Angel Beats!―The repeated heaven―   作:いさか

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[EPISODE.02] Investigation Ⅲ

 

》対天使用作戦本部(校長室)

 

 時刻は午後六時。

 

 私たちが天使の部屋を捜索してから二日が経過した。朝方にギルドへ赴いていたグループCが帰還したことを確認したので、彼らの休養も考慮し、私は各自夕方に本部へ集合することを通告していた。

 

「……揃った? それじゃ、各グループはそれぞれの状況を報告して。まずは音無くんたち」

 

 校長机を陣取る私から見て左側――そこへ集まっていたグループBの方を見やった。

 

「三回も死ぬ痛みを骨の髄まで味わえたよ、本当に稀有な体験だ」

 

「じゃあ今後もやってくれる?」

 

「二度とやらねえ」

 

 音無くんは若干やつれているらしい。今回のオペレーションではほぼ囮役でしかなかった……音無くんには申し訳ないとは思うけど、それは私の所為じゃない。

 

「私たちが堕天使を消してなかったらもっと体験できたかもしれないわね」

 

「うん! いやもう凄かったよ、音無くんのやられよう!」

 

「私の肉体美には目もくれない――流石は堕天使、といったところでしょうか」

 

「It was a spectacle」

 

 馬鹿共は置いておいて、私はグループC――椎名さん、野田くん、藤巻くんの方へ顎をしゃくる。

 

「残念だが、チャーによるとゆりっぺが要望していたレーザー兵器やガス兵器の類は作れないようだ」

 

「代わりに、コイツを俺が持ってきたんだぜ、ゆりっぺ」

 

 野田くんが自慢げに背中に担いだロケットランチャーを下ろす。心なしか、いつも使っている物より大型だ。

 

「弾の火薬含有率が二十五パーセントほど上がっているらしい。これでその堕天使とかいうやつもこっぱみじ――」

 

「野田くん、貴方話聞いてなかったの? 堕天使は既にこの世界上から消えたわ」

 

「は…………な、なんだ……と?」

 

「アホだ」

 

「ああ、アホだな」

 

 アホ共は置いといて、次は――って、私たちか。

 

「それじゃ、私たちグループAの番ね。――事実から述べると、天使はソフトウェアを用いてあの能力を手に入れていた」

 

 刹那、場が静止したように静まり返る。

 

「……ソフトウェア? どういうことでしょう」

 

 高松くんが眼鏡をちらと反射させた。

 

「つまりは、私たちが土くれから武器を作っているのと同じよ。何もないところから何かを生み出す――ただ彼女は、それをプログラムによって利便性を高めている。そこが私たちとの違いね」

 

「その結果、天使は好きな時に腕から剣を生やせるんだね! 確かに便利!」

 

 大山くんが妙に冴えている気もするが、そこは敢えてスルーしておくことにした。

 

「そういうこと。まあ、つまりは天使も自分でやってるのよ。誰の力を借りた訳でもない……」

 

「おいおい待てよゆりっぺ! それって生徒会長が『天使』じゃないってことか?」

 

 日向くんが焦りを含んだ声音で尋ねた。『天使』――つまりは、神の使い。

 

 神の使いでないということは、言うなれば神そのものが存在しないということ。いや存在するのかもしれない――だがその場合の神は、私たちが想定していたものとはまったく違う何か、だろう。

 

「そうではないことを祈ってるわ、でないと……」

 

 不安が募っていく感覚を、私は自分自身からも、そしてこの部屋にいるメンバーの視線からも感じ取った。

 

「馬鹿みたいじゃない。私たちは『神』に抗うために存在してるのに――その『神』が存在しないのなら、私たちは何をやってるの? って結論になるじゃない」

 

 誰もが口を噤み、俯いた。重苦しい雰囲気が場を圧迫している。

 

 これ以上戦線の士気を下げないように、私はさっさと話題転換をする。

 

「とりあえず、この話はこれでおしまいにしましょう……さて、次のオペレーションの話だけど」

 

「また死ぬのは御免だぞ」

 

「死なないわよ、死ぬ痛みを味わうだけなんだから――今度のは、そうねえ……一言でいうとサバイバルゲームかしら」

 

「何てサバイバル⁉」

 

「……大山、それ使うのいつ以来だ?」

 

 メンバーの目線が、再び私の元へと集まる。

 

「サバイバルゲームって……いったい何をやるつもりなんだ、ゆりっぺ?」

 

 さっき大山くんにツッコミとも言えないようなツッコミを入れた日向くんが不安そうな目つきで、私へ尋ねた。

 

 こうやって焦らして、メンバーたちの緊張する顔を眺めるのも、まあ悪くないかもしれない。

 

「バーべキュー大会よ。但し‼ ……今別れているグループ中、一つだけが肉にありつける――究極のサバイバル」

 

 また、場が瞬間的にしらけた。――だが今度ばかりは。

 

「いよっしゃあああああああっっっっっっ! 肉来た! 肉!」

 

「その肉をうどんにトッピングするのもありか?」

 

「バーベキューうどんか……意外にいけそうだな!」

 

「浅はかなり」

 

「やはり私は、この筋肉の元となるもも肉を頂きましょう」

 

「ささみでもいけるんじゃねえか?」

 

 ……やはりアホの集団だけはあるわね。私は心の底でそう呟いて、計画通りと言わんばかりに口角を上げ、話題転換が見事成功したことへの自尊心で胸を膨らませた。

 

 

 勿論これは何の意味もなさないオペレーションだ。ただ……分身を失った天使が、勝手にグラウンドでバーベキューパーティーをする私たちに、もしくは音無くんに対してどういった行動を取るか――それをこの目で、確かめてみたいのだ。

 

 

「作戦決行は翌日。朝の八時には、各自グラウンドへ集合しておくこと。ルールはその時説明するわ。……では、今日はこれで解散!」

 

 

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