Angel Beats!―The repeated heaven―   作:いさか

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[EPISODE.02] Investigation Ⅰ

》対天使用作戦本部(校長室)

 

『オペレーション・トルネード』が決行された翌日、傷の癒えた俺たちは、再び校長室へと収集を掛けられていた。

 

 

 周りを見渡せば、昨日と変わらない面子がきちんと揃っている。しかし彼らの面持ちは、そう明るいものではない。正体不明のイレギュラーな天使が発現したことによって、今後戦線が不利になる――そんな懸念もあるからだ。

 

 

「みんな、集まった? これから、今日より開始されるオペレーションの概要を説明する。こうして一堂に会することは、この二、三日はほぼないと思ってくれて構わないわ」

 

 ゆりはベレー帽を深くかぶりなおした。そうしてメンバーを見渡してから、モニターに作戦概要を表示させる。

 

「今回のオペレーションの目的は三つ。まず、突然現れた赤目の天使――奴の正体を暴く。二つ目は、もし今後も奴が存在し続ける事態になることを想定し、より強力な武器の生成依頼をギルドに直接赴き、伝達する。三つめは、これまで私たちが闘ってきた天使――こちらの方も徹底的に調べ上げる」

 

 

 ゆりはマウスでカーソルを動かし、メンバーたちの名前が載った表の一覧を表示させる。

 

 

「まず、天使の部屋へと侵入し、情報を得るグループA。日向くん、松下五段、そして私。あ、そうそう。今回からこのSSSに加入することになった人材もいるわ。ハンドルネーム、竹山くんよ」

 

「……それハンドルネームっつか、本名じゃね?」

 

 的確なツッコミが日向から入るが、ゆりはいとも簡単にスルー、そして何やら顎をしゃくり、合図のようなものをしてみせる。

 

するとゆりの特等席と化した、校長机の下から――眼鏡をかけ、ノートPCを持ったおかっぱ頭の少年が登場した。出てくるや否や、彼は自らをこう紹介した。

 

「よろしく。僕のことはクライストとお呼び下さい」

 

「――で、竹山くんはスーパーハカーなのよ。彼には、天使の部屋にあるPCをサーチしてもらうわ」

 

 某SFアニメを思い起こさせるパロディが混じっていることは置いといて、俺にはここで一つの疑問が浮かぶ。

 

「私のことはクライストと――」

 

「なあ、ゆり。どうして天使の部屋にPCがあるなんてこと、分かるんだよ?」

 

 

 ゆりは、何だそんなこと、と言いたげな表情を満面に浮かべて、

 

 

「そんなの、私が天使の部屋に行ったことがあるからに決まってるじゃない。言っとくけど、私は結構天使と接触したことがあるのよ。まあそれはいいとして……グループB、今朝の調査で、ノーマルの方の天使と、(くだん)の天使は別々だということが判明した。ノーマルの方は普通に授業に出てるけど、件の方はその辺をウロウロしてるわ。グループBのメンバーには、奴の陽動を要請する。メンバーは、大山くん、TK、高松くん、そして音無くん」

 

「やっぱ俺が囮かよ⁉」

 

「仕方がないでしょ、あっちの方の天使は音無くんに目が釘付けですもの」

 

「しかし、やはり私たちでは、あの方の天使には対抗できないのでは?」

 

 高松が眼鏡を上げながら呟く。

 

「あくまでも陽動、時間さえ稼いでくれればいいわ。奴に私たちの邪魔をさせなければ、それでいい」

 

 明らかに捨て駒のような扱いだ。まず間違いなく、今日俺は赤目の天使にやられることになる。

 

 くそっ、よりによって奴は、何で俺をターゲットにするんだ……?

 

「次にグループC、ギルドへ赴くメンバーは藤巻くん、野田くん、椎名さん。私が直筆でチャーに手紙を書いておくから、それを届けてほしいわ。椎名さん、お願いできる?」

 

「浅はかなり」

 

「藤巻くんと野田くんは、使えそうな武器を補充してきて。昨日ので、大分弾も持ってかれたし」

 

「ゆりっぺの指示とあらば仕方ねえ……だが何でコイツとなんだ?」

 

「こっちの台詞だ、何故お前と行動を取らなきゃいけねえんだ?」

 

 

 野田と藤巻がにらみ合っている所を、松下五段がとりなしている。――正直今回のオペレーションは乗り気ではないが、俺たちは重大な仕事を請け負ったと言っても過言ではない。何度やられても、こっちからやられに向かうくらいの気持ちがないと駄目だろう。

 

 

「作戦決行は即時。オペレーション、スタート‼」

 

 

 

      ***

 

 

 

》学園大食堂

 

 赤い目の天使を陽動するという任務を任された俺たちは、奴が出現するというポイントの一つ、学園大食堂の前をふらついていた。

 

 

 現れるというか、昨日ここに赤い目の天使が来たのは、俺たち――もとい俺が居た、からだ。だからどこにいようが、奴は恐らく、俺の元へやってくるだろう。それならば逃げやすく、広い場所が良いということで、奴が来るのをここで待とうという話になったのだ。

 

 

「それにしても災難だったねー、僕もびっくりしたよー」

 

 話しかけてきたのは、狙撃用のライフル銃を武装した大山だ。確か、特徴がないのが特徴――とか、ゆりが言ってたっけ」

 

「ああ……今日もまた、やられちまうだろうな」

 

「心配なさらないでください、私もこの――肉体を懸けても天使を足止めする覚悟はありますので!」

 

「僕も音無くんがやられないように、全力で頑張るよ!」

 

「Let's throw away the body」

 

 高松とTKも声を掛けてきた。みんながやられる覚悟なら、俺としても少し楽になる。

 

「ああ……ありがとう、みんな」

 

「それにしても、どうして赤目の天使は音無くん一途なのかなあ。生前の因縁とかかなあ」

 

 大山が首を傾げながら言った。俺はその一言で、ある可能性に気付く。

 

「生前の因縁――そうか! まさか天使も⁉」

 

「どうしたんですか? 何か気付いたことでも?」

 

「……俺と同じように、天使にも以前、ここで過ごした記憶があるのかもしれない」

 

「じゃあ、音無くんはその――以前の記憶で、天使に何か恨まれるようなことをしたの?」

 

 

 …………思い当たることがない。そもそも天使、つまり奏は俺の胸の中で、満足して成仏したはずだ。もしかすれば、成仏させたことに対して恨みを持たれているのだろうか? ……いや、まさかな。

 

 

「――思いあたることは、ない」

 

「うーん、じゃあどうしてだろう……」

 

 

 大山が独り言のように呟くと同時に、TKが奴の来襲を告げた。

 

 

「Hey, the enemy came!!!」

 

 

 俺たちが急いで連絡橋方面を見ると、そこには紅色に染まる瞳を奇妙に光らせた、奴の姿が見える。

 

 

「赤い目の天使が来た! 後退しながら銃撃っ!」

 

「「了解!」」

 

「Roger」

 

 俺たちは、奴とは逆ベクトル、つまり学園大食堂の内部へと走り出した。

 

 大山は時々立ち止まりながら、高松、TK、俺は走りながら、手元のハンドガンを駆使して後方の天使を狙撃する。

 

 幸い奴はスキルを発動させていなかったようで、俺たちが放った銃弾は容易く奴の身体に命中した。

 

「足止めは成功だ! 後は俺が囮になるから、お前らはそれぞれ別の位置で天使を狙っておいてくれ!」

 

「分かりました」

 

「僕、二階に上っておくよ!」

 

「OK!」

 

 銃弾は身体のかなり広範囲に命中したようで、奴はうずくまり、動けずにいる。

 

「頼むぜ、ゆり……できるだけ早く、仕事を終わらせてくれよ……」

 

 食堂内部へと逃げながら、俺は届くはずもないゆりへ話しかけた。

 

 

 ――無論、俺はそう長く奴を陽動できるとは、思っていなかったからだ。

 

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