Angel Beats!―The repeated heaven― 作:いさか
散々な目にあった朝食後、戦線メンバーは夜まで自由行動となった。自由行動と言っても、大抵の奴らは作戦本部に居座り、それぞれで会話に華を咲かせている。
拷問のような質問攻めからやっと解放された俺は、日向と共に学生寮へ向かっていた……というのも、俺だけはまだ、NPCの制服を身に着けていたからだ。作戦本部にあった予備のSSS専用の制服はあいにく底を尽きていたらしく、保管されている分は日向の部屋に置かれている、ということらしい。
俺は段々、ゆりの説が正解なのではないかと思い始めていた。事実、俺は前回、作戦本部で制服を受け取ったはずだ。俺の言動で、運命――皆が成仏するという結末も変わるのかもしれない。作戦本部の制服の在庫がない――これも一つの「運命」だと受け取ることもできるからだ。
「にしてもひっでえよな、うちのボスはさ」
隣を歩く日向が、肩を回しながら言った。
「何でだよ、良い奴じゃねえか。これまでもお前らをまとめ上げてきたんだろ? そりゃ、多少はあれな部分があるかもしれないけどさ」
「そうだけどさ、例えば制服だ。何で俺の部屋に収納されてんだよ⁉ 同室の大山のベッドの下はすっからかんなんだぞ⁉ でも俺のベッドの下は……戦線のあらゆる小道具やら何やらが詰め込まてんだぞ⁉」
「ベッドの下くらい許してやればいいだろ……。そんなに嫌なら、俺が少し持って行ってやるからさ」
「おお、音無ぃ……お前は本当に良い奴なんだな……。ところで俺は、音無と仲、良かったか?」
日向が尋ねる。どうやら、前回の話をしているらしい。
言うまでもないが、日向は俺にとって、右に出るやつがいないくらいの親友だった。
「……ああ。親友だったよ」
「やっぱりな! 俺はお前と……何か、気が合うような気がしてたんだよ!」
がばっ、と日向の右腕が俺の肩を抱えた。初対面なら跳ね飛ばすだろうが、今は違う。日向にとって俺は初対面でも、俺にとって日向は親友のままなのだ。
「……」
気付いた時には、既に少し、目に涙が溢れていた。
「音無? ……泣いてるのか?」
「いや、心配ない……。とにかく、行こう」
来世でも、こんな奴に巡り会えれば、と。
日向と最後のハイタッチをした時、俺はそんなことを思っていた。
二度と会えないと思っていた、会えないはずだった日向がすぐそばで、俺の肩を抱いている――どうしても、涙が出てきてしまったのだ。
俺はあくびをしてみせ、シャツの袖で涙をひと拭いした。
日向はそんな俺を見て、何を思ったのか「ああ」とらしくもない返事を一つしただけで、後は黙って歩を進めた。
やはり、こいつは――後にも先にも、こいつ以上の親友はできない、そう思えるほどの奴だ。何だかんだ、こいつが俺のことを一番理解してくれている気がする。
俺たちは無言のまま、しかし気まずさを一切感じずにーー肩を並べて歩いた。
いよいよ本編に入ります。一つのエピソードが三分割くらいまでに収まるような構成でやっていきたいと思います!