ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
ってなわけで続きです。
「今日という今日は許しません!!あなたのその雑で大雑把でお気楽な性格がっ!どれだけの迷惑と混乱をっ!!引き起こしていると思っているのですかっ!!!」
海未はすごい剣幕で怒鳴り、その声量はドアを越えて廊下や隣近所の部屋にまで聞こえてるんじゃないかってくらい大きい。
もしかしなくても今までで一番怒っている。
こうなったのも全て謝り倒しているコイツのせいだ。
「海未ちゃんごめん!ホンッッッットごめん!!!」
そう……穂乃果だ。
何でも絵里ちゃんから渡されたメモに書かれてた宿泊先のホテルのスペリングを間違えてしまっていたらしい。
そうとは気付かずに海未とことりと凛ちゃんを乗せたタクシーの運転手さんに渡してしまい、ここじゃない別のホテルへ行ってしまったのだそうだ。
よくあるベタな刑事ドラマにある『あの前のタクシーを追ってくれ』なんて台詞をリアルで言うなんて思わなかった……。
いや、マジで。
「でもこうしてちゃんと着いたからいいじゃない……」
「それも壮大が乗っていたタクシーが私たちが乗っていたタクシーを追ってきていたからの話です!!もし壮大が追ってきてくれなかったら今頃………」
真姫の話に対し海未は涙ながら話し、恐怖のあまり枕に顔を埋めながら泣き始めてしまった。
「うぅっ……。みもっ……みもっ……」
めっちゃ泣いてる。
っていうか『みもっ』って何だよ、『みもっ』って。
「海未ちゃん……みんなの部屋見に行かない?」
「ホテルのロビーも凄かったわよ?」
絵里ちゃんも一緒に海未を慰めようとするが効果無し。
枕に顔を埋めたまま顔を横に振った。
「それじゃあ近くのカフェに……」
これも効果無かった。
「気分転換におやつでもどう?ホテルに来る途中でカップケーキ買ったんだ~」
「おぉ!花陽ちゃんナイス!」
どうすればいいか分からず困惑していると花陽ちゃんがカップケーキが入った箱を持ってきて笑顔で提案してきた。
その柔らかな笑顔でこちらもほっこりしてしまう。
μ'sが誇る二大天使の一人ハナヨエルの力で何とかこの場にほんわかとした空気が漂い始めた。
「………」
「海未ちゃんも食べるでしょ?」
「はっ!?」
枕に顔の左半分だけ埋めてこちらを見ていた海未に不意を突かれる形で穂乃果に声を掛けられ、小さく腹の虫を鳴らした海未は恥ずかしさから顔を赤くしてこう言った。
「……いただきます」
少しでもこれで機嫌を治してくれるといいんだが……。
アメリカで過ごす初めての夜。
宿泊先のホテルから出たオレたちは夕食と明日以降の予定を決めるためレストランに向かっていた。
「うわぁ……!夜の街でもすごくキレイ!」
「そうだね!まるで宝石みたい……」
穂乃果と花陽ちゃんはレストランに向かいながら、夜の街の明るさや光景に目を輝かせていた。
「2人ともまるで子どもみたい……」
「それ嫌味で言ってる?」
「ちっ……違うわよっ!」
にこちゃんに嫌味と言われた真姫は手をブンブン振って慌てて否定する。
夜の街を見て感激していた穂乃果と花陽ちゃんを見て素直にはそう言ったんだと思う。
この光景を見て感動しない人なんていないと思うんだけどなぁ……。
異国の地で過ごす初めての夜の景色を見ながら歩いていると目的地のレストランが見えて来た。
「この店であってる?」
「おう。合ってるぞ」
「ほな、さっそく入ろっか?」
早速店の中に入るとベルが鳴り、店員さんが爽やかなスマイルを浮かべながらやって来た。
『いらっしゃいませ。人数は何人ですか?』
『10人です。もし禁煙席が空いてるなら禁煙席を希望したいんですが……』
『禁煙席ですね、空いてますよ。ではご案内します』
店員さんはこちらの要求を飲み、禁煙席に案内してくれた。
案内されたのはちょうどオレたちが座れるくらいの大きくて丸いまるで円卓のようなテーブルだ。
その席に座り、オーダーする前に明日からの行動について決める軽めのミーティングを開始する。
「それじゃ明日からの予定を決めていきましょう」
「はいはい!私あの鉛筆みたいなビルに上ってみたい!」
絵里ちゃんが話し始めてすぐに穂乃果が最初に行きたい場所を言い出した。
鉛筆みたいなビルって……。
特徴的なのは分かるが穂乃果にはあのビルの正式名称は分からな……いよな、うん。
「そんな事より!ここに何しに来たのか分かっているのですか?」
「えっと……なんだっけ?」
「ライブです!」
「分かってるよ~……」
「大切なライブがあるのですよ?観光をしている時間などありません!」
街を観光したい穂乃果の意見を一蹴した。
海未はまだ昼間のことを引きずっているようだった。
「幸いにも泊まるホテルの地下にはスタジオなども併設されているみたいなのでそこで練習しましょう。外には出ずに!!」
「えぇ〜!?そんなぁ……」
地下にダンススタジオやレコーディングルームなどがあるのはホテルの案内書に書いてあったが、どうやらそこで練習すると言い出した。
何があっても外に出たくない、と言う意志が言葉の1つ1つに滲み出ており凛ちゃんも堪らず不満の声を上げる。
「大丈夫だよ!この街の人結構フレンドリーだし……」
「穂乃果の言うことなんて信じられません!」
「あぅ……」
穂乃果はすかさずフォローを入れたつもりだったが、海未に強く言われてしまい何も言うことが出来なくなった。
マズイ……このままだと一切外に出ずにダンススタジオと部屋との往復だけになってしまいそうだ。
せっかくアメリカに来たのに観光もせずに帰国するのだけは勘弁願いたい。
その念を感じ取ったのか絵里ちゃんが口を開いた。
「たしかに全スクールアイドルとしてこのライブ中継を疎かにする事は出来ないわね……」
「その通りです!」
だけど、と付け加えて話を続ける。
「どこで歌えば
「そうだよ!」
絵里ちゃんの提案にショボーン……としていた穂乃果がパッと明るくなり提案に乗った。
けどまだ海未から承諾が聞けない。
「オレも絵里ちゃんの意見に賛成かな。朝に早く起きて練習してその後に観光がてら歌いたい場所を探すために街に出掛けるっていう形でいいんじゃないか?」
「それいいと思う!」
「壮大の意見に賛成の人~!」
そしてにこがそう言って手を上げながらみんなに意見を聞いてみると、海未以外は挙手した。
それを目の当たりにした海未からようやく承諾の意を聞けた。
「はぁ……。仕方ありませんね」
「決まりやねっ!」
とりあえず明日の予定は決まったので店員さんを呼んでそれぞれが食べたいものをオーダーした。
『お待たせしました』
しばらく歓談してると店員さんが明らかに主食じゃない物が運んできた。
「ことり?それは……?」
「チーズケーキだよっ♪こっちに来たら食べるって楽しみにしてたんだ~」
ことりがオーダーしたのはチーズケーキ1ホールでとても嬉しそうに食べ始めたけどここはアメリカ。
ケーキ屋で見るホールケーキより2回りほど大きかった。
「何か……大きくない?」
「さすがは自由の国やね……」
「それ関係あるんですか……?」
それからはオーダーした物が次から次へと運ばれてきて楽しい時間を過ごした。
けど、花陽ちゃんがメニューにライスが無くて悲しい顔をしながらコーンポタージュを啜っていた。
ホテルに帰ったらライスがあるレストラン調べておこう。
ノートパソコンにてラブライブ連盟に報告のメールを送り終え、喉が渇いたので財布をポケットに突っ込んで売店に向かう。
すると向かいの部屋のドアが開いた。
「やっほ、壮くん。どこ行くん?」
「こんばんは。ついさっきまで作業してて喉が乾いちゃいまして……」
「奇遇やね。ウチも喉乾いたから売店に行こうと思うてたんよ」
「それじゃ一緒に行きましょうか」
のんちゃんと雑談をしながら売店へ。
日本じゃまず見ないであろうドリンクがたくさん並んでいたが、下手に手を出すと体調を崩しかねないので飲み慣れているドリンクを選ぶ。
のんちゃんはどうやら真姫の分も頼まれていたみたいで2本勝っていた。
エレベーターに乗って自分たちの部屋があるフロアへ戻ると……。
『もう1度ですっ!!』
『ピィィ……!そーく~ん!穂乃果ちゃ~ん!!』
嫌に力が籠った海未の声とオレと穂乃果に助けを求めることりの声が聞こえてきた。
「ことりちゃん大変そうやね……」
「トランプでもやってるんじゃないですか?」
わざと負けたら負けたで海未が怒るだろうしな。
ことりには申し訳ないけど海未が諦めるまで相手してやってくれ。
「あっそうだ。壮くんまだ寝ないんやったらウチらの話し相手してくれへん?」
「オレは別に構わないですけど……真姫もいるのに勝手に入ってもいいんですか?」
「大丈夫、だいじょ~ぶ」
のんちゃんが大丈夫って言うんなら大丈夫か……。
のんちゃんたちの部屋に入ると小さい音だけれどシャワーの音が聞こえてきた。
「真姫ちゃん」
『希?どうしたの?』
「ジュース買ってきたよ」
『ありがとう』
「たまたま壮くんも一緒やったから連れてきちゃったけどええかな?」
『別に構わないわ』
「ねっ?」
信頼してくれてるのはありがたいけどシャワー浴びてる時に入っちゃったから少し申し訳ない。
「ほな、ゆっくりしてってな」
のんちゃんは鏡の前に座り、髪を1つに纏め始めたので買ってきたジュースを冷蔵庫の中に入れておく。
冷蔵庫の戸を閉めると上に何か置いてあったのに気が付いた。
パラパラと数ページを見てみると真姫が作曲するために使っているノートだった。
今までμ'sの面々が歌ってきた譜面が書かれていたが、最後の譜面2つを見たところでページを捲る手を止めた。
「……のんちゃん。ちょっといいですか?」
「ん?どないしたん?」
「この譜面見たことありますか?これとこれなんですけど……」
見たことのない2つの譜面が書かれていたページを見せるが、のんちゃんは首を横に振った。
どちらも心当たりが無いようだ。
それに2つ目の譜面が書かれたページの余白に小さく書かれてるオレたちの名前の意味は……?
「……ちょっと」
「っ!?」
突然声が聞こえたのでビックリしながらノートを閉じ、後ろを見ると首からタオルを掛けた真姫の姿があった。
「何してるの……?」
問いには答えずに持っていたノートを手渡す。
「ノートの中身……見たの?」
「……わりぃ」
「ごめん真姫ちゃん……」
態度で察したのか謝るオレたちの横を通り過ぎた。
「真姫……」
「……もしかして」
「いいの」
「「えっ?」」
「私が勝手にやってるだけだから」
真姫は質問する前に『気にするな』とだけ答え、作曲ノートを自分のバッグにしまった。
その後、2人が眠くなるまで雑談だったりお互いの卒業式の時の話をしたけどどうしてもあの譜面の事から頭が離れなかった。
穂乃果ちゃん誕生日編略してほの誕はやるかどうかは未定です。
では、また次回お会いしましょう。