リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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諸君! 
聞いてくれ!


過去最長になっちまったぜ!!! 


おおう、まぢかよジョニ~ ←誰?


まぁそんなくだらないのはどうでもいいけど、すいません
過去最長になりました

53kb…… 以前の最長は46っす……

ので再び中編、後編とさせていただきました……。
ちなみにこの子は17Kb位です

長くて申し訳ありません



激変する運命 中編

~レーファ~

 

 

はぁ~疲れた

 

 

ジンヤさんのお店、和食屋は今日も盛況だった。

最近では村の人だけでなく、商人さん達を中心に利用客が増えていた。

村を訪れた商人さん達が、仲間達に結構このお店の話をしているみたいで……。

 

 

でもさすがに慣れてきた私たちは、どうにかそこまで慌てることなくお客さんをさばくことが出来るようになっていた。

そしてとりあえずお昼の部が終わってみんなでこうして休憩しているのだけど……私の心は晴れていなかった。

 

 

ギルドナイト入隊……かぁ……

 

 

あの日、ジンヤさんの家でジンヤさんに頼まれてこの村の特注装備を作っていたときに来訪してきた人たち。

ギルドナイトの隊長とフィーお姉ちゃん。

大事な話があるっていうからムーナちゃんと一緒にムーナちゃんの小屋でおとなしくしていたのだけれど……。

 

 

お話が終わって外に出てみればギルドナイトのハンターになってるなんて……

 

 

ハンターでない私でもその組織のことは知っている。

というよりもこの世界においてギルドナイトの存在を知らない人はいないんじゃないと思う。

 

 

ハンターを統括する組織、ギルドナイト。

そこの組織に所属するハンターは誰もが腕利きのエリート達。

フィーお姉ちゃんもその一員として数年前にギルドナイトに入隊していた。

その時フィーお姉ちゃんはとても嬉しそうにしていたっけ。

 

 

でもジンヤさんは随分嫌そうにしてたけど……

 

 

ジンヤさんが話したくないみたいだから聞かなかったけど……栄誉と栄光の象徴とも言えるギルドナイトに入隊するにもかかわらずあまり嬉しそうにしていなかった。

後でこっそりリーメさんに聞いてみたけどなんだかムーナちゃんのことを相手が知っていたみたい。

そうなると以前にジンヤさんの家で見た怪しい人はひょっとしたらギルドナイトの人だったのかもしれない。

 

 

「レーファさん、どうしたんですかニャ?」

 

「あ、ううん何でもないよ」

 

 

ぼけっとしていたのに気づいたグラハムちゃんが、心配して私に声を掛けてきてくれた。

それでようやく中休み中にぼーっとしていることに気づいた私は、再び作業に戻った。

 

 

今頃ジンヤさんはなにしてるのかな?

 

 

詳しい事を聞く事は出来なかったけどモンスターの討伐に向かっているんだと思う。

何となくだけど……フィーお姉ちゃんも一緒にクエストに行っているのが何となくだけどわかった。

 

 

……いいなぁ

 

 

最近ではジンヤさんはあまり和食屋に仕事をする事は出来なくなっていた。

村長さんからの依頼もあるし、夜にお父さんと何かしているみたいでいろいろと忙しいみたいで……。

お店自体はジンヤさんなしでも回るんだけど、ジンヤさんといる時間が減っているのが純粋に悲しかった。

 

 

……いいなぁ

 

 

ハンターとして仕事をしているからしょうがないと思うけれど、私はジンヤさんと一緒にいられるという事がとてもうらやましく思えてしまうのだった。

 

 

ハンター……かぁ~

 

 

そうして物思いに老けながら、今日もお仕事を続けるのだった。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

羽ばたく音はほとんど聞こえていな……まさか!?

 

 

敵は先ほどの短い時間で、遠くからこちらに向かってグライダーのように滑空してきたのだ。

その証拠に俺が目にしてから一切羽ばたきを行っていない。

しかも敵は風下から飛来してきており、盛り上がっている段差の上の地面すれすれを飛行している。

曇天で見えていないとはいえ、全く俺が気配を感じ取れないとは……。

思った以上に気を消費したとはいえ見事だ。

 

 

「目を!」

 

 

その言葉に俺は前回と違い素直に従った。

すると、目の前に玉のような物が跳んできて小さく爆発した後に、爆発的な光量が視界を覆った。

 

 

「ゴア!」

 

 

一瞬で閃光が収まるが、蒼リオレウスは一瞬で方向転回を行い、閃光玉の光を防いでいた

これにフィーアはもの凄く驚いていた。

 

 

「何!? 馬鹿な……」

 

「いいから行くぞ……今、移動できる」

 

 

そう言いながら俺は驚いているフィーアを置いて先にすぐそばのエリア7へと移動しようとしていた。

洞窟の中ならば蒼リオレウスも追ってはこれないはずだ……。

 

 

まずい……

 

 

先ほどの爪の攻撃が脇腹をえぐり取っていた。

えぐり取られたと言っても表面の皮と肉、若干の筋肉を削り取られただけで致命傷ではない。

だが……敵の爪に含まれているという毒が体の中に入ったのはまずい。

しかも魔力によって威力も増しているのか……それとも俺の体がまずいのか……視界がゆがんでいる。

今すぐ治療をしないとまずい。

フィーアには悪いと思ったが、俺はふらつきながらも先にエリア7へと向かおうとしていたが、如何せん足がふらついてうまく動く事が出来なかった。

 

 

「しっかりしろ」

 

 

ふらつきながらも歩いていると、武器を拾ってきたフィーアが俺を支えてくれた。

ありがたい事に狩竜も拾ってくれたようだ。

背中にあるマウントにガンランスをマウントし、右手で狩竜を持って左手で俺を支えてくれる。

 

 

リーメの時もそう思ったが……心根は優しいやつみたいだな……

 

 

先ほどまで俺に敵愾心を抱いていたにも関わらず、今はその表情には心配している感情が浮かんでいる。

俺はそれをそれとなく観察し、気分を紛らわせながらフィーアに半分ほど体を預けてエリア7の洞窟へと入っていった。

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

閃光玉を空中で回避したあの蒼リオレウスからどうにか逃れて、私とクロガネジンヤはエリア7の洞窟内部へと来ていた。

私を庇ってクロガネジンヤが蒼リオレウスの爪による攻撃で負傷してしまったため、その治療を行うためだ。

このエリアは他と違って壁面が大きく空いており、そこから光が入るのでたいまつといった照明道具がなくても大丈夫な場所だった。

 

 

ドサッ

 

 

洞窟の壁に背を預けるようにして、クロガネジンヤがどっかりと腰を降ろした。

その表情は苦悶に満ちていて、しかも額からは大量の脂汗が浮き出ている。

顔色も優れていない。

はっきりいってまずい状況だ。

 

 

モンスターの毒による攻撃は正直な話、喰らえば命はないと言ってもいいような毒性の高い物ばかりだ。

大型モンスターのゲリョスやバサルモス、リオレイアにリオレウス、ロアルドロス亜種、ギギネブラと言った竜種クラスの毒になると、もはや喰らえば死に至ると言っても過言ではない。

あれらの毒は皮膚に触れただけで体内に入り込むという厄介なもの。

直接触れなくても拡散し、霧状になった細かい液体を一粒でも吸えばかなり危ない。

だが、リオレウスの爪攻撃は装備にもよるが、防具でどうにか防ぐ事が出来る。

毒の攻撃において危険なのは巨大な毒液を吐き出してくるゲリョスやロアルドロス亜種、ギギネブラの方がよほど厄介だ。

しかしその分……毒性は強い。

衣服という軽装でクエストに参加した弊害……と考えるのが一番普通なのだが、私にはそうは思えなかった。

 

 

確かにモンスターの素材を用いた防具や、鉱石で作られた鎧に比べれば当然布の防具はそれら二つの防具よりは強度がない。

だが……この男の装備が普通であるとはとても思えなかった。

クロガネジンヤの纏う雰囲気が異常なのは、防具の雰囲気もそうだが、それだけでなく防具自身も普通には思えない物だった。

 

 

それに何よりも敵である蒼リオレウスがあまりにも普通じゃなかった。

その身を纏う雰囲気も、火球の威力も、その行動も……何もかもが普通ではなかった。

 

 

ビリッ!

 

 

そうして私が思案していると、クロガネジンヤは引き裂かれた上着を脱いで、後腰に装備されているナイフで腰に巻かれている布を切り裂いて、即席の包帯を作っていた。

 

 

……な、なんていう

 

 

しかし、今の私にはそれが目に見えていなかった。

 

 

か、体中古傷だらけ……

 

 

そう。

クロガネジンヤの体は古い切り傷で覆われていた。

見た事もないような鋭い古傷だ。

その傷を見て私はこの男の武器に目をやった。

リオレウスすらも斬り裂いた異様な切れ味の武器。

 

 

まさか……その武器を使って稽古を!?

 

 

正気の沙汰とは思えなかった。

私たちハンターは対人同士における訓練も確かに行う。

だが、それは木材で出来た訓練用の装備を用いての訓練だ。

無論それでも当たり所が悪ければ死に至るが、この男の武器での訓練など想像しただけで恐怖で寒気を覚えてしまう。

しかもこの古傷の数と古さ……。

 

 

どれほどの訓練をすればこんな古傷が……

 

 

よほど幼少から訓練を行っていたのかもしれない。

それもいくつかの古傷は間違いなく致命傷レベルの大きな傷がある。

 

 

……な、なんていう

 

 

この傷を見て、私は自分がとても恥ずかしいものに思えた。

 

 

私は、この男の何を知っていたのだろうか?

 

自分よりも年下だというだけで、この男が強い事に納得する事が出来なかった

 

嫉妬するだけでこの男の事を何も知ろうとしなかった

 

態度が、言っている言葉が……、何よりもその腕前が気に入らなかった

 

その自分を信じ切った態度が、自分は天才なんだと言っている気がして……

 

自分には至る事の出来ない境地にいるこの男に……理解しようともしないで、ただ嫉妬する事しかしなかった

 

 

だが違ったのだ

 

 

この男がいつでも確固たる自分の態度を崩さないのは、経験と実力、そしてなによりもその修行によって鍛えられた自信に裏付けされたものがあるからだ

 

それがこの古傷を見て、理解してしまった……出来てしまった

 

 

ザクッ! 

 

ギュッ!

 

 

「っぁ!」

 

 

毒に犯されている部位を、何のためらいもなくナイフで切り捨てて、一瞬悲鳴を上げながらも表情が崩れる事はなく、ポーチから取り出した解毒薬を飲み、そして怪我の部位に残ったのをぶちまけて包帯を巻いていく。

その顔には痛みによる苦悶、焦りや悔しさがにじみ出ていても、諦めというものがなかった。

 

 

……す、すごい

 

 

その表情が……態度があまりにも美しくて……力強くて……。

治療を手伝う事すらも行わずに、私はただこのクロガネジンヤの事を見つめ続けていた。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

何とか持ち直したか……

 

 

治療が間に合ったのか、毒がこれ以上体に入り込む事はなく、治療を終えた。

服をまくり上げたりするのが億劫だったので、脱いで作業をしていたらフィーアが息をのんでいた。

 

 

あ、しまった……まぁいいか

 

 

以前に風呂が出来たときや、レーファが風呂に乱入してきた時は、湯が濁っていることと、湯気のおかげで体の古傷を見られる事はなかったのだが、そんなもの今の状況にはない。

若干薄暗いが壁から入ってくる光で完璧に見られたようだ。

別に古傷だらけというだけで恥ずかしくとも何ともないんだが……。

 

 

男の体を見るのは初めてなのか?

 

 

驚き方から言ってそうではないように思えるが……まぁいいだろう。

 

 

治療を終えて体を確かめてみると動けない事はなかった。

だが、正直な話不利な状況である事は否めない。

 

 

気がほとんど奪われた上に、こちらは負傷した。

しかも毒による副次的攻撃で体の内部まで支障を来している。

それもすぐに回復するが……。

対して敵は全くの無傷。

正直勝ち目がない状況だ。

半ば詰んでいる。

だが、俺は負けるつもりも死ぬつもりもさらさらなかった。

 

 

しかし……

 

 

先ほどの万全のコンディションでの俺の力の限りの攻撃でも、敵にダメージを与える事は出来なかった。

今のこの状態で勝てるとは思えない。

 

 

だが……

 

 

どうにかしなければならないのが現状だろう。

正直な話、あのリオレウスを他のギルドナイトが討伐できるとは思えない。

しかも気のせいでなければあの蒼リオレウスは俺を狙っているようだ。

 

それになにより……。

 

 

恨みはらさでおくべきか!

 

 

これが一番大きい理由だ。

治療が終わった俺は荒々しく応急薬を飲んだ。

すぐに回復する事はないが、新陳代謝が促進されるから気休めにはなる。

俺は狩竜の鞘を組み立てると、狩竜を鞘へとしまいそれを杖にして立ち上がった。

 

 

ここからまっすぐ行けばキャンプ近くのエリアに出るはずだったな

 

 

すぐ外から出たら待ち伏せを喰らうのが関の山だ。

ならば別の場所からでて仕切り直した方がいい。

気持ちを具体的な行動で切り替えれば先ほどよりもうまく動けるはずだ。

 

 

立ち上がった俺は体にふらつきがない事を確認すると、多少ゆっくりだがエリア2へと向かって歩こうとした。

 

 

「待て!」

 

 

その進路先にフィーアが回り込んできた。

俺はそれを無視して先に進もうとしたが、肩を掴まれて強制的に止められた。

 

 

「どこへ行くつもりだ?」

 

「あいつを叩く」

 

 

当然のことを聞くな、という思いを込めてフィーアにそう告げる。

俺としては努めて冷静に普段通り言ったつもりだったのだが……、どうやらだめだったみたいです。

 

 

「正気か!? そんな傷で挑むというのか!?」

 

 

まぁ普通に考えたらそうなるだろう。

何せ毒を喰らっているのだ。

解毒薬なんぞ気休めでしかないのだろう。

少なくとも即効性はない。

が、内蔵……というか体の内部に鍛えている俺なので毒はほとんど体に残っていない。

その分体力は減っているが……どうにかなる、というよりもどうにかすることが出来るレベルだ。

 

 

「ギルドから応援を呼ぼう。そうしないと……」

 

「嫌だ」

 

 

応援と聞いた瞬間に俺はその提案をばっさりと拒否した。

 

 

「馬鹿な事をいうな! その傷とその体、なによりリオレウスの毒を受けてまだ戦うというのか!?」

 

 

その瞬間に、フィーアが本気で怒り出した。

どうやら俺が意固地になっているとでも思っているようだ。

まぁ確かに意固地といえなくもない。

だが……勝算がないわけではない。

 

 

「勝つ方法はある。死んでも一人の人間死ぬだけだ。深く考える必要はない」

 

「なっ!?」

 

 

俺の言い分がよほど意外だったのか、フィーアが唖然としている。

まぁこういっているが、死ぬつもりはさらさらない。

敵の攻撃が少しでも解明した今ならば冷静に対処できる。

 

 

一撃のみの切り札を使う……

 

 

呆けている今のうちに、俺はフィーアの手を払いエリア2へと歩きだした。

 

 

「……どうしても行くのか?」

 

 

もう止める気もないのか、フィーアが俺にそう声を掛けてくる。

その言葉に、俺は振り返らずにこう答えた。

 

 

「俺は、鉄刃夜だ。鉄を錬鉄し、刃を造り、刃を為す者。まだ敵に俺の刃を届けていない。ならば……斬るまでだ」

 

 

通じるはずがなかったが、俺はあえて日本語でそう言った。

日本語で話したので当然意味は通じていないだろう。

だが、思いは通じるはずだ。

俺の生涯その物の言葉だからだ。

 

 

そして俺は歩き出す。

敵を……蒼リオレウスを斬るために。

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

『俺は、鉄刃夜だ。鉄を錬鉄し、刃を造り、刃を為す者。まだ敵に俺の刃を届けていない。ならば……斬るまでだ』

 

 

何を言っているのか理解は出来なかった。

クロガネジンヤもそれを承知の上で話しているのかもしれない。

だが……それでもクロガネジンヤの思いは伝わってきた。

いや、伝わるというよりも感じたといった方がいいのかもしれない。

その言葉に、嘘も偽りも虚もなかったのだから。

 

 

そのために生まれ、そのために生き、それを為すために存在すると言わんばかりに……。

 

 

……完敗だな

 

 

それほどの覚悟を抱いていたのを、それほどの思いを胸に秘めていた事を私は気づく事が出来なかった。

それを知らずに嫉妬をしていただけ。

 

 

まだまだか……

 

 

腕も、考えも、心でさえも……何一つ勝てる気がしない。

一つ年下のこの男に……。

 

 

もっと見てみたい……この男の戦う姿を……いやこの男自身を

 

 

そんな気持ちが芽生えていた。

この男に少しでも近づきたくて。

私はクロガネジンヤに近寄ると、その肩を左から支えた。

 

 

「……何のつもりだ?」

 

「私も行く。怪我人を一人に出来ないからな」

 

 

ただついて行きたいだけだが、これも嘘は言っていない。

そんな私をクロガネジンヤがじっと睨みつけていたが、やがて諦めたのか溜め息を一つ吐いた。

 

 

「これを……持っていてくれ」

 

 

そう言って手渡してきたのは左の腰に装備している細長い黒い棒の大小と、後ろ腰に装備してあるものすごく小さなボウガンの取っ手のついている武器とその入れ物だった。

あとついでにポーチも預けてきている。

まさか得物を渡されると思っていなかったので私は唖然としてしまった。

 

 

「手荒く扱うなよ」

 

「あ、あぁ」

 

「後お前は見てるだけだ」

 

 

実質の戦力外通告を言い渡されたのだが、私はそれに素直に頷いた。

あれほどのリオレウスが相手では私では何の役にも立たないだろう。

マリンフィッシャーは確かにそこまで強力な武器ではない。

だが私の全力の突きがまったく相手に通用しなかったのだ。

それどころか相手にあの時の突きが当たったかどうかすらも疑問に思えてしまうほどに敵のあの鱗の堅固さは異様だった。

 

 

「わかった」

 

 

こんなに私が素直に従うと思っていなかったのか、クロガネジンヤはきょとんとしている。

一瞬訝しげな表情をするが、考えるのも面倒になったのか肩を竦めると足を進めた。

私はそれに追従するようにゆっくりと歩調を合わせて歩いていった。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

洞窟を抜け出してエリア2へと足を運んだ俺とフィーア。

フィーアには悪いと思ったが、洞窟の中で待機してもらう事にした。

先ほどの俺への執着から敵が執拗にフィーアを狙うとは考えにくいが、それでも用心に超した事はない。

洞窟内部にもモンスターはいたが、少なくとも飛竜種のようなやばい気配は感じられなかったから大丈夫だろう。

杖にしていた狩竜も預けて俺は外へと足を踏み出す。

 

 

風は微風のまま、曇天模様はついに泣きだして普通の雨が降っている。

そのせいで地面がさらにぬかるみ、足を踏み出すたびに若干ではあるが地面に足が沈む。

足を取られたら最後だろう。

 

 

天は我に味方せず……って感じか?

 

 

晴れろとは言わないが、せめて曇天のままでいて欲しかった。

だが、降っている以上仕方がない。

それに敵は飛竜、蒼リオレウス。

どんなに足音を忍ばせたとしても、その歩行による水音を聞き逃す事はないだろう。

対人戦ならばともかく、そう言った事を気にしなくていいのはありがたい物だ。

 

 

後は俺がどこまで避けて攻撃できるかだ……

 

 

敵の魔力攻撃は威力が反則並だ。

それを打ち消したり、気で防ぐのは限界がある。

なら避けるしかないのだ。

ならば身軽にするしかない。

だからこそ、俺は本来ならば他人に触れさせるのも嫌な俺の半身とも言える得物、夜月に花月、水月、狩竜、月火までもフィーアに預けたのだから。

今手元にあるのは前回の狼モンスターの素材で造られた得物、打刀雷月のみ。

 

 

「ゴアァァァァァァ!」

 

 

そうして俺がこのエリアにあるちょっとした川のようなところで足を止めていると、どこか上空から咆吼が聞こえてくる。

どうしてかは知らないが、敵は俺の気配を完璧に察知できるみたいだ。

 

 

探す手間が省けて何よりだ

 

 

俺は右腰に装備されている雷月を左手に持ち直した。

そして腰を落とし、目を閉じて全神経を集中させる。

 

 

気を込めながら強く、強く、強く……

 

刀の刃のように鋭く、鋭く、鋭く……

 

そして体が、刃が堅くならないように限りなく優しくして、体に気を込めて循環させていく。

 

 

残り少ないこの気を用いて、敵を屠る。

気が少なくて敗北するわけではない。

敵が魔力というブーストがあっても、こちらにはそれを上回る事の出来る攻撃があるのだ。

 

 

危機的状況に陥った今だからこそ……命を込めた閃きをすることもできる!

 

 

危機的状況に陥らないとある意味での本気が出せないと言うのは……情けない話だが……

 

 

今後の課題が見つかった。

これは前々から思っていた事だが、どう頑張っても出来ない、出来なかった。

 

 

ならば帰って再び修行する事にしよう

 

 

そう、今この状況に陥っても、俺は帰る事しか考えていない。

 

 

あの家に……

 

 

レーファが、ムーナが、リーメが、グラハムにジャスパーが……いてくれるあの家へと……。

 

 

「ガァァァァァ!」

 

 

敵が俺の後方より飛翔しながら突進してくる。

俺は静かに目を開けた。

 

 

「さぁ! 今こそ、復讐の時! 鉄刃夜、参るぞ!」

 

 

 




後編に続かせていただきます……

二日後の1/31位にUPするかも……

え? 連続UPしない理由?

次の話まだ全然書いてなくて少し時間を稼がせてもらおうかとw
そういうことです。
少々お待ちいただけたら幸いです

2011 6/1 追記
モンスターの間違いを修正 ギギネブラ亜種は毒使用しないですよねw
黒月古城様、ありがとうございました!

ハーメルンにて
ほんとーに弊害があるなぁ
ギギネブラ亜種 修正しました
虚ろ様ありがとうございます!

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