Angel Beats!―The repeated heaven―   作:いさか

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[EPISODE.01] Intention Ⅰ

》対天使用作戦本部(校長室)

 

「――集まった?」 

 

 午後六時を指す、少し前。

 

 他のメンバーたちと同様、SSSの制服に身を包んだ俺は、主要メンバーたちと共に作戦本部へと集合していた。朝は姿の見えなかった岩沢も、エレキを背負って顔を出していた。

 

 部屋の中は暗い。窓のカーテンが閉められているためだ。投影機からは、学園大食堂周辺の地図が、スクリーンへと映し出されている。

 

 ベレー帽を深くかぶったゆりが、元は校長のものだと思われる椅子に腰かけて、良く通る声で宣言した。

 

「只今より、作戦名『オペレーション・トルネード』を遂行する!」

 

 おお、と周囲から声が漏れた。

 

 

「こいつはでかいのが来たな」

 

 

 松下五段が呟く。そういや、前回も結局、俺は一度きりしかあの作戦に参加していない。

 

「音無くんは、この作戦もやったことがあるのよね?」

 

「ああ」

 

「それじゃあ、詳しく説明する必要はないわね。これ、受け取って」

 

 言うや否や、ゆりはハンドガンを寄越してきた。突然のことに落としそうになりながら、何とかそれを腕で受け止める。

 

「音無くんは、第二連絡橋での監視をお願いするわ。もし天使が現れたら、とりあえず足でも撃っておきなさい」

 

 

 確か、そうすれば追って来なくなる……とかだったような。

 

 

「皆はどう? 準備は?」

 

「聞かれる前から万端だぜ、ゆりっぺ!」

 

 

 メンバーたちは既に、各々の武器を携帯していた。ここでいう武器は、銃器が大多数だ。野田ですら、物騒なマシンガンをその手に抱えている。

 

 

「なら大丈夫ね。……岩沢さん、今晩もよろしく」

 

「ああ、任しとけ」

 

 

 頼りがいのある言葉だ。ガルデモの陽動は、前回の時も効果を最大限に発揮していた。彼女の瞳からは、その自信が溢れんばかりのように見える。

「作戦開始時刻は18:30。オペレーション、スタート‼」

 

 

 

      ***

 

 

 

 私はカレンダーを確認して、はあ、とため息をついた。

 

 何回、こうして確認したんだろう……。

 

 結局私がイレギュラーな行為に出たとしても、全ての結果――それは何一つ、変わらない。

 

 変わらなければ、私はまたこうやって、カレンダーの日付を確認することになる。

 

「今日、ね……」

 

 憂鬱な気分のまま、私は自室のPCに電源を入れた。

 

 そしてわたしは、あるソフトを起動させる。

 

 ソフトが起動すると、私はただの機械のように、カタカタとキーボードを叩く。

 

 

 本当は嫌なのに。

 

 

 やりたくない。だけど、このままにさせておく訳にも……いかない。

 

 

 それは私にとって苦渋の選択で、それでいてエンターキーを押すのに一秒と躊躇わないような、矛盾したことではあるけれど。

 

 

「……ガードスキル:Harmonics(ハーモニクス)

 

 刹那、私の隣に、一体の分身が現れた。

 

 その容姿は限りなく私に近い。けれど、その瞳は透き通る赤みを帯びている。

 

 アグレッシブな性格――特に対象の一人(、、、、、)に対しては、言語道断で斬りつける。私とは真逆の思考を持つ。

 

 彼女は真っ白な後ろ髪を自由に揺らして、私の部屋を去って行った。

 

 

「…………結弦」

 

 

 無意識のうちに、呟いてしまった。

 

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

 

      ***

 

 

 

》第二連絡橋

 

 

 学園大食堂から、アップテンポなメロディーとNPCたちの大歓声がこちらまで流れてきていた。

 

 俺は学園内を繋ぐ通路の端――連絡橋の隅で、ハンドガンを片手にぼんやりと突っ立っていた。

 

 正直な所、こんな銃は必要ない。俺は奏の状況を知っている。俺なら、奏に適切に接触できるという絶対的な自信があった。

 

「そうだ、使いどころなんかねえよ、こんなもん……」

 

 

 …………足音。

 

 

 橋の向こう側からだ。――間違いなく、奏だろう。

 

 足音が近づくにつれ、徐々にシルエットが露わになる。小柄な体躯に、ストレートのロング。NPCと同じ制服を着て、こちらにやってくる。

 

 

 だが。

 

 街灯にその顔が照らされた時、俺は言葉を失った。

 

「…………嘘、だろ?」

 

 そこにいたのは間違いなく――天使だった。

 

 奏じゃない、天使だ。そう断言できるのは、彼女にある「特徴」があるからだ。

 

「赤い瞳……お前は確か、分身した時の――」

 

「アタックスキル:Air Sonic(エアソニック)

 

「な――」

 

 手の内にあったはずのハンドガンが、天使の手から放出された空気の刃で、木端微塵となって霧散する。その破片は俺の腕に、まんべんなく襲った。

 

「いってええええええ⁉」

 

 細かな金属片が、いくつも突き刺さっている。血が、見る間に溢れ出してきた。

 

 

 ……ヤバい。逃げろ。

 

 

 俺は本能的にそう悟って、天使へ背中を向けて、メンバーたちがいる学園大食堂を目がけ、走り出した。

 

 振り返る。天使は歩いて追ってくる。

 

 駄目だ。あいつは……奏じゃない。つうか何なんだよ、アタックスキルって。

 

 

「ガードスキルじゃなかったのかよ……っ!」

 

 

 本能的な恐怖を感じた。燃えるように熱い右腕を押さえながら、やっとのことで学園大食堂の入り口付近に到達する。

 

 

「大丈夫か、新入り!」

 

 

 藤巻が真っ先に俺を見つけ、残りのメンバーたちも俺の元へと駆け寄ってくる。

 

「どうしたんだ、この傷は? 天使にやられたか?」

 

 ランチャーを担いだ松下五段が訊く。

 

「ああ……注意しろ、奴は普段の天使じゃねえ」

 

「何寝ぼけてるのか知らねえが、引っ込んでろ新入り。後は俺たちがやる」

 

「任せとけ、音無!」

 

「please leave us」

 

メンバーたちは横一列に、俺の壁になるようにして前へと進み出た。

 

 大食堂玄関部分から観察していた大山が叫ぶ。

 

「天使はまだ何も発動させていないよ! 狙うなら今だ!」

 

 日向が号令をかけた。

 

 

「撃てっ‼」

 

 

 度重なる銃声。銃口から放たれる弾の行く先は、天使の身体、ただそれの一点のみだ。

 

 一斉に行われる過重攻撃。だがそれも――

 

「何故当たらない⁉ 奴はまだ何も発動させてないんじゃなかったのか⁉」

 

「いや、何かスキルを使っているようだ。彼女の前方、さっきから空を切る音がしきりに聞こえる」

 

 俺はその様子を見て気付く。さっきのスキルを未だに使っている……確か、エアソニックとか言ったか。

 

「気を付けろ! そいつは攻撃型のスキルを使う天使だ! 空気で物を切り裂くスキルで、俺のハンドガンを破壊したんだ!」

 

「何⁉ 空気だと?」

 

「待って、天使が何か発動させようとしてるよ!」

 

 

 大山が叫んだ。

 

 

「アタックスキル:Delay(ディレイ)

 

 

 瞬時に天使の姿が消える。

 

 

「おい、消えたぞ――」

 

 

 誰かがそう叫んだ瞬間。

 

 

 俺の前にあった、戦線メンバーの壁が跡形もなくなった。

 

 

「――は」

 

 

 最後に見えたのは。

 

 

「アタックスキル:Hand Sonic-ver. Ruthless(ハンドソニック-バージョン”ルースレス”)

 

 

「ぶはっ――――」

 

 

 大量の血液が、口の中から飛び出した。

 

「あ……」

 

 

 俺の身体の四方八方から、剣先が飛び出し、べっとりとした血で染め上がっているのを目視した。

 

 

 激痛と、煮えたぎるような熱さを全身に感じて――俺の意識は、消え入るようにしてなくなっていった。

 

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