シャーリーちゃんと別れて、さっそく教えられた道にそって地下室へ行った。意外とすぐに階段を発見して、降りてきたところだ。目の前には玄関よりも巨大なドアがある。豪華な装飾はないけど、大きさはかなりのものだ。
「ここかな・・・」
そんな呟きも虚しく、答えてくれる人は誰もいない。とりあえず行ってみないことには何も始まらない。
そう考え扉を押してみた。ちょっと重く、少し力を強くしないと動かない。
ギィーっと扉を開き中を覗いてみた。巨大な本棚がたくさん並んでいるのが一目で分かった。扉から中央に続く道の先に、扇形の大きい机があって、その上にはたくさんの本が山積みになっている。しかもその本一つ一つは、主人様の家の本の大きさとは比にならないくらい大きく、この距離からでもわかるが、その本の構成している部品が鉄と革っぽい丈夫そうな物だということがわかる。そしてここからだとよくわからないが、扇形の机の向こう側にピンクっぽいような紫っぽいような服装の女性がいるのが分かった。ちょっとゆらゆらしているから本の隙間から見えたのだ。あの人かな。
さっそく図書館に入り、真っ直ぐに机の方へ歩いて行った。
向かう途中で本棚の間に、頭に黒い小さな翼と背中に黒いレミリア様よりは小さめの黒い翼を持った髪の赤い人がいたのは気にしなかった。やっぱりレミリア様の館なのだなっと思わせる。小悪魔っぽい感じだったからおそらく従えているのだろう。
あれ?そういえば吸血鬼って小悪魔も従えるんだっけ?
そんなことはまぁいい、とりあえずパチュリー様に挨拶しに行かなければ・・・。
「あら、見ない顔ね。新しいメイドかしら?」
机の近くに来た瞬間、紫色の長髪が特徴な女性はそう問いかけてきた。その声は少し弱々しく感じたが、同時に強い冷静さも感じ知的な性格だということが感じ取れた。そんな女性は私の方は見向きもしていない。咲夜さんに言われて、できるだけ足音をたてることは控えていたんだが、どうやらこの館の人は尋常じゃない勘も持ち合わせているらしい。
「はい、コルノと言います。数時間前に咲夜さんに拾われて、白黒魔法使いさんが来て目的が達成されるまでここにいさせてもらえることになりました」
女性はいったん本を閉じてこちらを向いてくれた。白い肌が目立つその顔は少し主人様の家族さんに似ている気がする。そういえばあの人もよく病気で寝ていたな。体が病気がちかアレルギーを持ってる人は意外と一目で分かったりするものなのだろう。
「そう、よろしくねコルノ。私はパチュリー・ノーレッジよ。魔法使いで火水木金土日月を操る程度の能力を持っているわ。あと、本を読みたかったらここで読んでいくといいわ。持ち出したいなら私に言いなさい」
よかった。この人がパチュリー様らしい。魔女と言われたからもう少し凶悪な事をいうかもしれないと思っていたが、意外とそんなことはなかった。とりあえず挨拶は済ませた。次は・・・コア様か。
「ありがとうございます。パチュリー様、コア様はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」
パチュリー様は私の方を指差してきた。正確には私の後ろだろう。
振り返ってみると、さっきの赤い髪の女性・・・さっきみたときは長髪だったんだが、短髪の方がいた。
「パチュリー様、どうかしましたか?それよりその子は?」
赤髪の女性はすぐにこっちに気づいて話しかけてきた。
「コアアを呼んできて、この子を紹介したいから」
あ、もしかしてさっきの長髪の方がコアア様かな。まさか全く瓜二つの人がいるとは思ってなかった。それよりもパチュリー様が紹介してくださるということは、いちいち探す手間と説明する手間が省ける。
「パチュリー様、紹介したい子というのはどなたですか?」
上から声が聞こえてそっちを向けば、長髪の女性がいた。どうやらコア様の探す手間も省けたらしい。コアア様と思しき女性はピョンっと二階から飛び降りて、私の隣に着地した。
「その子よ。新しく入ったメイドよ。名前はコルノっていうらしいわ。レミィが挨拶させに行くくらいだから、それなりに面白い子なんでしょうね。それに感じる力も来たばっかりの時の咲夜くらいあるし、なにかできるんじゃない?」
急に振られてしまった。「わかりました」と言って、曲を思い浮かべてみた。
さっきと同じようにホルンが出てきて、音が流れ始めた。
「あなた楽器を扱えるのね。でも騒霊の気とは違うね。どちかというと妖怪」
ん?妖怪?私が?あれ?私、人じゃないの?ホルンが曲を思い出すだけで出現させられるから普通ではないと思ってたけど、人間じゃないとなるとなんかショックな気がする。主人様の姿なのに妖怪って・・・なんか主人様を汚してしまった気がしていやだな。
「すごいですね!音が二つも流れている!プリズムリバーじゃできないんじゃないですか!?」
幽霊楽団の名前だろうか。私はその幽霊さんのことはわからないからそんなこと知らない。
「外の世界から来た時には楽器ではなく、この姿になっていたんですが、レミリア様に言われてちょっとやってみたところできました。」
パチュリー様も「ほおぉ」とか小さく言いながら、言ってきた。
「能力の具現化ができるんだから、戦えるんじゃない?」
レミリア様が言ってた咲夜さんが戦って知ってるとかそういうあれかな。私絶対途中で戦死する気がする。でもちょっと気になる。少し聞いてみよう。
「あの、戦うってどんなものなのですか?死んでしまったりしないんですか?」
パチュリー様達はその瞬間「は?」みたいな顔して見た来た。でもすぐに「あ」と顔を戻して説明してくれた。
「そうね。外の世界から来たんじゃ知らないのもそうよね。幻想郷で言う戦うっていうのは弾幕勝負って言ってね。まぁ簡単に言えば、少女同士の揉め事を収めるためだけの勝負ね。魔力を球・・・とは言ってもいろんな形があるけど、とか物・・・咲夜だったらナイフね。に非殺傷結界ていう魔法とかをかけて相手に当てるというものよ。これが固定ルールで、隙間の無い囲いの弾幕とかルール外のことをするのは違反よ。他にも物理的な攻撃が有りなルールを付け加えてもいいわ。ちなみに、紅白の巫女が何個かルールを作って問題を収めてるからそれを参考にしてもいいかもしれないわ」
パチュリー様はゆっくりと丁寧にそう説明してくれた。そんな勝負事があるのか。やっぱり幻想郷はすごいところなんだなと思わせる。
「コルノ、用事が済んだら後でレミィに弾幕勝負について教えてもらうといいわ。きっと手とり足取り練習させる人を用意してくれるわ」
パチュリー様はレミリア様ととっても親しいようで、さっきからずっとレミリア様の呼び方が特殊だ。
「ありがとうございます。では、仕事に戻っていいですか?」
パチュリー様は少し考える素振りをしたが、なんでもないらしい。すぐこっちを向いて「いいわ」と言ってくれた。そういえば残ってる人は・・・フランお嬢様か。
「ところでパチュリー様、フランお嬢様はどこにいらっしゃるのですか?」
「地下の部屋で遊んでるはずよ。でも一人で行かないほうがいいわ。そうね。美鈴を連れて行きなさい。急に攻撃してきても、攻撃仕返してはダメよ?あの子はとっても心が不安定だから、戦い慣れしないあなただと重傷を負うかもしれないわ。頑張ってね」
なんじゃそれ・・・。そんなに危険な人なのかフランお嬢様は・・・でもお嬢様だからやっぱり子供だと思うんだけど・・・。いや、今までに見てきたものでも不可解な事が多すぎる。常識にとらわれてはここでは生き残れない気がする。とりあえず、美鈴さんを連れていけば大丈夫だろう。
「ありがとうございます。では失礼します」
そう言って、図書館の出口に歩き出したとき、パチュリー様が声をかけてきた。
「用事が済んで、暇なときでいいわ。図書館に来て、少し試してみたいことがあるの」
パチュリー様の言葉に「わかりました」と言って、図書館を後にしたのだった。