ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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Ex.11 答え

__不思議で懐かしい夢を見た。

 

前に見た幼い時の記憶の続きだ。

 

何人もの子どもたちが楽しそうに合唱しているを聞いた後、一度走る前の場所に戻った穂乃果は聞こえてきた合唱のリズムに合わせて水溜まりを飛び越えようとジャンプした。

 

何度も何度も失敗し、何度目かのチャレンジで水溜まりを飛び越えてみせた。

 

『やった〜!出来た〜っ!!』

 

『やったね!穂乃果ちゃん!!』

 

『ほのちゃん!次は一緒に飛んでみようよ!』

 

『うんっ!』

 

小さい頃のオレは穂乃果と2人で水溜まりを飛び越えようと提案し、また少し離れた場所から助走をつける。

 

『『せ~のっ!!!』』

 

2人一緒に地面を蹴り、笑顔のまま踏み切った。

 

 

 

 

 

 

 

目を開けて飛び込んできたのは親の顔よりも見た自室の天井だった。

 

ベッドから起き上がって窓側に立ち、カーテンを開けると昨日の雨が嘘の様な清々しい青空が広がっていた。

 

「そーちゃん!そーちゃんそーちゃんそーちゃぁぁん!」

 

日の光を浴びていると、部屋のドアが開き穂乃果が姿を現しそのままオレに向かってダイブしてきた。

 

オレは穂乃果を受け止め、その場に降ろした。

 

「こんな朝からどうしたんだ?」

 

「出たの!答えが!!」

 

「……どうするんだ?」

 

「やっぱりね、μ’sを終わらせることにしたの!」

 

穂乃果は理由を続けるように話す。

 

「今朝絵里ちゃんから『スクールアイドルであることに拘りたい』ってメールを見て思ったの。『限られた時間の中で力の限り輝くのが私たちμ’sがそうであるべき姿なのかな』って。……ダメかな?」

 

理由を最後まで聞いてから穂乃果の頭をわしゃわしゃと撫でる。

 

いいもダメもない。

 

「お前自身が決めたんだろ?……みんなきっと分かってくれるさ」

 

「うんっ!!」

 

「んじゃ、メシ食うぞ。どうせお前のことだからすぐにでもオレに知らせたくて朝メシ食ってないんだろ?」

 

どうやら合っていたらしく穂乃果は右手を後頭部に当てながら苦笑いをする。

 

「何でもお見通しだね。……って、あれ?」

 

「今度はどうした?」

 

「そーちゃんマイクスタンドなんて持ってたっけ?」

 

指差された部屋の隅を見てみると言われた通りマイクスタンドが置かれてあり、そちらに目を向けた瞬間スタンドのシャフトの部分が小さく輝いた。

 

「……」

 

「そーちゃん?」

 

「何でもねぇよ。ホラ、さっさと洗面所で顔洗ってこい」

 

「……はーい」

 

マイクスタンドに興味を無くしたのか、1秒でも早く朝メシが食べたいのか分からないがオレよりも先に階段を降りていった。

 

完全に姿が見えなくなってから改めてマイクスタンドの方を向く。

 

……お姉さん、彼女は無事答えを見つけることが出来たようです。ありがとうございました。

 

スタンドに向かって小さく礼をしてから一足先に降りていった彼女の後を追い掛けた。

 

 

 

 

 

穂乃果に朝メシを食べさせ、共に音ノ木坂学院へと向かう。

 

2人の手を繋いだ状態で……。

 

まだ小っ恥ずかしくて最初は拒否したんだけど、『手繋ぎたい!』って穂乃果の主張に押されてやむ無く手を繋ぐことになっただけなんだけど。

 

「今日は陸上の練習お休みなの?」

 

「今日どこの部活も練習試合で使える施設が無いからな」

 

「ふ~ん……。運動部が強い部活がある学校も大変だねぇ」

 

そんな話をしていると音ノ木坂学院へと繋がる階段にやって来た。

 

階段の頂点を見ながら思い出したかのように彼女は話し始めた。

 

「そう言えば今日不思議だけど懐かしい夢を見たの」

 

「どんな夢?」

 

「小さい頃そーちゃんと手を繋いで水溜まりを越えた時の夢」

 

奇遇だな……オレも今日その夢を見たんだ。

 

最もあの時はジャンプの最高地点で手を繋いだような覚えはあるが。

 

「だからその夢の続き……って訳じゃないけどこの階段上がりきったらあの時と同じように一緒にジャンプしてくれる?」

 

「……あぁ。いいぞ」

 

「やった♪……それじゃ、行くよっ!」

 

掛け声と共にオレたちは手を繋いだまま階段を走って上がり始める。

 

あの時と違って体格に差があるから穂乃果のスピードに合わせて走る。

 

1段、また1段と徐々に階段の残り段数が少なくなっていく。

 

「そーちゃん!準備はいい!?」

 

「あぁ!お前のタイミングに合わせる!!」

 

「それじゃ行くよ!せ~のっ!!」

 

1番上の段に踏み入れたと同時に大きくジャンプした。

 

空中にいる間にチラッと隣を見てみると、とても幸せそうな笑顔をしていた。

 

そんな彼女を見てるとこちらも自然と笑顔になってしまうのが分かる。

 

そのまま上靴に履き替えて部室に向かって廊下を駆ける。

 

穂乃果は部室のドアの前で立ち止まり、ドアを開けようとするが肩に手を置いて止める。

 

「どうしたの?」

 

「きっとみんな部室にはいないと思うぞ?……きっとあの場所にいる」

 

「あの場所?」

 

「あぁ。μ'sにとってとても大事な場所だ」

 

最初はピンと来なかった様子だったが、やがて言ってることが伝わったのかバッグを部室の中に置いてから部室棟を通り過ぎて階段を上がっていく。

 

「みんな!お待たせ!!」

 

先行していた穂乃果が屋上に繋がるドアを開けると、みんながいい表情をして待っていた。

 

どうやらオレたちが最後のようだ。

 

「遅かったですね」

 

「ごめんごめん。みんなも揃った事だし練習始めよっか!!」

 

「そうね。私もまだスクールアイドルだし!」

 

「にこは別にどっちでもよかったんだけど?」

 

その割に膝頭に絆創膏が貼ってあるのにオレは見逃さなかった。

 

にこちゃんの膝頭の絆創膏を見ていた事に気付いた真姫が耳打ちするように話す。

 

「面倒くさいわよね。ずっと一緒にいると何も言わなくても伝わるようになっちゃうって」

 

「でも、それも悪くないだろ?」

 

「……そうね」

 

みんなが導き出した答え、何となくだけど分かった。

 

「全員異議は無いってことでいいのか?」

 

みんな返答の代わりに沈黙を貫く。

 

「でも、ドーム大会は……」

 

「「「「「「「「………」」」」」」」」

 

花陽ちゃんが発した言葉にみんなの表情に陰りが見えた。

 

μ'sが活動終了することでドーム開催の話が流れてしまうのではないか、と思っているかもしれない。

 

けど、そんな空気を吹き飛ばすのがμ'sのリーダー。

 

「それも絶対実現させる!」

 

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」

 

「ライブをするんだよ!他のスクールアイドルに有志を集って!!」

 

……とんでもない方法を投下してこの空気を強引にブッ飛ばした。

 

「本気なのですか!?」

 

「今から間に合うの!?」

 

「そうよ!どれだけ大変だと思ってるの!?」

 

海未と絵里ちゃんと真姫の3人は驚きを隠せずにいたが、穂乃果はさらにプッシュする。

 

「でも、もしこれが出来たら面白いと思わない!?」

 

「いいやん!ウチは賛成!」

 

「何だかとっても面白そうにゃ!」

 

面白い事に目がないのんちゃんと凛ちゃんの2人は賛成した。

 

こうなると……。

 

「もしこれが本当に実現したら……これは凄いイベントになりますよ!?」

 

「そうね。本当に実現したら大きなイベントどころじゃないかもしれない!」

 

「ふんっ!スクールアイドルにこにーにとっては、全然不足なしよ!」

 

メンバーのみんなにもやる気の火がついて次々とやる気に満ち溢れていく。

 

「そうだね!世界で1番素敵なライブ!」

 

「確かに今までで一番楽しいライブかもしれませんね!」

 

……話はまとまったな。

 

「花陽ちゃん!!」

 

「はいっ!?」

 

いきなり大きな声で自分の名を呼ばれた花陽ちゃんはビクッ!!と身体を硬直させながら返事する。

 

音ノ木坂学院アイドル研究部新部長として初の大仕事だ。

 

「音ノ木坂学院近辺の……いや、東京都内に存在する全スクールアイドルグループにパソコンで今回の件でメールを送ってくれ」

 

「もう始めるの!?」

 

絵里ちゃんは驚きながら尋ねてきたので、その問いに肯定する。

 

「もちろんです。次回のライブまで時間がない?なら無理矢理時間を作ればいいんです。……そうだろ?穂乃果」

 

「うんっ!今日からライブの日までノンストップで行くから振り落とされないようにね!!」

 

「「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

それぞれのブロックに分かれて作業を開始してから1時間が経過した。

 

穂乃果は1人でどこかへ行ってしまったが、直に戻ってくるだろう。

 

オレはというと家からノートパソコンを持ち込んで花陽ちゃんと一緒に対策本部となった部室にてスクールアイドルを抱える学校へのコンタクトを図ろうとしていると、花陽ちゃんに声を掛けられた。

 

「壮大くん。ちょっといいかな?」

 

「ん?どしたー?」

 

「壮大くんに言われてからメールを通じて周辺に存在するグループに送ったら、早速返信が届いたんです!」

 

もう返信来たの?速くねぇか!?

 

こうしてはいられないと考えたオレはみんなに再度収集をかける。

 

最後に穂乃果が帰ってきて全員集まったところで、花陽ちゃんからみんなに向かって説明する。

 

「さっきから返信が何通か来てるけど話を聞いてからどうするか決めたいって言うグループもいるみたいで……」

 

「いきなり私たちから出てほしいって言われてもきっと戸惑うかもしれないわね」

 

「電話を使ってきちんと説明したほうがいいのかもしれませんね……」

 

海未の意見もいい案なんだけど、全部のグループを電話で話すのも大変だ。

 

ただでさえ時間はそれほど残されていない。

 

電話もメールもダメ。

 

……ならば残された手段は1つしかない。

 

「じゃあどうするの?」

 

「会いに行くしかないだろうな」

 

「そうそう。会いに行くしか……はぁ!?」

 

真姫が髪をクルクル巻くのを止めて豆鉄砲でも食らったハトのような顔をして、信じられないと言った様子でこちらを見てきた。

 

残された手段……それは少しでも参加する意思があるグループ全部に会いに行く。

 

「ちょっ!それ本気で言ってるん!?」

 

「本気です。その分行動範囲は限られてきますが、その人たちに直接会ってオレたちの計画を話した方が確率は上がるはずです」

 

「でもどうやって行くの?」

 

ことりがぶつけてきた疑問は穂乃果が代わりに答えてくれた。

 

「簡単だよっ!……真姫ちゃんっ!!」

 

「……何よ!?」

 

「電車代貸してっ!」

 

「「「「「「「「「あぁ~……」」」」」」」」」

 

穂乃果の答えに真姫以外は納得したように頷き、真姫はと言うと……みんなからの視線に耐えきれず顔を真っ赤にしていた。

 

「なんでみんなこっち見るのよっ!電車代なら壮大からも借りればいいじゃないっ!!」

 

「えあ!?」

 

思わず変な声が出てしまった。

 

「なんてこと言い出すんだおめぇはよぉ!!」

 

「言い出しっぺなんだからそれくらい協力しなさいよっ!」

 

「電車代うんぬん言いだしたのは穂乃果だろ!?」

 

「穂乃果の保護者(かいぬし)ならちゃんとリードくらい握っときなさいっ!」

 

「誰が保護者(かいぬし)じゃオラァ!!」

 

「あの~真姫ちゃん?そーちゃん?私は犬じゃ……」

 

「「穂乃果は黙ってろ(て)!!」」

 

その後、何としても電車代を出したくないオレと何としてもオレにも電車代を出してほしい真姫の厳正な討論(こうろん)の結果……。

 

 

 

 

 

「そーちゃん!3グループに分かれて行動しようってことになったけどそれでいい?」

 

「あぁん?別にいいんじゃね?はぁ……いくら貸しゃあいいんだよ……」

 

「やさぐれそーくんになっちゃったにゃ」

 

みんなの電車代を貸すことになった。

 

お金の件はオレが言った訳じゃ無いのに……解せぬ。

 

 

 

 




今回も読んでいただきありがとうございます。

2016年もあと少しですね。

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