リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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今回も戦闘は無いです

刃夜君が隊員に成るお話です。
???の名前がようやく出た。
そして何よりもようやく恋敵登場w
まぁ恋敵が出たところで恋模様描くのは下手なんですけどねw
お楽しみいただければ幸いです



入隊!

~刃夜~

 

 

ジャギィとジャギィノス討伐を含む、渓流の調査を終えた俺とリーメとムーナ。

討伐対象を見つけたので、鍛造してきておいた武器をリーメに渡して、リーメがちゃんと使えるか確認するのも今回の依頼で確認したかった俺は狩ってこいってリーメを放りだしたわけだが……。

途中討伐対象のリーダー的存在であるモンスター、ドスジャギィが群れを率いてやってきたり、最終的にはなんか見たこともないような狼みたいなモンスターが乱入してきたり……。

 

 

まぁ一言で言えば随分と波乱に満ちた調査依頼となったよ。

ちなみにきちんと刀を使えていたのでリーメには合格と伝えておいた。

その時のあの子の喜んだ顔はなかなかに可愛かった。

もちろんどうにか雄雌の小型鳥竜種もどうにか捕獲できて村長に引き渡して、普段通りの日常に戻ろうとした訳なのだが……。

 

 

「怪しい男?」

 

「はい……。ジンヤさんが留守にしていたとき掃除をしにこようと思って途中まできたら、見知らぬ人がジンヤさんの家に忍び込もうとしていたんですけど……」

 

 

留守を頼んでいた娘、レーファのその一言で、完全に元の日常に戻ることは叶わなかった。

 

 

怪しい男ね。……そう言えば以前もいたな

 

 

心当たりがあるところが悲しいところである。

無論心当たりがあるといっても、そういう俺のことをかぎ回っている人物がいるということを知っているという意味でだが……。

 

 

あのリオレウスの討伐が終わってから少したった後、確かに誰かが俺の身辺調査を行っている気はした。

本来ならば速やか~にご退場(手段問わず)願っているところなのだが……この世界の法律が掴み切れていない以上……あまりやんちゃをするのはよくないと思い自重していた。

それに調査といってもこちらのことを観察しているだけで、直接的なことをしているわけではないので無害と思い、放置していいたのだが……留守中に忍び込むというのは明らかに行き過ぎな気がしないでもない。

 

 

……マジで処分するか?

 

 

しかし気配から言って複数の人間が交代で見張りを行っている以上、一人処分すればどうにか出来るレベルではない。

大本を叩けばいいのだが……心当たりなどあるわけもない。

 

 

「……お知り合いですか?」

 

「いや、この村以外に知り合いはいないよ。レーファ」

 

 

俺が黙り込んでいたからか、レーファが心配そうに控えめに質問してきた。

結局その日に帰ってきたので何も出来なかったことが心残りなのかもしれない。

 

 

鍵預けないほうがよかったかもな……

 

 

鍵と言っても俺の気を込めたただの鉄棒だ。

これを正門にある穴に差し込めば、侵入できないように張ってある結界が解かれる仕組み。

結界といっても強固な代物ではないが、気の使えない人間相手ならばぶっちゃけ鉄壁である。

別にレーファに何かをして欲しくて俺の家の鍵を預けたわけではなかったのだが……。

とりあえず無事で何よりだった。

 

 

「ところで、俺がいないとき店どうだった? うまくできた?」

 

「え、は、はい。何とかではありましたけど……」

 

 

帰ってきたその日にグラハムとジャスパー、他全てのアイルーから感想は聞いてあった。

出来ればレーファにも聞きたかったのだが、なにぶんまだ中学生の小娘なのだから体力がそこまでない。

俺がいなかったから大変だったようで、レーファも相当走り回ったらしい。

そんな小娘に感想を聞くために睡眠時間削ってあげるのもかわいそうだったので、翌日である今日聞いてみたのだ。

 

 

「そ……その……やっぱりジンヤさんがいないと忙しいし……寂しかったです……」

 

「そうかぁ」

 

 

恥ずかしそうにそう言ってくる。

最後の方の言葉も、ぼそっと言っているから聞こえないと思っているのかもしれないが、正直ばっちりと聞こえてしまっている。

 

 

随分と慕われた物だな……まぁ命の恩人なのだからそれもそうかもしれないが……。

 

 

ちなみに今日は和食屋も臨時休業にしてある。

温泉銭湯だけは丸一日休むと、村人から苦情が来るので夜からの営業にしてあるのだが……。

まぁそんなわけで俺は今はのんべんだらりと、久方ぶりの休日を満喫しているのである。

何せここ数日キャンプ生活だったのでストレスがたまっているのだ。

少しは発散させて欲しい物だ。

 

 

「ところでジンヤさん? あの……聞きたい事が……」

 

「ん?」

 

 

一転して先ほどよりもさらに真剣な表情でレーファが俺にそう言ってくる。

何事かと思い、俺はレーファに向き直り言葉を待つが……。

言いにくい事なのかいつまで経っても聞いてくる気配がない。

 

 

何が聞きたいんだ?

 

 

「え、えっと……その……この青緑色の物体は何ですか?」

 

 

前回の謎のモンスターから剥ぎ取った碧玉を指さしながらそう言ってきた。

明らかに先ほどレーファが聞きたかった事でないだろう。

 

 

本当に聞きたくなったら聞いてくるか

 

 

俺はそんなレーファに苦笑しつつ、その質問に答えて上げた。

 

 

今は居間に二人で並んで座りながら、俺はこの前の戦利品であるモンスターの素材を広げている。

 

 

前回の狼っぽい謎のモンスターの素材は、気絶しているリーメの分も遠慮なく剥ぎ取っていた。

ある程度の制限はあるが、モンスターの素材を自由にしていい……それがハンターになった理由でもあるからな。

ちなみにリーメだが、スタンガンを食らったようなもの、つまりただ気絶しているだけなので特に怪我はなかった。

 

 

戦闘が始まって直ぐに気絶したのに、素材をもらうのは気が引けていたリーメだが、俺が問答無用で渡しておいた。

だいたいの素材が、発電をするような特殊な物だったので、リーメはこいつを元にリオスさんに新しい武器を作ってもらうと言っていた。

手に入った素材を腐らせるのももったいないので、俺も何かを作ろうと思って、今こうして考えていることだったのだ。

 

 

今回はこの碧玉も武器に使おうと思っているんだがね……

 

 

前回手に入れたリオレウスの紅玉は……何でか知らないが、意志のような物が宿っていたので何かに使うのに躊躇したのだが、しかし今回の碧玉には凄まじい気が宿っているという点では同じだが、意志のような物が感じられないので使ってみることにしたのだ。

だからこうして考えているのだが……正直な話、鍔、柄辺りの装飾に埋め込む程度しか思いついていなかったりする……。

 

 

「綺麗な玉ですね」

 

「そうだな。まぁ命の結晶だしな」

 

 

レーファが興味深そうに玉の事を気にしていた。

そんなレーファの子供らしい一面に苦笑しつつ、俺はそれをただのんびりと眺めていた。

 

 

 

 

 

~???~

 

 

ゴンゴン!

 

 

「入れ」

 

「失礼します! 隊長!」

 

 

あまり好ましくない書類仕事を行っていた午後。

随分と荒々しくノックされたことに若干の顔をしかめながら入室を許可すると、ノックと同様に随分と荒々しく部下の一人が入ってきた。

最初こそ荒い入室に文句でも言おうと思った私だったが、部下の慌て具合がいつもと違うことを察し、直ぐに態度を改めた。

 

 

「何があった?」

 

「沼地のほうから監視報告が……」

 

「モンスターの種別は?」

 

「あ、蒼リオレウスだという報告が……」

 

「……なんだと?」

 

 

その報告は確かに驚愕に足る物だった。

 

 

飛竜種 リオレウスの亜種、蒼リオレウス。

文字通り深い群青色の鱗をしたリオレウスだ。

蒼い色合いをしているが変化しているのはそれだけではない。

基本的に体躯が大きくなっており、しかもその鱗は強固という一言で片付けられるレベルではない。

蒼い鱗をしている強固な部分はハンマーも大剣もほぼ完璧に弾かれる。

下の柔らかい鱗の部分も果たしてこちらの攻撃が通るかどうか……。

しかも移動ももの凄くスピードが上がっており、より空中戦を好む傾向にある。

 

 

目撃例も少ない。

滅多にお目にかかることの出来ないモンスターなのだが……。

しかもリオレウスは火山や森と丘などの地域に生息している。

沼地での報告例は初めてだった。

 

 

「沼地の方からの監視報告と言ったな。どこに向かっている?」

 

「一度ミナガ村のそばへ言った後に、すぐに方向を変えて森と丘に向かったという報告が」

 

 

ミナガ村から森と丘へ?

 

 

随分と変なルート設定である。

ドンドルマをほぼ中心として、大きな三角形を描くような形で飛び回っている。

 

 

どういうこ……

 

 

どういうことか考えていて、私は今手元にあった資料の中に、あの男の資料を見つけてそれに関する資料を机の上から拾い上げた。

 

その資料に載っている男の名前は「クロガネ ジンヤ」。

先日村から上がってきた報告書には渓流で新種のモンスターの討伐クエストをこなし、小型の鳥竜種の捕獲、素材がだいぶ剥ぎ取られてはいたが、新種のモンスターの死骸がこちらに回ってきていた。

そしてその前にはミナガ村で飛竜種リオレウスの討伐。

その前は森と丘でイャンクック討伐。

この男がこなしたクエストはこの三種類だけだった。

書類上は……だが。

 

 

ミナガ村と森と丘……

 

 

偶然の一致にしか過ぎないのだろうが……見事すぎるほどにこの男がこなしたクエストの場所に蒼リオレウスは向かっていた。

確かに偶然の一致なのだが……私には何故かこれが気にかかった。

 

 

私はギルドナイトの構成メンバーを思い浮かべる。

 

 

一線を退いているハンター達は省くとして……蒼リオレウスを討伐出来そうなやつは……いないか……

 

 

非常に残念なことながら、蒼リオレウスを討伐することが出来るハンターは、今のギルドナイトにはいなかった。

無論ソロで行かせればの話であって、パーティーを組めば可能かもしれないが……少々不安が残る。

それにここ最近のモンスターの活発化で人員が分散しており、しかも何人かは怪我を負って即現場復帰は不可能だった。

圧倒的に少ないこの人員……どうにかしたいと言うのが本音だった。

 

 

だからこうしてあの男の情報を調べ、書類操作までしているところなのだが……

 

 

どうやら予定よりも早く会いに行かねばならないのかもしれない。

もう少し弱みを握ってから行動に移りたかったのだが……背に腹は代えられない。

 

 

「確かフィーアはまだドンドルマにいたな?」

 

「フィーアさんですか? はい、確かにまだいるはずですが……」

 

「今すぐ私の部屋に呼んでくれ」

 

 

突然の私の申し出に部下が戸惑っていたが……それに答えて上げられるほど……今の私の気分は軽くなかった。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

……出来た

 

 

あの日から一週間。

俺はまた再び仕事をしつつ、その給料と採取で、俺は新たな刀を鍛造していた。

前回の渓流の依頼で咄嗟に二刀流を使用した。

以前は夜月と夕月での二刀流を行っていたのだが、夕月は今は狩竜と転成している。

そのため夜月と花月で二刀流をしたが、行いにくかったので普通の打刀を鍛造した。

前回の狩竜は、完全に鉄の刀だったのに大して、今回はだいぶ趣向を変えている。

 

 

あの狼の素材をいろいろと調べた結果、実に驚くべき生物だと言うことがよくわかった。

体に生えていた白い毛は電気を蓄える電池のような役割を果たしており、しかもほとんど放電しないみたいで、触ってみても特に電気が体に流れる感覚はなかった。

体の各所にあった黄色い甲殻はなんと中に電気を発生させる特殊な油を蓄えており、しかも量も豊富。

今回はそれらをどうにか使用してリーメが持っている火属性の火竜刀紅葉とは違い、雷属性の刀を鍛造しようと思ったのだ。

 

 

黄土色の甲殻は油ごと溶かして熱した鉄と混ぜて刀身そのものを発電機関にし、強度を補完するために綺麗な色合いをしていた翡翠色の鱗を粉末状にして、刀身側面にこれも鎚で叩きながら練り込んだ。

白い毛は丹念に根気よく結わえてゆき、紐状にして柄巻きとして使用する。

爪はなんかかっこよかったので火竜刀紅葉同様、鍔元の装飾としてそのまま使用。

最後に碧玉だが……なんかもったいなかったし、そのままでも使えそうだったので柄頭の装飾として使用した。

玉の形が少々歪な円だったので、真円に近い形に削りだし、削りかすになってしまったのを飾り付けと威力増強として鞘にちりばめて装飾に使用した。

 

 

こうして出来た打刀、雷月。

こいつも残った素材で鞘を鍛造していた。

鞘は角の素材を使用しているのでそれだけで打撃武器としても使えそうなほど堅い。

 

 

「ジンヤさん。このウチコっていうの、つけるのはこれぐらいでいいんですか?」

 

「ん? ん~そうだな。それ布で丁寧に拭いて」

 

「ジンヤさん、このアミガサ? っていうのこんな感じできちんと出来てます?」

 

「大丈夫。服は?」

 

「そっちの方は任せてください! きちんと出来てますよ」

 

 

そして今日は和食屋の定休日なのだが……その定休日に何でか知らないがこの二人が俺の家へと遊びに来ていた。

まぁ二人とも遊ぶだけでなく仕事と修行をしているんだが……。

 

 

リーメには火竜刀紅葉の手入れの仕方、レーファは現在村長と話し合って決めているこの村の村専用装備というのを開発中でそれの手伝いだ。

何でも、大概の村にはその村特有の専用装備というか看板装備?というのがあって、それのデザインを任されたのだった。

まぁ俺の影響でこの村がほのかに『和』的な村になってきてしまった責任もあって、断れず、俺はそれのデザインを考えて……。

 

 

よし編み傘とハンター仕様にした袴的な装備にしてみるか

 

 

と愚考し、今俺が自分用に作ったサンプルを元に、レーファにリファインを行ってもらっている。

ちなみに俺が作った方は未熟ながらも気を込めながら作ったのでそんじょそこらの防具よりは強かったりする。

 

 

「レーファさん、これはこんな感じでよかったですかニャ?」

 

「えっと……うん、そんな感じで大丈夫だよ。グラハムちゃん器用だよね?」

 

「そんなことないですニャ」

 

「ハァ~~~いい天気だニャ~~~」

 

「ス~~~キュルゥ~~~」

 

 

ちなみにグラハムはレーファと一緒に編み物を行い、ジャスパーは日頃の疲れが溜まっていたようで、庭でムーナと一緒にひなたぼっこしつつお昼寝中だった。

俺は仕上げの微調整を縁側で行いながらそんな光景をゆっくりと眺めていた。

 

 

目の前には弟子みたいな弟分がいて、家の中には俺をこの村に連れてきてくれた妹分が、グラハムと一緒に編み物を行い、庭では俺のこの世界での家族のムーナが、ジャスパーと一緒に気持ちよさそうに昼寝をしていて……。

 

 

恥ずかしくて言えないが……嬉しい物だよな……

この世界に流れてきて……もう三ヶ月以上の日数が流れているんだよな……

 

 

裏家業の仕事の帰り道で来てしまったこの世界。

いろいろと波瀾万丈な状態ではあるが……なんとか過ごせている。

レーファには悪いのだが……あの時彼女があの森と丘で悲鳴を上げていなかったら……どうなっていたかわからない。

 

 

そう考えて俺はちらりと、レーファを見つめてみる。

助けたお礼と言われて村へと案内してもらい、リオスさんの家に少しの間居候して、モンスターを討伐し、ハンターになって、ムーナが生まれて、和食屋を経営して……。

こう改めて考えてみてみると、レーファに助けてもらったのが結構ある。

和食屋の仕事もバイトとはいえ手伝ってくれているし、今もこうして休日だというのにこんな何もない俺の家に来ているし……。

 

 

今度何か礼をしないとな……

 

 

「? ジンヤさん? どうかしたんですか?」

 

 

そうしていると俺の視線に気がついたのか、レーファが俺に声を掛けてきた。

そんなレーファに俺は笑いながら首を振った。

 

 

「何でもない」

 

「???」

 

 

不思議そうにしていたレーファだが、この状態がまんざらでもないのか、笑顔を返してきてくれた。

何となく暖かい気持ちになって、俺らはみんなでなんとなしに笑いあった。

 

 

「フニャ? どうしたんだニャ?」

 

「キュウ?」

 

 

俺らの笑い声で起きたのか、ジャスパーとムーナが不思議そうにこちらを見てくる。

そのタイミングがあまりにもちょうどよかった物で……俺らはさらに笑ってしまった。

 

 

悪くないな……

 

 

口が裂けても言えないが……とても幸せだった。

まぁ絶対に何があっても口には出さないけど。

 

 

ん?

 

 

しかし……

 

 

村長がこっちに向かってくるな……。他のやつは誰だ? 村の人間じゃないな……それに二人の内の一人……この気配には覚えが

 

 

世界ってのはよくできている。

いや俺に限ったことなのか?

こうしてある程度自分の生活に慣れてくると、波瀾万丈なことが起こるのは……。

 

 

 

 

「刃夜君こちらはギルドナイトの隊長さんだ」

 

 

すこし暗い表情をしながら村長が俺にそう男の事を紹介してくれた。

こちらに向かってきたのは予想通りの三人組。

一人は村長で残りの二人は見知らぬ男女二人。

 

 

わざわざ村長が俺に紹介してくれたのだが……。

それに対して、俺は目を点にしてしまう。

 

 

「ギルドナイトの隊長?」

 

「そうです。私の名前はディリート。ドンドルマにあるギルドナイトの総本山で隊長を務めさせていただいている」

 

「んで? あんたが?」

 

「ギルドナイト隊員、フィーアだ。久しぶりだな」

 

 

ドンドルマのギルドナイトから、わざわざユクモ村まで来たこの二人組。

これが俺が村長以外に感じた人間の正体だった。

後者の女のフィーアに関しては、リオレウス討伐の時に俺とリーメについてきたやつだ。

 

 

隊長と名乗ったやつは見た目二十代後半行くか行かないか位だろう。

体格はそんなにがっしりしていない。

だがそれなりの実力者ではあるようだ。

顔に関してはイケメンとしか言いようがない。

装備はなんか斧みたいな見たこともない武器と、西洋騎士っていうか、なんていうのかね? 

言い方悪いかもしれないけど、少女漫画の王子様的な感じの服を着ている。

 

 

この前一緒に討伐依頼を行った女の方も美人の部類にはいるだろう。

が、本人があまり化粧や着飾りなどに興味がないみたいで、髪の毛が少し痛んでいた。

 

 

もったいないな、綺麗な髪だろうに

 

 

筋肉はそんなに出ていない。

しかしあの時一番重いと言われているガンランスを軽々と扱っていたところを見ると筋力が無いわけではないんだろう。

前回同様同じ装備を身に纏っている。

 

 

何でか知らないが、村長と来たこの二人は、俺に話があるらしくこうして仕方がなく家に上げているのだった。

 

 

「フィーお姉ちゃん!?」

 

「フィーアさん!?」

 

「レーファ、それにリーメ。久しぶりだな」

 

「いきなりどうしたの? 帰ってくるなら手紙送ってくれたらよかったのに!」

 

「ごめんな、急に決まったものだから。久しぶりにあえて嬉しいよ、レーファ。元気にしてちゃんと家の手伝いはしていたか?」

 

「もう! フィーお姉ちゃん! 人をいつまでも子供扱いしないで!」

 

「はは、ごめんごめん。レーファは私にとってはいつまでもかわいい妹だからつい、な。リーメ? この前から少しは成長したのか? 泣き虫リーメ」

 

「か、からかわないでくださいよフィーアさん。一応……進歩はしたつもりです」

 

「ふふふ、それは楽しみだな」

 

 

これが先ほどの、レーファ、リーメ、フィーア三人のやりとりの会話文。

正直だいぶ早口だったので半分くらいしか会話の内容が聞き取れなかったのだが……。

 

 

仲がよろしいようで

 

 

ちなみに今はちゃんとした話をすることになっているので、通訳というか俺の言語カバー役としてリーメには一緒に参加してもらった。

かわいそうだったがレーファはハンター関係者ではないので、ムーナの相手をしておいてもらうことにした。

 

 

こいつらがくるとわかった瞬間にムーナを叩き起こして、俺はきつく言いつけてムーナの小屋へと半ば強引にたたき込んだのだ。

こいつがどういう事情できたのかはまだ謎だが、一応ムーナの存在は秘密にしておいた方がいいだろうと思ったからだ。

結構強引というか、声を出さないようにかなりきつく行ったのでそのフォロー役をレーファに頼んだのだ。

ムーナを庇うためとはいえ少しかわいそうなことをしたかもしれない。

後で謝らなければ……。

ちなみにグラハムとジャスパーもレーファについて行った。

 

 

「それで? そのために来たの? ありがとう。帰り道はあっちだ」

 

 

正直な話、嫌な予感しかしないので俺はこれ以上話を聞きたくなかった。

どうして嫌な予感がするのかって?

経験と勘が大半だが……そもそも何の用事もなしにハンターの統括組織であるギルドナイトの大将自らこんなところに来るわけもない。

が、まぁ相手としても手ぶらで帰るつもりはないのだろう。

 

 

「申し訳ありませんがお願いがあるのです」

 

 

軽く流されました。

なんかむなしい……。

 

 

「お願い?」

 

「はい。まず単刀直入に言いましょう。ギルドナイトへ入隊して欲しいのです」

 

「……は?」

 

 

言っていることの意味がわからない。

そばにいるリーメもぽかんとしている。

村長はここに来る前に事前に話を聞かされているのか、ノーリアクションだった。

 

 

「ギルドナイト? エリートじゃないと無理だろ?」

 

「実績……という意味では少々不足していますが、フィーアから聞いた話ではリオレウスを一人で討伐したと聞きました。実力は十分かと」

 

「何でわざわざいいに来たんだ?」

 

「人員不足がだいぶ深刻でして。優秀な人材を欲しているのですよ。無論利点は大量にあります」

 

「ほう? たとえば?」

 

「首都ドンドルマへの移住や、ギルドのみに流通している素材の売買、報奨金の増額、他にもいろいろありますが入ったばかりではこれくらいです」

 

「強制じゃない? なら行かない。俺の家はここ」

 

「しかし、あなたほどの腕ならもっと強いモンスターと戦いたいのでは? ドンドルマに移住すれば大陸中のクエストに行けるのですよ?」

 

「戦うの好きだが、それだけじゃない。ここでのんびりしていたほうがいい」

 

 

すべての言葉を突っぱねてやる。

当然だ。

だれが移住などするか。

ムーナもいるのに。

 

 

「はぁ~~~~~。あまりここから先は言いたくなかったのだが」

 

 

正攻法では出来ないと踏んだのか、敵があからさまに口調と態度を変えてきた。

秘策があるらしい。

 

 

「あなたの飛竜、リオレウス……ムーナでしたか?」

 

「……ほう?」

 

 

その言葉を聞いてちらりと気づかれないように村長を見てみたが、特に動揺していなかった。

つまりはしゃべっていないのだろう。

まぁほとんど疑ってなかったけど。

 

 

てめぇがあのスパイの差し金か?

 

 

ほぼ間違いないだろう。

あのちょろちょろとうざかった連中の親玉はこいつだったのか。

 

 

「モンスター飼うのだめだから殺すか? そんなことするならてめえらと全面戦争になっても俺はムーナを守るぞ? 悪いがお前ら二人が百人かかってきても勝てる自信がある」

 

 

殺気を込めながら言った俺の言葉に、フィーアが露骨に顔に怒気を含ませ、隊長のディリートはまったく態度を変えていなかった。

 

 

言った言葉に全く嘘はなかった。

確かにこの二人は強いが、はっきり言って俺が本気になれば全く怖くない。

以前一回ドンドルマに言ったが、あの時の酒場のハンターを見る限りでは、あれらが束になっても負けることはないだろう。

 

 

「いえそういうことを言うつもりはありません。村長に話を聞きましたが今のところ問題はないようですし」

 

 

……あれ? 意外な意見

 

 

「ただ、私はよくても他の人や貴族の連中が何か言ってくると難しくなると思うのです。ですからあなたが加入してくれるのならば、あのムーナという飛竜はギルドナイトの正式な家畜として迎えいれます」

 

「……言葉に気をつけろ?」

 

「失礼」

 

 

こいつ……殺気をあてても表面上は泰然としていやがる……。

……やるな。

 

 

しかし言っていることは正しかった。

確かに貴族が出張ってきたら面倒なことになるだろう。

どこの世界、物語でも、貴族って連中は面倒なやつだから……。

 

 

んで俺がギルドに入隊したらムーナも入隊扱いしてくれる、ということか?

まぁ確かに大きな組織が後ろ盾についていれば心強言っちゃ心強い。

別になくてもいいんだが、それで周りに迷惑がかかったりしたら嫌だしな。

この予感が嫌なことにも的中するのだが……それはまぁ当分先のことだ。

 

 

っていうかどっちにしろ脅していることには変わりないよね

 

 

こいつが直接脅しているわけではないが間接的に脅してきているみたいだ。

 

 

ようするに従わないならこの秘密を告げ口する……と

 

 

まぁ妥当な手段だろう。

本来ならばこの場でぶっ飛ばしてやってもいいんだけど……完全に俺のミスだ。

この世界に来てこんな事になると思っていなかったのでどうやら大分不抜けていたみたいだな。

 

 

……冗談抜きで始末しておくべきだったか

 

 

しかし今更悔やんでも痕の黙阿弥である。

後悔先に立たずとも言う……。

じいさんがいなくて心底よかったと思う。

知られたら殺されるな。

 

 

……詰んだか

 

 

こいつが言ったその言葉に俺の暗に言うニュアンスが含まれているかどうかは謎だが、その可能性がぬぐい去れない以上、慎重に行動した方がいいだろう。

最悪気に入らなかったら一暴れしてどっか放浪の旅にでも出ればいいだけの話である。

俺はそう腹を決めると一つ溜息を吐いた。

 

 

「脅しか……」

 

「そう取ってくれても構いません。だが、あなたには私自身期待……というよりも希望なのです」

 

「? 希望?」

 

「あなたがいれば少しは隊員の負担も減るかと思って」

 

 

本当かどうかはわからないが少なくとも嘘を言っているようには見えなかった。

 

 

仮に……俺が相手をしたあのリオレウスが特殊でなかったとしたら?

正直こいつらがどうにか出来るレベルではないと思う。

この目の前でこちらを睨んできているフィーアは、リオレウスの殺気に完全にだまされていた。

隊長の護衛という役割なのか、それともただ俺と接点があるから連れてきただけかもしれないが……この二人に決定的な実力の差はないと感じられる。

つまり、あのクラスのリオレウスが闊歩するような状況では人類は確実にそのうち負ける。

 

 

まぁそれが普遍的な存在じゃないから問題ないんだろうけど……

 

 

まぁこの男の言っていることに嘘はないようだし、仕方がない。

素直に徴集されるとしよう。

ま、本気で気に入らなければ暴れて消えればいいだけだし

 

 

「やれやれ、わかった」

 

「……今なんと?」

 

 

あ、うっかり日本語話してしまった。

俺はわざとらしく咳払いをして再度目の前の隊長に向き直った。

 

 

「ギルドナイト入ろう。が、条件ある」

 

「……ききましょう」

 

「基本的俺ここで生活する。ムーナ絶対に手、出さない。必要と感じたらリーメを助手に連れて行く。後俺の仕事に手を出さない。一つでも破ったら暴れるぞ?」

 

 

暴れると言ったときに視線に殺気を込めながら俺は隊長にそう言った。

 

 

「……了解しました」

 

 

その隊長の言葉に、リーメは興奮と戸惑いを浮かべ、フィーアは嫌そうに顔をしかめていた。

実にわかりやすい反応である。

まぁ確かに前回のリオレウス戦の時に、援護した相手に邪魔と本気で怒鳴ったからあまりいい印象は持たれていないのだろう。

 

 

まぁどうでもいいけど

 

 

しかし、この後に本気で切れそうになる事件が起こるとは俺は予想してしかるべきだったのだが……。

やはり少々この世界に来て裏の仕事がなくて弛緩しているのかもしれない。

 

 

が今の俺にそれを知る由はなかった。

 

 

 

 

数日後。

俺はギルドナイト入隊の手続きと、入隊式があると言うことで一人でドンドルマの街へと来ていた。

この世界に来て、完全なる単独行動は初めてである。

言葉が片言で通じるようになったとはいえ少し不安だったが……まぁなんとかなると思っていた……。

 

 

っていうか人が俺のことじろじろみてくるね

 

 

道行く人々が、俺のことを注視していた。

まぁ無理もないかもしれない。

今日の俺の格好は、この世界に来たときの服装と違い、この前俺が自分で作った編み笠をかぶった武芸者的な格好をしているからだ。

 

 

上は袖なしの胴着みたいな物を着込み、下は袴と足袋。

腰回りに巻いたスローイングナイフを収納するための布と編み笠には、レーファがデザインしたユクモ村のマークが縫いつけられている。

装備はいつもどおりの右手に狩竜、左腰に夜月に花月、後ろ腰に水月、単発式グレネード、名称 月火(げっか)にグレネード弾を革ベルトに六発装備。

そして右腰に新型武装である、新たな打刀、雷月を装備しているのだ。

この世界には、俺の世界における日本の「和」と言った文化がないみたいで、異様の一言の装備である。

 

 

武器(特に狩竜)に防具も異常なのだからそれは注目されるだろう。

え?どうして普段着である革ジャンとか着ないでこれを着たかって?

……新しい物って使いたくなる物じゃない?

 

 

理由はそれだけだったりするんだがな

 

 

まぁ別に気にしない。

迎えがくるときいていたが着てないのか、俺に声を掛けてくる勇者はいなかった。

仕方がないので一人で以前行った酒場にでも行こうと、持ってきていた着替えと水や携帯食料を入れたリュックサック(制作した)を担いで歩こうとした……。

 

 

「おい! クロガネジンヤ!」

 

 

歩き出そうとした矢先に真後ろからそれはそれは大きい声で、俺の名前を叫ぶ女の声が聞こえた。

気配と声で誰かわかったので別段振り向く必要はないのだが、冗談が通じるような相手でもなさそうだったので、ここは素直に振り向くことにしよう。

 

 

「どうも、フィーア」

 

「……」

 

 

俺が呼びかけても無言しか返してこない。

それどころか露骨に睨みつけてくるんですけど……。

 

 

何かしたか、俺?

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

「護衛……ですか?」

 

「そうだ。表向きはな……。護衛が嫌なら案内人でもいい」

 

 

あのクロガネ ジンヤという男の家を出て、ドンドルマ行きの竜車に揺られながら、隊長はそんなことを私に命令してきた。

 

 

「あの男をギルドに入隊させることは出来たが、如何せんギルドナイトそのものに彼は魅力を感じていなかった。興味がないともとれた」

 

「……そうですね」

 

 

ギルドナイトへ入隊。

これがどれほど大事なのかあの男は理解しているのだろうか?

 

 

ハンターを統括する組織、ギルドナイト。

一流のハンターしか入隊を許されないその組織は様々な利点があり、それになりより栄誉と名誉が約束される。

入りたくても入れないハンターはごまんといるというのに……。

 

 

ここでのんびりしていたほうがいい

 

 

まさかそんなことを言ってくるとは予想だにしていなかった。

 

 

「現状では彼がまだ完全にこちらの戦力として数えるのは不確定要素が多すぎる。そこで君がこちらと彼の橋渡し役と手綱約をして欲しい」

 

「……理屈はわかります。ですが」

 

「君があの男の事をあまり快く思っていないのはわかっている。だが、それでもそれを押して任務について欲しい。これ以上ハンターの数が減らされるのは避けたい」

 

 

隊長にここまで言われては断れるはずもなく、私は仕方なく頷いた。

 

 

悔しいことだが、今の私では確実にあの男に勝ることは出来ないだろう。

いや仮に修行をしても追いつけるかどうかは謎だ。

それほどまでに前回のあの男の立ち回りは異常だった。

 

 

しかもリオレウスを真っ二つにしたあの武器……。

そしてあの家の中には工房もあったのだ。

つまりあの男は武器の鍛造まで出来てしまうと言うことだ。

 

 

どれだけ規格外なんだ

 

 

私は思わず溜め息を漏らしてしまう。

今まで見たこともないほどの強さ、そして武器の異常性、鍛造が可能。

はっきり言って本当に私よりも年下なのか疑ってしまうほどだ。

 

 

ユクモ村に赴く前に彼の資料は一通り目を通したが……ユクモ村出身と書かれていた。

当然、数年前に私がギルドナイトに入隊する前にはあんな男は村にはいなかった。

そうなると明らかにどこかから移住してきたのだろうが……それにしたってあの目に髪、そして肌の色は異常だった。

 

 

……本当に人間なのか?

 

 

そこまで疑りかかってしまう。

 

 

「面倒なことを頼むことになるが頑張ってくれ」

 

 

そうして唸っていると先ほどの溜め息と併せて私が不機嫌になっていると思ったのだろう。

隊長がこちらに謝罪してきた。

 

 

「失礼しました隊長。考え事をしていた物で……」

 

「……あの男が君がドンドルマにくる前には村にいなかったという話か?」

 

 

その言葉に私は静かに首肯した。

このことは行きの竜車で話していたので、それとなくあの男の事を観察していたようだが、観察するまでもないだろう。

この大陸どころか……貿易を行っている遙か彼方の国でさえ、黒目黒髪であんな肌の色をした人種はいないのだから。

 

 

「意思疎通も出来るし、今のところギルドナイトに直接の危害を加える事はないんだ……。瑣末ごとに目を向けていられるほどの余裕はない」

 

「そうですね」

 

 

隊長と共に今のギルドナイトの状況を思い浮かべる。

非常に残念ながら、隊員はモンスターの活発化に伴って、出動が増えて疲労が溜まり、それに伴って負傷者も続出していた。

私としても不本意だが……あの男が加わるのは戦力増強という意味では好都合だろう。

 

 

「精一杯つとめます」

 

「……頼む」

 

 

そんな会話をしながら、私と隊長はドンドルマへと帰還した。

 

 

そして今、目の前に前回のリオレウスの装備の時とは随分と違う装備をしている男、クロガネジンヤが目の前にいる。

乾燥させた草で編んだ帽子のようなものをかぶり、服装は見た事もないものだ。

体の前で前後に重ね合わせるように着ている上着に、下は足首辺りまであるのはズボンと一緒だが、ズボンと違い、とても余裕のある作りだ。

しかも見た事のない履き物を履いている。

 

 

それだけでなく以前も感じた事だが武器も異様な物が多い。

前回リオレウスを討伐したあの細長い鉄の剣、それを小型にした物がいくつか。

そして右腰に装備されている剣と、後腰に装備している何か変わった形の武器は初めて見る物だった。

 

 

「出頭ご苦労だ。もう一度自己紹介をしよう。ギルドナイト所属、フィーアだ」

 

「ユクモ村料理人、クロガネジンヤ」

 

 

……ふざけているのか?

 

 

誇りあるハンターの仕事を料理人と言い換えているのが気にくわなかった。

ますますこの男が嫌いになってしまう。

しかし任務を一度引き受けた以上、きちんと仕事をこなさなければプロではない。

私は自分を落ち着けるためにわざと咳払いをして、クロガネジンヤに背を向ける。

 

 

「案内する。ついてこい」

 

 

ついてきているのも確認せずに、私は先へと進んだ。

数秒して、ジンヤも私についてくる。

雑踏をかき分けながら互いに無言で、私たちはギルドナイト本部へと足を運ぶのだった。

 

 

 

 




はいこんな感じでいかがでしたか?
いつものごとく戦闘シーンがありませんでしたが、楽しんでいただけたでしょうか?


ギルドナイトに入隊し、エリートハンターとして働き出した刃夜君。
とりあえず手始めという名の生け贄として、蒼リオレウス討伐にフィーア他数名と向かわせられる刃夜。
しかしそこにいた蒼リオレウスは……刃夜でさえも恐怖を覚えるほどの強さを有していたのだった!


超電磁砲が光ってうなる!


次回「激変する運命……」(仮)


吉○御○合○礼○ がうなる!

……このネタ分かる人いるかね?

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