ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
自由の女神像を後にしたオレたちは一旦昼メシを取ることに。
みんなもそれぞれ食べたい物を注文したのだが、想像していたよりも1サイズ大きいものが出てきた。
食べられるだけ食べ、残った物はオレが責任持って食べ尽くすというスタイルで各々空腹を満たしていった。
そんな中、ことりはまたしてもチーズケーキ1ホールを注文していてサクサク食べ進めていた。
「美味し~い!」
「ことりちゃん……またそれ食べてるの?」
「うん!今ならチーズケーキならいくらでも食べられる気がするよ!」
ことりが幸せそうにチーズケーキを食べてる一方でオレは自分で注文したサーロインステーキに格闘していた。
「……もぐもぐ」
「壮大くん大丈夫?眉間にシワが寄ってるよ……?」
いつの間にか眉間にシワを寄せていたらしく花陽ちゃんは不安そうに心配してくれたのだが、オレが苦しんでいるのは量じゃなくて肉の固さ。
噛み切れるような柔らかさじゃなく何回も何回も咀嚼しないと飲み込めないくらい固い。
ことりがチーズケーキを完食したと同時にオレも肉を食い終えた。
やっぱりウェルダンじゃなくてミディアムレア注文しとけばよかった……。
顎に疲労を感じながらもやって来たのは中心街。
みんなであれこれ言いながら歩いていると真姫が近くの店から出てきて、その手には何か飲み物が入った容器が握られていた。
「……シェイクか?それ」
「スムージーよ」
「味は?」
「トマト味」
「お……おう。そうか」
スムージーでもトマトを選ぶなんてこいつはホントブレねぇな……。
ずっと見ていたら『飲んでみる?』と聞かれたけど丁重に断りみんなの後ろについていくと、ことりが行ってみたい場所についてみんなに聞いていた。
「そーくん!ちょっと行ってみたい場所があるんだけどいいかな?」
「みんながいいって言うんならいいんじゃないか?」
「わ~いっ!」
今にもスキップしそうなくらいルンルン気分になったことりはさらに足取りが軽くなり、先頭に立ってリードし始める。
ぶっちゃけ言うとことりが行きたい場所の検討はついている。
そしてことりが行きたい場所……服屋に着いた。
店内に入ってみると少しばかり高級感が漂う服の店だった。
「「おぉ……っ!!」」
「う~んっ!2人ともかわい〜!」
店内に入って早速我らの衣装担当の力を遺憾無く発揮し、穂乃果と海未の服装をコーディネートしていた。
「変わった服だねぇ」
「こんな服装恥ずかしすぎます……」
ジーンズに白のロングスリーブのシャツの上に黒いジャケットを着込み、赤いスカーフを巻いていて黒のニット帽を被った穂乃果はその場でクルリと回ってみせた。
一方海未はというと……パールのネックレスを身に付け、白地のワンピースの裾を両手できゅっと握って顔を真っ赤にさせていた。
「似合ってるぞ。海未」
「そうですか?」
「……むぅ」
「もちろん穂乃果も似合ってるぞ」
「えへへぇ……。そーちゃんに褒められた」
先に海未の着こなしを褒めてしまったので穂乃果がみんなに気づかれないくらい小さくだけどむくれてしまったので、フォローも忘れずに入れておく。
その後はというとみんなの着せ替えファッションショー状態になってしまったので、外の空気を吸いに一旦店から出るとのんちゃんが手に持っている物を投げようとしているところを見てしまった。
「のんちゃん?いったい何を投げようとしてるんですか?」
「にこっちの靴?」
いや、何で疑問系なんだ?……って気にするのはそこじゃねぇ。
「何でまたにこちゃんの靴を投げようと……?」
と、質問するとのんちゃんは近くの電線を指差したのでそちらの方向を目を凝らして見てみると電線には靴が何足か引っかかっていた。
確かシューフィティ……だったかな。
でもにこちゃんの靴を投げさせるのはいくらなんでもにこちゃんが可哀想だ。
なのであらかじめ用意していた荷物からスニーカーを取り出し、のんちゃんに渡す。
「のんちゃん。にこちゃんの靴投げるならこれ投げてください」
「これは……?」
「オレが2年に上がる前まで履いていたスニーカーです」
「これ投げてもいいん?」
「はい。踵も拇趾の部分もすり減り過ぎてもう履けないので思い切って投げちゃってください」
「それなら思い切って行くでーっ!!」
のんちゃんが嬉々とした表情で電線に向かってオレのスニーカーを電線に向かって放り投げ、その間ににこちゃんが履いていた靴を本人に手渡す。
「ありがとう壮大。助かったわ」
「いえいえ。のんちゃんが来たらみんなのところに戻りましょ」
少し遅れてオレの使い古したスニーカーを投げて妙にスッキリした表情になったのんちゃんも合流し、みんながまだいるであろう服屋へ戻った。
それからはみんながそれぞれ行きたい場所を粗方回り、今は穂乃果が昨日から行きたいと言っていたビルの展望台から夜景を見ていた。
「これは……すごいな」
よく夜景で『宝石箱』や『100万ドルの夜景』に例えられる事が多いが、その言葉がよく当てはまるくらいキラキラと輝いている。
「ライブの時もこんな景色がライブで使えたらとても最高なんやけど…」
「それは言えてますね」
間違いなく注目度はNo.1になること間違いないだろうな。
するとことりが溜め息混じりで話し始める。
「なんだかどこの場所も良い場所でどこでライブをすればいいのか迷っちゃうね…」
「そうですね。最初は見知らぬ土地で私たちらしいライブが出来るのかどうか心配でしたが……」
「あっ……、そうか」
ことりと海未の何かに気付いたような声を発した人物がいて、みんながその声の正体に向かって視線を向ける。
みんなの視線を辿っていくとこの10人の中で唯一夜景を見続けている凛ちゃんだった。
「分かったよ!この街にすごくワクワクする理由が!!」
「ワクワクする理由って?」
凛ちゃんに発言の真意を聞いてみると凛ちゃんの答えはオレたちにとって予想も付かない事を言った。
「この街って少しアキバに似てるんだよ!」
「この街が?」
「アキバに?」
「うんっ!!」
考えもつかなかった。
この街が秋葉原に似ている、だなんて。
「楽しいことがいっぱいで!次々に新しく変化していく!!」
凛ちゃんは絵里ちゃんや花陽ちゃんに抱きついてみたり、じゃれついてみたり肩に寄り添ってみたりして楽しそうにはしゃぐ。
そして最後にことりの肩に寄り添ったと同時にことりも楽しそうに凛ちゃんの考えに同意した。
「実は私も少しだけそう感じてたんだ!凛ちゃんもそうだったんだね!!」
「うん!!」
「言われてみればそうかもね。なんでも吸収してどんどん変わっていく…」
「だからどの場所でもμ'sっぽいライブが出来そうって思えたんかな……?」
みんな思い思いの意見を言っているを聞きながら夜景を見ていると、上空から冷たい雫が一滴落ちてきたのを感じると同時に夜景が霞んで見えてきた。
「降ってきた!」
「ホントだ!雨だ!!」
「今すぐエレベーターで下に降りましょう!」
みんなは一斉に展望台を後にしてエレベーターでみんなと下に降りる。
ビルの出入り口まで戻る頃にはオレたちがいた展望台の時よりも雨が強く降っていた。
「雨強いですね……」
「傘なんて持ってないわよ?」
「困ったわね……」
天気予報でオレたちが滞在している都市では雨は降らない予報だったので、すっかりその天気予報を信じきって傘なんて持ってこなかった。
他にもまだまだ行きたい場所があるらしいことりは落ち込み、他のみんなも傘を持っていないみたいなので雨が止むまでここから動けそうになく途方に暮れていた。
「今日はもうホテルに戻った方がいいかもしれないですね」
「そうね……そうしましょうか」
突然の雨にテンションが落ちているにも関わらず、この雨の中濡れるのを覚悟で飛び出していった人物が1人。
「大丈夫にゃーっ!!」
「ちょっ!凛ちゃん!?」
凛ちゃんだった。
みんなの制止の声を聞かず、どんどん街中へ走っていく凛ちゃんを雨降っているにも関わらずみんなで追い掛けていく。
最初はヤケクソで飛び出していったのかと思っていたけど本人にとってはどうやらそうでもないらしく、この雨天でもさっき言っていた『楽しいこと』の1つなんじゃないかと思う。
気が付けば雨は止み、夜空には満天の星で輝いていた。
「………」
凛ちゃんを追い掛けたお陰で適度な運動になり、みんながちょうど空腹になったのでこのまま夜メシを食べようってことになったので近くのレストランに入ったのだが、花陽ちゃんがアイドルとしてやっちゃいけないような顔になっていた。
「花陽ちゃんどうしたの?」
「かよちん!にこちゃんに何か変なこと言われたの?」
「何もしてないわよ!?」
絵里ちゃんたちはホームシックかどうかを聞いていたが、みんなとこんなにも濃い1日を過ごしているのでホームシックはないだろう。
なにせオレはこうなってしまった原因を知っている。
っていうかこれだけ長い時間共に過ごしていれば原因は大体分かってくるだろう。
「は…ま…が………」
「へっ?」
「白米が食べたいんです!!!」
バァンッ!!!とテーブルを壊さんばかりの力で叩き、アメリカに来てからほとんど口にしていない日本食の名前を出した。
「でも、昨日の付け合わせでライスが……」
「白米は付け合わせじゃなくて主食です!付け合わせのライスなんて論外です!!」
花陽ちゃんは白米に対して熱き情熱と理想を語っているとウェイトレスさんがパンが入ったバスケットを持ってきて、パンを食べながら白米を語るという何ともシュールな光景が出来上がっていた。
……仕方ない。
これもオレの仕事のうちの1つなんだろうな、と考えながらスマホでこの辺に白米が食べられそうな店を検索してみると1件だけヒットした。
「……なぁ、花陽ちゃん」
「何ですか?はむっ……」
泣きながらパンを食べている花陽ちゃんに救いの手を差し伸べてみた。
「この辺に炊きたてでホカホカの白米が食える店あるらしいんだけど………」
「どこですかっ!?」
差し伸べられた手を掴むどころか無理矢理かつ力ずくで引き寄せるようにして食い付いてきた。
「どこにあるんですか!?もしその場しのぎの嘘偽りを言ったとしたらいくら壮大くんと言えどもタダじゃすみませんよ?」
笑顔で言ってるけど内容はめちゃくちゃ怖い。
やっと白米を食べられる嬉しさから来てるであろう笑顔なんだけど迫力あるし、目が笑ってないからマジで怖い。
「それじゃみんなもそこに行くってことでいいかな……?」
みんなに問いかけると一斉に頷いたことで場所を白米が食べられる店へと移動する。
これでオレの生命は刈り取られなくて済みそうだ。
そして数十分後………。
「やっぱり日本人は白米に限ります!」
さっきまで居たGOHAN-YAを後にし、白米を食べられた事に花陽ちゃんはキラキラ輝いていた。
いくらおかわり無料とは言え3杯も食べるなんて余程白米が恋しかったのだろうか。
「壮大くん!ありがとう!!」
「……どういたしまして」
でも、そのお陰でこんなにも屈託のない笑顔を見せてもらった。
が、まさかこんな出来事も一瞬で凍り付く様な出来事が待っていたなんてオレはまだこの時知る由もなかった。