ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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今回は前回の続きです。

では、どうぞ。


Ex.13 義務

~Side 高坂 穂乃果~

 

「……ぐー……んがっ」

 

ダンス練習の休憩中、いつもなら個人アドバイスを送ったりドリンクが入ったボトルを運んだりしているそーちゃんが壁に寄りかかって眠っている。

 

「それにしたってにこたちが練習してるのに堂々と、しかも鼻提灯を作ってまでグッスリ眠りこけてるってどうなのよ?」

 

「にこ。そんな事言っちゃダメよ?」

 

「……分かってるわよ。ここんとこ無理しすぎてるからね、こいつは」

 

「午後からは壮くんの力がどうしても必要になってくるシーンが多くなりそうやし、今はこのまま寝かせといた方がええやん?」

 

絵里ちゃんが小言を口に挟むにこちゃんを諭し、希ちゃんと一緒にそーちゃんを気遣うような優しい目付きでそーちゃんを見る。

 

ここのところのそーちゃんは自分の陸上の練習の他にいろんなところを駆け回っていたり、夜遅くまで何か作業をしているみたい。

 

言い方は少し悪いけど、そーちゃんの献身的な動きのお陰で私たちはライブに向けて集中して練習することが出来ていると言っても差し支えないくらいだ。

 

「壮大の献身的なサポートを無駄にしないためにも最後の仕上げに入るわよ!」

 

「「「「「「「「はーい!!」」」」」」」」

 

絵里ちゃんの合図で練習が再開となった。

 

みんなが所定のポジションに着く直前、そーちゃんがいるところを振り返ってみると笑っているように見えた。

 

 

Side out

 

 

 

「ふっ、あぁぁ……」

 

「そーくん大きな欠伸だにゃ~……」

 

「大丈夫なの?壮大にしか出来ない作業だってあるんだから」

 

「ん~……動いてる内に目ぇ覚めるかもだから大丈夫」

 

午前中のダンス練習をサポートするつもりが、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

 

みんなオレがここ最近ゆっくり眠れていなかったのを知っていたみたいで、気を遣って音ノ木坂学院から出発するギリギリまで寝かせてくれたみたいだ。

 

その分、午後の作業はみんなよりも働かないとな。

 

そんなこんなでライブ会場作りの待ち合わせ場所であるUTXの前に着いた。

 

「う……おぉっ!?」

 

「これだけの人数が1度に集まるのもなかなか壮観ですね……」

 

まず目に飛び込んできたのはその人数だ。

 

パッと見ではあるが、150人以上はいるだろう。

 

まさかこんな大人数が集まるとは思ってもいなかったので、思わず怯んでしまった。

 

UTXの生徒会長さんから穂乃果に拡声器が手渡され、マイクの音量テストを行ってから声を張り上げる。

 

『みなさんこんにちは!今日は集まっていただき本当にありがとうございます!』

 

ザワついていたのが急にシーン、と静まり返る。

 

『このライブは大会と違い、みんなで作っていく手作りのライブです!自分たちの手でステージを作り、自分たちの足でたくさんの人に呼び掛け、自分たちの力でこのライブを成功に導いていきましょう!』

 

穂乃果の話が終わると、みんなから大きな拍手が起きた。

 

拍手が鳴り止み、それぞれ分担して作業を開始しようとしたところで聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「お姉ちゃーんっ!」

 

「雪穂?それに亜里沙ちゃん?」

 

UTXに通じている通路に、初々しい音ノ木の制服を着た雪穂と亜里沙ちゃんの2人の姿があった。

 

『2人とも~!手伝ってくれるの~っ!?」

 

穂乃果たちも2人の存在に気がつき、拡声器を使って2人に声を掛ける。

 

「うん!」

 

「もちろんです!!」

 

「でも、私たちまだスクールアイドルじゃないのに参加しちゃっていいのーっ!?」

 

『だいじょーぶっ!!!』

 

穂乃果が返事をする前に声を揃えて返事する。

 

うん、みんなのこのノリ嫌いじゃないぞ。

 

 

 

 

 

秋葉原のメインストリートはガヤガヤと騒がしくなってくる。

 

運営委員会や警察の皆様のお陰で今のところ事故なく進んでいる。

 

「これでいい~!?」

 

「もう少し右!……今度は行きすぎ!……OK!!」

 

建物には垂れ幕を下ろしたり、道路にある標識までもが可愛い装飾を施していった。

 

他の場所も見て回ってみると花陽ちゃんが一生懸命息を吹き込んで風船を膨らませているのに対し、真姫がエアーを使って風船を膨らませてるのを見てジェット風船のように吹き飛ばしていたり……。

 

ストリートの歩道では明日ここで路上ライブを開催することをお知らせするチラシを配ったり……。

 

そんな光景を横目にとある場所に向かった。

 

「どうも」

 

「壮大じゃない。準備の方は大丈夫なの?」

 

「まぁそれなりに。オレも手伝いますよ」

 

「そーくん助かるにゃ~!」

 

とある場所とは、ライブ会場に出展している屋台だ。

 

他のアイドルグループの子が屋台を出して事前に会場を盛り上げようって提案してきて、ライブ会場に屋台?と思ったけど意外と馴染んでいて企画を提案された時より違和感は感じない。

 

屋台の中に用意されていたエプロンを身につけてところで、通りかかった女子高校生に声を掛けられた。

 

「あの……」

 

「いらっしゃいませ」

 

「ちょっとお聞きしたいんですけど……」

 

「何でしょう?」

 

「ここの看板に書いてある『白米スムージー』って一体何なんですか?」

 

白米スムージー!?

 

弾かれたように屋台から飛び出し、看板を見てみると確かにそこには『白米スムージー』という文字が書かれていた。

 

これ提案した人、絶対花陽ちゃんだ!

 

むしろ花陽ちゃん以外思い当たらない。

 

大好きなお米をスムージーにしちゃったよ、あの娘!

 

日本人の主食を飲み物にするとか……マジかよ。

 

「……白米スムージー、出来ますか?」

 

思わず苦い顔をしてしまい、それを見た女の子は心配そうな顔でこちらの様子を伺ってきた。

 

……オーダーされたからには要望に答えるのが店員ってもんだ。

 

「少々お待ちください」

 

何故かミキサーの近くに置かれていた炊飯器から白米を少々入れ、バナナと牛乳とハチミツを混ぜてミキサーでよく混ぜる。

 

スムージーの容器に入れ、フタをしてストローを挿して女の子に手渡す。

 

「どうぞ。……もし不味ければ返金もしますし、返品しても構いませんので」

 

白米スムージーを注文した女の子がストローに口をし、スムージーを飲み始める。

 

最初は不安そうな顔だったけど、飲み込むと一気に目を輝かせる。

 

「これ……すごく美味しいです!」

 

「ホントですか!?ありがとうございます!!」

 

よかったぁ……上手く出来てたみたいだ。

 

「明日ここでライブやるからぜひ参加しに来てね!」

 

にこちゃんが女の子たちに明日のPRを付け加えながら見送る。

 

営業スマイルと言うべきか外面向きの笑顔でさりげなく参加を呼び掛けてしまうあたり流石にこちゃんと言わざるを得ない。

 

さすがにこちゃんあざとい、略してさすにこ。

 

 

 

 

 

 

 

「みんな!行くぞ!!」

 

『せぇぇ……のぉっ!』

 

合図と同時に一斉に大きな風船についているヒモを思いっきり引っ張って立ち上げる。

 

『おお〜っ!!』

 

透明で大きなハート型の風船も空気が入れられてゲートと共に立ち上がると、それを見ていた人も引っ張りあげた人も大きな拍手が沸き起こった。

 

「やっと出来た……」

 

ゲートの設立を側で見守っていた穂乃果も、嬉しそうな表情をしながらそう話す。

 

「ところどころ曲がっていたりするけど……」

 

「これも味でしょ?」

 

「えぇ、そうね」

 

絵里ちゃんと綺羅も互いに笑い合う。

 

自分たちで作ったライブのステージ。

 

多少の変なところもあるけど、それがまたいい感じになっている。

 

「そんじゃオレは屋台の片付けの方に行ってきます」

 

「「「いってらっしゃ~い」」」

 

屋台を畳んでいる途中でゲート設立に呼ばれたので、自分のやるべき仕事をするために屋台がある場所へ戻る。

 

「松宮くんっ」

 

「綺羅?」

 

「私もご一緒していいかしら?」

 

「いいけどほとんどやることないぞ?」

 

「いいのいいの♪さっ、行こっか♪」

 

綺羅と一緒に屋台がある場所へ戻り、綺羅と共に撤収作業を進めていく。

 

と言っても彼女はオレのすぐ横で白米スムージーを飲み、オレはオレで売上の勘定するだけなんだけども。

 

ちなみに今日の売上は全てラブライブ!大会事務局へ全額寄付することが決まっており、μ'sを始めとした有名どころのアイドルグループが売り子として販売していたため売上は結構いい額を叩き出した。

 

「みんながいる場所にいなくてもいいのか?」

 

「ん?いいの。私湿っぽい話とか苦手だし……高坂さんがあの場で何を言おうとしてるか分かっちゃったから」

 

確かにオレも立ち去る直前に穂乃果が憂いを伴った表情をしてたのがチラッと見えたけど、それだけで何を言いたいのか分かるなんてな……。

 

「あの時と同じで今でもみんなと同じでμ'sが終わるのは悲しいわ。でも、私たちはそのμ'sの意志を受け継ぎ、見届ける権利……ううん、義務があるの」

 

「…………」

 

()()()()

 

彼女は初めてオレの名を呼び、立ち上がった。

 

「明日はスクールアイドル史に残る最高のライブにしましょ?」

 

オレに向けて手を差し伸べられたので、立ち上がって彼女が痛がらない程度の力で握り返す。

 

「あぁ。こちらこそよろしく頼むな、()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっかり暗くなっちまったな」

 

「そうだねぇ」

 

「雪穂もオレたちと帰ればよかったのにな」

 

「変なところで完璧主義だからねぇ……」

 

雪穂は『まだ振り付けが完璧じゃないから』ってことで亜里沙ちゃんと一緒に何処かへ行ってしまったので、オレと穂乃果で手を繋いで歩いて帰ってる途中だ。

 

「ところでそーちゃん」

 

「ん?」

 

「μ's活動終了するってみんなに言おうとした時いなくならなかった?」

 

……やっぱり気付いてたか。

 

気付いてたんなら否定のしようがないな。

 

「まぁな。オレがあの場にいるとピーピー泣いてたかもしれないしな」

 

「もうっ!穂乃果泣き虫じゃないもんっ!!」

 

「ウソばっかり。小さい頃から1人でいるのが苦手な甘えんぼで夏穂さんに怒られるとすぐオレの部屋に駆け込んできてた癖に」

 

「違うもん!うぅ~っ!!!」

 

繋いでいた手が離れ、ポカポカ叩かれるけど力が入ってないため全然痛くない。

 

「ほら。とにかく明日に向けて少しでも早く帰って少しでも長く身体を休めろ」

 

「そーちゃん!穂乃果の話はまだ終わってないよっ!」

 

明日に向けてオレたちは足早に帰路につく。

 

オレも明日に向けて準備をしないといけないしな。

 

μ'sの意志を受け継ぎ、その意志の継承を見届けるために……。

 

 

 




次でラストかも。

次回作についてはまだ自分の中で検討しています。

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