ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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本編の更新が止まってからおよそ2ヵ月……。

お待たせしました!

では、どうぞ~


第75話 何気無い幸せ

__時は遡り数十分前。

 

 

 

 

「これでよしっ……と」

 

第2回ラブライブの勝者の証とも言える深紅の優勝旗とみんなの腰の辺りくらいまでの大きさのトロフィーをメンバーを代表して生徒会の役員でもある私たちが責任持ってアイドル研究部の部室に置き、学校の門を締めてカギをかける。

 

「じゃあ学校のカギはことりが預かっておくね?」

 

「お願いします、ことり」

 

学校の門のカギを締めた海未ちゃんはことりちゃんに手渡す。

 

「じゃあ……私たちも帰りましょうか?」

 

今大会の打ち上げは後日改めて行うこととなったので海未ちゃんを先頭にそれぞれの家に帰ろうと歩き始めるが、私にはまだやらなければならないことがある。

 

「ごめん海未ちゃん、ことりちゃん。私ちょっと用事が……」

 

「……こんな時間に、ですか?」

 

2人に断りを入れてから離れようとしたけど海未ちゃんが怪訝そうな瞳でジロリ、と私を射抜くように見る。

 

「その用事とは私たちに言えないような用事なんですか?」

 

「えっと……」

 

どう答えたらいいか分からずにいると私の側にいたはずのことりちゃんは海未ちゃんの背後に回り込み、希ちゃんがいつもするイタズラっ子のような笑顔を浮かべていた。

 

そして……、

 

 

 

「希ちゃん直伝!わしわしMAX~♪」

 

 

 

 

ぐわしっ!と海未ちゃんの胸を鷲掴み、わしわしと両手を動かし始めた。

 

「ひゃあっ!?こここ、ことり!?いきなり何を!?」

 

「何って……わしわし?」

 

「そういうことを……聞いているのでは……っ!……ありません!!」

 

希ちゃん直伝というだけあって海未ちゃんもことりちゃんのわしわし攻撃にはタジタジの様子だ。

 

「穂乃果ちゃん」

 

「ん?」

 

「これから大事な用事があるんでしょ?海未ちゃんの事はことりに任せて……行っておいで?」

 

「……うんっ!!」

 

「穂乃果!!まだ私の話が……ってことり!お願いですからそこだけはやめてくださ……ひゃうぅっ!」

 

ことりちゃんのわしわし攻撃を抜け出すことはおろかいろんな意味で攻められている海未ちゃんに背を向け、そーちゃんに会いに行くため走り始めた。

 

 

 

~Side 南 ことり~

 

 

穂乃果ちゃんの後ろ姿が見えなくなってから海未ちゃんに伸ばしていたわしわしの手を放す。

 

「ことり……いきなりわしわしをしないでください」

 

「海未ちゃんごめんね?何だかわしわししたくなっちゃって……」

 

『まったく……、希じゃないんですから』と溜め息をつく海未ちゃんを見ながら穂乃果ちゃんが言っていた用事の事を考え……ようとしたけど止めた。

 

「海未ちゃん。そろそろ帰ろっか?」

 

「……そうですね」

 

納得いかないというか腑に落ちていない表情をする海未ちゃんは渋々ことりの横まで歩き、いつの日の時と同じように2人並んで帰ることにしました。

 

 

Side out

 

 

 

 

 

ことりちゃんに見送られ走り出したのはいいもののそーちゃんが今どこで私の事を待っているのか検討が付かず走る動作から歩く動作に変わり、やがて立ち止まった。

 

何となく学校の近くの公園に向かって坂道を歩いてるけれどそこにそーちゃんがいるという保証は何処にもない。

 

どこにいるのか聞き出すためそーちゃんの携帯に電話してもスピーカー越しから聞こえてくるのは『電源が入っていないか電波が繋がらない場所にいるためかかりません』と無機質な音声しか聞こえてこない。

 

ホントどこにいるんだろう……?首を傾げながら近くの公園に足を踏み入れた。

 

すると公園の端に設置されたベンチの右側に彼は座っていた。

 

彼もライブの余韻や熱が冷めないのか上着を脱ぎ、夜風に当たっていた。

 

……そーちゃん、来たよ。

 

私はそんな彼に近づきながら、声を掛ける。

 

すると彼はいつも私に向ける柔らかい笑顔で答えた。

 

___来てくれてありがとな、穂乃果。

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず隣、座りなよ」

 

声を掛けると穂乃果はコクリ、と頷きオレの隣にちょこんと腰掛けた。

 

「「…………」」

 

……すっげぇ気まずい。

 

穂乃果を隣に座らせたのはいいけど、いざ話をしようとしても口がなかなか動いてくれない。

 

身体の芯からカーッと熱くなり、口の中がカラカラになっていくのを感じる。

 

「ねぇ、そーちゃん」

 

「……どうした?」

 

そんな沈黙を打ち破るように穂乃果がいつもの呼び方でオレを呼んだので、声が裏返らないように返事をして隣を見た。

 

「私がスクールアイドルをやるって言った時の事……覚えてる?」

 

忘れようにも忘れられる訳が無い。

 

穂乃果の音ノ木坂学院が廃校にさせたくないという一心で始めたアイドル活動。

 

「……あれからいろんな事があったよね」

 

始めは穂乃果・ことり・海未の3人から始まってほとんど観客も声援も無く、まさに完敗とも言えるスタートを切った。

 

それから1年生とにこちゃんが加わり、当時はμ'sを快く思っていなかった絵里ちゃんとの衝突を繰り返してオープンキャンパス前に絵里ちゃんとのんちゃんがμ'sに加わった。

 

メンバーが9人に揃ってからは真姫の別荘でやった合宿だったり音ノ木坂の学校祭からことりの留学疑惑の終幕までの一連の騒動だったり……秋が過ぎてからはラブライブ優勝という大きな目標を掲げて目指して全速力で駆けてきた。

 

冬になってからは最終予選で直接対決の末A-RISEを下し、そして今日みんなの悲願だったラブライブ優勝を達成することが出来た。

 

文字通り激動の1年間だった。

 

「辛かったことや悲しかったこと……いろんな事があったけど今なら胸張って言えるよ。『楽しい日々だった』って……。そーちゃんはどう?」

 

「オレも……穂乃果と同じだ」

 

穂乃果の言う通り辛いことや悲しいことも沢山あったけど、それ以上にみんなといる時間が心地よかった。

 

それほどまで感じる毎日が楽しくなかった訳が無い。

 

そんな毎日の中で常に中心にいたのは紛れもなく……。

 

「なぁ、穂乃果」

 

「ん?」

 

「少しオレの長話に付き合ってもらってもいいか?」

 

「いいよ。そーちゃんのお話は楽しいから……」

 

身体ごとこちらを向いて今から話す事を聞こうと言う意思を見せたので、少し長めの話を始めることとした。

 

「オレにはさ……好きな女の子が1人だけいるんだ」

 

「えっ!?誰!?誰なの!?」

 

女子校に通ってるとは言えやっぱり色恋沙汰の話には食い付くのはコイツも例外ではなかったらしい。

 

が、今のままではいつまで経っても話が終わりそうにないから一先ず穂乃果を落ち着かせてまた話を続ける。

 

「さっきの話には続きがあってな……。オレはそれと同時にそいつの事をすっげぇ尊敬してるんだ」

 

「……そうなの?」

 

「ああ。自分で言うのもアレなんだけどスポーツや勉強はできるけど……それでもそいつにはオレがどう足掻いたって太刀打ち出来ない物をいっぱい持ってるんだ」

 

「そーちゃんでもそんな人がいるなんて知らなかった……けど、そーちゃんが言ってる『どう足掻いたって太刀打ち出来ない物をいっぱい持ってる』人って誰なの?」

 

「ん」

 

「え……?えぇぇぇぇぇぇえっ!?」

 

まさか自分の事を話していたとは思ってもいなかった穂乃果は、指を差されてから若干間を開けてから目を丸くしつつ大声を出しながら驚いた。

 

「確かにそーちゃんに比べれば頭もよくないしドジったりするけど……!私のどこでそう思うの!?」

 

根掘り葉掘り、と掘り起こしていけばいくらでも出てくるけどまず最も輝いて見えたのは『誰よりも真っ直ぐなところ』と『周囲の人間を自分に惹き付けられるところ』……言い換えればカリスマ性と言ったところか。

 

普通自分が通ってる学校が廃校になるからアイドル活動を始めよう、なんて考え誰も浮かんでは来ない筈だ。

 

それなのに穂乃果は『学校を守りたい』という理由でアイドルグループを結成し、何度も壁にぶつかりながらもただただひたすらに真っ直ぐ突き進んできた。

 

そしてそのストレートな想いが波紋となって瞬く間に広がっていき、先輩・後輩を始めとした様々な垣根を越えて数え切れないくらい多くの人たちを惹き付けてきた。

 

「そんな穂乃果がオレの目にはとても眩しくて……魅力的に見えたんだ」

 

オレは話し終えると穂乃果の手を取ってベンチから立ち上がる。

 

立ち上がったらそのままお互いに向かい合うように立つ。

 

理性が静止を呼びかけてくるけど……そんなこと知ったことではない。

 

静かに息を吸ってから余計な装飾の一切を排除したありのままの想いで言葉を紡いでいく。

 

 

 

ここからは自分の気持ちに正直になって……伝えるんだ!

 

 

「松宮 壮大は……高坂 穂乃果の事が……!」

 

 

ありのままの……この気持ちを……!!

 

 

 

「大好きです!幼馴染じゃなく1人の女の子として貴女の事が好きです!!!」

 

 

 

 

言い切った。

 

気を抜いてしまえば返事も聞かないまま膝から崩れ落ちてしまいそうだ。

 

そんな情けない姿を見せるわけにも行かないので、沸騰しそうになっている頭や心臓を強引に押さえつけながら穂乃果の返事を待つ。

 

返事を待っていると穂乃果は静かに涙を流し始めるもどこか安堵と歓喜が入り混じった笑顔を浮かべながら、ぽすっとオレの腕の中に飛びんできた。

 

「……はいっ、こんな私ですがそーちゃんの彼女にしてくださいっ」

 

月明かりの下……オレたちはようやく結ばれた。

 

 

 

 

 

 

帰り道。

 

オレと穂乃果は手を繋ぎながら帰路に着いていた。

 

その途中でみんなで遊んだ日の夜にウソをついてことりと密会してたこと、そこでことりに告白されたことを穂乃果に報告した。

 

すると穂乃果から『ウソをつかれた事は感心しないけど……ことりちゃんの事謝らないであげて?』と言う有難い言葉を頂いた。

 

「それにしても……」

 

「ん?」

 

「私()()()でよかったの?……ぁいたっ」

 

らしからぬことを言い出したので繋いでいない方の手で穂乃果の頭に向かって軽くチョップを入れる。

 

「穂乃果()()()じゃねぇよ。穂乃果()()()いいんだよ。……言わせんな、恥ずかしい」

 

「えへへぇ……その気持ち、分かるよそーちゃん。そう言いながら私の事が大大だーい好きなんだもんね?このツンデレそーちゃんめ~」

 

うりうり~、と肘で脇腹をグリグリしながらからかって来た。

 

穂乃果が言ったことは事実なのだが、こうもからかわれながら言われると無性にムッと来るものがある。

 

「……夏穂さんにお願いして明日からパン抜きでピーマンと和菓子のフルコースにしてもらうか?」

 

「ひどい!そーちゃんの人でなし!!」

 

「……クスッ」

 

「フフッ……!」

 

「「アハハハハ!!」」

 

お互い涙が出るまで笑い合った。

 

そんな何気無い幸せでさえも今のオレにとっては大きな幸せだ。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございました!

次回はいよいよ卒業式です。
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