ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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週1投稿になりつつあるこの作品…。

決してファイナルライブに合わせているつもりは無いんだからねっ!?

では、どうぞ!


第72話 らしくねぇな

屋上へと繋がっているドアを開けると、冷たい風が全身を撫でるように駆け巡った。

 

みんなは……どこにいるんだろう?

 

「そーちゃん!」

 

辺りを見渡していると上の方から穂乃果の声が聞こえてきたのでそちらを振り向く。

 

「こっちこっち!」

 

「どうやったらそこへ行けるんだ?」

 

壁をよじ登ったり誰かと協力して肩車をして登ったって訳でもなさそうだし…。

 

「近くにハシゴがあるから登ってきて!!」

 

暗闇に覆われた近辺をくまなく探すとハシゴが設置されているのが確認できたので、足を滑らせないように一段一段確実に登る。

 

ハシゴを登り切り、体勢を整えながら後ろの風景を見る。

 

「……これはすげぇな」

 

ビルや秋葉原の街から漏れる蛍光灯や街灯……ありとあらゆる電気がキラキラと輝いていた。

 

まるで高価な宝石を扱ったジュエリーショップのショーケースを見ているようだ。

 

「まるで光の海みたい…」

 

ことりが景色にみとれながら呟く。

 

そしてその呟きを拾うように海未も続く。

 

「この1つ1つがみんな誰かの光なんですよね?」

 

「その光の中でみんな生活してて……。喜んだり悲しんだり……」

 

「この光の中にはきっと私たちと会ったこともない話したこともない触れ合うきっかけもなかった人たちが沢山いるんだよね……」

 

「でも、繋がった。……μ'sというスクールアイドルを通じて」

 

「……そうですね」

 

にこちゃんに同意するように返事をする。

 

最初は小さく輝く1つや2つ、中には3つ繋がっていた光だった。

 

それが徐々に繋がっていき……今では9つの大きな光になった。

 

μ'sという存在があったからこそこうしてみんなに出会い、酸いも甘いも経験できた。

 

そして歌があったから名前も顔も知らない人たちと繋がることが出来る。

 

μ'sとしての活動は明日で最後になるけど記憶し続けている限り……ずっと。

 

「偶然流れてきた私たちの歌を聞いて何かを考えたりちょっとだけ楽しくなったり……」

 

「少しだけ元気を貰えるかもしれないし笑顔になってるかもしれないな……」

 

「素敵なお話だにゃ……」

 

「だから…、アイドルは最高なのよ」

 

穂乃果やオレが口にした言葉に凛ちゃんは感動し、にこちゃんもにこちゃんでアイドルに対する内なる想いを短く語る。

 

その言葉を待っていたかのように今まで雲に隠れていた月が顔を出し、街を静かな光で照らし出す。

 

「「「「「「「「「わぁ……!!」」」」」」」」」

 

今日の月も明日のラストライブをバックアップしているような光だ。

 

 

 

「私~!!スクールアイドルやっててよかった~!!!」

 

 

 

穂乃果はいきなり走り出したかと思うと、光の海のようになっている街に向かって大声で叫んだ。

 

「どうしたいきなり!?」

 

「そんな気分なんだもん!みんなに伝えたい気分…。今!この気持ちを!!」

 

すると大きく息を吸い込み、今一度大きな声で叫ぶ。

 

「みんな〜!!明日精一杯歌うから聞いてね〜!!!」

 

街に向かって響いた穂乃果の精一杯の声が夜の風に溶け込むように消えていった。

 

「みんなも一緒にやろうよ!!」

 

「何だか面白そうやん!」

 

「そうね!」

 

穂乃果の提案にのんちゃんと絵里ちゃんも賛同し、みんなも穂乃果と同じように叫ぶことを決意した。

 

「じゃあみんなで!せー……のっ!!」

 

『みんな~!!!聞いててね~っ!!!!』

 

9人分の想いを乗せた大声はさっきよりも長い時間夜の街に響き渡り、やがて穂乃果の時と同じように夜の風に溶け込んでいった。

 

「さぁ、そろそろ部屋に戻りましょう」

 

「……そうやね」

 

「そうね。ずっといると寒いしね……」

 

絵里ちゃんの話にのんちゃんと真姫が賛成し、みんなはそれぞれ1人ずつ足下に気を付けながらハシゴを降りていく。

 

「オレで最後だな?」

 

「うん!それじゃ部室に戻ろっか?」

 

来たときとは違い、今度は10人で部室へと戻っていく。

 

「誰かトランプとか持ってきてねぇ?」

 

「凛、トランプとジェンガ持ってきてるよ!」

 

「よし…。それじゃみんなでトランプやろうぜ!!」

 

「「「やるなら壮大(くん)(そーくん)抜きでね?」」」

 

「その扱い酷くねぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

トランプやジェンガを寝るまで楽しみ、音もしない街の明るい光も届かない真っ暗闇の中ふと目を覚ました。

 

……最近夜中に目を覚ますことが多いな、オレ。

 

目を擦りながらみんなを見てみると、規則正しいリズムを刻みながら寝息を立てていた。

 

「私!そーちゃんの隣の布団がいい!!」と絶対特権を主張するように名乗り出て、数多くのトランプゲームを連戦連勝を繰り返した結果そのままオレの隣の布団で寝る事を勝ち取った穂乃果を除いて、だ。

 

さすがに玄関を経由して学校の外には出ていないと思うが、こんな時間に起きているとダンスパフォーマンスに影響しかねない。

 

それに穂乃果が寝ていた布団に手を突っ込むと、トイレに起きたにしてはかなり長い時間空けていたのか温もりが消えかかっていた。

 

それを踏まえて心配になったオレはみんなの快眠の邪魔をしないように布団を出る。

 

足音が鳴らないように靴下を履き、みんなの快眠の邪魔にならないような音でドアを開け閉めしてから懐中電灯代わりのスマートフォンのライトもできるだけ出力を弱めて穂乃果を探し始める。

 

(……どこにもいない?)

 

穂乃果のクラスの教室や生徒会室など穂乃果にとって縁がある場所に足を運んでみたが、穂乃果の姿は見当たらなかった。

 

どこに行ったんだろう…?ともう一度穂乃果が行きそうな場所を考え直していると、オレの頬に微かにだが確かに冷たい風を感じた。

 

(まさか……屋上か?)

 

そこに穂乃果がいる保証はどこにもなかったけれど、考えるよりも早く屋上のドアに向かって歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

結論から言うと穂乃果は屋上にいた。

 

屋上のドアを静かに開け、ライトを消してハシゴから覗いてみると屋上の床に腰を降ろして毛布に身をくるみ、さっきみんなで見た時とは違って夜景を眺めながら夜風に当たっていた。

 

「……いつまでも夜風に当たってたら風邪引くぞ」

 

屋上のドアを開け、穂乃果に近付きながら着ていた長袖のパーカーを放り投げる。

 

「そーちゃ…、わわわっ…!!」

 

放り投げたパーカーを危なっかしい手付きでキャッチした。

 

が、穂乃果はオレのパーカーを膝の上に乗せてこちらの様子を伺っていた。

 

「どうした?」

 

「上着無くても大丈夫なの?」

 

パーカーを放り投げたのでオレの服装はポロシャツの下に着込んでいる長袖シャツだけだ。

 

どうやら穂乃果はそんなことを気にしているみたいだった。

 

「心配されるほどヤワな鍛え方はしてねぇよ」

 

言葉ではご覧の通り強がっているように聞こえるが、実のところ結構寒い。

 

ましてや屋上という夜風を遮る物が無いし、着ているものも通気性がいい物を着ているので風がバンバン入ってくる。

 

「ほら、そろそろ戻って少しでも身体休めんぞ」

 

「……待って」

 

穂乃果を連れて部室へ戻ろうとするが、当の本人から待ったをかけられた。

 

穂乃果の方を振り向くと体育座りの体勢のままで頭を膝の上に乗せ、こちらを見ながら…。

 

「もう少し…、もう少しだけお話……しよ?」

 

いつもより控えめな笑顔でお願いされた。

 

ホントは一刻も早く部室へ連れ戻さないといけないんだけど…、

 

「仕方ないな……。ほんの少しだけだぞ?」

 

踵を返して穂乃果がいるところまで行く。

 

はい、そこ。

 

穂乃果に対してチョロくなったって言うのやめなさい。

 

「……今の今までこの景色を見てたのか?」

 

隣に腰を降ろしながら問うが、穂乃果は首を横に振った。

 

「別に景色をみてた訳じゃないんだ…。けど……」

 

「……けど?」

 

「いよいよなんだなって思ったら何だか緊張して眠れなくなっちゃって…」

 

頬を人差し指で掻きながら取り繕うように笑う穂乃果。

 

だが、その笑顔はいつも見てきた心のそこから笑っている笑顔ではなかった。

 

だから、オレは穂乃果を元気付けようと頭を撫で始める。

 

「ふぇっ?……そーちゃん?」

 

「らしくねぇな…。今から緊張してどうするんだよ」

 

「どういう意味?穂乃果だって緊張するときはするんだよ?」

 

ぷくっと頬を膨らませながら抗議してくる。

 

きっとバカにされている、と感じたんだろうが今回はそんな意味で言った訳じゃない。

 

「変に気負うなってことだよ。解散宣言してから今日に至るまでみんないつもと同じように過ごしてきただろ?だから明日も今までと同じようにライブパフォーマンスをすれば大丈夫ってこと」

 

「そっか…、そうだよね」

 

言った意味を理解してくれたのか穂乃果は言葉を噛み締めるように両手を合わせるように握りながら目を閉じる。

 

「そーちゃんのおかげで少しずつだけど元気が出てきたよ」

 

開かれたその瞳の奥にあった迷いは消えたようだ。

 

「そうか?」

 

オレの言葉で少しでも元気を出してくれれば…。

 

そう思っていたけど、もう大丈夫そうだ。

 

「それじゃ部室に戻ろっか!」

 

オレはおう、と短く返事をしてから立ち上がる。

 

穂乃果もオレが差し伸べた手に掴まって立ち上がる。

 

ハシゴから降りてから2人で横に並び、ゆっくりと屋上から出てから足音が鳴らないように慎重に歩きながら部室に戻る。

 

途中で『何だか世界で2人だけしかいないみたいだね……』と呟いた穂乃果にドキッとしたが、穂乃果の頭に軽くチョップを入れておいた。

 

じゃないとまたいつかの時のように穂乃果を意識し過ぎて寝不足になってしまいそうだし。

 

部室へ戻ってきたオレたちは布団が敷かれた部屋に音が鳴らないように入る。

 

みんなはオレが出ていく直前と全く変わらない状態で眠っていた。

 

「……みんなグッスリだね」

 

「そうだな……」

 

強いて変わっているところをあげるならにこちゃんがつけている美容パックのおでこの部分が剥がれかかってるくらいだ。

 

そんな様子を見たオレたちは小さく笑い合い、それぞれ隣り合っている布団に入る。

 

「穂乃果、おやすみ」

 

「おやすみ、そーちゃん」

 

穂乃果を返事を聞いてから、布団の柔らかさに包まれるようにしながら身体を休めることにした。

 

あぁ…、この布団あったけぇ。

 

 

 

 

~Side 高坂 穂乃果~

 

 

私の隣で横になっているそーちゃんに対して背を向けていたが、寝返りを打つフリして彼と向き合う。

 

「スー…、スー……」

 

そーちゃんは布団の暖かさに包まれ、気持ちよさそうに仰向けで眠っていた。

 

「………そーちゃん」

 

いつも呼んでいる呼び方で彼を呼んでみるが、そーちゃんは呼びかけに答えることはなくグッスリ眠っていた。

 

けど、今はグッスリ眠っている方が好都合だ。

 

私はゆっくりとそーちゃんとの距離を詰め、こっそりとそーちゃんが入っている布団に侵入する。

 

私は元々そーちゃんには好意を抱いていたが、それはあくまで『幼馴染として』だった。

 

ファーストライブの時にはまだ敵対していた絵里ちゃんから庇ってくれた。

 

ことりちゃんの留学騒動の時には私とことりちゃんと他のメンバーの仲介役を担い、奔走してくれた。

 

そして最終予選前の時には危険を顧みず凶刃を受け、本番を控えていた私を助けてくれた。

 

そして気が付けば…、私の心は常にそーちゃんで一杯になっていた。

 

「大好きだよ、そーちゃん……」

 

私はそーちゃんに聞かれないくらい小さな声で自分の想いを打ち明け、彼の頬に小さくキスをした。

 

 

 

 




こういう恋愛に繋がるシーンは難しい…。

次回からはいよいよ本戦当日です。

ではでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!

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