転生して普通に生活したら斬撃皇帝ってマジで?!   作:悪事

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信じるということ

この世界には二大宗教とされるものがある、それは剣神教と大地母神教の二つのことだ。この両者は互いの教義を容認できず、たびたび小競り合いを引き起こしていた。両方とも、最初期はブレイドという人類の敵を撃退することに重きを置いた教えだったのだが、次第にアームとツルギ。どちらがより優れているのかという論争が発展したり、大地母神教が撃退から専守防衛に重きを置き始めたことなどがあって、剣神教と大地母神の二大宗教は決別を余儀なくされた。

 

 

 

 

大地母神教は、エルフが多く住むリーフ連邦を拠点に様々な国へ布教を始めた。剣神教も多くの国を回り、才と力あるツルギ使いを納刀(入信)させた。ツルギを使う騎士とアームを使う騎士のどちらが戦士として優れているのかと問われれば、ツルギを持つ騎士に軍配が上がる。ツルギは純粋に戦闘に特化した能力を持つ場合が多くブレイドと戦う騎士のほとんどはツルギ使いだ。一方、アームを使う騎士は純粋に戦闘に長けた能力である場合が非常に少ない。特定条件、地形などではツルギ使いに勝るとも劣らぬ戦果を出すものの、一般的なアームの能力は生活や生産に優れていた。

 

 

 

 

 

ある時、剣神教の内部で分裂が起こる。女性騎士を中心とした一派が分裂、その分裂を機に剣神教から独立して生まれた一派を女剣派と呼んだ。女剣派は、騎士になるべきは女性であり男性騎士は戦わず優秀な女性騎士の子供をつくるためにあれ、とする教義を掲げていた。他にも女剣派は、女性の社会地位向上、男性騎士を戦場から退かせることを主な目的として活動している。しかし、男性騎士を戦場から退かせるという考えが剣神教には認められず、女剣派は剣神教と袂を別った。現在、ブレイドによって人類は大きな被害を受け危機的な状況にある。そんな時代で戦える騎士を女性のみに限定するという思想が受け入れられなかったのだ。これが平和な時代、もしくは騎士になれるのは女性だけということがあれば、女剣派は大きな支持を得ただろう。しかし、ブレイドによって人類の生存圏が限定されている時代で、そんな選り好みをする教義は認められるはずもない。結果、女剣派はギルドで細々とブレイドを討伐し、日々を暮らしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side女剣派

 

 

女剣派の騎士たちはアルマニア王国の近郊にある屋敷を拠点にして活動を行っていた。朝一番、屋敷のパーティーでも出来そうな大広間の中、そこには多くの女性が跪き祈りを捧げている。その中にちらほら女性より少ないが男性も混ざって祈っていた。女剣派は清廉な女性こそツルギという規格外の武具を扱うに相応しいという独特な考えを持っている。彼女たちの中に混ざって祈っている男性は多くが元騎士。彼らは戦闘で大怪我を負い戦えなくなった者や戦場の恐怖に耐えられず逃亡した者たちが多い。女剣派は女性のための組織でもあるが、同時に騎士の道を捨てた男性の支援もしている。ついでに、女剣派は男性との交際を積極的に認めてはいるが、入ってくる多くの女性は男性に対しトラウマを持っていたり精神的な事情もあって男性を敬遠している節があった。

 

 

女剣派の信者たちは、多くが女性騎士である。彼女らは美しさとしなやかさを見せ、か弱さを欠片も見せない女性ばかり。そんな彼女らの前に立つ一人の女性は美しい顔を悲しげに歪め、大音声の宣言をしていた。

 

 

「……みんな、これより私たちは為さねばならないことを為しに行く。同行を許可された者は私たちと共に本日、リーフ連邦に発つ。残った者たちはこれまでと同じように過ごし待っていてくれ」

 

 

 

『はい!!!!!』

 

 

 

集められた多くの男女が大きく返答を返す。その声の先にいるのは女剣派の教祖である、エル・フォレスト・グリーン。そんな彼女の側近である数名の女性騎士たちは、大きな荷物を背負って待機していた。これより彼女らが行くのはリーフ連邦、大地母神教が国教とされる謂わば敵地。そんな場所に赴く女性たちの顔には不安や悲愴の陰りは一切ない。あるのは、ただ為すべきことを為すために進み続ける信仰厚い教徒としての覚悟だけ。

 

 

「みんな、リーフ連邦は大地母神教の本拠地だ。かなりの確率で危険が伴うだろう。それを承知でついて来てくれることに感謝の念を禁じえない。皆の覚悟に応えるため、今回のリーフ連邦で行われる裁判で我々の目的を遂行しよう」

 

 

「エル、あまり気を張りすぎないようにね。それは貴女の欠点だから」

 

 

「……マユ………まいったな。気を張っているつもりはなかったんだが。まだまだ未熟ということか。これからも修練あるのみだな」

 

 

「エルもマユも、難しく考えすぎだよ〜。もっとリラックスしていこ〜」

 

 

「君はリラックス、というか気を緩ませすぎだぞ、ウィーン。……今回の行動は私たちの信じる教えを貫くための聖戦だということを忘れないでくれよ」

 

 

 

青い髪をかきあげ、エルは周囲の女性たちへ改めて己らがリーフ連邦に向かう理由を論じた。

 

 

 

「わかっていると思うが、みんな。私たち女剣派が戒律に従って私たちは罪人に相応しい裁きを与えるため、リーフ連邦に向かう。人々へ横暴をふりかざす魔剣の生を許してはならない!……ゆえに我らが為すべきは、斬撃皇帝、アド・エデムの断罪である!これが正義である!」

 

 

『おおおぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

 

 

エルの言葉に集められた男女は熱狂する。正義を為すという明確な指標に魅せられた教徒たちは、これより旅立つ者たちを口々に褒め称え抱き合い激励を送った。若くして教祖に任じられたエルは、信者たちを一歩離れた場所で穏やかに見守る。戦いに恐れを抱く男性も、男性に対し忌避感を持つ女性もこの瞬間だけは個人的な感情を呑み込んで志を同じくしている。普段は男女間でたびたび、いざこざが起こるというのに火急の時を迎えることで信者たちは一致団結しようとしている。

 

 

「これなら、我々の目的を遂行出来るかもな」

 

 

「かもって?随分と弱気な発言じゃない。私たちの教祖をやり始めて貴女がそんなことを言うなんて初耳よ。これは明日に雨が降るかもしれないわね」

 

 

「茶化さないでくれ、マユ。今回の活動はいつものブレイド退治とはまた異なる困難さだ。裁判ということもあり敵は高度な策謀を張り巡らせる人間たちだからな。……それに私たちの立場はアド・エデムを裁くスタンスであるがゆえ、確実に剣神教と正面から対立するだろう」

 

 

「え〜、なんでぇ。あんな危険なツルギに価値なんてないでしょ〜?いくら、威力が強いからって、被害がデカすぎて使い道なんてほとんどないし〜」

 

 

「ウィーンの言う通りだ。斬撃皇帝の欠点は威力という長所に勝る短所。すなわち、大地を枯れ果てさせるということにある。これではいくら威力があろうと使い道など皆無、しかし、ある想定でのみ斬撃皇帝は強く求められることがある。………何だか、分かるか?」

 

 

「……………………SSS級ブレイドの撃滅?」

 

 

「その通り。というより、あんな災害クラスのツルギの使い所なんて同じ災害クラスの敵を倒す以外に使うことなどないさ。……人を守るために大きな被害を出すツルギ、本末転倒としか言いようがないな。そして、何よりそんな危険なツルギを男性騎士が所有しているということが問題だ」

 

 

「ええ、男性は力を欲した末に傲慢と慢心に溺れる。謙虚さと清廉さを持って行動が出来ないのよ。女性と大きく異なる部分ね。私たち女剣派は、いずれ、男性騎士の暴走が起こると剣神教に忠告してきた。なのに、剣神教は再三にわたる忠告を聞こうともしなかった」

 

 

 

マユの口から静かに語られる言葉には隠しきれないほどの怒りが滲み出ていた。

 

 

「ああ、皆。今回の裁判で斬撃皇帝を必ずや裁かなくてはならない。剣神教やアルマニア王家の妨害があるやもしれないが必ず成し遂げよう」

 

 

「ねぇねぇ、エル?それじゃあ、もしかすると剣神教と王家が手を組むかもしれないよ〜」

 

 

「充分にあり得る話ではある。だが、この二つの勢力の狙いはアド・エデムの身柄。最後まで協力することはないし、運が良ければ互いに足を引っぱるやもしれん。あまり、気負うことはないさ」

 

 

「ふ〜ん、あ、そうだ!いいこと考えたよ、私たちがリーフ連邦に行ったら大地母神教と組めばいいんだよ。アド・エデムの処刑を要求しているのは向こうも同じだし、協力出来ると思わない?」

 

 

「駄目だ」

 

 

ウィーンの快活な笑みと共に大胆なアイデアが提案された。しかし、そのアイデアを聞いたエルは顔をしかめてウィーンの案を却下する。

 

 

「アド・エデムの処刑に関して大地母神教と私たちは目的を同じくする。だが、大地母神教とは協力出来ん。協力をすれば確実にアド・エデムを処刑にすることが出来るが、私たちの立場は完全に無くなる。大地母神教はツルギを否定しアームを神聖視する宗教だ。もし、協力をしたということが知れ渡れば多くの騎士たちが私たちとの関係を断つ。そうなれば女剣派は廃れ朽ちていくだろう」

 

 

「うぇぇ〜」

 

 

エルの深刻な声色の説明に顔を青ざめてウィーンは肩を落とす。女剣派が潰えた未来を予想してしまったのか、その顔には憂鬱げな陰りが伺えた。

 

 

「味方の援軍なし、敵は増援の可能性あり。困難極まる状況だが、君たち、私たちならば出来る」

 

 

 

弱気になりかけ、士気が下がり始めていた雰囲気を祓うように女剣派の教祖、エルは信頼を込めた一言で周りにいた女性たちを勇気付けた。彼女らは自分たちの信じる教えの下に権謀術数が舞う戦場に赴く。

 

 

美しき女騎士たちの瞳は、まだ見ぬ戦場に向けられてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side大地母神教

 

 

 

木々の生い茂る森の中、木漏れ日が差し込み鬱蒼とした草木を照らし出していた。推定でも樹齢百年はするであろう木々が、この森には溢れるほどに立ち並ぶ。この場を見れば、ここは秘密の集落と考えるかもしれない。しかし、ここは村や集落ではない。れっきとした国なのだ。森の中に作られた特殊な国家、この場こそがエルフたちの暮らす"リーフ連邦"である。さて、ここで連邦と付いた国家の特徴について簡単に説明をしよう。連邦とは、二つ以上の国、もしくは州の併合し同一の主権を持った国家の名称。この説明から分かるようにリーフ連邦は単純な一国家ではない。大半のエルフの多くはそれぞれがそれぞれのコミュニティを形成しているケースが多い。つまり、リーフ連邦は遥かな昔にエルフたちが集まって出来た共同国家なのだ。

 

 

 

 

また、それが大地母神教の成立に深く関連している遠因でもある。エルフたちには、自身のコミュニティに独自の掟や、しきたりが定められており、それが原因でエルフたちは昔から争ってきた。しかし、同族であるエルフたちとの争い、他種族の森の資源を狙った侵攻、リーフ連邦の付近に出現する強力なブレイドたちの対処。数々の問題が積み重なっていくうちにリーフ連邦は国家という体を保つだけで必死なほど疲弊した。疲れ果てた国家と民草たち。そう、エルフたちは早急に心と思想を纏める必要があった。

 

 

 

 

幸いなことにエルフたちの多くは大地を尊ぶ民間信仰を信じていた。コミュニティ間で儀式や教義に細かな違いはあったが、それほど大きな違いもなく数年の歳月を経て大地母神教というリーフ連邦の国教が制定された。ただ一つ、誤算だったことがあるとすれば、大地母神教が想定していた以上に権力を持ってしまったことだろうか。初期は単なる思想統制のための一つの策だった宗教が発足して、たった二年で国民たちから強い支持を受け連邦の議会より強い権力を手にしてしまったのだ。今や大地母神教は政治に深く関わっており、政策を一つ発布するのにも大地母神教の確認と許可が必要なほど。また、大地母神教の教義には大地を重んじる他に、子供を産み育てる女性を優遇していることが多々、見受けられる。そのせいもあってか、現在のリーフ連邦では女尊男卑の風潮が広まりつつあった。

 

 

 

ここまでの説明を統括すると、リーフ連邦では議会といった政治的役職より大地母神教の神官といった宗教家の権力のほうが強まっている。つまり、リーフ連邦は複数国家の集合体というより宗教国家という側面が力を持っていることになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わって、リーフ連邦で最も重きを置かれているであろう場所、大地母神教の総本山である大神殿。そこは樹齢千年を優に超える大樹の枝に基盤を敷き、その上に木製の建造物が建っている。端的に言って奇怪な建築だ。想像しやすいもので言うとツリーハウスが一番近いが、ツリーハウスというには規模が違いすぎる。見上げるほどの高さに前方を埋め尽くすような大きさ、流石は大神殿とでも言うべきもので、ハウスと呼び難い外観だ。何より目を引く特徴は、この巨大な建造物の全てが"木"で造られている点にある。土や鉄といった材料を使うことなく、木だけで大地母神教が誇る大神殿は造られているのだ。常識的に考えて建築学の常道から外れた建物。しかし、その建物は破綻することなく依然として建っている。

 

 

 

大神殿が壊れることなく、崩れることなく建ち続けている理由は、大地母神教徒のアームの力とも、エルフの使う魔法によるものなどと様々な説がまことしやかに囁かれていて、事の真実を知るのは大地母神教のトップのみである。

 

 

 

 

 

 

 

 

大地母神教が誇る大神殿、その中心部。巨大な広間で三名の修道女が黙礼して控えていた。その光景は、神聖さを魅せる宗教画(イコン)のようだ。この女性たちの特徴は総じて耳が長い、顔立ちが整っていることが挙げられる。その特徴からして彼女たちの種族はエルフであることが推測できた。何故なら、この世界において長い耳と容姿端麗な者は大概、エルフと呼称されるからである。もっとも、肌色が黒ければダークエルフだとか、人間や他種族との間に生まれた者はハーフエルフだとか呼称に差異はあるが大方はエルフとされる。祈りを捧げる三人の乙女たちは合わせたかのように三人同時に立ち上がり、閉じられていた双眸をそっと開く。

 

 

「……二人とも、遂に時は訪れました。明日妙日中には神敵たる騎士、アド・エデムがこちらに連行されてくるそうです。生きる者全てに恵みをもたらす大地を滅ぼす大罪者に然るべき断罪を……」

 

 

 

眼を閉じたエルフが自身の金髪を靡かせ、ゆっくりと立ち上がる。瞳に光を写さない盲目のエルフは満面の笑みを浮かべながら物騒な言葉を口走った。それに呼応するように

 

 

「……やっとですか。かれこれ一週間も大地母神教の召喚に応じず……罪人としての自覚があるのでしょうか。それにアルマニアの王家も、我らの召喚に対し要求をするなどなんたる傲慢!………やつらがこちらに来た暁にはギッタンギッタンのボッコボコにしてやるんだからぁぁぁ!!」

 

 

盲人のエルフの隣に座っていた藤色の髪色のエルフは、初めの方は宗教家らしいもったいぶった語りをしていたが、途中でボロが剥がれたのか感情を抑えられなくなったのか不明だが口調が崩れ地が露出する。怒り心頭で顔を真っ赤にして怒る少女を宥めるように三人目のエルフが肩にそっと手を置いた。

 

 

「落ち着け、パスト。口調が崩れているぞ。少し深く息を吸え……アルマニアの王家の要求は正当なものだ。大地が枯れた所為でアルマニアは上も下も相当混乱している。この混乱を収拾するのは容易では無い。むしろ、一週間という期間では足りないくらいなのに、本当に一週間で諸々の問題を解決したアルマニア王家に驚嘆すべきだろう」

 

 

「なんですって!?もしや、プレゼントは罪人を擁護するつもりなの!?」

 

 

プレゼントという名のエルフが静かにパストというエルフの少女を嗜めるが、その言葉を宗教批判とでも受け取ったのか、パストは半ば激昂したような口ぶりでプレゼントに詰め寄る。激昂による極度の興奮状態に何を言っても無駄だと悟ったプレゼントはパストの口からマシンガンのように連射される罵詈雑言を聞き流す。やかましい騒言はパストの気が済めば止むのだと慣れているプレゼントは口を挟まず無言で時が過ぎるのを待つ。

 

 

 

そして、息も絶え絶えになってから、ようやくパストの高速連射トークは終了する。聞き流していたとはいえ、耳に響く大声をしばらく聞いていたプレゼントも僅かだが疲労してぐったりと近くにあったソファーに座った。そんな二人の様子を見ていた金髪盲人のエルフは、疲れ果てた両者にお茶を淹れる。

 

 

「すまない、イェット。助かる」

 

 

疲労ゆえに疲れた声でプレゼントは簡単な感謝をして、出された茶を口にする。

 

 

「お茶の一杯で大げさですよ。……プレゼント、此度の裁判の風向きは如何なるとお思いか?」

 

 

「予想は君もついているのだろう?それでも敢えて答えるなら……荒れるだろうさ。此度の裁判はアルマニアの斬撃皇帝と大地母神教だけのものではない。気に食わんがアレ(斬撃皇帝)の力は圧倒的だ。もしも、SSS級のブレイドが出現した際には間違いなく犠牲者は出さずに撃退できる。しかし、その代償として大地に取り返しのつかないダメージを与える、あんなものまで使って生き残ったとしても……」

 

 

「大地に害なすツルギ、それを我々は必ず裁かなければならない。だが、それは容易くないでしょう。一番の難敵は……やはり剣神教ですかね」

 

 

「いくら、強力とはいえ斬撃皇帝は人が操れる力ではない。あれは悪魔の力だ」

 

 

プレゼントは苦い顔で私見を零す。イェットとプレゼントの会話を聞いたパストは、目を吊り上げて渋面をつくる。苦々しい顔で呪詛交じりの愚痴を吐き捨てる。

 

 

 

「……剣神教、傷つけることしか出来ぬ異端者どもが。私たち大地母神教を舐めているんですか!?巫山戯るのも大概にしろってんですよ!?」

 

 

 

またもや、極度の怒りによる興奮状態に陥ったパスト。そんなパストを落ち着かせようとプレゼントは、イェットの淹れたお茶を差し出した。いきなり眼前に現れたお茶に二の句が継げなくなったパストは一瞬でも早く訴えを言うために、お茶をグイッと一気飲みして…………

 

 

「あっツゥぅぅ!!」

 

 

 

 

盛大に火傷した。

 

 

 

「猫舌なのに、そんな一気に飲み干そうとするから。そろそろ、落ち着け。後な、口調をいい加減に正さないか」

 

 

「パストも、もう少し冷静さが有れば一皮剥けるのですが……こればかりは経験を積まなくてはいけません。学んだだけでは、身につきませんからねぇ」

 

 

 

パストは、自らの醜態を仲間の二人に見られたことで顔を赤くして黙り込む。プレゼント、イェットはこれ以上追い詰めると彼女が暴発しかねないと視線を交わして、終了と互いに合図を出す。パストが落ち着いてきたところで、この場のリーダー格であるイェットは、パンパンと手を叩いた。この行動の意図は、場の空気を転換させるためか、視線を向けさせるためかのどちらか、あるいは両方を狙っていたのか。

 

 

「それでは二人とも、これより始まる裁判は熾烈を極めるものとなるでしょう。剣神教や連合国、アルマニア。様々な勢力と謀略を尽くすことになるのは分かりきっています。ですが、ここで我らが退いてはなりません。断固たる意思を持って斬撃皇帝に裁きを齎すのです。我ら大地母神教、特務信仰機関マザーの名に懸けて!!」

 

 

 

「「マザーの名に懸けて!!!!」」

 

 

 

ここに、リーフ連邦が誇る大地母神教の女性のみで構成された特務信仰機関マザーを取り仕切る三人の戦乙女が、己の信仰を貫き守るために謀略の風吹き荒ぶ裁判に挑む。

 

 

 

 

 

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