リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

11 / 52
第二部開幕!

とりあえず戦闘なしのほのぼの日常編からスタート!
活動報告にも書きましたがここからだいぶファンタジーな要素も入れます
どう評価されるかは謎ですが頑張りますのでよろしくお願いします。



変化
新しい日常


第二部開幕!

 

とりあえず戦闘なしのほのぼの日常編からスタート!

活動報告にも書きましたがここからだいぶファンタジーな要素も入れます

どう評価されるかは謎ですが頑張りますのでよろしくお願いします。

 

 

 

 

???

 

 

こんなものか……

 

 

私はユクモ村の書類に眼を通していた。

村長、村の構成、周辺の状況、村に所属しているハンターのランクなどを確認し、そのいくつかのデータを改竄を行っていた。

といっても、改竄したのはユクモ村の一人と、ギルドに所属している一人のデータだけだが……。

 

 

ようやくスラッシュアックスの開発が軌道に乗ってきたのだが……

 

 

しかし、技術的に最新の物を使っている物が多く、ドンドルマの工房でも一つ作るだけでも膨大な時間と資金がいる状況では、とてもではないがそれを

戦力として数えることは不可能だろう。

そして試作品である、ボーンアックスというもっともスタンダードな素材である骨と鉄を使って作られた物の試験運用を、ギルド上層部から辞令が来た

が……、まだまだ改善点は多い。

 

 

スラッシュアックスの開発と、伝説の鍛治氏リオスの別路線の武器開発……その時間を稼ぐためにも、優秀なハンターは必要だ……

 

 

部下の一人にこの男の監視も命令したことだし、その報告にも興味がある。

私は一枚の書類を手に取ると、そこに書かれている名前を読み上げる。

 

 

「クロガネ ジンヤ……。……どっちが名前なんだ?」

 

 

あまり聞いたことのない不思議なその名前に、私は思わず首を傾げてしまうのだった。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

俺がこのモンスターが生息する不思議な世界に流れて早二ヶ月ほど……前回の温泉発掘と、日本料理を作った日からは一ヶ月……。

その間、ユクモ村はモンスターに襲われることもなく、また近隣のフィールドに鳥竜種や、飛竜種といった凶悪なモンスターが現れることもなく、至極

平穏な日々が流れていた……。

 

 

が、俺は……

 

 

ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン

ジュアァァァァァ!

ボッ!

 

 

戦争、というよりも、少々変わった戦いに明け暮れていた。

 

 

「三番テーブル注文追加だニャ! リュウノテールの煮物定食とホピ酒だニャ!」

 

「「「「リュウノテール定食ホピ酒、毎度(ニャ)!」」」」

 

「五番テーブルで女王エビと黄金米のお茶漬け追加だニャ!」

 

「「「「女王エビ茶漬け、毎度(ニャ)」」」」

 

「店長、大変だニャ! 野菜がもうほとんどないニャ!」

 

「食材チェックの仕方がまだまだ甘いぞ! 俺がきちんと地下の貯蔵庫の氷結晶部屋に今朝追加しておいたから今すぐ取ってこい!」

 

「了解だニャ!」

 

「十番テーブル様、お会計ですニャ!」

 

「「「毎度、ありがとうござます(ニャ)!」」」

 

 

日がほとんど沈んだ夜。

ユクモ村の一角に建設した巨大食堂『和食屋』は、今まさに仕事帰りの食事や、夕食を外食にしてわざわざ来てくれた、村人達の夕食造りにてんやわん

やだった。

 

 

先日の米料理を俺は次の日に早速村長家で、村長と村の代表者達に試食してもらった。

最初こそ家畜用の餌という認識が一般的となっているため、嫌な顔をされたが、村長が一心不乱と言ってもいいほどに黙々と食べ出すと、それに釣られ

るように代表者達も料理を口にして驚愕していた。

調理の仕方がわからないために、ただ籾をはがして家畜に食させることしか出来ていなかったのだから米の価値などわかるはずもない。

そして温泉にも入ってもらって(ちなみにこれは俺の家の温泉ではなく、他の場所に湯を引いて建てた別の温泉)、その両者の素晴らしさを伝え、村お

こしに使えないかと伝えてみると、村長もその話しに乗ってくれた。

そしてそれをさらに他の人にも知ってもらう、また村おこしの資金を作るために、俺は食堂と、温泉銭湯を建築し、それのオーナー的な存在になってい

た。

 

 

建築法や道路法なんぞないこの世界では村長とかがOKサインを出せば建築し放題だ。

俺は早速温泉を村にも引いて温泉の銭湯と、米などを使った和食などの料理を出す食堂を作った。

ちなみに建物そのものはきちんと作ったので建築法はしっかりと守っているはずだ。

 

 

どちらも最初こそ敬遠されていたが、リオスさん家や、村長などが積極的に利用することによって危険性がないことをアピールしてくれた。

すると徐々に利用者が増え始め、一ヶ月で利用者が急増していた。

最初こそ俺が早起きして死ぬ気で頑張れば一人で回せたこの二つの商いは、俺だけでは回らなくなっていた。

番台の仕事はリーメが手伝ってくれたが、彼にもハンターとしての仕事がある。

あまり番台でこき使うわけにもいかない。

そのためこの村では金銭的な都合で雇っていなかったアイルーという獣人?種のモンスターを雇い、従業員として俺が雇っていた。

 

 

この獣人種のアイルーというのには二つの職業があり、キッチンアイルーか、オトモアイルーというのがあるらしい。

キッチンは文字通り、キッチンにいる、つまり料理をすることが出来るアイルーで、オトモアイルーはハンターのモンスター狩りについて行って狩猟の

サポートを行うアイルーらしい。

 

オトモの方はまぁいいとして、正直な話……

 

 

毛むくじゃらの猫が料理して毛とか料理に入ったりしないのか……?

 

 

と若干不安だったが、服装とかも気にして互いに毎日お手入れもかねてブラッシングをしているので大丈夫なようだ。

アイルー達は見たこともない料理を作れるのが楽しいのか嬉々として仕事に励んでくれている。

そして温泉銭湯にも番台として雇い、総勢十名ほどのアイルー達が俺の部下として働いている。

そして店長兼オーナーである俺がさぼる、というよりもさぼるほど余裕はないので風呂掃除に水張り、食堂の掃除や仕込みなどを率先して行い、キッチ

ンアイルー達の師匠になっている。

 

 

正直な話、最近では俺はハンターなのか、それとも料理屋の店主なのかわからなくなってきていたりする……。

 

 

実際に最近では狩竜や夜月などの得物よりも、料理人としての得物である包丁の方が持っている機会が多い。

無論得物の手入れを怠るわけはないのだが……。

 

 

まぁハンターである俺がこうして他の仕事を行っているだけで済んでいるんだからそれだけ平和だって言うことだけどな

 

 

波瀾万丈も修行とかの意味で申し分ないが、俺からしたらこの世界に来ただけで波瀾万丈なんてレベルではないので、さすがに少し休憩したいところだ

ったのである意味ちょうどよかった。

 

 

誠に残念ながら肉体的には全く休めていないわけだが……

 

 

そう内心こぼすががどうしようもないのでまぁしょうがない。

それに働かざる者食うべからずなので、仕事で汗を流すのはよいことである。

仕事をするのは好きなので、特に問題ない。

 

 

そうして日が完全に暮れ、夜が深まってくるとぼちぼちと客足が少なくなっていく。

農家などの完全な肉体労働が仕事なので朝は速い。

当然寝るのも速いので、七時前になると完全に客がいなくなる。

そのためこの店も七時閉店となっている。

客がいなくなり、最後の一人を見送ると、暖簾を外して俺はキッチンに一番近い一番テーブルどかっと腰を下ろした。

仕事は好きだが疲れるものは疲れるのだ。

 

 

「あ~疲れた……」

 

「お疲れ様です、ジンヤさん」

 

 

そう言って小柄な女の子が俺のそばへとやってきて水の入ったコップを差し出してくれた。

見た目完璧子供(実際子供)の女の子、レーファ。

まぁ十四歳なのでそれも当然だが……。

 

 

俺がこの世界に迷い込んで目覚めた森でランポスという、恐竜モドキに襲われていた女の子。

この世界の言語を俺に教えてくれた先生だ。

ちなみに、最初こそ全く会話が出来なかった俺だが、どうにかこうにか、通話だけでも意思疎通がとれるようになっていた。

 

 

通話だけといってもものすごく片言で単語ばっかりなのだが……それで通じているのでよしとしよう

 

 

「ありがとう」

 

 

俺は礼を言ってレーファが汲んでくれた水を飲む。

人が足りなかったので、俺はレーファにお願いして、フロアに出てもらっていた。

バイト扱いなのでもちろん給料も出る。

そのため、レーファも喜んで仕事を手伝ってくれている。

 

 

「店長にレーファさん、お疲れ様ですニャ」

 

 

そう言って俺に近づいてきたのは、アイルーたちのキッチンリーダーのグラハム。

他のアイルー達と違い、俺の家で一緒に暮らしている。

こいつともう一匹は俺の同居人を怖がらなかったので、家に住むか? ときいてみたら喜んで来てくれたのだ。

一人と一匹だけではさびしいのでちょうどよかった。

他のアイルー達は店じまいを行っている。

仕込みをしてる者もいる。

俺はそれを見つめつつ、手順ややり方が間違っていないかを確認していた。

 

 

どうやらほとんどもう大丈夫だな……

 

 

今は俺がいるが、俺は一応ハンターが本業になるので、ここばかりに時間を割くわけにはいかない。

そのためはやいことこの子達に一人前になってほしい……。

アイルー達は頑張り屋なので、もう半人前は卒業させても良さそうだった。

そうしてアイルーたちの作業を眺めていると、入口の引き戸が引かれた。

 

 

「おじゃまします、ジンヤさんお疲れ様です」

 

 

入ってきたのはどういう訳か俺を慕っているハンターのリーメだ。

レーファより年上のはずなのに、あまりにも童顔のため、背伸びをしてる男の子にしか見えない……。

 

 

ハンターとは前述の恐竜モドキの他にも様々なモンスターが存在するこの世界になくてはならない存在だ。

文字通り、ハンターとはそのモンスターの狩人である。

竜がいるのがこの世界のすごいところなのだが……。

 

 

まぁその竜が今俺の家族ですがね……

 

 

その竜に関しては後ほど……。

レーファもリーメも、肌の色はとても白かった。

この世界には普通の人間と竜人族という亜人がいるが、肌の色は白と黒っぽい人種しかいない。

そして俺は純正日本人の黄色い猿。

しかも黒髪黒目はいないらしく、最初は奇異の目で見られていたが、このレーファと家族のリオスさんとラーファさん、リーメに村長達は色眼鏡をかけ

ずに俺のことを見てくれた優しい、というよりも肝の据わった人たちだ。

 

 

「こんばんわ、リーメさん」

 

「いらっしゃいですニャ!」

 

 

店に入ってきたリーメに、レーファとグラハムが出迎えの声を上げる。

その声に俺はいったん回想をやめて、立ち上がると同じように俺も来てくれたリーメに挨拶をした。

 

 

「お疲れリーメ」

 

「ジンヤさんこそ。毎日お疲れ様です」

 

「レーファもグラハム達も使えるから楽だ。最初のレーファはもうひどかったからな」

 

 

そういうと、レーファが真っ赤になった。

 

 

初めてのバイト、というよりも給仕仕事にレーファはもう終始てんぱってばかりで、失敗の連続だった。

皿は割る、伝票ミス、注文ミス、etcetc……・

極めつけはこけて俺に汁物の残り汁をかぶせたこともある。

村民しかこないので大きな問題にならなかったが、仮にドンドルマのような顔見知りではない客がくるようなところで給仕させたらえらいことになって

いただろう……。

 

 

「ひどいですジンヤさん! あまりからかわないでください!」

 

「見物だったからな」

 

 

実際あの時の慌てっぷりはなかなか見物だった。

もうぐるぐるぐるぐる回る回る。

本人は気づいていなかったが、客として来た村民達もそんなレーファをほほえましくニヤニヤしながら眺めていた。

 

 

「悪かった。お詫びにドリンク上げる。機嫌を直せ」

 

「!? 本当ですか? 絶対ですよ!」

 

「リーメもな。というかこの場にいる全員にあげるよ。一杯な」

 

「ありがとうございます(ニャ)!」

 

 

この場にいる全員からお礼を言われる。

たいした出費ではないのでたまにはいいだろう。

俺はそう思いながらキッチンアイルー達の方へと向き直る。

 

 

「よし、それじゃみんなで風呂に行くか?」

 

「了解ですニャ!」

 

 

俺のその一言に、全員が元気よく声を上げた。

そしてレーファとリーメも一緒になって直ぐ隣にある俺が経営している店、温泉銭湯へと入った。

 

 

銭湯のマークがあるだろう?

マルに湯気を表す波線が三本描かれているやつ。

あれをレーファに見せてこの世界風にデザインされたものが銭湯の暖簾に描かれている。

 

 

炎に見えなくもないが、まぁそこは俺が別の世界の住人だからかな?

 

 

俺の感性はどうでもいいだろう。

利用者たちにはこのマークを気に入ってくれている人は多いので問題ない。

そんなことを考えながら俺は引き戸を引いて中へとはいって行った。

 

 

「すいません、今日はもう閉店ですニャ、って店長でしたか、お疲れ様ですニャ」

 

 

番台に座って店番していたアイルーが俺に声を掛けてくる。

俺はそれにお疲れ、と言いながら手を挙げる。

 

 

「来た人数は?」

 

「昨日とほとんど同じで好評ですニャ!」

 

 

水道が出来て簡単に風呂が入れる現代の世界と違い、水をわざわざ川などにくみに行くこの世界では銭湯というのはありがたい物なのだろう。

しかも風呂に入るという文化がほとんどなかったこの世界ではなおさら。

湯につかるというのは何物にも代え難い物だからな。

足も伸ばせるので大分幸せな気分を味わえるだろう。

村民の三分の一は入れるような広さの浴場を作ったので相当広いのだ。

 

 

「後でな」

 

「はい」

 

 

一旦レーファと別れると俺はリーメと一緒に風呂に入りに行く。

疲れているので俺はババッと一瞬で着替えを脱ぐと、風呂場へと続く引き戸を開けてまず手拭いで体を洗った。

テンプラなどに使った廃油で作った石鹸も随分と好評だった。

俺はそれで体がガシガシと大雑把ながらも手ぬぐいで綺麗に洗うと、それを洗い流し、ゆっくりと温泉につかった。

 

 

「あ~~~~~~~」

 

 

この湯に身をゆだねる感覚が何とも言えない。

じじくさいといわれようとも、この声はどうしても出てしまうものだと俺は思う。

 

 

あ~やばい~。このまま溶けてしまいそうだ……

 

 

無論そんなことはないのだが、それでも疲れていたこの体には、この湯の幸せは格段に効くものだった。

 

 

「ジンヤさん、ちょっと年寄りじみた感じになってますよ」

 

「やかましい! 疲れてるんだよ、リーメ。いいものだろう? 湯に浸かるの」

 

「確かに気持ちいいですけど」

 

 

リーメが苦笑しながらも俺と同じく浴槽へと入ってくる。

無論グラハムや、他のアイルー達も一緒だ。

みんな思い思いの体勢で湯に浸かっている。

ここで酒があればまた格別にいい気分になるのだが……残念ながら日本酒の開発まではうまくいってなかった……

 

 

露天風呂に浸かりながらの月見酒が一番うまいんだが……

 

 

(お酒は二十歳になってから 作者より)

 

 

無い物ねだりをしても仕方がないので、俺は湯から上がると、着替えの服を着て、脱衣所とは違う待合室へと足を運ぶ。

そこには斧担いだ金○郎のような、赤い菱形の布をエプロンのように体につけているアイルーが、熱心に様々な液体の入った竹製のコップを整理してい

るところだった。

 

 

「お疲れ、ジャスパー」

 

「ニャ! これはこれは旦那様! お疲れ様ですニャ!」

 

「……やめろ。店長と呼んで」

 

 

俺のことを旦那様と呼ぶアイルーの名前はジャスパー。

先ほど言った俺の家に住んでいるアイルーの一匹だ。

グラハムと仲がよく、俺の同居人とも仲がいいのでいろいろと助けられている。

 

 

「今日のおすすめは?」

 

「今日は旦……店長が教えてくれた猛牛の乳から作ったミラクルミルクがおすすめだニャ!」

 

「それくれ」

 

「わかったニャ!」

 

 

ジャスパーはそう元気よく返事をすると、大きめの扉付きの木の棚を開き、中に入っていた竹のコップの一つを取り出した。

 

 

風呂上がりといえばやっぱり牛乳でしょ……

 

 

俺はそのコップを受け取り、腰に手を当てて一気に喉へと流し込んだ。

 

 

「…かぁ~うまい!」

 

 

氷結晶と呼ばれる冷気を放ち続ける不思議な鉱石を使った冷蔵庫で冷やしてあったので、それはとても冷えていて、ほてった体をとても気持ちよく冷や

し、潤してくれる。

これで電動マッサージチェアがあれば完璧なのだが……。

 

 

ん? じじくさすぎる? ほっといてくれ

 

 

「ふう、五臓六腑に染み渡るぜ」

 

「ゴゾーロップ? 何ですかそれ?」

 

「体中に染み渡る、ということ」

 

「ふ~ん。面白い単語ですね」

 

 

俺に問いかけてきたのは意外なことにレーファだった。

女性は長風呂というのはどこに行っても同じだと思ったのだが……。

実際ラーファさんや他の女性客は長いらしい。

 

 

まぁ子供だしな……

 

 

「? 今何か失礼なこと考えませんでした?」

 

「? さぁ?」

 

 

俺は考えがばれないようにジャスパーに同じものをレーファに上げるように伝える。

俺の考えを察したのかどうかは謎だが、ジャスパーが素早くレーファへとミラクルミルクを差し出した。

訝しげな表情をしながらも、レーファはそれを受け取ると、両手でそれを持ちコクコクとかわいらしくゆっくりと飲み干していった。

 

 

「おいしい!」

 

 

どうやら気に入ったらしく、レーファは満面の笑みを浮かべると、ゆっくりと味わうように飲み干していった。

 

 

お菓子……ではなくジュースか? それで機嫌が直るのも子供の証拠か?

 

 

「…………やっぱり失礼なこと考えてませんか?」

 

「いやいや、悪気はないよ、他意もない」

 

 

完全に日本語で話してあげると、レーファは頭にハテナマークを浮かべて、首をかしげていた。

 

 

「店長、なんて言ったんですかニャ?」

 

「俺の国の言語。つい出た」

 

「……うそだ~」

 

「レーファ、人を疑うのはよくない」

 

 

一人と一匹に嫌疑の眼差しを向けられていたが、俺はどこ吹く風だった。

 

 

 

 

その後、和食屋の住居スペースに住んでいるキッチンアイルー達と銭湯の前で分かれると、俺とレーファ、リーメ、グラハムにジャスパーは村はずれ、

というか村の外にある俺の家へと向かった。

食材の余りと特別に買っておいたアプトノスの巨大な骨付き肉を肩に担いでいく。

重さにして五キロほど。

三人とアイルー二匹だけでは絶対に一食で食べきれない量である。

まぁ食おうと思えば俺は食えるが、この肉はほとんど俺の家族のための食事だが。

以前は森と丘までランポスを狩りにいって、それをムーナの餌にしていたのだが、それだけでは足りなくなり、またランポスの数が減っているのかめっ

きり姿を見なくなったのでこうして商人から餌を飼うことも最近では多かった。

 

 

「ムーナちゃん、喜んでくれるかな?」

 

「う~ん……いい肉買ったから大丈夫、思う」

 

 

レーファが俺が肩に担いだ肉を見ながらそう言ってくる。

まぁ味に関してはほとんど問題ないだろう。

最近は忙しくてあまりかまってやれていないので、今回は奮発した。

 

 

「それにしてもムーナちゃん、大きくなりましたよね?」

 

「だいぶでかくなった。さすが竜種だな……」

 

 

リーメも感慨深そうにそう感想をこぼしてくる。

グラハムとジャスパーはムーナの小さい頃を知らないので二匹とも首をかしげているが。

 

 

そう会話しながら歩いていると、完全な純和風の家屋が見えてくる。

外堀を石垣で組んだので相当頑丈だったりする。

ちなみに俺一人で全部作った。

 

 

正門の気の施錠を解錠し、俺は正門を開ける。

すると正面に藁の屋根を持った屋敷が見え、その隣に露天風呂の小屋、そして他には俺の同居モンスターのための小屋が建てられている。

特に変わった様子がないことをざっと確認しつつ、俺は全員が入ったことを確認すると、正門を閉めて施錠する。

 

 

「キュウ~~~」

 

 

そうしていると、俺たちの帰宅に気づいたのか、一匹の飛竜がこちらへと歩み寄ってきた。

 

 

夜闇の光源でも反射し、真紅に輝く赤い鱗と外殻。

まだ成長しきっていないとはいえ、その口に並ぶ牙はとても鋭い。

翼もだいぶ大きくなっており、もう飛べるくらいだ。

背丈というか、大きさは顔が俺の腰辺りにくる。

俺を背に乗せることが可能と言えば大きさがわかってくれるだろうか……。

 

 

飛竜種、リオレウス……の子供で名前はムーナ。

以前俺が討伐した飛竜種、リオレウスの巣にあった卵を俺が村へと持って帰ってきて、飼うことにした飛竜だ。

 

 

イャンクックと呼ばれる鳥竜種を一刀のもとに切り捨てて油断していた俺を奇襲し、俺の愛刀の一つ、夕月を砕いたリオレウス。

その後、飛竜種と戦うために、俺は夕月を溶かし、この世界の砂鉄と融合させて、対飛竜用装備、野太刀を鍛造した。

刃渡り七尺四寸の長大な野太刀。

名前は狩竜。

 

 

それを使い俺の慢心を教えてくれたリオレウスを狩竜で討伐した。

そのリオレウスが必死に守っていたのが、このムーナが宿っていた卵だった。

敵の尻尾から剥ぎ取った紅玉がしきりに気に掛けていたので俺はこの子を育てることにしたのだった。

 

 

ちなみにムーナとは俺が名付けたこの子の名前だ。

一番の愛刀、打刀の夜月から名付けた。

 

 

さすがにこのサイズの飛竜が走り寄ってくると迫力がある。

しかし危険な雰囲気は全くなく、ものすごく嬉しそうな感じだ。

そのまま俺のそばへと来て頭を俺の腹に当ててきて甘えてくる。

俺はそんなムーナに微笑みつつ、頭を優しく撫でてあげた。

生まれたその時に初めて見たのが俺なのでものすごくなついてくれている。

 

 

「ただいま~ムーナちゃん」

 

「キュルゥ~」

 

 

次にムーナはレーファに近寄り、同じように甘えていた。

この家に住む前はレーファの家、リオスさんの家に居候させていただいたのだが、このムーナが孵るその時レーファもその場にいたため、レーファにも

なついていた。

最初こそ飛竜と言うことで怖がっていたレーファだが、最近では全く問題ないらしく、甘えてくるムーナの頭を抱いてあげていた。

ちなみに俺がこの村の外に家を造った原因もこの子だったりする。

 

 

生まれたての雛とはいえ、恐怖の代名詞である飛竜種リオレウスが村にいるのは恐怖以外の何物でもないのが村人達の本心だろう。

それに関しては俺も十二分にわかっているので、ムーナを育てるためにどこか遠くに家を建てて暮らそうとしていたのだが、村長のご厚意でこうして村

近くの森に家を建てて生活している。

 

 

ここでざっと大まかに整理すると

 

 

裏家業の仕事帰り、船の上で寝ていたのに起きたらそこは森の中

 

超常現象にとまどいつつも悲鳴が聞こえてきたので現場に行くと、青い恐竜モドキに襲われていた女の子レーファ

 

どうにか名前だけは伝えられたので、その子に案内されて俺はここ、ユクモ村へとやってきた

 

最初は随分と警戒されたが、レーファの家に厄介になる

 

キノコ取りに行ってランポスに襲われて俺負傷。そしてその後村がランポスの大群に襲われたが、俺がどうにか撃退。その後村に迎えられる

 

そこで生活していると、村長にイャンクックの討伐を依頼される

 

リーメともにそれをこなした後にリオレウスの奇襲を受けて愛刀の一つが砕かれる

 

リオスさんの工房を借りて、狩竜を鍛造

 

そして首都ドンドルマへと赴き俺はハンターになると、夕月を砕いたリオレウスの討伐依頼が舞い込んでくる

 

それをこなして巣に行くと卵が合ってそれを持ち帰ると卵が孵り、ムーナが生まれる

 

その子と共に俺は村の外に家を建築

 

温泉を掘り当てて俺はこの世界に温泉という文化を開拓(そんなつもりは全くなかったが)

 

米を発見してそれをレーファとかに振る舞うと好評でそれを使って俺は村おこしを村長に相談

 

OKが出たので、俺は食堂と温泉銭湯を作り、その店の経営にいそしむ

 

 

大体こんなところだろうか……

 

 

確かに、家庭事情から普通とは言い難い俺の人生ではあったが、これほどまでに普通からかけ離れるとは予想だにしていなかった……。

……最近ではいろいろと忙しいのでそんなことを考えている暇もなかったが。

 

 

俺の家族は今何してるかなぁ……

 

 

こうして和風の家を建て、米や味噌、醤油なども制作し、料理店の店長などを行っているが、やはり故郷というものは恋しくなってしまう。

 

 

「キュゥ~」

 

 

そうして俺が何となくちょっとした物思いにふけっていると、真っ先にムーナがそんな俺に気づいて、俺の頬を舐めてくれた。

俺のことを本当に気遣ってくれるとても優しい子であった。

 

 

「ふふ、そうしていると、本当の親子みたいですね」

 

「ムーナちゃんは相変わらずいい子ですね」

 

 

俺を気遣ってくれているムーナの頭を撫でていると、レーファが微笑を浮かべながらそういってくる。

リーメも最近ではムーナに慣れたもので、怖がりもせずに普通に笑みを浮かべてレーファと同じようなことを言う。

 

 

こんな大きい、しかも竜と親子ってのもなぁ……ムーナだからいいか……

 

 

その言葉に俺は特に何も返すことなく、俺はムーナの頭を撫で続けていた。

 

 

 

 

 

「さて、ムーナ。お楽しみの散歩の時間だ」

 

「キュルゥゥ!」

 

 

あの後、店の余り物で作った夕餉をみんなで食べて、レーファとリーメを送った後、俺はムーナの小屋に置いてある鐙《あぶみ》や、鞍に手綱をムーナ

の体に取り付けつつそう言った。

 

 

一日中家の中で過ごさせるのはかわいそうなので、俺は村民が寝付いた後の夜に、いつもムーナと森の中を散歩していた。

 

 

ムーナはすでに短時間ならば飛ぶことが可能になっていた。

空を飛ぶと言うことをお手本で見せてあげることが出来ないので、そこら辺を心配していたのだが、野生としての本能か、はたまた生命の神秘なのか、

ムーナは必死になって飛べる練習をして飛ぶことが出来るようになった。

が、だからといって好き勝手に飛ばれるとやばいことになるので、俺がいないときは絶対に空を飛ぶなとそれだけは徹底的にしつけた。

また遠くに行くことも許すことは出来ないので、そこもきちんと教えた。

ムーナは俺のそのしつけに特に嫌そうにせずに素直に俺の言うことを聞いてくれた。

 

 

ムーナを家族にしたことに後悔は全くしていない。

むしろ俺としては家族が出来て嬉しい。

 

 

だが、不安はある……

 

 

この子が凶暴化しないとは言い切れない。

そして仮に凶暴化しなかったとしても、この子が無事平穏に生きていけるかわからない。

人になついたと言うことでマスコミのような存在が押し寄せてくるかもしれない。

またこいつを売ってほしいとか、素材欲しさに殺そうとする輩も出てくるかもしれない……。

 

 

中世程度の技術レベルなのでまだこの村以外にムーナの存在は知られていないかもしれないが……それも時間の問題だろう……

 

 

無論こいつを誰かにやるきも、殺させる気もない。

が、不安になるのは仕方がないというものだろう……。

 

 

「どうしたんですかニャ?」

 

「ん? なんでもない」

 

 

突然黙り込んだ俺を見て、グラハムがそう声を掛けてくる。

グラハムとジャスパーもこの散歩に付き合ってくれていた。

明日も早いので付き合うことはないと言っているのだが、ムーナも喜ぶのでいつもその好意に甘えさせてもらっていた。

 

 

「さて、行くか」

 

 

気持ちを切り替えるために、俺はそう声に出すと、石の塀の上へとジャンプする。

グラハムとジャスパーは彼ら用に作ったはしごを伝って塀の上に上り、俺のそばへとついてくる。

 

 

それを見届けると、俺はムーナへと視線を向ける。

その視線の意味がわかっているムーナは普段は窮屈そうにしているその大きな翼をはためかせた。

そしてそのままホバリングするように宙に浮いて、ゆっくりと上昇し塀を越えてすぐ外へと着地した。

俺はそのムーナのそばへと着地すると、手綱を持って頭を撫でてあげた。

 

 

「キュゥルル」

 

 

そうすると、嬉しそうにムーナが喉を鳴らした。

グラハムとジャスパーも飛び降りてきて、ムーナの背に取り付けた鞍へと乗る。

 

 

「よし、行くか」

 

「「はいですニャ!」」

 

「キュア!!」

 

 

俺の号令に三匹の家族が声を上げる。

俺は手綱を持って、ムーナのために道になるように木々を切った道を歩いて村の外にある俺の家からさらに村から遠のいていく。

そして少し歩くとぽっかりと開けた空間が見えてくる。

 

 

「んじゃグラハム。いつも通り頼むな。遠くには絶対に行かせるな」

 

「わかってますニャ!」

 

 

俺は持っていた手綱を鞍に座っているグラハムに手渡した。

 

 

ムーナの親である、あのリオレウスの体格から考えると、もっと大きくなれば俺を乗せてムーナが飛翔することも可能だと思う。

が、如何せんムーナはまだ体格がそこまで大きくない。

いつか乗せてくれることを夢見つつ、俺は涙をのんでグラハムとジャスパーにムーナのおもりを任せる。

 

 

「では行ってきますニャ!」

 

「俺が五分以内でいけるところにいろよ?」

 

「わかってますニャ!」

 

 

グラハムとジャスパーが交互に言ってくる。

いつものやりとりが終わると、ムーナは翼を大きくはためかせ、そのままゆっくりと上昇し、夜空へと舞い上がっていった。

 

 

あ~俺も乗ってみたいなぁ~

 

 

飛べるようになってすぐに、ムーナが俺をしきりに背に乗せようとしてくれたので(体格的に座っただけで立つのもつらそうだったのでその時は残念な

がら失敗に終わったが……)、もっと大きくなったらきっと乗せてくれることを信じて、持ってきていた狩竜と同じ長さの鉄製の木刀(鉄棒?)での訓

練を開始した。

 

 

 

 

~???~

 

 

「なんだあれ?」

 

 

私が、隊長に命じられてあのジンヤという男に気づかれないように監視を初めて初日の夜に、ここまで大きな情報が手にはいるとは思っていなかった。

 

 

この情報があればだいぶ隊長も助かるのでは!?

 

 

私は嬉々としながらいったん持ち場を離れると、ユクモ村の隣町へと足を向けていた……。

 

 

 

 

 

いかがでしたか?

久しぶりだったのでどうなるか謎ですが、まぁ気ままに更新していくつもりです

二十日ほど放置していたにも関わらず感想が来たり、評価ポイントが上がったりしてとても嬉しかったです!

何とか完走目指して頑張りますのでよろしくお願いいたします!

 

 

平和な日常を謳歌していた刃夜。

しかしユクモ村のすぐそばにある渓流で、異変が生じ、村長の依頼を受けて久しぶりに刃夜はリーメと共に渓流の調査を行う。

そこには移住してきた今まで見たこともないモンスターが多数いて、リーメを苦しめる!

 

そしてそれの討伐があらかた完了すると、全身に雷を纏う牙竜が強襲してきて!?

 

 

次回

第二部 二章「渓流の異変」

 

 

どうなるか謎ですし、叩かれそうだけども頑張ります!

 

 




いかがでしたか?
久しぶりだったのでどうなるか謎ですが、まぁ気ままに更新していくつもりです
二十日ほど放置していたにも関わらず感想が来たり、評価ポイントが上がったりしてとても嬉しかったです!
何とか完走目指して頑張りますのでよろしくお願いいたします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。