ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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いやぁ…、難しかった。

それでは、どうぞ!!


第69話 恋心

「もしかして……待った?」

 

「いいや全然?」

 

地面を蹴る音と共に今座っているベンチとの距離を詰めてくることり。

 

オレの斜め前までやってくると「隣、座るね?」と言い残してオレにくっつくように座る。

 

「「…………」」

 

いざこうして隣り合って座られると昨日の夜に聞こうと決めていたことが出てこない。

 

ことりもことりで夜景を見ていて何も喋らない。

 

「ことり……」

 

「ん?なぁに?」

 

『どうしてこんな場所に呼び出したんだ?』とか『大事な話って何なんだ?』とか色々聞きたいことがあったのに…。

 

「……今日は、楽しかったか?」

 

いざ出てきた言葉が今日1日丸々みんなで遊んだ事の感想を求める声だった。

 

えっ?と面食らった顔をしていたが、クスクスと笑い始めた。

 

「うんっ!最後はみんなで泣いちゃったけど……とっても楽しかったよっ♪」

 

「……そっか」

 

やっぱりにこちゃんだけじゃなくてみんな泣いてたんだな。

 

「実はそーくんも1人になった時泣いてたでしょ?」

 

「うぇっ!?」

 

ことりの発言に思わずガクッ!と右肩を落とす。

 

「何で!?何で分かったんだ!?」

 

「え?そうだったの?」

 

またしても右肩を落とすオレ。

 

ことりにカマをかけられ、オレはそれにまんまと引っ掛かったというわけだ。

 

「フフフッ♪」

 

イタズラが成功した子どものように無邪気に笑うことり。

 

穂乃果や凛ちゃんだったらデコピンやら何やら出来るけど、ことりがやるとどうしても憎めない。

 

「むぅ……」

 

結果的に調子が狂ってしまう。

 

だが、さっきのやりとりで少し揺るんだ空気が功を奏したのかさっきまで頭の中に過った疑問をスパッと聞くことができた。

 

「なぁ…?少し聞いてもいいか?」

 

「いいよ!何でも聞いて?」

 

「どうしてこんな場所に呼び出したんだ?……それに大事な話ってなんなんだ?」

 

「…………!」

 

ついさっきまで柔らかな笑顔だったことりの顔から笑顔が消え、いつになく真剣な顔付きになっていく。

 

その真剣な顔付きは覚悟を決めた顔付きに変わる。

 

やがて覚悟を決めた顔付きからさっきまでのは違う……まるで衝撃を与えただけで粉々に砕けてしまいそうな笑顔に変わっていく。

 

「そーくん……」

 

思わずドキッとするような艶やかな声。

 

月夜の光に照らされたことりの目にはキラキラと輝くものがあった。

 

「そーくんに大事なお話があるからここに呼び出したっていうのは……昨日の電話で話したよね?」

 

今、ことりの話を遮ってはならない。

 

本能で感じ取ったオレは黙って首を縦に動かし、話の続きを促す。

 

「単刀直入に言うね?」

 

ことりはベンチから立ち上がってから歩き出し、少し離れた場所で立ち止まる。

 

そして…、

 

 

 

 

 

 

「そーくん。私南 ことりは……、あなたの事が……好きです」

 

 

 

 

 

 

 

告白をされた。

 

 

「…………ことり?」

 

「ごめんね…?いきなりこんなこと言われて迷惑、だよね……?」

 

告白の言葉を吐き出したことりは1度頭を垂らして地面を見つめる。

 

「でも…!でも……!!どうしてもこの感情を抑えきれなくて……!!」

 

肩を震わせ、今この瞬間まで鎖で縛られてきた感情をぶちまけるように話す。

 

「お願い……そーくん!私を…、ことりをあなたの特別な存在に……!恋人にさせてください!!!」

 

辛そうにギュッとキツく目を閉じ、心の底から絞り出すように言い放った。

 

ことりみたいな可愛らしい娘から告白されるなんて思ってもみなかったし、実際今にでもことりの側に駆け寄って抱き締めたくなってしまう。

 

ガラスのように脆くて儚い……そんなことりを。

 

だけど、オレには優しい言葉をかけてあげる事も包み込むように優しく抱き締める事も出来なかった。

 

にこちゃんに言われた言葉を思い出す。

 

『優しさも時には鋭い刃物になる』。

 

まったく…、にこちゃんめ……。

 

久々に自分よりも年上の人の事を呪った。

 

流されそうになる心と自分の本心を念入りに確認してから答えを出す。

 

その内容は…、

 

 

 

 

 

 

「……断る」

 

 

 

 

 

 

 

ことりの告白を……不意にすることだった。

 

「___っ!!!」

 

オレの返事を聞き、ことりは悲痛で顔を歪ませる。

 

「そう…、だよね。いきなり恋人にしてくださいなんて無茶なお願い聞けるわけ……ないよね?」

 

「違う。そうじゃないんだ……」

 

オレはことりが言ったことを即座に否定し、ことりの返事を聞く前に理由を話す。

 

「単純な話だ。オレ自身がことりに……恋愛感情を抱いていないからだ」

 

「恋愛……感情?」

 

「そう……恋愛感情だ。確かにことりはすごく魅力的な女の子だと思っている。……だけど今までことりにそんな特別な感情を持って接してきた事はほとんどない。そしてそれはこれから先も恐らくは……」

 

きっとないだろう。

 

自分自身がそんな感情を抱いていないのに相手からの好意に甘えて恋人ごっこに付き合ったとしても……ことりの心に失恋以上のダメージとキズを与えてしまうだけだ。

 

だからオレは……ことりの気持ちに応えることはしない。

 

最後まで説明をし終えると、ことりはどこかスッキリしたような表情をしていた。

 

「そうだよね……。でも、いいの。心のどこかで『もしかしたらそんなんじゃないかな?』って思ってたの」

 

「そう…、なのか?」

 

うん、と小さく返事をしてから頷く。

 

「でも…、その代わり……って訳じゃないんだけど1つだけそーくんから教えてもらいたい事があるんだけどいいかな?」

 

「……オレが答えられる内容ならな?」

 

「穂乃果ちゃんの事……どう思ってるの?」

 

随分難しい質問が飛んできたな。

 

穂乃果の事をどう思っているのか……か。

 

「私は……それを聞けたらそれで十分だから。だから教えてくれないかな?」

 

「嫌だ。ことり相手に語る理由も義理も無いな」

 

どう思っているのかは別として、ことりの質問に対して否定の言葉を返す。

 

「何で!?私はそーくんにちゃんと自分の想いを伝えたのに!!どうしてそんなにイジワルするの!?」

 

ことりが駄々をこねる子どものように地団駄を踏むが、これに対してはハッキリとした理由があるからだ。

 

「さっきことりがオレに聞いてきた質問の答えを最初に知る権利は穂乃果にしか持ってないからだ。だから穂乃果よりも先にことりに教える訳にはいかないんだ」

 

理由をすべて話し切ると、ことりは拗ねる様な表情からからかう表情になり一気に頬を緩ませる。

 

「何だよ?」

 

「それって答えを言っちゃったも同然なんじゃないかな~?」

 

「さぁな…。オレは何にも言ってないし」

 

「はいはい。そういうことにしておきますっ♪」

 

いかにも『分かった分かった』という対応をすることり。

 

……何だか腑に落ちねぇ。

 

「じゃあ…、そろそろお母さんが心配するからことりはもう帰るね。……また明日から普段通りに過ごそうね?」

 

「おう。気を付けて帰れよ?」

 

「はーい!」

 

ことりは元気よく手を上げてから1人で歩いていった。

 

 

 

~Side 南 ことり~

 

 

「あ~あ、バッサリてフラれちゃったなぁ……」

 

公園でそーくんと別れた私は夜空で静かに輝くお月様を見ながら自宅に向かって歩いていると、近くの木の陰から誰かが私の目の前に歩いてきてことりの目の前に姿を現しました。

 

「ことり?何をしているのですか?」

 

「……海未ちゃん?」

 

出てきたのはまさかの海未ちゃんでした。

 

「あそこの公園から見える夜景を見るのはいいですが、こんな暗い道を1人で帰るなんて危ないですよ?もしよろしければ一緒に帰りませんか?」

 

「そうだね。帰ろっか?」

 

私は海未ちゃんと並んで歩いて帰ることにしました。

 

「今日はいーっぱい遊んだね~」

 

「はい。久々に思いっきり遊んだ気がします」

 

「ホントに……、楽しかった……よね」

 

「……ことり」

 

「なに?……海未ちゃん?」

 

「泣きたい時は思いっきり泣いた方がいいですよ?さぁ、私の胸を貸してあげますから……」

 

海未ちゃんがパッと両腕を広げ、私を受け入れる体勢を作りました。

 

私はそれを見た瞬間、今まで張りつめていた何かがプツッと切れる感覚がしたのとフラフラと海未ちゃんの腕の中に向かって歩き…、

 

「うっ…、ううっ……、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

大声を張り上げ、大粒の涙を流しながら泣きました。

 

海未ちゃんは私の涙で濡れていくお洋服を気にすることなく、背中をポンポンとあやすように叩いてくれます。

 

「ひっく…!海未ちゃぁん…!わたし、わたしぃ……!」

 

「よしよし。ことりはよく頑張りました…。私には到底出来そうもないことをしたのですから……」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

ずーっと続いていた私の初恋はこうして終わりを告げました。

 

フラれちゃったけど後悔はありません。

 

だって…、ちゃんと自分の想いを伝えられたのだから。

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

「あっ!そーちゃんおかえりなさい!」

 

高台の公園から歩いて自分の家に戻ってくると、穂むらの前で穂乃果がオレを出迎えるようにちょこんとしゃがみこんでいた。

 

「高校のお友達とはどうだったの?」

 

サイドテールを揺らしながら穂乃果と別れた後の事を聞いてきた。

 

そういえば穂乃果にそんなウソをついたっけ。

 

「……あぁ、楽しかったよ」

 

取り繕うように返事はするものの、かなり薄っぺらい返事でしか答えることしかできなかった。

 

実際にはことりと会っていたなんて言えるわけも無いし、話の内容を穂乃果に話すなんて尚更言えない。

 

とにかく色んな意味で疲れたオレは家の玄関のカギを開けて家の中に入り、ドアを閉める。

 

遊びに行っていた服から部屋着に着替えると夜メシを食べることも風呂に入ることもせずに、そのままベッドに向かって軽くダイビング。

 

そしてそのまま布団も毛布もかけることも無く微睡みの渦に身を任せると瞼が重くなっていき、それに抗う事無く目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま朝まで眠るつもりだった。

 

けれど、不意に隣から包み込むような柔らかい暖かさを感じた。

 

その暖かさに気が付いたオレは身を捩りながら目を開け、重たい瞼を擦りながらその存在を確認する。

 

そこには…、

 

「すぅ…、すぅ……」

 

そこには規則正しいリズムを刻みながら呼吸しながら気持ちよさそうに眠ってる穂乃果の姿があった。

 

きっと帰ってきた時にすれ違ったときに元気がないと思ってオレの事を励まそうと思っているうちに眠ってしまったって感じか?

 

でも、こんなにスヤスヤ眠っている穂乃果を起こすのは申し訳無いのでタオルケットを引っ張り出して下で寝よう……。

 

そう思い身体を起こそうとするが、上手く起き上がれない。

 

よく見てみると穂乃果の片手はオレが今着ている上着を掴んでいて、熟睡している今でも離そうとする気配が感じられない。

 

「……これじゃあ何処にも行けねぇじゃねぇか」

 

小さくつぶやきながら動けないことを観念したオレはまたベッドの上に寝転がり、隣にいる穂乃果をまじまじと見つめる。

 

「そー…、ちゃん……」

 

穂乃果から小さくオレを呼ぶ声が聞こえる。

 

目を凝らしてよく見ると寝顔は少し険しく、閉じられた目から一筋の涙が流れていた。

 

親指の腹で拭ってから髪を鋤くように撫でると心なしか安堵した表情に変わり、それを見てオレも思わず微笑む。

 

そういえば高校2年生になってからというものオレの生活の中にはいつも穂乃果がいた。

 

最初は今までとは変わらない距離だった。

 

それが日を追うごとに距離がドンドン近付き、存在がドンドン大きくなっていった。

 

そしていつしか『穂乃果の笑顔が見ていたい』『穂乃果の笑顔を守りたい』という気持ちを抱くようになり、穂乃果といる時間が何より心地よい時間になっていった。

 

 

 

 

 

そんな状態は今のオレになら分かる。

 

 

 

 

 

オレ……松宮 壮大は…、

 

 

 

 

 

高坂 穂乃果という1人の女の子に……

 

 

 

 

 

『恋』をしているんだ……って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、リビングのソファーに座って最近読むようになった新聞を読んでいると玄関のドアが開く音とトントンと廊下を歩く音が聞こえる。

 

廊下を歩く音が止まったのと同時にリビングの戸も開いた。

 

「壮にぃ、起きてる?」

 

「……あぁ、雪穂か。おはよう」

 

「おはよ。朝起きたらお姉ちゃんがいなかったから探しに来たんだけ……ど!?」

 

ドアを閉めて近くにやって来た雪穂は、オレの顔を見るや驚きのあまりに目を丸くした。

 

「……どうした?」

 

「どうしたじゃないよ壮にぃ!なにその目の回りのクマ!!なんかすっごい事になってるよ!?」

 

ビシィッ!!と効果音が聞こえてきそうな勢いでオレの目の下辺りを指差す。

 

実は穂乃果に恋心を抱いていると自覚してからというもの、穂乃果の体温や甘い匂いに意識が行きすぎて敏感になってしまい一睡も出来ず、そのまま朝を迎えたのでトイレに行った後鏡を見てみたら目の下に濃いクマが出来てたって訳だ。

 

「……雪穂」

 

「なにさ!?」

 

「後は……任せた!」

 

睡眠欲の臨界点を天限突破していたオレは静かに横になると、一気に夢の世界へと旅立つ。

 

 

 

 

次に目を覚ました時は既に昼頃でカレンダーを何気無く眺めていたら今日は平日だということを完全に失念していた。

 

急いで準備して学校に向かい、そのまま職員室へ直行。

 

理由を話すと立華高校の先生たちに笑われ、生徒指導担当兼オレのクラスの担任に至っては豪快に笑いながらバックドロップをぶちかましてきたのだがそれはまた別のお話。

 

 

まったく…、恋は盲目だとよく言ったもんだぜ!!!

 

 




日本全国のことりちゃんファンのみなさま…。

自分もこの話書いてる時も辛かったんですよ?
ことりちゃんを泣かせたくなかったんですよ?

とりあえず何をしたいのかと言いますと…、
マジですいませんっしたぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!

次回から第12話分をお送りします!
それでは最後まで読んでいただきありがとうございました!

ホントにすいませんっしたぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!

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