?うちにとってはμ'sはこの10人だけなんよ……」

 

「そんなことは分かってるわよ……!私だってそう思ってるわよ…!!でも…!!私がどんな想いでスクールアイドルをやってきたか分かるでしょ?3年生になって諦めかけてて…それがこんな奇跡に巡り会えたのよ!?」

 

にこちゃんは感情を表に出し、夕陽を背にするようにしてみんなの前に立った。

 

「こんな素晴らしいグループに…、かけがえのない仲間に巡り会えたのよ!?終わっちゃったら…、もう…」

 

「だからアイドルは続けるわよ!」

 

泣き崩れそうになるにこちゃんの前に真姫が駆け寄る。

 

「絶対約束する!何があっても続けるわよ!」

 

「真姫……」

 

「でもμ'sは私たちだけのものにしたい!にこちゃんたちがいないμ'sなんて嫌なの…!私が嫌なの!!壮大だってそう思うわよね!?」

 

涙ながら話す真姫からのキラーパスを受け、みんなは向かって後ろに立つオレに視線を向ける。

 

その視線の熱に押されつつ、オレが思っていることを話し出す。

 

「そうだな…。オレも穂乃果と真姫に相談を持ち掛けられた時には『お前らで結論を出せ』と言った。でも、よくよく考えたら今までこの10人で様々なことを乗り越えてきた。……思い出として残しておいた方がいい時もあると思う」

 

今までみたいにくだらないことでもバカみたいに笑いあったり、辛かった事や嬉しかったこと……その全てがμ'sには詰まっている。

 

つまり『μ's』という存在は……オレたち10人で作り上げたものだ。

 

他の人が介入してグループ内の色が変わるくらいなら……いっそのことオレたちの手で終わらせたほうがいい。

 

今のオレにとってμ'sはそれくらい大きな存在だ。

 

「……と言うわけだ。だからオレも穂乃果たちの意見を尊重したい」

 

「壮大もそう思ってたのですね…」

 

海未の問い掛けを最後にオレたちは誰も喋ることなく黙りこんでしまった。

 

誰かが泣き始めればその誰かに釣られて一斉に泣き出してしまうような雰囲気がオレたちを包む。

 

「あーーーっ!!!」

 

そんな雰囲気を粉々に壊すように穂乃果が大きな声で叫ぶ。

 

「どうした?」

 

「電車!早くしないと電車なくなっちゃう!」

 

穂乃果はそう言うといの一番に駅へ向かって走り出した。

 

スマートフォンで時間を確認してもまだ時間に余裕はあるが…?

 

そこまで考えて穂乃果の意をなんとなくだけど分かった。

 

あいつ…、このままだと泣き出してしまうからそうなる前に自分から強引に……。

 

フッ、と小さく笑ってからみんなに向かって大声で叫ぶ。

 

「オレたちも穂乃果の後を追い掛けんぞ!!駅まで走ってオレに勝った人にはジュースでも何でも奢ってやるぞ~!!」

 

「壮大まで!?待ってください!!」

 

「何でも!?そーくん待つにゃ~っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海岸線から走って駅に戻ってきた。

 

海からの潮風を浴びてみんな髪がボサボサだ。

 

「電車は……まだまだあるわよ?」

 

「えっ?じゃあ…」

 

「えへへっ…みんな騙してごめんね?」

 

「穂乃果ちゃん……」

 

穂乃果のウソにまんまと踊らされたみんなは呆れた表情をするものもいれば、騙されたといった表情をするものもいた。

 

「まったく…、みんなを騙すくらいならもっとマシなウソをつけ!」

 

「ぁいたっ……」

 

穂乃果の額にデコピンを喰らわせ、その様子を見たみんなはクスクスと笑う。

 

「でももうちょっと見てたかったな〜」

 

名残惜しそうに凛ちゃんは話す。

 

「でも、よかったんじゃないですか?10人しかいない場所に来られましたし……」

 

「そうね。今日あそこで海を見たのは私たち10人だけ……。そして今この駅でこうしているのも私たち10人だけ…」

 

「なんだか素敵だね」

 

「だったら記念に写真撮らない?」

 

穂乃果はここに来た記念に写真を撮ろうと提案してきた。

 

「写真ならオレがカメラマンとして撮ってやろうか?」

 

「それじゃなくて……あれ!!」

 

ジャケットのポケットからスマートフォンを取り出そうとするが、穂乃果に止められた。

 

そして代わりに穂乃果はとある機械に向かって指差していた。

 

まさかとは思うが…。

 

「あれでみんなで撮ろうよ!記念に!!」

 

「……はぁ!?」

 

「いいじゃんいいじゃん!減るもんじゃないし!!」

 

強引に腕を捕まれて引きずられるように連れていかれたのは……証明写真を撮る撮影機。

 

そして穂乃果の後に続いてゾロゾロとみんなが証明写真の中に入ってくる。

 

だが、証明写真を撮る機械の中は狭いので……。

 

「痛い痛い痛い!!」

 

「ちょっと!押さないでよ!!」

 

「きゃっ……!壮大!!どさくさに紛れて私の胸揉みましたね!?」

 

「お前のポジション最前列だろ!?オレ最後尾にいるのにどうやったらお前の胸を揉みしだけるのか小一時間問い詰めたいんだけど!?」

 

「そう言いながらも凛のお尻触らないでほしいにゃ~っ!」

 

「だから!オレは何もやってないって!!」

 

「痴漢はみんなそういうにゃ!!」

 

「誰が痴漢だ!?」

 

まぁ……、こうなるわな。

 

一部のメンバーからは痴漢扱いされたことに傷付いたのは秘密だ。

 

「ほらみんな始まるよ!」

 

穂乃果の言葉と同時にシャッターの音が聞こえた。

 

 

 

 

 

「プッ…、にこちゃん頭が見切れてる…」

 

「フフッ…、真姫ちゃん変な顔だにゃ!」

 

「凛だってこっちの手しか写ってないでしょ?」

 

「にこっちぃ…、いくらなんでもこれはないやん?」

 

「あえてよ!あえて!!」

 

「これ私の……髪?」

 

「フフッ…、なんですかこれ?」

 

「フフッ…。見てこの希……にこの顔がヒゲみたいになってる」

 

「そーちゃん写真でも肌黒いね……」

 

「肌黒い方がスプリンターっぽいだろ?」

 

「でもこの黒さは日焼けサロンでもいかないと出ないような黒さよ?」

 

「そーくんが日焼けサロンって……、似合わないにゃ~!!」

 

切符を買ってからついさっき撮った証明写真をみんなで見て、みんなで笑う。

 

「っと…、少し飲みモン買ってくる」

 

「電車もそろそろ来ますし早めに戻ってきてくださいね?」

 

「おう」

 

オレは今いる場所から少し離れたところに設置された自販機の元へ歩いていく。

 

小銭を入れて普段はほとんど飲まないホットの缶コーヒーのボタンを押す。

 

プルトップを起こしてから缶に入っている中身を煽った。

 

……はずだったのに。

 

「……あれ?」

 

コーヒー特有の苦味ではない……何か別の味を感じたのでもう1度缶の中身を煽る。

 

「何で……コーヒーがこんなにしょっぱいんだ?」

 

まだ中身が残っている缶を振るいながら首を傾ける。

 

__うわぁぁぁぁぁぁん!!!

 

向こうからにこちゃんが泣き叫ぶような声が聞こえてきた時にようやく分かった。

 

あぁ…、そっか。

 

オレ……泣いてるんだ。

 

そう実感した時にはもうダメだった。

 

「うぅっ…、ぐっ……」

 

みんなに隠れるようにオレは静かに涙を溢した。

 

そしてその涙は電車が来るまで止まることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

その後、電車に乗って秋葉原の駅に戻ってきたオレたち。

 

あんなに赤々と輝いていた夕陽は既に沈んでいて空は月を雲で隠すように覆われているが、それ以外は雲もなく夜空が広がっていた。

 

「じゃあ……今日はここで解散しましょ?」

 

絵里ちゃんの一声でこの場はここで解散となった。

 

「そーちゃん。一緒に帰ろ?」

 

穂乃果に誘われたが、オレにはやらなければならないことがまだ残っている。

 

「……わりぃ、穂乃果。オレこのあと高校の友達と会うことになってるから……」

 

「そっか…。じゃあまた明日ね?」

 

苦し紛れについたウソをつき、それを信じた穂乃果は1人で自分の家に向かって歩いていった。

 

『もっとマシなウソをつけ』……か。

 

穂乃果にはそう言ったけどオレも大概だな。

 

穂乃果を始めとしたメンバーのみんなはそれぞれが自分の家に戻っていったのを見送ってから、ことりから指定された高台の公園へと向かった。

 

 

 

 

「ほぉ…、意外とキレイなもんなんだな」

 

これは高台の公園にやって来たオレの第一声だ。

 

昼の時間帯には何回か来たことがあったけど、夜の時間帯になると昼とは違った顔を覗かせていた。

 

高台と言われるだけあって夜景がキレイに写し出されていた。

 

「さて…、後はことりが来るのを待つだけだな……」

 

ベンチに座ってことりを待っていると今まで月が雲に隠れていたが、雲が動いて月明かりが静かに照らし始めた。

 

そして…、

 

 

 

 

 

「いきなり呼び出してごめんね?」

 

 

月明かりに照らされたことりがオレの後ろで静かに立っていた。

 

 




みなさんお年玉貰ったりお雑煮を食べたかと思いますが…、食べ過ぎで太らないように気を付けましょうね?

最後まで読んでいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いします!

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