リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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長さは大体43kbでっす!!

もうここまできたら開き直ろう!!!



長いのが嫌なら他の小説を読んでください!!!!!



……すいませんただのいいわけですごめんなさい。

最後のほうに感想でお答えした三人称が出てきます。

楽しんでいただければ幸いです


お気に入り登録がそろそろスリーセブンに達しそうだぜ!!!
やべぇ! うれしい!
けど現実がうざすぎてテンションが下がる……

失礼しました。ただの愚痴です

2/15AM 07:50に一部修正
炎月って装備がありましたがそいつは今回出そうとして出すのを次話に先送りした装備なのですが、添削ミスで残っていましたw
いやぁ誤字脱字等の添削って書いてる本人だと気付きにくいんですよね~
次話で名前が変わるかもしれないし、結局出てこない可能性もありますがご了承願います。

2/18 お昼

次回予告のタイトル変更



素材名 刃夜の逆鱗 後編

ザァァァァァ

 

 

雨が降る中俺は歩を進める。

仕事が終わった以上、ここに長居する必要はない。

さっさと帰って風呂に入らなければ……。

 

 

血を……流さないと……

 

 

そう思うが返り血はほとんど雨に流されている。

現実的に考えれば風呂にはいるのはただ体を温めるためにだろう。

だが……そうではないのだ。

 

 

むせ得るような血臭が……夜闇の中でもはっきりと写る、紅い水。

それらの光景を流したために……。

 

 

「動くな!」

 

 

そうして歩いていると、俺の前に幾人もの黒いスーツを着込んだ男達が道をふさいだ。

誰も彼もが黒く光る拳銃を、油断なく俺に構えてきている。

 

 

「よくもやってくれたな? だが今度はお前が苦しむ番だぜ?」

 

 

数にしておよそ二十人ほど。

これだけの数がいれば勝てると思っているのだろう。

俺を囲む人間の顔には下衆な笑みが浮かんでいる。

 

 

だが、今の俺にそんな事は関係ない。

まだ仕事を完遂していないんだ。

それに今の俺に……感情を完全に消している俺には相手が何人にいようと関係がない。

 

 

 

人を殺した……人を殺すときの状態に成っている俺に…

 

 

 

キン

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

「……き、貴族の家に殴る込みをするんですか!?」

 

 

最初こそ呆気にとられていたが、リーメがその場にいる全員の思いを代表して、そう叫んだ。

他のみんなも声を上げてこそいないが、全員が一様に驚愕している。

それに対して俺は至極冷静にこう返す。

 

 

「当然だろう? そうじゃなきゃ誰がレミルを救うんだ?」

 

「無茶を言うなジンヤ! 隊長に協力を仰ごう」

 

 

……ディリートね

 

 

確かにギルドナイトの隊長である彼ならば多少の権限はあるだろうが、その間に対策を取られる可能性もある。

それに貴族がその程度でばれるようなそんな失態を犯しているとは思えない。

さらに言えばこの状況を作らないためにわざわざギルドナイトに入隊したというのに、結果的に今現在最悪の状況が展開されてしまっている。

ディリートも手を回さなかったわけではないのだろうが、結局約束を反故した事に代わりはない。

悪いが信用できない。

 

 

「それだと遅い。すぐに行かないとまずい」

 

「そ、そうかもしれないが……だが」

 

「それに、今回のケースで強行手段ともいえるような方法を執らないと同じような事が起こる可能性がある」

 

 

その一言にフィーアは言い返す事が出来ずに押し黙ってしまった。

 

 

今回の事件は、俺の家族ムーナを巡っての問題だ。

仮にギルドナイトに協力を仰いで今回の件が解決したとしてもそれはギルドナイトが解決した事になり、俺には力がないと見なされる。

そうすれば今度はギルドナイトには絶対に干渉できないような状況を造られて追い込まれるだけだ。

初回事件である今回で、舐められないようにしなければまた他の人間に被害が出る可能性がある。

 

 

要するに

 

 

簡単にいえば、なめられないように誰もが恐れるようなぶっ飛んだことをしないとまずいっていうことだ

 

 

「貴様! レミルがあちらの手にあるんだぞ! もしもレミルを殺されたらどうするんだ!?」

 

「無論レミルを助けてから派手に暴れる」

 

「助けるって……簡単に言うがどうするんだ!? レミルがどこにいるかもわからないんだぞ!」

 

「なら、情報を知っている人間に聞けばいいだろう?」

 

 

俺はそう言うと、先ほど気絶から復活させた今回の実働員の隊長と思われる男に歩み寄った。

 

 

「話す気になった?」

 

「……」

 

 

相変わらずの、無言。

そら簡単に話すわけもない。

 

 

やれやれ……出来ればしたくないんだけど

 

 

「……」

 

 

それでも何もしゃべらないのは天晴れともいえる。

しかしその顔からは恐怖がにじみ出ていた。

 

 

それも当然だろう。

 

 

俺が今、とてもゆがんだ笑みを浮かべて、この男をのぞき込んでいるのだから。

 

 

「これが何かわかるか?」

 

 

俺は男の目の前に、ころこんにゃくをすり下ろした物が入った容器を突き出す。

臭いで何かわかるだろうが、念のために解説。

 

 

「ころこんにゃくをすり下ろした物を体に塗るとかゆくなる。それはもう猛烈にな」

 

「……」

 

 

そうして俺は歪んだ笑みを濃くしていく。

それはもはや「悪鬼スマイル」レベルになっている事だろう。

さすがに怖くなってきたのか、相手の顔が引きつりだした。

 

 

そしてその笑みのまま俺はそいつの顔にころこんにゃくを塗って遣った。

 

 

「っっっっっ~~~~!!!」

 

 

だいぶかゆいみたいです。

まぁそれはそうだろう。

俺の記憶だと山芋すりおろしたものよりもかゆくなるらしい。

かきたいのか必死になって腕を動かそうとする。

でも俺が四肢の関節を外しているのでそれを拭う事も、顔を描く事もできない。

 

 

俺はそれを拭ってやった。

 

 

「さて? かゆみは実感できた?」

 

「おい、ジンヤ? いったい何がしたいんだ?」

 

 

フィーアが疑問に思い、質問してきた。

 

 

あ、フィーア、女だ

 

 

そこでようやく俺はこの場にフィーア(女)がいる事をおもいだした。

これからやろうとする事は……女は見ない方がいい……。

 

 

仕方がない。

 

 

「リーメ」

 

「は、はい」

 

 

別に俺としてはすぐに実行してもいいんだが……。

俺はリーメの耳に顔を近づけてこういった。

 

 

「男の急所って、なんていう?」

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ~て出陣だ!」

 

 

魔法の呪文を唱えて、俺は相手からレミルの居場所を聞き出した。

ん?魔法の呪文が何かって?

 

 

……まぁわかるでしょ?

 

 

ヒント ころこんにゃく+悶絶するほどかゆい+手足が使えない+男の急所=???

 

 

 

夕暮れ時。

そろそろ夜になろうというときだ。

俺は睡眠弾で寝かされていたムーナを気で治療して強引に起こして、鐙や鞍、手綱をつける。

 

 

その行動を見て、誰もが唖然とした。

 

 

「じ、ジンヤさん? まさかムーナで行く気ですか!?」

 

「? 当たり前だろ? 欲しいって言ってるんだから届けて上げるんだよ。無論こいつは渡さないけど」

 

「当たり前、なわけがないでしょう! そんなことしたらドンドルマのギルドナイト達が黙っていませんよ!? 大砲で撃ち落とされる可能性も」

 

「俺がいるのにそんなわけあるかよ。村長。最悪の場合はこの家焼き払え」

 

 

そう言いながら俺は自分の装備を全て装備していく。

 

 

「……いいのかね?」

 

 

さすがは村長。

話が早くて助かる。

俺との関係を勘繰られる前にこの家を焼き払えば多少かもしれないが、それでも少しは嫌疑が晴れる。

打てる手があるならば打っておいたほうがいい。

もしくは場所が場所なので不法にこの土地を占拠していた賊でもいいだろう。

 

 

「いいも悪いもそうするしかないだろう? 俺の所持品は全て持って行く」

 

 

その言葉通り、俺は現実世界の俺の所持品、そしてこの世界で手に入れた大切な物をリュックに入れていく。

刀入れに夜月をのぞく花月と水月を入れ、夕月が入っていたところに、雷月を入れる。

夜月は普段通り左腰に差す。

蒼焔はムーナの背中に半ば無理矢理くくりつける。

 

 

狩竜に夜月、花月、水月。

これらの得物を装備し、所持品を全てもって、俺は狩竜にまたがろうとした。

 

 

「俺も連れて行ってくれ!」

 

「だめだ」

 

 

今まで散々悩んだのだろうが、最後はやはり言ってくると思っていたで台詞をレグルが口にした。

だが俺はそれを無下もなく切り捨てた。

 

 

「なっ!? でも、俺の妹を救いに行くんだろう? 俺がいないと……」

 

 

どうやら妹の事で頭が一杯で他の事に頭が回らないらしい。

俺は溜め息を吐きつつ、しかたなく懇切丁寧に説明する事にした。

 

 

「俺がするのは貴族襲撃だ。どんな理由があろうと俺がしようとしている事は悪になる。たとえ相手が悪くてもだ」

 

 

貴族。

貴い族と書くくせに、大体の貴族ってのはカスが多い。

 

そして貴族というのは大体特別な権利を与えられている。

 

 

「仮に今回の件で追われる身になっても、俺は逃げ切れる自信あるし、逃げ切れる。だがお前はどうだ?」

 

「そ……それは……」

 

「お前が助けに行けばお前も追われる身になる可能性が高い。仮に逃げられたとしても家族と別れる事になるぞ? 無論妹とともだ」

 

「だ……だけど」

 

「俺はお前の妹に恨まれたくないし、悲しませたくない」

 

 

助けに行かねば妹がひどい目にあう。

兄が助けに行けば兄弟揃って捕まるか、兄だけが捕まるかもしれない。

つまりこの二つの問題を解決するには俺が出張るしかないのだ。

 

 

そうしなければどちらにしろ悲しい結末しか訪れない。

 

 

「俺も妹がいるからな。妹に悲しい思いをさせたくないし救いたいお前の気持ちはわかる」

 

「い、妹がいるのか?」

 

「あぁ」

 

 

俺の妹がいる発言に、レグルだけじゃなくこの場にいる全員が驚愕していた。

特にフィーアに至ってはあんぐりと口を開けている。

 

 

……そう言えば俺の身の上話をしたのは初めてだな

 

 

普通真っ先に身元というか身の上話をしそうな物だが、俺が言葉が話せない物だからそこらが有耶無耶になっていたんだった。

 

 

まぁどうでもいいか

 

 

反論がようやく出てこなくなったので今度こそ俺はムーナに乗ろうとしたのだが……。

 

 

「だ、だがお前はどうなる!?」

 

 

今度はフィーアが声を張り上げて来やがった。

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

私は思わず叫んでしまった。

自分の事を全く考慮していないこの作戦に我慢がならなかったからだ。

 

 

確かにジンヤの言うとおりジンヤが一人で行けばレグルも、レミルも悲しまなくてすむ。

 

 

だけど!!!

 

 

お前がいなくなって悲しむ人間がいる事を、お前は全く考慮していない!

 

 

「お前がいなくなったら私は悲しいぞ!」

 

「……いきなり何を?」

 

 

ジンヤが珍しく困惑している。

普段なら絶対にいえない事だけど……今言っておかないと……こいつは本当にどこかに行ってしまいそうだから。

 

 

「レーファだって、リーメだって、リオスさんだって、村長だって……お前がいなくなったら悲しくなるぞ! 何でそれがわからない!」

 

 

その言葉にジンヤが言葉を詰まらせる。

ジンヤの事だから考えていない事はないと思っていたが予想通りだったようだ。

 

 

「ジンヤさん! まだ僕はあなたに修行をして欲しいです! それなのになんで自分なんて、みたいな考え方をするんですか!」

 

「店長! 僕らだってまだ店長に教わってない事が……見て欲しい事がいっぱいあるニャ!」

 

「だん……店長! まだ僕の新作を飲んでもらってないニャ!」

 

 

私に追従するように、ジンヤに皆が声を掛けていく。

それを聞きながら、ジンヤは寂しそうに微笑んだ。

 

 

「……ありがとう」

 

 

そう言って一瞬ほっとする私たちだが、だけどジンヤはその一瞬をつく形で、ムーナにまたがった。

どうにかして飛びつこうとする私たちだが、その前にムーナが羽ばたきを始めてしまい、近づけなくなってしまう。

 

 

『……嬉しいけど……俺は異世界の住人だからな。血縁よりは縁が低いだろうよ。……世はまさに胡蝶の夢』

 

 

なんて言ったんだ?

 

 

たまにジンヤが口にするジンヤの国の言葉。

私には当然それを理解する事が出来ず……羽ばたき上空へと舞い上がっていくムーナを見つめる事しかできなかった……。

 

 

 

 

~ディリート~

 

 

……本当にジンヤは怪物だな

 

 

ここ数日の彼のクエストをこなした資料に目を通して、私はほとほと呆れた。

ディアブロス、ガノトトス、ティガレックスetcetc……。

普通ならば手こずるような大型モンスターをほとんど瞬殺してしまっている。

おまけにそのほとんどが文字通り一撃必殺だ。

大体のモンスターが首を切られて即死させられていた。

 

 

これほどの腕を有していたとは……

 

 

さすがにここまでとは予想できなかった。

広報活動などを行ってジンヤの存在をアピールしたが、ほとんど必要なかった。

これほど常軌を逸しているならば、依頼主から話が広がっていく。

最近では街に出るとジンヤの話で持ちきりだ。

 

 

しかし困った事も起こり始めている。

速く、そして確実にモンスターを討伐する事の出来るジンヤに依頼が集中し始めた。

本来ならそういった名指し依頼はよほどの事がない限り許可しないのだが……金のない村の依頼や、子供のお願いなどもジンヤがクエストをこなしているため、断るのに苦労する。

そうすると困るのはジンヤだけでなく他のハンター達だ。

彼らはクエストでの報酬で生活を行っている。

クエストが受注できなくなれば当然生活が出来なくなる。

遠隔地の方の依頼は極力ジンヤに回さないように調整してはいるが、それでも限界がある。

 

 

強すぎて依頼が集中する事によって頭を悩ませる事になろうとは……

 

 

ある意味で前代未聞だ……。

 

 

ドンドンドン!

 

 

「隊長!!!」

 

 

そうして私が文字通り頭を抱えていると、荒々しくノックをして部下が一人許可もなく入室してきた。

本来であるならそれは規則違反だが、そんな事を言っている場合ではないのは部下の慌てる様を見れば考えるまでもない。

 

 

「どうした?」

 

「り、リオレウスがドンドルマ近辺上空に姿を現したと……観測班から報告が」

 

「な、何!?」

 

 

ガァァァアッァァ

 

 

それを確認するまでもなく、窓からリオレウスの雄叫びが聞こえてきた。

どうやらリオレウスが一頭このドンドルマにやってきたのは本当のようだ。

 

 

カンカンカンカン!

 

 

そうして鳴り響く警鐘。

そしてそれに伴って悲鳴と喧噪が街から聞こえてくる。

 

 

くそっ! まさかリオレウスがドンドルマにやってくるとは

 

 

何もリオレウスに限った事ではない。

基本的にこのドンドルマの街はモンスターは近寄ってこないのだ。

 

 

小さくとも自分たちを殺しうる事が出来る存在である人間。

その人間が固まって生活を行っている場所にモンスターも好きこのんでやってくるわけがない。

念のために大砲などを設置してはいるがここ|百十数年(・・・・)、それが火を噴いた事はほとんどない。

 

 

「すぐに出るぞ! 市民の避難誘導と、出撃可能な隊員を集めろ!」

 

「はっ!」

 

 

私はイスから立ち上がりつつそう指示を飛ばし、部下もそれに従って部屋を出ようとした。

しかし部屋を出る一歩手前で停止してこちらを振り向いた。

 

 

「すいません隊長、一つ報告を忘れていました」

 

「? なんだ?」

 

「そのリオレウスなんですが……背中に人らしきものが乗っているように見えたと……観測班が」

 

「人が乗っていた? そんな馬鹿な事があるわけ……」

 

 

あるわけがない、と怒鳴りそうに成ってそこでふと一人の男の事を思い出した。

たった今、頭を抱えていた人物の事だ。

そいつは今まで誰もした事がない、リオレウスの飼育を行っている人間で……。

 

 

「ま……まさか!?」

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

「ふははははは、見ろ! 人がゴミのようだ!」

 

 

夜。

首都ドンドルマへと飛翔した俺はムーナの……リオレウスの姿を見つけて逃げまどう人々を見てそんな事を叫んでいた。

言っている事はあれだが、ぶっちゃけ何となくそう言いたくなっただけで一ミリたりともそんな事は思っていないが。

 

 

「キュゥゥゥ」

 

「ん? どうしたムーナ? あぁ……何でここに飛んできているのか不思議なのか?」

 

「キュ」

 

 

確かに。

渓流調査の時もそうだったが、こんなに人が多いところをとばせるわけにはいかなかった。

 

 

「今回は特別だ。俺の許可がない場合、人がいる場所は飛ばない。わかったな?」

 

「キュ!」

 

 

さすがムーナ。いいこだ

 

 

本当に俺の言っている事を理解しているところがすごい。

育ての親として鼻高々だ。

 

 

ん?

 

 

そうてい和んでいると、ドンドルマに住んでいるハンター達が俺のムーナに何か黒い筒状の物を向けてくる。

それを見た瞬間に、俺は手綱を腕に通すと器用にムーナの体の下へと周り、ムーナの足に俺の足を絡めて宙づりの状態になる。

 

 

「ムーナ! そのまま真っ直ぐ進め!」

 

 

ドンッ!

 

 

そして指示を出したその瞬間に、大砲が火を噴いた。

黒い物体が、ムーナに向かって飛んでくる。

 

 

「バッター四番……鉄刃夜! ウッチマ~ス!」

 

 

バッキ~~~~ン!!!

 

 

その大砲の砲弾を、俺は鞘に入れたままの狩竜で撃ち返してやった。

 

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

大砲の弾をぶっ放したハンター達が驚愕の声を上げる。

よもや砲弾が飛んで帰ってくるとは思わなかったのだろう。

 

 

そして打ち返した砲弾は、遙か彼方へと飛んでいく。

完璧に打ち返すと被害が出るからな。

こいつらに罪はないのだから、怪我をさせるのはかわいそうだし。

 

 

それを数回繰り返すと、すぐに砲撃がやんだ。

いくら何でもおかしいと思ったのだろう。

俺は完全に砲撃がやんだ事を確認すると、再びムーナの体の上へと回った。

 

 

「怪我とかしてないかムーナ?」

 

「キュゥゥゥ」

 

 

特に問題ないらしい。

上等上等。

 

 

そうしていると目的地が見えてきた。

今回の騒動の発端、貴族、ザルマントってやつの豪邸だ。

 

 

「よし、ムーナ! 突撃するぞ!」

 

「ガァァァ!」

 

 

気合い十分みたいだ。

俺は手綱を握り直し、狩竜を持つ手にも力を込めて、豪邸を睨みつける。

そうしていると遠目だが、豪邸から次々と護衛兵っつ~か門番というかみたいなやつがうじゃうじゃと出てきた。

そいつらは全員一様として何かしらの武器を所持している。

 

 

拳銃がないのが実にありがたい

 

 

まぁ仮にあったとしてもそんな障害、斬り飛ばして突き進むのが俺だがね。

俺はムーナの上で軽く体をほぐし、狩竜の鞘を前方に投げ捨てるようにして抜き、すぐにキャッチする。

そして折りたたんで背中のシースに縛り付けた。

 

 

戦闘準備完了! では!!

 

 

「お邪魔しま~~~す!!!!」

 

 

 

 

~レミル~

 

 

「おい、飯だぞ」

 

 

そういって男の人が鉄格子の下の方からトレイにのった食事を私に差し出してくる。

いくつかの小さな蝋燭だけが光源なので、その表情を見る事は出来ないけど、下卑た笑みを浮かべているのが何となくわかった。

 

 

「……」

 

 

暗くて見えないだろうけど、私はその男にせめてもの思いで睨みつける。

 

 

「また食べないのなら俺が食うぞ」

 

 

そう言ってすぐにトレイを下げて、そのまま粗野に食事を始めた。

本当はおなかがすいていたけど、私は決して口にしようとは思わなかった。

 

 

お兄ちゃん……

 

 

ジンヤさんのお店でお小遣いを貯めて、お兄ちゃんにわがままを言って憧れだった首都ドンドルマに、私はお兄ちゃんと二人で遊びにきた。

最初は見た事もないものだらけでとても楽しかった。

お兄ちゃんも私のわがままを聞いてくれて、楽しかったのに……突然男の人が私の口に布を押し当てると、私の意識はそこで途絶えて、気がついたらここに閉じこめられていた。

どれくらい気を失っていたのかわからないし、ここが……この牢屋には窓とかそう言った物が一切なくて、今が昼なのか夜なのか……それすらもわからない。

ただだいぶ時間が経っている事だけしかわからない。

 

 

弱みを見せないって決めて頑張ったけど……さすがにそろそろ限界だよぉ

 

 

とても心細かった。

お兄ちゃんが助けに来てくれるって信じてるけど……けどさすがに耐えられそうにない。

 

 

カンカンカンカン!

 

 

そうして私が涙ぐんでいると、そんな音がどこからか聞こえてきた。

 

 

「どうした!?」

 

「リオレウスがきたらしい」

 

「馬鹿な!? ここは首都ドンドルマだぞ? どうしてこんな人が大量に集まっている場所にわざわざ!?」

 

「わからないが、とりあえず行くぞ」

 

 

ばたばたと、私を見張っていた二人の男の人がどこかへと行ってしまう。

けど今の私はそれどころじゃなかった。

 

 

り、リオレウスが……

 

 

空の王者、リオレウス。

直接目にした事はないけど、その怖さを知らない人はこの世界にはいない。

 

 

「た、助けて……」

 

 

もしもそのリオレウスが暴れて私が今いるこの建物が崩れたら……。

 

 

「助けてよぉ! お兄ちゃん!」

 

 

 

「秘剣!」

 

 

 

……えっ?

 

 

思わず叫びそうになってしまった私の耳に、そんな声が聞こえてきた。

目の前の通路にはもう誰もいないし、誰かが来た様子もないはずなのに……。

けれどその声ははっきりと聞く事が出来た……。

 

 

『単分子カッター(嘘)!!!』

 

 

何を言っているのかよくわからない叫び声と共に、私の後ろの壁が真四角に倒れ込んできた。

何が起こったのかわからない私には、ただその場から離れる事しか出来ないのだけど……牢屋であるのでせいぜい壁の隅に行くのがやっとだった。

 

 

「レミル? いるか?」

 

「その声……ジンヤさん!?」

 

「む、どうやら無事のようだな」

 

 

その穴から入ってきたのは、驚いた事にジンヤさんだった。

お店で何度か顔を見た事があったし、お仕事も手伝わせてもらったので多少だけど面識はあった。

 

 

「助けに来たぞ。よく頑張ったな。つかまれ」

 

 

そういって手を差し出してきてくれる。

その穴から入ってくる光源で顔も見えて間違いなくジンヤさんだと確認して、私はその手を掴もうとした。

けど……。

 

 

スカッ

 

 

「え?」

 

 

確かに掴めるように手を伸ばしたはずなのに、その手は空を切ってしまい私は前方に倒れ込んでしまう。

その前にジンヤさんが一歩前に出て私の体を受け止めてくれた。

 

 

「大丈夫か?」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 

一瞬抱きついてしまったけど、私はすぐに体を離した。

けど、その手だけは話す事が出来なかった。

それどころかぎゅっと力の限り握りしめてしまう。

 

 

「……乗れ」

 

 

ジンヤさんはその場にしゃがみ込むと、そう言って私に背を向けてくれた。

本当なら知り合いとはいえ子供じゃないんだからおんぶなんて嫌だったけど……今の私にはそれを断る事は出来なかった。

 

 

暖かい……

 

 

ジンヤさんの背中はとても温かくて大きかった。

その暖かさが……人肌のぬくもりに随分と触れていない事に気がついて、そのぬくもりが余りにも暖かくて……。

私は知らず知らずのうちに力の限りジンヤさんの背中に抱きついてしまっていた。

 

 

「……怖かったよぉ」

 

 

そして私は声を押し殺して泣いた。

背中にいるから見えるわけないんだけど、泣き顔なんて見られたくなくてジンヤさんの背中に顔を押しつけて……。

 

 

 

『……ぶっ殺す』

 

 

 

そんな私に、ジンヤさんは何も声を掛けず黙ってそのまま歩いてくれた。

何か呟いていたけど、今の私にはそれを聞き取る事は出来なかった。

 

 

 

 

~ザルマント~

 

 

「まだリオレウスは捕獲できないのか!?」

 

「申し訳ありません。なにぶん敵は空を飛んでいるのでそう簡単には……」

 

「この家に傷をつけずにさっさと捕らえろ! わざわざ私の家にやってくるなんて飛んで火に入る夏の虫だ。捕獲して売りさばく」

 

 

そう怒鳴り散らし、部下を下がらせて私はいらだたしげに机の上に置いてあるブレスワインを呷った。

 

 

そこは私の寝室で、私が趣味で買い集めた様々な高級品が立ち並んでいる場所だ。

そしてこの部屋の何よりの自慢は、一つの壁面がガラス窓に成っており、私の自慢の庭を、この地上四階から一望できる所だった。

部屋も相当広く造っており、飛竜の一匹や二匹ならばここで飼う事も可能なくらいだ。

 

 

しかしどうしてリオレウスが|単体(・・)で私の家に?

 

 

それが不思議といえば不思議だった。

モンスターがこんな人が多く集まるような場所に来る事はほとんど……ないと言い切ってもいいくらいだ。

それなのに今日暴れ回っているリオレウスが、どうして私の屋敷に来たのか?

 

 

そこが不思議だったが、しかし飛竜種といえど所詮は一匹。

私の屋敷お抱えのハンター達ならば容易に捕獲できる……。

 

 

バンッ!

 

 

「ザルマント様! お逃げください!」

 

 

そうして私が気分よくワインを飲んでいると、私の秘書が血相を変えて走り寄ってきた。

 

 

「ノックをせぬか!」

 

「そんな場合ではありません! 今飛竜がその窓ガラスに向かってきて」

 

「何を言う? リオレウスが窓に突っ込んでくるな……ど……」

 

 

あり得ない、そう言おうとした私だったがその言葉が口から出る事はなかった。

 

 

何せ秘書の言うとおり、私の自慢の窓の外には……人を乗せた赤い外殻の飛竜、リオレウスが窓ガラス一杯に移っていたのだから。

 

 

バリーン!

 

 

「うぉぉぉ!?」

 

 

そしてその飛翔の勢いのままリオレウスは私の部屋へと入り込んできた。

 

 

「な、なんだいったい!?」

 

「何だとは失礼だな?」

 

 

この状況でもはっきりと、その声は私の耳に響いてきた。

風が収まり、私はうっすらと目を開ける。

 

 

「届けに来たぜ? ムーナを」

 

 

そう言って不敵に笑う、黒髪の男がそこにいたのだった。

 

 

 

 

~レミル~

 

 

「き、貴様! 私が受注したクエストはどうした!?」

 

「誰が行くかあんなクエスト。あからさますぎるんだよ」

 

 

忌々しそうにジンヤさんがそう口にする。

その顔には明らかに嫌悪の感情が浮かんでいた。

 

 

リオレウスを空に飛ばして注意を引かせて、その間に私を助けてくれたジンヤさんは、あろう事か貴族の邸宅に突っ込むって言い出した。

そのあまりにも大胆(っていうより無謀?)ともいえるその言動にぽかんとしてしまったその隙に、ジンヤさんは私に上着を頭にかぶせると、本当に突進して言って……。

 

 

貴族にここまでして大丈夫なのかな?

 

 

考えるまでもなくだめなんだけど……。

まさか窓ガラスに突っ込むとは思っていなかったから反応が遅れて止める事が出来なかったし……。

 

 

……あの人が私を誘拐した人……

 

 

私でも多少なりとも知っている位に有名な貴族だ。

貿易で莫大な利益を得て、貴族へと成り上がった人。

けどその商売のやり方があまりよくないって陰でよくささやかれている人だ。

 

 

「ちっ、出会え出会え!」

 

 

何か芝居がかった口調だったけど、この人にとっては真剣なんだと思う。

だって目の前にリオレウスが鎮座しているんだし……。

でも私はそのリオレウスの背に乗っている状態なんだけど……。

正直、今座っているけど……怖くて体が震えてしまう。

レーファからこのムーナってリオレウスがあまり凶暴性はないって聞いているけど、それでも怖い物は怖い……。

 

 

そうしていると、とても大きなドアから何人もの黒い格好をした、見るからに屈強そうな男の人達が十人近くなだれ込んできた。

そして倒れ込んでいるザンマルトの前に並び、ジンヤさんに鋭い視線を向けている。

 

 

『……面倒な事を』

 

 

そう言いながらジンヤさんはムーナちゃんから降りて、その長い棒のような物をムーナちゃんに加えさせた。

そして左の腰にある細長い棒のような剣を抜いた。

 

 

「ほう? やる気かね? 君がどれほど強かろうとそれはモンスター相手。対人戦闘を鍛えた私の私兵に勝てるかな?」

 

 

ザンマルトの言うとおり、その人たちはハンターとも違う怪しい雰囲気を纏っていた。

武器も扱いやすいような小さなナイフばかりで……明らかに対人戦闘を想定して鍛えている人たちっぽかった。

 

 

でも……

 

 

圧倒的に不利なこの状況だし……黒い服も雰囲気も、目つきも鋭いこの人たちよりも……顔が見えない、ただ何の感情も表れていないジンヤさんの方が……私はとても怖かった。

 

 

『失せろ……糞虫どもが……』

 

 

意味のわからない言葉を呟くと、ジンヤさんの姿が消えた。

そしていくつかの光の線がみえて……。

そして再びジンヤさんの姿が見えたときには、全てが終わっていた。

 

 

ブシュウゥゥゥゥゥゥ!!!

 

 

「……え?」

 

「「「「「「あ、ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」

 

 

揃って全ての人たちの右手の肘から先が落ちて、噴水のように血が噴き出した。

 

 

「っ!?」

 

「なっ馬鹿な!」

 

 

そのあまりにも強烈な光景に、私は思わず顔を背けてしまう。

絨毯が赤かったからもともと赤い風景だったのだけれど、今は全然違った。

赤い、粘液のような液体。

そしてむせかえるような血臭……。

はっきり言って何故私がこの瞬間に気を失わなかったのか不思議でしょうがなかった。

 

 

でも、その原因ははっきりとわかっていた。

 

 

……こ、こわい

 

 

そう、命のやりとりなんてした事のない私でさえもわかる、それほどの恐ろしい何かを、ジンヤさんは体中から発していて、気絶することさえもできないって……。

 

 

『……』

 

 

剣を振ってそれを納めるときに横顔が見えたのだけれど……その顔には何も感情が表れていなかった。

その何も現れていない事が……まるで仮面のようで。

 

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃ」

 

 

でも、私はまだよかったのかもしれない……。

貴族の人はそのジンヤさんの異常さを目の辺りに……そして向けられているのだから。

 

 

コッ コッ

 

 

そしてジンヤさんはゆっくりとザンマルトへと歩み寄っていく。

だらりと下げた剣が歩きに合わせてゆったりと揺れているのが、不気味に思えた。

 

 

「く、くるなぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

恥も外聞もなく、ザンマルトは腰を抜かしながら後ずさっていく。

それに特に反応する事もなく、ゆったりと、歩み寄っていく。

その歩き方が幽鬼的で……。

 

 

そしてザンマルトが壁際に言ってしまってこれ以上後ろに下がれなくなった。

そのことに気づいて悲鳴を上げるけど……それしかすることが出来ていなかった。

 

 

『……死ね』

 

 

そしてつまらなさそうに、ジンヤさんがその剣を上へとゆっくりと振り上げて……。

明らかに殺そうとしている事に気づいて、私は自分の体を叱咤して、ジンヤさんへと走り寄ってその体に抱きついた。

 

 

「ジンヤさん! だめです! 殺しちゃうのはだめ!」

 

 

血に染まった絨毯を駆けぬけるのはとても気持ちが悪かった。

けどそれでも私が止めるしかないから……私は吐きそうになるほどの血臭を我慢した。

 

 

「何故止める? こいつはお前を殺そうとした男だぞ?」

 

「確かにひどい事はされました! けど殺されてはいないんです! だから殺しちゃだめです! それに殺人は大罪なんですよ!」

 

 

この世界はモンスターがいないところはどこにもない。

そう言っていいほどに多種多様なモンスターが存在している。

基本的にモンスターは人間よりも遙かに強い。

それだけでなく災害も多いこの世界では殺人というのはもっとも重い罰を科せられてしまう。

それにさすがに人殺しなんて……してほしくなかった。

 

 

「……離せ」

 

「だめです! 離しません!」

 

「離せ!!!!!」

 

「きゃっ」

 

 

力一杯ふりほどかれて、私は尻餅をついてしまう……。

痛みに顔をしかめてしまったけど、見上げたジンヤさんの顔が悲しみに満ちていて……。

 

 

『何故なんだ……何故こんなくずが……こんなくずのために……あの子は……』

 

 

言っている事はわからなかったし、どうして今にも泣き崩れそうになっているのかはわからなかったけど……私にはその顔が……子供が泣いている顔にしか……見えなかった。

 

 

けれどそれもすぐに消えてしまって、ジンヤさんはいったん顔をうつむけると、また普段通りの表情になっていた。

けどその顔もまた、能面のように感情という物が見えなかった。

 

 

「……本来ならばいたぶって殺してやるところだが、レミルに免じて許してやる」

 

「は、はい」

 

「だがまた同じような事をしたら俺は容赦なく貴様を殺すぞ? こんな風にな!」

 

 

叫ぶと同時にジンヤさんが右手に持っていた剣を大振りに振るって、ザンマルトの眼前すれすれに剣を振るった。

すると不思議にも、触れてもいないはずのザンマルトの服が切れて、後ろの壁にも剣の軌跡と同じように跡が出来た。

 

 

「っ!?」

 

 

そのあまりの現象に、ザンマルトは本当に飛び上がるほどに驚いて恐怖していた。

後ろを振り返って壁の傷を見ようとした、その振り返って横を向いている顔の目の前にくるようにしてジンヤさんは剣を壁に突き立てた。

 

 

「ひっ!!」

 

「お前と同じような事を考えているやつがいるだろう? そいつらに言っておけ。死にたくなかったらやめておけとな……」

 

 

そして突き立てていた剣を抜くと、ジンヤさんはそれを剣の入れ物に収めて背を向けて私を抱き起こしてくれた。

それからムーナちゃんに歩いていったのだけど……。

 

 

「キュ、キュゥゥ」

 

 

リオレウスであるムーナちゃんが怯えていた。

確かにムーナちゃんは野生ではないので凶暴でも勇敢でもないのかもしれないけど……リオレウスが一人の人間に怯えているのを見て私は呆気にとられてしまう。

 

 

「怖がるなよムーナ。俺だよ」

 

「キュゥゥゥ」

 

 

近寄って頭を撫でて上げたのだけれど、まだムーナちゃんは怖がっているみたい。

拒絶されたわけでもないし、ジンヤさん自身もムーナちゃんが怖がっているのはしょうがないとわかってるみたいだけど……その背中はとても寂しそうだった。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

レミル誘拐事件から五日後。

俺は渓流のキャンプ地にムーナと二人で不法占拠して生活をしていた。

とりあえずムーナでユクモ村に帰ってレミルを送り届けた後、家にいるわけにも行かないのでここに来たのだ。

 

 

フィーアはまだかね?

 

 

全く反省していないし、する気もないがやり過ぎたという自覚はあった。

でも必要な出来事だったの後悔もしていない。

とりあえずフィーアに俺の処分を聞きに行ってもらい、最悪の場合は俺はムーナと一緒に生活できる場所を見つけるために旅に出る事にしていた。

状況を知らせてくれとフィーアに言ったが、未だ連絡はなかった。

 

 

「いい天気だな~ムーナ」

 

「キュゥゥゥゥ」

 

 

そんな事を言いながら、そばにいるムーナに声を掛けて、俺はのんびりと寝っ転がっている。

あの貴族の時に俺の裏の仕事の顔を見て、最初は警戒していたムーナだが今は普段通りに戻っていた。

 

 

裏の仕事……

 

 

『ジンヤさん! だめです! 殺しちゃうのはだめ!』

 

 

あの時、ザンマルトを殺そうとしたとき、レミルは体を張って俺を止めた……止めてくれた。

 

 

……少々、危なかったな

 

 

俺はキャンプ地の簡易ベッドに寝ながら溜め息を吐いた。

 

 

裏家業の仕事。

文字通り裏の仕事なので、危ない仕事も多くしてきた。

まぁじいさんが汚いとか、あまり仁義に反する事が嫌いなので汚い仕事だけはしてきていないのだが……。

だが、立場的に始末するのが困難な人間や、違法なくず連中の始末……。

他にも数え上げたらきりがないが、人を殺した事は何度もある。

 

 

ここで言い訳すると、一応悪人しか殺した事はない。

子供や老人と言った弱者を殺して回る殺人狂、麻薬を売りさばいて私腹を肥やしさらに悪事を行う者……。

そういったくずのみを殺してきた。

 

 

だが殺人にかわりはない。

それが罪だという事も理解しているし逃げるつもりもない。

 

 

……だが今回の件に関しては危うく殺してしまうところだった。

ザンマルト。

確かにレミルにひどい事をしたのは事実だが、果たしてあの後どういう処分を行ったのかは謎だ。

しかも他の黒い部分の事も俺は知らない。

情報が不確定であるにも関わらず、殺そうとしてしまったのは初めてだった。

おそらく過去の記憶を夢で見たのが原因なのだろうが……。

 

 

……修行が足りない……か

 

 

いくら夢見が悪かったとはいえそれで殺す一歩手前まで行くのは未熟な証拠だろう。

 

 

「ジンヤ!」

 

 

そうしてのんびり空を眺めながら寝ていたら、フィーアの声が聞こえてきた。

そちらの方に目を向けると、フィーアと一緒にディリートがこちらに向かって歩いてきていた。

 

 

「なんだ? 状況だけ教えてくれればよかったのに」

 

「そう言うわけにもいかないだろう? まったくジンヤは」

 

 

気怠げに起き上がりながらそう言うと随分と不機嫌な顔をしながらフィーアがそう言ってくる。

そしてそれに少し遅れて複雑な表情をしたディリートが俺のそばまでやってきた。

 

 

「……だいぶ無茶な事をしてくれたな」

 

 

頬がこけていて、若干やつれ気味になっている。

どうやら今回の件でだいぶ奔走したようだ。

 

 

「無茶? 俺がギルドナイトに入隊した時の約束を破ったのはどこのどいつだ?」

 

 

今回の一件。

はっきり言って俺は激怒していた。

正直あの時レミルの制止がなければあの屋敷が血の海になっていたかもしれない。

 

 

『ただ、私はよくても他の人や貴族の連中が何か言ってくると難しくなると思うのです。ですからあなたが加入してくれるのならば、あのムーナという飛竜はギルドナイトの正式な家畜として迎えいれます』

 

 

こいつは確かにこう言ったのだ。

にも関わらずレミルが誘拐されるという事件が起こったのだ。

どうにかしてこちらに実質的被害はなかったが、レグル、レミルに深い傷を残した事に代わりはない。

 

 

「……それに関してはすまなかったと思っている」

 

「思ってるだけか? まぁ思っていようが思っていまいが関係ないがな」

 

「……それはどういう意味だジンヤ?」

 

 

言っている意味はわかっているだろうに、フィーアが確認のために俺にくだらない質問を投げかけてくる。

それに溜め息を吐きつつ、俺はこう返した。

 

 

「脱退するに決まってるだろ? 自分から脅しとおいてその事すら守れないやつの下にいるなんぞごめんだ」

 

 

吐き捨てるようにそう言ってやった。

一応事の顛末を知るためにここに残っていたのだが、はっきり言ってうんざりした。

事の発端はリオレウスを飼い始めた俺が悪いのかもしれないが、そんな事知った事じゃない。

俺の家族に手を出したのだから。

 

 

「そ、それは待ってくれ。とりあえず君の処遇なんだが死刑は免れた」

 

「? 本当か?」

 

 

意外な事に処刑はないらしい。

まぁあったとしても逃げるけど。

 

 

「貴族の家に殴り込むなんて本来ならば極刑だが……ザンマルトにはいろいろと黒い部分があってな。それを調べる事が出来たし、事情が事情なので死刑は免れた。だから脱退はやめて欲しい」

 

 

どうやら今回のレミル誘拐以外にもいろいろとやらかしていたみたいだ。

相手が完全に悪いというのに、他の悪事の助けもあって免れるというのも納得出来なかったが、まぁそこらは飲み込んでおこう。

 

 

「だが無罪放免は無理だ。とりあえずギルドナイトのランク降格。賠償金の支払いなんかも上がったのだが、それはこちらで支払った。もとはと言えばこちらのミスだからな」

 

 

……当然だな

 

 

俺がギルドナイトに入った原因は、ムーナでのトラブルを起こさないためだったのに、今回こう言った形になってしまったのだ。

別に金なんぞ要らないが、俺が払うのは釈然としない。

だが次のセリフでどちらにしろ切れそうになった。

 

 

「そして、謹慎期間として一ヶ月間、ドンドルマで監視付きで生活してもらうことになった」

 

「……あぁ?」

 

 

その言葉にさらに俺の怒りゲージが上昇する。

約束を反故にしておいて何故俺が住み慣れつつある俺の家から離れて、ドンドルマで生活をせねばならないのか納得できないからだ。

しかも監視付き。

 

 

「ふざけているのか?」

 

「すまない。本当にこれ以上の譲歩は出来ないんだ。黒い噂があるとはいえザンマルトはれっきとした貴族なんだ。さすがに監視もつけずに生活させるわけには。決して不自由にはさせない」

 

 

鍛造施設がない時点で不自由なんだよ

 

 

まぁこれは鍛造士ではないから分からないだろうが。

ディリートも反故にした事に関しては申し訳なさそうにしているが、だがこちらとしてはそんな事知った事じゃないのだ。

世の中結果が全て。

それが出来ないのならば……付き従う必要もないだろう。

 

 

「いやだね。脱退してのんびり暮らすよ」

 

「いや脱退は出来ない。少なくとも監視をしてからじゃないと釈放できないんだ」

 

「なら誰もこないような奥地で生活するさ」

 

「……それをさせるとでも?」

 

「……ほぉぉぉぉぉ? 俺に勝てるとでも思っているのか? なんなら本当にドンドルマ壊滅させてやってもいいんだぞ?」

 

「……」

 

 

情報も聞けた事だし俺はまだ何か言いたそうなディリートを無視して荷物を整理し始める。

俺がどこかに行こうとするのに気がついたのか、ムーナも起き上がり、たたんでいた翼をいったん開いてのばし始めた。

 

 

さ~てどこに家二号を造ろうかな~

 

 

「待てジンヤ!」

 

 

ガシッ!

 

 

くっだらないことを考えながら俺がムーナに歩み寄るとフィーアが俺に抱きついて動きを封じてきた。

何でか知らないが表情が随分と必死だ。

 

 

「だ、大丈夫だ!」

 

「? 何が?」

 

「え……えっと……」

 

 

顔を真っ赤にしながら必死に何か言葉を探している。

何を考えているのか謎ではあるが……。

 

 

「も、もうこんな事が起こらないように隊長も私も頑張るから! 脱退はさすがに!」

 

「フィーア、しかしだな」

 

「脱退するとクエスト受注だって出来なくなるんだぞ!? どうする気だ?」

 

「金がなくても生きていけるさ」

 

 

嘘じゃない。

この世界ならば自給自足が出来そうだからだ。

実際人間に汚されていない場所が多いため自然が多い。

そのため魚や木の実などの食物も豊富だ。

それにモンスターを討伐して食料にしてもいい。

 

 

「れ、レーファにリーメ、それに私だって悲しいぞ!」

 

「いやそう言われてもな……」

 

「ど、どうしてもだめか……」

 

 

……何でそこで若干涙ぐむんだよ……?

 

 

本人は気づいていないかもしれないが、その目には涙が若干溜まっていて、しかも頬が紅潮しているのですが……。

 

 

「わ、私は……ジンヤと一緒にクエストに行きたいし、まだ修行もして欲しいし……そ、それにドンドルマでの生活だって悪くないぞ! わ、私がいろいろな所に案内するし……だから」

 

「……」

 

「その……だから……い、行かないで欲し、ぃ……」

 

 

なんかもう今にも泣き出しそうなほどに目に涙を溜めているし、なんか若干体が震えている気がしないでもない。

 

 

「ジンヤ君、私からも頼む。君に抜けてもらわれれると困るんだ。この通りだ」

 

 

フィーアに次いでディリートまで土下座してきた。

 

 

腕に抱きついて、私を捨てていかないで! みたいな?

↑注、イメージ

 

そして土下座しているおっさんが一人。

 

 

端から見たら俺が悪い事をしているみたいな絵図だ。

 

 

……え~~~~俺が悪者?

 

 

なんか雰囲気的に俺が悪者になってしまった。

フィーアが何で泣くのかいまいちよくわからんが……。

本来ならば嫌だが、まぁ仕方がないだろう。

俺は溜め息を吐きながらディリートに声を掛ける。

 

 

「わかったよ。脱退はやめる」

 

「ほ、本当か?」

 

「が、次同じ事が起こったら……ドンドルマは俺が灰燼に帰すからな?」

 

「……わかった」

 

 

本気なので俺は殺気を込めた視線と声でディリートを脅しつけた。

しかしさすがギルドナイト隊長。

その殺気に若干気圧されながらも素直に頷いてくれた。

普通の人間ならばこの殺気を向けたら気絶しても不思議ではないのだが……。

 

 

「以前の部屋で生活してもらうが、準備期間として二日間開けるから荷物を用意してくれ。ので明後日、私の部屋に来てほしい」

 

「了解」

 

「……よ、よろしくなジンヤ!」

 

 

フィーアが恥ずかしげにしながらそう言ってくる。

しかし逃げられないようにするためか、抱きついたままではあるが……。

恥ずかしいならばしなければいいと思うのだが……まぁいいだろう。

新たな生活に俺は……

 

 

心配と不安と嫌気と寒気と苛立ちと気がかりと心掛かりと心許なさを覚えつつ

 

 

溜め息を吐くのだった。

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

ジンヤさんが貴族の家に殴りこみに行ってから数日後。

とりあえず死刑を免れたってフィーお姉ちゃんから聞いて、私は心の底から安堵した。

 

 

私を家に帰った後にそんなことをするつもりだったなんて。

しかも逃亡する気満々だってお父さんもフィーお姉ちゃんもリーメさんも言ってたし。

 

 

どうしてジンヤさんは……自分がどんな風に思われているのか考えてくれないんだろう

 

 

確かに貴族の家に襲撃した人物と繋がりがあった場合、その繋がりのある人物も無事ではすまない可能性が高いのだけれど……。

それでもジンヤさんが簡単に私たち……私との繋がりを断ち切ってしまえるのが悲しかった。

 

 

ジンヤさんにとって私って何なんだろう?

 

 

前々から思っていたけど、今回ほどそう思えた事はなかった。

もしも指名手配された場合はどこかに旅立つって言っていたみたいだけど……。

つまりそれは私だけでなく、この村との繋がりも捨ててしまってでもムーナちゃんの問題をどうにかしたいって思ったんだと思う。

それからもわかるようにムーナちゃんはジンヤさんにとって大切な存在なんだろうけど。

 

 

「レーファ。どうしたの難しいか顔をして?」

 

「レミちゃん……。ううん。何でも……」

 

「ないって顔をしてなかったよ? どうしたの?」

 

 

私がぼ~っとしていたのを気にしてレミちゃんが話しかけてきてくれた。

今は和食屋でレミちゃんの無事を祝ってのお祝いを開いていた。

ジンヤさんも誘っいたかったんだけど、ジンヤさんは後日、ドンドルマに一ヶ月ほど監視付きの生活を送るための準備を行うって言ってきてくれなかった。

 

 

「またジンヤさんの事?」

 

「……うん」

 

「何をそんなに難しく考えるの? って以前の私ならいえたんだけどね」

 

「え? ど、どういうこと?」

 

 

予想外のレミちゃんの言葉に私は思わず身構えてしまう。

その反応で私がどんな事を思っているのかわかったのか、レミちゃんはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべ始めた。

 

 

「あれあれ? どうしたの?」

 

「もう! 茶化さないで!」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

 

完全に遊ばれている。

レミルちゃんのこういうところはけっこう困っているところだったりする。

 

 

「うふふ、レーファは相変わらずかわいいね」

 

 

そう言って私に満面の笑みを向けてきてくれる。

貴族にさらわれてひどい目にあったはずなのにその笑顔には余りかげりはなかった。

無理をしていない事はすぐにわかったので私は心の中で安堵の溜め息を吐く。

 

 

「さて。冗談抜きで本気で話すけど……レーファはジンヤさんの事どう思ってる?」

 

 

レミちゃんが一転して真剣な眼差しを私に向けてくる。

その目にはふざけている感じは一切なくって。

だから私も本気で答えた。

 

 

「好きだよ……大好き」

 

「そ。あのね。これはあくまで私の私見なんだけど……ジンヤさんってまだみんなに気を許していないように思えるの」

 

 

気を許していない?

 

 

「私が、あの貴族に捕まって助けに来てくれたときにその……ジンヤさんが今まで見た事もないようなとても怖い雰囲気を纏ったのね? それこそ人なんて簡単に殺せてしまえるような……そんな感じに」

 

 

え?

 

 

その言葉に私は驚きを隠せなかった。

 

 

「それにすごく寂しそうに見えたの。まるで子供みたいに。ひどく寂しい表情をしてたわ」

 

 

レミルちゃんが手元のミラクルミルクを飲みながらそう述べてくる。

その言葉に、私は以前ジンヤさんがランポスの大群を相手にしていたときのジンヤさんの叫びを思い出していた。

 

 

自分はここにいるって、誰かに伝えているような……そんな叫びを。

 

 

「何かとても悲しい事があったんだと思う。それに孤独に見えるの。知り合いも増えているけど、ジンヤさん、自分の事何も話してないし」

 

 

ジンヤさんの妹……

 

 

お父さん、フィーお姉ちゃん、リーメさん、レグルお兄ちゃんに村長さんがジンヤさんが妹がいるって言ってたって……。

 

 

そういえば、私……ジンヤさんのこと何も知らない……

 

 

ジンヤさんは強い。

そんなことは村の誰もが知っている。

ランポスを素手で倒したこともあるし、イャンクックも、リオレウスすらも倒してしまった人。

武器の鍛造も出来て、料理も出来て、建築だって出来てしまう。

 

 

でも……それしか知らない……

 

 

私が知っているのは私が出会ってからのジンヤさんだけ。

そう、私だけでなく、全ての人がたったそれだけのことしかジンヤさんのことを知らなかった。

家族構成や、どこで生まれ育ってどんな人生を送ってきたのか……。

その全てがわからない。

 

 

最初は言葉も通じなかったんだから、少なくともこの大陸の人ではないんだろうけど……

 

 

この大陸で、自分のことを知っている人間が誰もいない。

今更になって私はジンヤさんがどんな状況であるかを再確認したのだった。

 

 

「だからねレーファ。ジンヤさんにとって大切な人になってあげて。それからジンヤさんが自分の事をさらけ出せるようなそんな人に。でないとジンヤさん。本当にどこかに行ってしまうかもしれない」

 

 

その言葉には、とても説得力があって……。

 

 

初めてであった時、レグルお兄ちゃんに入れ物を叩きつけられたとき、ランポスの大群が襲ってきたとき、ムーナちゃんを飼うと言ったとき……。

そして今回の貴族襲撃のために……。

 

 

村を出て行こうとしてしまった人だから……

 

だからいつまたどこかに行ってしまうのかもしれない

 

その通りでジンヤさんはいつでもどこかに行くことができる人

 

持ち物さえあればジンヤさんはこの村に執着する理由なんてないのかもしれない

 

今回のドンドルマでの監視付き生活、一ヶ月という期間限定とはいえ行ってしまった人だから……

 

 

『それにいつまでも俺がここにいる訳じゃないんだぞ? クエストの途中で死ぬかもしれない……いなくなるかもしれない』

 

 

和食屋でぼそりと呟いていた言葉が今でも脳裏を離れていなかった。

結局未だにその訳を聞けずにいるけど……。

ランポスの大群が村を襲ったあの時の、ジンヤさんのあの叫び声に乗せられた思い……。

その思いに応えて上げたかった。

 

 

ジンヤさんがいなくなるなんて嫌だ!

 

 

これが私の嘘偽りのない素直な気持ちだった。

 

 

「うふふ、レーファ頑張ってね。最近ではライバル結構多いんだよ?」

 

 

そうして私が気合いを入れているのに……レミちゃんは面白いおもちゃが出来たといった具合に私をからかってくる。

 

 

……そのライバルが多いっていう事が事実なので何も言えないんだけど

 

 

実際、仕事も出来て腕前もあって、性格も結構いいという事で、ジンヤさんは今非常に人気だった。

それに本人は気づいていないのかもしれないけど、ジンヤさんは普通にかっこいい。

なのにそれを鼻に掛けたりしていないからとても大人の男といった、泰然としたその態度がかっこいいって評判で……。

 

 

最初は見慣れない髪の色と肌の色で敬遠していたのに……現金なんだから

 

 

思わず私は頬をふくらませてふてくされてしまう。

でも私の友達はまだいい。

問題はフィーお姉ちゃんだ。

 

 

……同じハンターだから一緒にいる時間も長いし……

 

 

今まで男の人のことなんて興味がないって言っていたフィーお姉ちゃんが初めて惚れた人。

私の勘だけど、間違っていないって確信があった。

ジンヤさんといるときのフィーお姉ちゃんは、本当に楽しそうにしていた。

前々から思っていた事だけど……フィーお姉ちゃんと一緒にいる時間の方が最近は長い。

それが私は悔しかった。

 

 

……ハンター

 

 

この時……ううん、もっと以前から私はとある決意を固めつついたのだけれど……そのことをまだ誰も知らないし、知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

沼地

 

そこは刃夜とフィーアが走り回っていた場所であるフィールドの奥地。

人が足を踏み入れる事が出来ないほどの奥地であるために、皮肉な事にそこは自然のままの綺麗な姿を保っていた。

今も雨が降り続け、池の草花と相まって、幻想的な風景を醸し出していた……。

その地に……何かがいた。

 

 

 

【蒼が死んだか……】

 

 

 

いるはずなのに見る事の出来ないその何かは、そう呟くと何かを羽ばたかせて、どこかへと飛んでいく。

陰もなく、姿もなく……ただ圧倒的な存在感の残滓だけを残して……。

 

 

 

 

 

雪山

 

吹雪が吹き荒れる険しい山の頂。

そこには何か龍のような形の岩がある事で有名だった。

その龍の形をした岩の上に、鈍いさび色の光を反射しながら何かが降り立った。

この猛吹雪の中、その何かはその暴風の中でもまるで風のない野に佇むがごとく、その体が揺らぐ事はなかった。

 

 

 

【ならば我らがでよう】

 

 

 

その何かも、呟くと同時に体を包む錆を脱ぎ捨てる。

それを脱ぎ捨てたそれは、猛吹雪の中でも鋼色に輝く光を全身に纏いながら宙へと飛ぶ。

後には龍の形をした岩のような物が二つ、山の頂に残されただけだった。

 

 

 

 

 

 

火山

 

それは全ての生命の存在を否定する灼熱の地。

一部の生命をのぞき、そこには住まうどころか近づく事さえ出来ない炎の都。

その火山が連なる一つの火口が突然爆発を起こした。

爆発を起こしたと言っても何も火山が噴火したわけではない。

ただ火口に溜まっている溶岩が、内側が爆発したかのようにはじけたのだ。

 

 

そしてその火口から二頭の獅子が現れる。

一つは青紫の体、もう一つは炎熱のような赤い体。

共通しているのはその身に纏う力が異常だという事……。

なにより、溶岩に浸かっていたはずのその体は、どこも焼けたような跡がなかった……。

 

 

 

【我らがあの男を殺し、魔を手に入れる】

 

 

 

その獅子は翼をはためかせもせずに歩いて頂に登ると、咆吼を上げる。

まるで自らの存在がいる事を、知らせるように……。

 




第二部終了~

いやぁ、一部よりもさらに長くなってしまって結局エピソード五個しか掲載できませんでしたね……
長いにもほどがあるw
前中後の三つに分けることができるなんて……いやぁあほのように長いw

まぁそんな愚痴は置いておくとして、ようやく二部が終了しそしてようやく二部でファンタジー要素が本格的に投入されましたがいかがだったでしょうか?
最初こそバッシングの嵐を想像していたのですが、そんなに否定的意見は出てこず、逆にキャラを動かし切れていないことを指摘されて鬱になっていましたw

いやぁ……未熟なりw

ここまでお読みいただければわかるかと思いますが、第三部はファンタジー要素満載ですw
恋愛話書けるのかなぁ……腕が云々ではなく、純粋に物語の間のどこに掲載するとかそういう意味で……
が、頑張ります

ちなみにほとんど書いていないので次話の掲載はだいぶ先になると思いますのであしからず!!!!
っていうかリアルがうざすぎてテンションだだ下がり……

すいません冗談抜きで半月ぐらいは時間ください……


では勝手に恒例、次話予告……



ギルドナイトでの監視付き生活をしていた刃夜。
料理もできず鍛造もできない生活にいらいらしつつも、一ヶ月の我慢と考えて必死に我慢していた。
クエストも四人で行くことを強制されていやいやクエストを毎日こなして金と素材が増える日々。
フィーアが使用していた武器、鬼斬破の完成度に驚き、なんでか知らないが一緒にクエストに行った連中の自分に対する評価が上がっていくことに疑問を抱くも、面倒なので放置してようやく一ヶ月が経とうとしていたその時に……



……それは起こった……。



次章 第三部 第一話


「動く魔の山」


誰もついてくることが出来ない、孤独な戦いの始まり……


10/8
一部刃夜の罰則とディリートとのやりとりを変更しました。
どてら様、ありがとうございました。

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