転生して普通に生活したら斬撃皇帝ってマジで?!   作:悪事

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業火絢爛なお祭り騒ぎ

決闘祭の舞台となるアルマニア国立学園で現在、戦闘が行われているのは大きく分けて二つ。三年校舎から二年校舎に渡るための唯一の移動手段である吊り橋での戦い、 一年校舎での三年と二年の遭遇戦。この決闘祭の序章は既に始まった。

その戦場で騎士たちが示すモノはなんなのか。

 

 

 

 

では最初に視点を飛ばすのは一年校舎の戦闘で、こちらの戦場の方は混乱の渦に包まれていた。それもそのはず二年、三年と、お互いに予期していなかった敵との接敵に互いに驚いていたのだ。いや驚いてはいたが、すぐに戦闘を開始する辺りは、さすが騎士といったところだろう。二年と三年が戦うだけならよかったのだが、その戦闘に不確定要素が介入したのだ。それはなんと先程逃げ出した一年生だった。戦闘をしている最中、いきなり虚空から出現して敵を倒す。そんな状況に二年、三年は戸惑いを隠せないでいた。

 

 

 

戦っている時に突然、別の敵が現れるという悪夢が正夢として具現化したのだ。不意を突かれて二年が十数人、三年は九人が倒され、脱落者は二桁を越えている。三年は不意討ちにもとっさの対応ができる者が少なくない、むしろ不意討ちを仕掛けた一年にカウンターをするものさえいる。しかし、カウンターを入れたはずの一年は次に現れると無傷でいる。二年で不意討ちに対応できるほどの技術を持つ者は少ないため、次々と不意討ちにあって倒されていく。刻一刻と三年、二年は減っていく。三年も一年を捌ききれなくなってきた。そんな中、この場にいる二年のまとめ役、エゼルはある決断を下す。

 

 

「聞けぇぇ、生き残っている者は近くにいる人、このさい三年でもいい。背中合わせで一年を対処しろ!」

 

 

 

なんとエゼルの下した判断とは、敵の敵である三年に協力してもらうというアイデア。まさしく逆転の発想、戦場でこの柔軟な発想を組み立てられることから、エゼルは優秀な指揮官の才能があるのがわかる。だが、それだけで動かないのが戦場というもの、不確定、理不尽を計算にいれていない彼は指揮官の才能はあれど、指揮官の経験値が不足している。そう貴族という生き物は何より体裁を重んじる、先程まで戦っていた相手に背中を預けるなど彼らが認めるはずもなく、意味のないプライドを口にして、戦況は悪化する。

 

 

 

「な、そんな、三年は敵なんですよ。そんな奴らに背中を預けるなんて」

 

 

「そうだ、こちらも後輩に守ってもらう背中などない!」

 

 

「先輩面しているような、こいつらに協力なんてできません!」

 

 

「そうだ、一年の連中なんて三年の力を借りなくたって」

 

 

「さっきから一年にやられっぱなしな、こいつらに預けられる背中など持っていません、それよりこいつらを先に片付けるぞ!」

 

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

 

 

三年も二年も協力する様子など微塵もなく、むしろ隙を見せた敵に攻撃を入れ、そのせいで出来てしまった隙で自分が脱落していくというループに嵌まった。二年も三年も高く無駄なプライドのせいで足を引っ張りあうことになってしまった。エゼルはこう思っていた。

 

 

「(どうしてこうなった?)」

 

 

エゼルは身分のそこそこ高い生まれで、なおかつ高い実力から刃騎士団にスカウトされていた。貴族の生まれだったエゼルは貴族としては珍しい柔軟な思考を持っており、彼は勝てるのならどんな方法でもいいと、誇りを守るための行為は、どんなことより優先されると考えていて、そのせいで騎士団時代は目上の騎士たちに白い目で見られてきた。それが嫌で刃騎士団を抜けて第二王子の元に身を寄せることになったのだ。まぁ貴族の誇りを胸に持つエゼルは、王族らしからぬ言動をするデクリトルとたびたび衝突するが、なんだかんだで仲のいいコンビなのだろう。そんな彼は現状どうすればいいのか、頭を悩ませていた。

 

 

(………………こいつら、使いにくい!!)

 

 

「………せめて二年同士は背中合わせで戦ってくださいねって、駄目だ。こいつら話を聞いちゃいねぇ」

 

 

 

同級生は自分のこと、目の前の戦闘に精一杯で自分の号令を聞いていない。三年も二年に手一杯で一年の攻撃を隙だらけで受けて数を減らし続ける。この狭い校舎で味方を正確に転移させられる技量の持ち主、この戦場をデザインした相手のことを想像すると背筋が寒くなる。多種多様なツルギの能力が校舎を蹂躙する。破壊された校舎の破片が煙幕となって視界を塞ぎ、今、自分の目の前にいる者が味方なのかすら判別できなくなった。

 

 

「………これは撤退でもしないとですかね。まぁ皆~撤退してくださ~い、ってやっぱり聞いちゃいねぇよ。こいつら」

 

 

自分の、いや指揮官の命令に従わない者を惜しむ必要はないと、この混戦から自分だけでも撤退しようとする。うんざりした様子で撤退を開始する。というかここまで命令を聞いていないとは、三年という不確定要素があったにしろ、一年を撃破するのにここまで損耗するとは、想定外のことに頭を痛める。本陣というか二年校舎に戻ったら、ミコトさんにクリアさん、デルのヤツに色々と言われるだろうと悪い予感を背負って一年校舎を後にした。

 

 

 

 

 

 

その風景を安全地帯から眺めている一年生の首魁である三人の少女は、最初の戦闘に僅かだが困惑していた。二年はエゼルを除いた全員を撃破、三年は引き際が遅れたもののさすがに撤退を選択し、校舎外に移動したようだ。二年が撤退しないまま戦うとは予想外だったが、それでも三年だけになった以上、ここに来た三年は仕留めきる。

 

 

「二年の先輩たちがここまで往生際が悪いとは思わなかった」

 

 

「うちもやでアリスタ、まさか引き際を判断できるんが、エゼル殿だけとは誤算やったわ。これまずいんとちゃう?」

 

 

「……?………なんで不味いことになったんだい?敵がいっぱい倒せたのなら、それはいいことになるんじゃ?」

 

 

「「………………キュア」」

 

 

 

呆れたような視線でキュアを見つめる、二人の少女は現状、何故困っているのか懇切丁寧に話そうとする。キュアは頭が悪いわけではない、むしろ良いという方に分類できるが物事の本質を裏の裏まで理解することが得意ではないのだ。魔人という種族は大抵そういう者が多い。

 

 

 

「じゃあ、簡単に説明していく。今回の作戦では敵を減らすことではなく、二年と三年の間に亀裂を作ることが狙いだった」

 

 

「ところが二年も三年も中々退かないから、想定していたより敵の数を減らしてしもうたっちゅーハナシや、これは下手すれば二年、三年が組んで、うちらを潰しにかかってもおかしくないやん」

 

 

「………………それは、じゃあ、どうするんだい?このままじゃ、まずいことになるじゃないか!」

 

 

「落ち着いて、最初の戦闘は想定外ではあったけど、こうなることを予測していなかった訳じゃない。第二プランに移る」

 

 

「へっ!第二プラン?…………マジでやるん。あれは博打だと思うんやけど、うちらみたいな真っ向勝負苦手なんが揃っている一年生には、荷が重いちゃう?」

 

「僕は第二プランのリスクよりこのままでいる方がリスクが高いと思う。だったらこのままでいるより、賭けに出るしかないよ」

 

 

「そう、でも急いで策を出せばこっちが負ける。だから第二プランは状況に応じてにすることにする。それまでは各員、三年、二年を遊撃していって。私はダメージを負った人員を本陣に転移させる、シスは戦場を俯瞰していて、キュアは負傷者を手当していってね」

 

 

 

一年の三人は己の為すべきことを理解して、たった一つの目的のために動き続ける。そう自分たちを助けてくれた男のために、その男にもう一度会うためだけに彼女たちは不可能という障害を突破し、打倒する。

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャラジャラジャラジャラ、ジャラジャラジャラジャラ、ジャラジャラジャラジャラ、鎖が歌うように、唄うように金属の擦れる音を鳴らす。その擦れる音は蛇が獲物を威嚇する鳴き声のようだ。鎖は宙を華麗に舞い、眼前の敵を仕留めにかかる。鎖が音を置き去りにして中空を翔ぶ、その鎖の通った後に少し遅れて音が鳴る、音速を突破した鎖は動くだけで大気を裂き、衝撃波が斬撃となって周辺の数人を切り裂いて空へ吹き飛ばしていく、吹き飛ばされた者たちは、ボチャッと吊り橋下の川にまっ逆さま、音速を超越した速度で動き回る鎖に餌食となる二年生一同、三年は既に鎖の届かない安全地帯まで退いている。そんな鎖をすり抜けて双子に接近していくのは二人の騎士。

 

 

 

その二人の騎士こそ二年の中でも、トップクラスに数えられる二人。白い光を纏ってジェイルとチェーンの懐に突貫するデクリトル、水の羽衣を周囲に浮かべてクリアもその後に続く。幾重にも立ちはだかる鎖の壁が不落の城塞のような五十メートルに挑んでいく。その五十メートルこそ、この勝負の命運を分ける節目だ。騎士という常人を遥かに越えた身体能力の持ち主ならば五十メートルという距離など、一瞬で踏破できるが、恐ろしい速度で振るわれる鎖が五十メートルを難攻不落の鉄壁とする。

 

 

「ちっ、…………くそぉぉぉ」

 

 

「ぐっ、近づけない…………五十メートルが遠い」

 

 

「フフフフ、近づけるかな?どうせ駄目だと思うよ」

 

 

「うん、さっさと終わらせよう。私たちは早く戻らないといけない所があるんだから、……ね、ジェイル」

 

 

「そうだね、チェーン。さっさと始末をつけて帰ろう。私たちがいるべき場所に」

 

 

 

二人の騎士は双子の鎖を突破しようとする。鞭のごとく振るわれた鎖を、水のヴェールが、電光を纏った刃が鎖を受け流す。鎖の根元から発生した運動は中間地点を伝達して先端部を鋭い棘に変える。棘と化した鎖は水を、雷の壁を貫く。かろうじてそれをギリギリで回避するも、体勢を崩した状態で避けてしまったことから攻撃に移れない。敵の鎖に一方的に攻撃されてしまい、このままではラチがあかない。何かこの流れを断ち切る出来事が必要だ。だが、そんなことを期待しても、そう簡単には起きやしない。水を操って鎖の軌道を反らしていると、デクリトルが勝負を決めようとする。鎖に打たれるのを覚悟で、双子に向かって最高速度で一直線に突っ込んでいく。だが、この時彼は失念していたのだ。去年己を仕留めたのがいったい何なのか。五十メートルを一瞬、ゼロコンマの領域で半分まで接近する。その瞬間に双子が笑った、デクリトルは双子の正面にいたため、その笑顔を見てしまった。その笑みは作戦が成功したという笑みではなかった、そもそもその笑顔は喜びを含んだモノではない。見え見えの罠にかかった愚かな獲物を哀れみ、嘲笑する笑顔だった。十メートル圏内にデクリトルが踏み込んだ時、虚空から鎖が出現して彼をがんじがらめにしてグルグル巻きにした。その鎖の先には冷たい笑顔を浮かべたジェイルがいた。

 

 

 

「しまった!…………畜生がぁぁ!」

 

 

 

 

去年の屈辱は忘れていなかった、その汚点をバネとしてさらなる鍛練を積んだ。力も速度も去年の自分を遥かに越えているはずだった。だというのに鎖から逃げることができない、…………………そう考えれば当然のこと。自分だけではなく相手も鍛練を重ねてきたのだろう。理解したとしても時、既に遅し。鎖は万力のように自分の体を締め付ける。締め付けてくる力はS級ブレイドでも捕縛できると思わせる。鎖の締め付けに意識が消失しそうになるも、何とか意識にしがみつく。意識を保つため歯を喰いしばる、口内のどこかを噛みちぎったのか、激痛と血液が口に満ちる。

 

 

 

「アドに比べれば、どんなモノも脆いんだよ」

 

 

「アドと比べたら、可愛そうだよ。ジェイル」

 

 

 

そう彼女らは長い間、斬撃皇帝を封じてきた実力者。アドが逃げる気ではなかったということを差し引いても、ジェイル、チェーンは封じる、縛する、閉じるという一点は他に比肩するものがいないほどだ。デクリトルを捕縛したことによりクリアは一人で双子を相手取らないとならなくなった。吊り橋の下の川から水を集めようと意識を集中させようとした時、こちらに近づいてくる紅の球体が視界に入った。それは己の主人の力を帯びていることに、クリアは真っ先に気付いた。ジェイルもチェーンも状況とリスクを考え抜いて即決即断をした。紅の球体、焔塊を避けるためデクリトルの拘束を解いてクリアの方にブン投げた。火球は吊り橋に着弾して大穴を空けた。決闘祭のルールでは校舎を破損させれば、その破損箇所は自費で修復しなければならないのに、フルパワーで仕留めにかかっている。炎の弾丸を避けた二人は同じことを考えていた。

 

 

「「(ミコトちゃんが来たのか)」」

 

 

 

アドの所に早く帰るためだけにジェイルとチェーンは、決闘祭を本気で戦っていたが彼女らには一つの目的があった、その目的とはミコトの撃破である。かつてアドを裏切ったミコトを打ち負かすことを決闘祭の目的とし、二年校舎に行くのに立候補したのだ。

 

 

「やっと見つけた、見つけたよ。チェーン」

 

 

「そうだね、見つけた、見つけたね。ジェイル」

 

 

双子は狙っている怨敵の待つであろう二年生校舎の最上部を見つめて、鎖をジャラジャラと鳴らして二年校舎に向かおうとする。それを止めるのは先ほどの雪辱を晴らすためデクリトルは剣を構え、クリアは主の援護に高揚感を覚えながら双子に対峙する。ジェイルとチェーンは邪魔者と決着をつけて、ミコトの居場所へ向かおうとしていた。

 

 

 

 

 

 

二年校舎屋上、生徒たちの学習のためにある学園天文台の上から、決闘祭の真っ只中の学園を俯瞰しているのは、二年生代表者とされた実力者。ミコト・ブレイズ・ヴォルカニア。彼女がこの天文台に上がって来たのは、周囲を見渡すためと゛飛距離゛を伸ばすためである。では飛距離とは何か?それはミコトの放つ炎である。精密な狙撃をするためには、より高い場所に上がる必要があった。そしてあつらえたように二年校舎屋上には他の学年の屋上にはない物、天文台があったのだ。

 

 

「獄卒の双子は仕留め損なったか、……まぁいいだろう。クリアたちの攻撃に私の狙撃をもって大地に伏すがいい」

 

 

彼女としても、アドを封印し続ける獄卒の一族の双子。ジェイルとチェーンには思うところがあった。………………しかし彼女は獄卒に抱いている思いは怒りではなく、憐れみであった。そうSSS級のブレイドを屠った(ほふ)アドならば封印に特化したとはいえ、あの騎士らの呪縛を抜けられぬはずがないと信じている。アドが双子に封印されているのではない、アドが双子に封印されてやっているのだ。おそらく双子の面目を潰さないために茶番劇に興じてやっているのだろうが、あの双子を倒して真実を叩きつけてやろうと、ミコトは想像を膨らませて眼下の先、双子の鎖使いを仕留めようと己のツルギに焔を充填し始めた。

 

 

「私はアイツに謝らねばならないんだ」

 

 

 

ポツリと後悔と懺悔をトッピングさせた独白が天文台に、虚しく(むな)木霊する。彼女は今、かつての彼に犯した罪を乗り越えるために戦場に立っているのだ。自分はアドを罪人にして、名を奪った。そんな相手を自分だったら許すのだろうか?答えは否だ、否に決まっている。自分だったら確実に許さないと理解している。………………………だが、待て。怒る、罵る?…………………アドが?…………いや、アドがそんなことをするのか?亜人種族のヤツラとも話をして、商人や平民と会話するアイツが?……………ないだろう、それに自分を恨んでいるとすれば、何故に自分に復讐をしない、アドには復讐を成せる力がある、実行は出来るはずだ。……………それにアドは馬鹿馬鹿しいくらいに、甘かった。どんなヤツにも甘ったるかった、そんなヤツが私を憎んでいるのか?………………わからない、少なくともアドがそんな行動をするところが想像できない。だが、アドが自分を許してくれたとして、その事実に自分は納得できるのか?……………自分を許せるのか?…………私はアドの隣で立っていられるのか、底無し沼のような疑問が頭を覆う。それは今(戦場で)考えることではない、決闘祭に勝利してアドに謝ること、それだけを頭に詰めて意識を戦い用に切り替えた。

 

 

 

………………彼女はあるひとつの可能性を忘れていた。それはアドが彼女のことを憎んでも、愛してもいない場合、つまり好感度が普通の場合を失念していたのだ。実際、アドは牢獄生活を満喫しているし、事件とかミコトのことを深く考えていない。彼女が深く考えていても、相手はただの能天気な引きこもり。深く考えれば泥沼化するのは当たり前だ。ミコトはアドが自分を憎んでいるとか、愛しているという風に考えていた。…………アドはそんなに深く考えていないことをミコトは、知るよしもない。

 

 

 

 

補足だが、アドが双子の封印に甘んじていると言っていたのは、ミコトの勘違いである。確かにアドの斬撃皇帝は威力が尋常、いや常識はずれの騎士すら戦慄させる偉業を成したツルギだ。発動状態ならばどんな拘束も引きちぎって、滅ぼしてしまうだろう。

 

 

………………そう゛発動状態゛ならば

 

 

 

発動状態ではない斬撃皇帝はただの種子の形をしたツルギであり、鈍器としてしか使い道はないとアド自身が常々思っているのだ。アドは自身のツルギを一か、百以上の極端なパワーの使いにくいツルギと言っていた。実際、種子形態では役に立つどころか、むしろ邪魔になるという理由からナイフで戦っていたほどだ。そして現在、アドは斬撃皇帝を発動させてはいない。ゆえに彼は拘束されているのだ。

 

 

 

しかし、彼女の勘違いも無理からぬことだ、何せ彼女は初めて斬撃皇帝の発動を目撃した者の一人なのだから。そう二年の初め、ブレイドを実戦で倒すための授業があった時、想定外の出来事であるS級ブレイドの出現だ。そのブレイドを撃破した者がアド・エデムなのだ。ちなみにこの時、斬撃皇帝を発動したのはおよそ十五秒。その短時間の発動で近くの草原、川、大地は枯れ果てた。種子だったはずのちっぽけなツルギはあっという間に天を貫かんばかりに巨大になった、斬撃皇帝の周囲は黒くなり、空を切り裂いたと形容するのが相応しい。そして斬撃皇帝が振り下ろされると、その一撃だけでS級のブレイドを滅殺した。

 

 

人を救って彼に与えられたのは、喝采でも賞賛でもない。名もないツルギに皮肉を込めて斬撃皇帝という名を押し付けられ、己の名前の一角を奪われたのだ。この世界の名前は三つに別れていて、最初と二つ目の名前こそ親から貰う最初の贈り物なのだ。それを奪われた者は罪人という証明。

 

 

 

S級のブレイドの事件のせいで、アド・エデムは自然を破壊する危険なツルギの持ち主して封印を執行された。その封印する際、婚約者の申し出があればアドは封印されずに済んだかもしれないのだが、彼女は封印に対して異議を出さなかった。………貴族として生きてきたミコトと違い、アドはどんな者であろうと拒絶はしなかった。そんな彼は学園では貴族からハブられ、一般生徒は貴族に目をつけられたくないからアドと関わるのをやめる者もいた。数人の後輩はアドと仲が良かったが、封印されるアドを黙って見ているしかできなかった。そう見ていることしかできなかったのだ、アドの封印は剣神教、大地母神教とアルマニアの貴族たちの要請。断ろうものなら国は割れて、クーデターが起きる。結果としてアドはその封印できる人材のいた王族所有の牢獄に投獄された。その後SSS級のブレイドの出現時、それを撃破するという功績を出して、周囲は態度を一変させた。剣神教はアドを自分たちの一員にしようと、大地母神教は封印するのをやめて処刑しろと、貴族は意見を一回転させて彼は無実だから解放しろと騒ぐ。諸国は斬撃皇帝を寄越せと、喚く。(わめ)さて、斬撃皇帝の行く末は?そして決闘祭の果てに待つものとは?

 

 

 

 

 

 

 

一方、知らぬ間に実質、景品とされている斬撃皇帝ことアド・エデムは何をしていたのか。それは暴れることをやめてモゾモゾと芋虫のように蠢いていた(うご)。

 

 

「ん?…………もうちょい、もうちょいなんだよなぁ。もう少しで鎖から…………………………んん?………イケるか?」

 

 

 

散々暴れたおかげで鎖には、僅かな間隙ができた。ここからはゆっくりと鎖を抜けていくだけ、ここで焦って絡まれば脱出は絶望的だ。心を落ち着かせて…………そうだ。ゆっくりと一つ一つの段階を踏んでいけば、突破は余裕で可能。こうしていると学園時代を思い出す。そう、いわゆる青春という刹那の時、そんな時を俺はどうやって過ごしていたのか……………………………軟弱者といわれミコトにシバかれる、ミコトに強制的な特訓に連行される、ミコトの侍女のクリアさんにシバかれる、逃げる逃げる逃げる、追いかけられる追いかけられる、隠れ家を幾つか作る。んんん?あれ?いやこんなのばかりじゃない。これは違うでしょ。

 

 

 

そうだ!後輩の相談にのったりしてたっけ。うん、というかケモミミの後輩から大阪弁を聞かせてもらうとは思わなかった、それとケモミミをもふもふさせてもらえて本当によかった。柔らかかったなぁ、シスはこの世界では珍しい科学の勉強をしていて周りはシスを変人扱いしていたけど、むしろ科学以外の技術で成り立っているこの世界の方が違和感すごいんだよねぇ。だってわかんないことは神様のおかげってなっているんだもの、さすがに納得できないよ。

 

 

 

あ、あとは吸血鬼系でボクっ娘の後輩に、突然血を吸われたりしたっけ、いや別に気にはしてなかったし許したから、もういいけど。……………何を言ってるかと呆れるだろうが、俺はあの時に何をされたのか、わからなかった。催眠術とかトリックじゃない、もっとすごいモノの片鱗を味わった。……気がする。

 

 

 

それとアリスタちゃんというクーデレの後輩とお茶をしたりした。まぁリリーシャ先輩と仲直りのお礼に付き合ってくれたんだけどね。アリスタちゃんはここにもちょくちょく来れる身分だからなぁ。というか捕まった先輩に面会に来てくれる後輩って中々いないよね。本当にいい娘だ、…そういえばアリスタちゃんとのチェス、一回でいいから勝ってみたい。だって後輩に負け越しってのは先輩としての沽券に関わるのでね。でも彼女に勝てるとは欠片も思えないんだよなぁ。

 

 

 

 

さて、我が青春時代を思い出していたが鎖をそろそろ突破できそうだ。ここから抜けて決闘祭に間に合ったら、まず誰に会いに行こう?…………………最初に合った人でいいか。…そういえば昔、ミコトにご馳走になった食べ物には驚いたなぁ。………まさかこの世界にアレがあるとは。もう一度でいいから相伴に預かりたい。彼女の家の領地にしかないからなぁ。とりあえず頼んでみるか、まぁ脱走したことについて、絶対怒られそうだけど。

 

 

 

………………ああ、食べたいなぁ、カレーライス。

 

 

 

 

 




ツルギ図鑑


遊戯盤の駒(チェスボード)


所有者 アリスタ・アルマニア・ブリエスタ


形状 装飾の施された美しい短剣


備考

ツルギである短剣を刺した地点の十キロ圏内ならば、名前を知っていて承諾を得ている人間を自在に空間転移させる。ちなみに転移させた物体、生物の運動エネルギーは全て保持されたまま転移させられる。特殊ではあるが攻撃力のないツルギであるため、戦略を立てることの出来ない者では価値がないが、アリスタという戦略の天才が持つことによって、凄まじい結果を叩き出す。





千里眼


所有者 システム・テクノ・ロッジ


形状 ナイフに近い形の鉈


備考

遠距離にあるものを脳内に直接見ることが出来る。この能力は希少さがあまりないツルギだが、彼女のそれは通常のそれとは何かが違う。見ることのできるものは物理的なモノだけではなく、それ以外の何かを見ることが可能だが、それを見ることを極端に嫌がる。





聖女の輝き(ラ・ピュセル)


所有者 キュア・クロス・シルバー


形状 大きな赤い旗


備考

旗を振ると、周囲の人を回復させることが可能。しかし回復は相手が求める量しか回復させられず、相手が回復を求めすぎれば過回復で相手にダメージが、回復を求めていなければ回復させられないという欠点を持つ。



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