ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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いよいよやって来た卒業式。

ですが、前半は壮大くん側ですのでご了承ください。

では、どうぞ!!


The Last Episode 卒業式

「おはよ、壮にぃ」

 

「壮大さん、おはようございます!」

 

「おはよう雪穂、亜里沙ちゃん」

 

穂乃果の家に泊まった次の日の朝、オレはハンガーにかけて持ち込んでいた制服のブレザーを羽織って学校指定のネクタイを締めながら階段を降りていくと雪穂と亜里沙ちゃんがいたので挨拶を交わす。

 

「……穂乃果は?」

 

「穂乃果さんならついさっき学校に行きましたよ?」

 

「朝だっていうのに結構騒いでったろ?」

 

「うん。『出来た』って何度も言いながら降りてきたしね……」

 

何というか……ある程度予測はしていたけどそこまで騒いで行ったのか。

 

実は穂乃果は卒業式までのカウントダウンが片手で数えられる辺りから送辞について悩んでいて、とうとう昨日になって『そーちゃん手伝ってぇ~……』という何とも情けない声でヘルプを要求してきた。

 

ホントは『自分で考えろ、このおバカ』って言いたかったけどそれが出来てたら苦労もしていないので泊まり込みで送辞の文章を一緒に考えていた、って訳だ。

 

お陰さまで絶賛寝不足だ。

 

「おろ?2人ともその格好は……」

 

重たい瞼を擦っていると普段の雪穂と亜里沙ちゃんとはちょっと違うことに気がついた。

 

「うん。音ノ木坂に合格したから亜里沙と試しに制服着てるんだ!」

 

「亜里沙、音ノ木坂に入れてとても嬉しいです!」

 

亜里沙ちゃんは音ノ木坂に入れる事を嬉しくて目を輝かせながら、雪穂はまだ着慣れていないため少し照れ臭そうに音ノ木坂の制服に身を包んでいた。

 

「ふ~ん……、2人とも似合ってるよ」

 

「ありがとう、壮にぃ」

 

「ありがとうございます!壮大さん!」

 

その後、高坂家の食卓の上に並べられた自分の分の朝メシを食べてからバッグを持って玄関を出た。

 

立華高校の卒業式も今日行われるので、それに出席するためだ。

 

「おはようございます夏穂さん。行ってきます」

 

「おはよう壮大くん。行ってらっしゃい」

 

店の前で打ち水をしていた夏穂さんに見送られ、自転車に跨がって立華高校に向かってペダルを漕ぎ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「……すみません校長先生。私の中で衝撃が強すぎて理事長先生のお願いされて事を忘れてしまったのでもう一度仰ってくださいますか?」

 

学校に着いてクラスメイトと駄弁っていたところでまさかの校内放送にて呼び出しを喰らってしまった。

 

しかも呼び出し先が職員室でもなく……校長室。

 

クラスメイトはおろか道行く在校生みんなからの突き刺さるような視線を浴びながら校長室に入り、校長先生から頼まれた事を聞いて思わず聞き返してしまうくらいの衝撃度だ。

 

「キミには在校生代表として送辞を読んで貰いたいのだよ」

 

ナイスミドルと言われてもおかしくないくらい渋い容姿から真逆とも言える楽しいことやサプライズが3度のメシよりも大好きな校長先生の性格をほぼ完璧に知っていても全くもって訳が分からない。

 

「送辞って生徒会長がやるモンじゃ……」

 

「その現生徒会長から『大好きな声優さんのミニライブに行って全力でコールをし過ぎて声を枯らしてしまった』という連絡があってね」

 

「やっぱりウチの生徒はクレイジーな奴ばっかですね」

 

送辞が出来ない理由がインフルエンザとか骨折して入院したとかならまだ分かるが、自分の好きな声優さんのミニライブに行って声を枯らす辺り立華高校(ウチ)の生徒だと改めて実感した。

 

その事で笑い合ってると校長先生は笑いや冗談もなく、キッとした真面目な顔付きになる。

 

「別に固く考える必要はない。キミがこの1年で学んだきたことをありのまま伝えればいい」

 

「……知ってたんですか?」

 

「校長先生には生徒の行動を知る事ができるライセンスをデフォルトで備わってるだけさ」

 

フッ、と小さく笑うとクルリと背を向けて窓の外を見始めたのでオレは校長室を後にした。

 

 

 

 

 

~Side 部長~

 

卒業式が始まる。

 

プログラム通りにつつがなく進行していく。

 

そしてついに残すは送辞と答辞になった。

 

そういえば送辞を述べるはずだった現生徒会長は前日に声を潰してしまって代役を立てた、と風の噂で聞いたのだが一体誰になったのだろう。

 

『在校生送辞。在校生を代表して松宮 壮大さんお願いします』

 

松宮が大きな返事をしてから登壇する。

 

ブレザーの裏ポケットから送辞が書かれているであろう羊皮紙を広げ、マイクのスイッチを入れて話し始めた。

 

 

「送辞。

 

3年生のみなさんご卒業おめでとうございます。

 

先輩たちとは私たちが入学してから約2年間を共に過ごした仲です。

 

先輩たちは妙にアグレッシブな人が多くて入学したての頃は圧倒されてばかりの毎日でしたが、今ではすっかり私たち在校生もすっかり立華の色に染まってしまいました」

 

 

在校生を始めとした参加しているみんながクスクス笑っていると、送辞が書かれているであろう羊皮紙をクシャクシャに丸めた。

 

突然の行動にみな目を丸くし、壇上の松宮に注目を集める。

 

 

 

「ここからは私個人から学んだことを卒業生のみなさんにお話しします。

 

私には幼馴染がいて、その幼馴染が通う学校が昨年の今頃辺りに廃校の危機に晒されていました。

 

みんな廃校すると言う事実に直面し、どうすることもできない状況の中私の幼馴染の1人が『スクールアイドルになって廃校を阻止してみせる!』と宣言しました」

 

 

きっと松宮はμ'sのリーダーのことを話しているのだ、と俺にはすぐ分かった。

 

 

「そこからは数多くの困難を乗り越え、立ちはだかる壁を1つずつ壊していき、見事廃校を阻止することができました。

 

そこで私は『立ち向かっていく勇気』を知りました。

 

……私も含めてみなさんもこれから生きていく上で数多くの困難がみなさんの前に立ちはだかるはずです。

 

ですが、そこで諦めたら何の意味もない。

 

私たちにとって先輩たちは特別な存在であり、身近な目標でもあります。

 

壁にぶつかっても難なく壊し、私たちが同じ壁にぶつかったとしても『どうした?この程度の事も出来ないのか?』と鼻で笑っていてください。

 

私たちは偉大な先輩たちの背中を追いかけていきます!

 

そしてすぐに先輩たちに並び、追い越します!!

 

だから!!いつまでも私たちの前に立ってその背中で私たちに語り続けていってください!!!」

 

 

 

そこで言葉を切り、不適にニヤッと笑った。

 

「在校生!!起立!!!」

 

松宮の合図で在校生みんな俺たち卒業生がいる方向を向いた。

 

 

 

「礼!!!」

 

 

 

『3年間お疲れさまでした!!ありがとうございました!!!』

 

 

 

松宮の気合に在校生全員で全力で頭を下げ、卒業生を讃えた。

 

松宮は笑顔で送辞を終え、壇上から降りた。

 

そしていよいよ俺たち卒業生の答辞が始まる。

 

 

「松宮くん、いい気合だったわ。

 

みんなもいい目だったわ。

 

全員私たちの後輩として恥じない人物になったわね」

 

 

羊皮紙を広げず、顔を前に見据えて話している辺り元生徒会長もほぼアドリブで松宮の送辞に答えている。

 

 

「この学校はとてもいい学校だった。

 

身内贔屓かもしれないけど……私はそう確信している。

 

最初は『みんな頭のネジおかしいんじゃないの?』って思ってたけど、住めば都なんてよくいったものだわ。

 

一緒にバカやれる同輩、私たちのノリに平然とついてきてくれる後輩、それを理解した上で私たちよりも子供みたいになる先生たち。

 

そんな素晴らしい人たちがいたこの学校が私たちは大好きだった」

 

 

フッと笑顔になるが、すぐに険しい顔付きになる。

 

 

「でも、私はもう2度とこの学校に帰ってくるつもりはない。

 

みんなも2度と帰ってくるつもりはないと思うわ」

 

 

その言葉に俺たち卒業生全員が頷いた。

 

 

「私たちはタイムカプセルは埋めない。

 

ここに帰ってくるべき理由は作らない。

 

……ここでの思い出は濃すぎるから。

 

気を抜けばいつまでもここでの思い出に浸っていられる。

 

それくらい……素晴らしい場所だから。

 

だから私たちは帰らない!

 

絶対に!過去を振り返ったりしないッ!!」

 

 

 

再び卒業生全員が頷く。

 

もちろん俺もその内の1人だ。

 

 

「私たちの背中を追いかけていく?

 

上等よ!

 

私たちは逃げも隠れもしない!!

 

アンタたちにとびっきり分厚い壁も用意してあげる!!

 

私たちが壁の向こう側で楽しそうにしているのを壁の前で耳を当てて聞いていなさい!

 

それが嫌なら……!」

 

 

そこで大きく息を吸って目の前の在校生代表を睨みつける。

 

そして……、

 

「私たちを超えてみせなさいッ!!!」

 

そのあまりの音量にマイクは機能せず、体育館は静まり返る。

 

「返事は!?」

 

『押忍ッ!』

 

「声で負けてるんじゃないわよ!!!」

 

『押ォォォォォォ忍ッッ!!!』

 

 

Side out

 

 

 

 

送辞・答辞が終わったあとはあっけないものだ。

 

在校生から卒業生へ、卒業生から在校生へそれぞれ歌を歌ってから校歌を歌って退場。

 

本当にあっけないものだ。

 

ブラスバンドのBGMと共に感動の退場。

 

卒業生で泣いている人は1人もいなかった。

 

卒業生の出待ちをしている各部活の在校生たちも記念の花束や色紙を持っておらず、胴上げでキャッチできなかった時のためのマットを持っている始末だ。

 

「よっ、送辞お疲れ」

 

「……部長は胴上げに混ざらなくていいんですか?」

 

「1番最初にやったからな。硬式野球部と柔道部のパワーはすげぇぞ?何せ2階まで放り投げられたからな」

 

後ろから『どっせぇぇぇぇいっ!!』って掛け声と『ちょっ!?3階まで行きそうなんだけど!?』って悲鳴が聞こえてきている。

 

「音ノ木坂に行くのか?」

 

「はい。1年間ずっと一緒に過ごしてきた3年生メンバーの顔を見せに行かないといけないですから」

 

「……そうか」

 

__お兄ちゃ~ん!!

 

校門の方から可愛らしい声が聞こえてきたのでそちらを見てみると、部長の妹さんが手をブンブン振っている。

 

「これでまずは一区切りだな。じゃ、またな」

 

「はい。……2年間ありがとうございました」

 

オレの横を通り過ぎていく部長に改めてお礼を述べ、頭を下げる。

 

部長は右手をあげながらグッと握り、親指を立てて妹さんが待つ校門へ歩いていった。

 

__悪い、待たせたな。

 

__全然待ってないよ。そうだ!これからお兄ちゃんの卒業祝いしようよ!

 

__おっ、いいなそれ。

 

部長兄妹の会話が聞こえなくなるまで黙って見送り、それからオレはみんながいるであろう音ノ木坂学院へ向かった。

 

 

 

 

 

 

静まり返った音ノ木坂学院に足を踏み入れ、みんなの姿を探す。

 

校門付近にもいないし部室にもいなかった。

 

ってことは屋上か……?

 

屋上に続く階段を上がり、ドアを開けるとみんながいた。

 

「みんな、お待たせ」

 

みんなオレの事を待ってたみたいで、その表情は晴れやかだった。

 

「そーちゃんも来たところで……行っくよ~!!」

 

穂乃果は水を含ませたモップを持ち、屋上の床に何かを書き始めた。

 

最初は何を書いているのか分からなかったけれど、モップが通った後の水のお陰で何を書いたかすぐに分かった。

 

「出来た!!」

 

穂乃果が書いたのは……とても大きな『μ's』という文字だった。

 

「でもよ、この天気じゃ……」

 

「すぐ消えちゃうわよ?」

 

快晴とも言えるこの天気じゃ水もすぐ乾くのでこの文字も当然すぐに消えてしまうだろう。

 

だが、穂乃果は首を振った。

 

「それで良いんだよ。それで……」

 

穂乃果の意図を読み取ったみんなは『μ’s』の文字に向かって姿勢を正す。

 

そして……。

 

 

 

___……ありがとうございました!!

 

 

 

 

 

最初に動いたのは真姫だった。

 

海未、ことり、絵里ちゃん、にこちゃんと次々に屋上を後にする。

 

オレもみんなに続いて屋上を後にしようとした瞬間、信じられないものを目撃した。

 

それは……1年間過ごしてきた数多くの思い出がうっすらと映し出したものだ。

 

海未が穂乃果に注意してことりが抗議する穂乃果を宥めたり、にこちゃんと真姫が口論となって凛ちゃんが間に入って笑っていたり、花陽ちゃんが絵里ちゃんとのんちゃんに見守られながら片足バランスをしていたり……。

 

そんな映像が『μ's』の文字が春の日射しで自然蒸発されると共に空気と一緒に消えていった……。

 

それを見届けてからバケツをオレが、モップを穂乃果が持って屋上から出る寸前にまた何処からか声が聞こえてきた。

 

(ねぇ。そーちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん……)

 

((うん?))

 

(……どうした?)

 

(やり遂げようね、最後まで……)

 

「穂乃果」

 

「……うん」

 

 

 

「「やり遂げたよ(な)、最後まで……」」

 

 

 

 

 

 

オレたちは校門に場所を移し、いよいよ絵里ちゃんたちは音ノ木坂学院を後にしようとしていた。

 

が、何故か絵里ちゃんたち3年生と凛ちゃんと花陽ちゃんがオレの目の前で1列になって並んでいた。

 

「実は壮大にお願い事があるんだけど……聞いてくれるかしら?」

 

「内容によりますけど……」

 

何をお願いされるんだろう?と思っていると、目の前の5人は笑い合ってから話し始めた。

 

「壮大。私と……」

 

「ウチと……」

 

「にこと……」

 

「凛と……」

 

「私と……」

 

「「「「「友達でいてくれますか……?」」」」」

 

「フッ…!フフッ……!!アッハッハッハッハ!!!」

 

「……壮大?」

 

絵里ちゃんたちのお願い事を聞いてオレは思わず笑ってしまい、絵里ちゃんたちを困惑させてしまった。

 

「すみません。無茶なお願い事をされるかと思ったら友達でいてくれるか?って……!そんなの決まってるじゃないですか!!」

 

__オレたちはもう……友達じゃないですか!

 

 

 

 

 

 

 

 

~♪

 

格好よく締めることが出来た、と思ってたら誰かのスマホの着信音が鳴り響く。

 

「あっ…。私の携帯だ」

 

「何よ……。こんな時に……」

 

「ご…ごめん」

 

花陽ちゃんは携帯をポケットから取り出師、スマホを操作していく。

 

すると花陽ちゃんは驚きの声を上げた。

 

「えっ!?嘘……えっ?ええええぇぇぇぇ!?」

 

「花陽……!?」

 

「どうしたのよいきなり……?」

 

花陽ちゃんただ事ではない驚きようにみんなも戸惑いも隠せず、絵里ちゃんや真姫が恐る恐る花陽ちゃんに尋ねる。

 

「た…!た……!大変ですぅ!!!」

 

「「「「「「「「えぇっ!?」」」」」」」」

 

「どうしたの!?」

 

「ここでは言えません!今すぐ部室に行きましょう!!」

 

花陽ちゃんは穂乃果の手を取り、また学校の方へ走って戻っていってしまった。

 

「えっ!?わっ!わわわわっ!?」

 

「ちょっと…何なのよ!いきなり!」

 

突然の出来事に戸惑いを隠せていない絵里ちゃんだったが、のんちゃんは面白そうに笑ってから花陽ちゃんの後を追いかけ始めた。

 

「なになに~!?ウチにも教えて〜!!」

 

「大変です〜っ!!」

 

「今度はなんですか!?」

 

「にゃーっ!」

 

「まだ終わってないってこと!?」

 

のんちゃんの後に続くように海未、凛ちゃん、ことりの順に走り始める。

 

「何それ!?意味分かんない!!」

 

「行って確認して見るしかなさそうね!」

 

「ちょっと!!仮にも今日卒業式だったのよ!?」

 

真姫、にこちゃん、絵里ちゃんも校舎へ戻っていき校門付近にはオレ1人が取り残されてしまった。

 

「………オレにも見せてくれぇぇぇぇえっ!!!」

 

先に走っていったみんなに追い付け、追い越せの勢いで再び静まり返った音ノ木坂学院の校舎の中へ戻っていった。

 

 




これにて『ラブライブ!~Miracle and Track~』の『本編』は終了となります。

次回以降の更新をお待ちください。

最後まで読んでいただきありがとうございました!!!


『UA15万』と『お気に入り500記念』を先にやっちゃってから遅れに遅れた真姫ちゃん特別編をお送りします。
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