リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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予定よりも早く更新。
ぶっちゃけ三ヶ月くらいは更新しない予定でしたが……地震の影響で部屋にこもらざるを得ず時間ができたし、読者様の要望で執筆させていただきました。

活動報告にも書きましたが、東北地方太平洋沖地震でご不幸にあわれた方に心からお見舞いを申し上げます。
第三部からのお話が、ちょっとタイムリーなお話だったので若干上げるのを躊躇していたのですが……

少しでも私の小説で気が楽になるならば……

という一心で書かせていただきました。
お楽しみいただければ幸いです。



古龍襲来
老山龍


目覚めてしまったか……

 

 

地の底で……否、地と同化し、その行く末を見守っていたそれは、そんな言葉を呟いた。

全ての生命の息吹、自然の力を管理する者として……それらの存在はこの大地を脅かしかねない。

だが、それは見守る者。

直接的な力を有しているわけではない。

しかしだからといって何もしないわけではない。

 

 

久しぶりに動かねばならない

 

 

敵が魔力を補給し終わる前に全てのマナを回収する。

それが自分に出来る……役割であるとそれは理解していた。

 

 

ビキビキビキビキ

 

 

丸まるように寝そべっていた体に力を込める。

太古より眠っている間に風雨にさらされ、自身の周りが様々な物で覆われていた。

 

土、岩石、木々……

 

それらを全て払いのけて、それは立ち上がった。

 

 

その身を覆う堅殻は蒼白色。

岩山のごとくのごつごつした体をしている。

そして何よりも、その体はあまりにも巨大だった。

 

 

我、この世のマナを管理し、統べる者。我が名は……ラオシャンロン

 

 

太古の眠りより目覚めたそれ辺り一帯の大地、空を揺るがすほどの咆吼を上げた。

そしてそれは歩き出す。

自分の役目を……果たすために……。

 

 

 

 

 

 

 

 

~一人目~

 

 

「ギャワァァァァァ!」

 

「しまっ!?」

 

 

樹海。

中央にどこにいても見えるような巨大な樹がそびえ、根本は洞窟となっている森。

森と丘と違い、より蔦などの植物が植生しており、背の高い草木の茂るエリアが多く、夜は視界が悪くなる。

 

 

そこに迅竜、ナルガクルガが住み着いて被害を受けてたときいて、俺は仲間と一緒に樹海へときた。

そしてまず最初に見つけたのが俺だったのだが……功を欲した俺は、一人で討伐しようと仕掛けたのだが、相手の速さに翻弄されてピンチに陥っていた。

 

 

前に戦った個体はここまで速くなかったぞ!?

 

 

個体差があるとはいえここまで異常だとは思わなかった。

まるで伸びるようにしなるナルガクルガの尻尾攻撃を避けようとしたのだが、タイミング的に交わす事が出来ず、俺は大剣でガードする。

 

 

ガンッ!

 

 

「がっ!?」

 

 

が、勢いが強すぎて受け止める事が出来ず、俺は吹き飛ばされてしまう。

そしてその時大剣が俺の手からこぼれてしまった。

 

 

まずい!

 

 

武器を落とした上に体勢が崩れてしまった俺は体勢を立て直そうとするのだけど、その前に敵が俺に迫る。

敵の鋭翼が俺を切り裂かん襲いかかってくる。

 

 

「ガァァァァ!」

 

「はい、ごめんよ」

 

「えっ?」

 

 

ガシッ!

 

 

ナルガクルガの攻撃が当たる一瞬前に、俺は横から来た何か捕まれて、世界がぶれた。

俺がいた場所を、ナルガクルガの刃翼が地面をえぐる。

 

 

俺はそこから離れた場所へと、降ろされた。

 

 

「見つけたなら知らせろよ」

 

 

実に面倒くさそうに言葉を紡いだのは全身黒ずくめの男、クロガネジンヤだった。

とある事件で、ドンドルマに生活するようになり、今回のクエストに来ていた男。

 

 

『すげぇ翼だな。その翼、もらい受けよう』

 

 

聞いた事もない呪文のような言葉を言い、その見た事もない細長い武器を使ってナルガクルガの右前足を一瞬で切断していた。

 

 

「えっ?」

 

「ギャァァァァァ!!!」

 

 

あまりのあっけなさに俺は驚く事さえ出来なかった。

普通なら切断する事すらも困難なモンスターの腕を一瞬で切断した。

そしてそ振り切った武器を返しながら首も両断し、あっという間にナルガクルガを倒してしまった。

 

 

す、すげぇ……

 

 

あまりのすごさに溜息しか出てこない。

その強さに……憧れを抱いてしまうほどに……。

 

 

「無事か?」

 

「あ、あぁ」

 

 

それが、噂になっていた男、クロガネジンヤの実力を垣間見た瞬間だった。

 

 

 

 

~二人目~

 

 

「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

モノブロスの頭殻を背負った巨大な蟹、ダイミョウザザミがその背中の角を俺に突きつけようと突進してくる。

その巨体と甲殻の堅さの重さを乗せた一撃は装備の有無なんて関係ない。

避けようと頑張って逃げようとするが、砂に足を取られて思うように走れない。

装備の重さも相まって、どんどん距離を詰められてしまう。

そして暑さを凌ぐために羽織っている全身を包むようなマントも邪魔だった。

 

 

やばい!

 

 

砂漠の商隊が、巨大なカニに襲われたために、その陸路を確保するためのクエストだが、砂漠というのは厄介だった。

昼は灼熱、夜は極寒。

砂漠と言うだけあってそのほとんどが砂地で、日陰などほとんど無い。

しかもその砂はモンスターが潜れてしまうほどに柔らかで、とても走りにくい。

そしてそんな走りにくい地形であるにも関わらず、モンスターは構わず襲ってくる。

その地形に適した形に進化した生物なのだから当然だが……。

局地のモンスター討伐はモンスターだけでなく、自然その物も脅威になるので十分な注意が必要だ。

であるにもかかわらず、ザザミごときと侮ってしまっていた俺は、突然砂の下から出てきたザザミに追われて窮地に陥っていた。

 

 

「直線で避けようとするな」

 

 

はぁっ!?

 

 

そんな言葉が俺の耳に届いたときには、俺は横っ腹に当たった何かに吹っ飛ばされていた。

 

 

ゲシッ!

 

 

「ぐぉぉぉぉぉ!?」

 

 

ドシャァァァァ

 

 

相当強い勢いで蹴飛ばされてにも関わらず、横っ腹には特に痛みは無かった。

ということは一旦当ててからもの凄い勢いで押し上げたのだろう。

なけなしの資金を叩いて購入したグラビモスの素材をふんだんに使って作られたグラビド装備と、同じくグラビモスの素材を用いて作られた、ハンマーを装備しているため、俺は相当な重量級となる。

走りながらのこの俺に正確に押し当てて吹き飛ばすなんて、尋常じゃない。

しかも飛ばされた距離は優に20mほどだ。

 

 

ど、どんな脚力していやがる

 

 

そう考えながら俺は先ほどまで俺が走っていた場所に、全身黒ずくめの男が突っ立っていた。

今回のダイミョウザザミを討伐するにあたり、隊長の指示で付いてきていた男。

名を……

 

 

「クロガネ……ジンヤ」

 

 

クロガネジンヤは、蹴飛ばしたときに落とした俺の装備であるグラビモスのハンマーを、なんと片手で持ち上げて後ろにやると、それを突進してくるダイミョウザザミのヤドに思いっきり叩きつけた。

 

 

「ふんっ!」

 

 

バギャァ!

 

 

「ギィ!!??」

 

 

あり得ない光景でしかなかった。

打撃武器であるハンマーでもそう易々と破壊することの出来ないほどに強固なモノブロスの頭殻が一撃で半分以上粉砕したのだ。

当然それを背負っているダイミョウザザミは驚いてスピードを落としてしまう。

ハンマーを振り抜いたその勢いを利用して、クロガネジンヤはダイミョウザザミよりも高く跳んでいた。

そしていつ抜いたのかわからないが、そのランスと見紛うほど、あまりにも長大な細身の剣を閃かせる。

 

 

「空閃」

 

 

その一言が終わるってからか、もしくはそれが言い終える前なのかわからないがそれがぶれると、ダイミョウザザミの動きが偉く機械的になった。

そしてクロガネジンヤが地面に降りて、空から降ってきた入れ物に武器が収まると、ダイミョウザザミは真っ二つに割れた。

 

 

ブチャァァッァ

 

 

……は?

 

 

あまりにも理解しがたい光景に言葉すら出てこない。

ただ一つ言えることは、この男が異様なほどに強いと言うことぐらいだ。

 

 

「大丈夫か?」

 

「あ……あぁ」

 

 

以前に蒼リオレウスの討伐に向かった時に俺は同行することは叶わず、こいつの実力を目の当たりにしたのは初めてだったが、この一回で全てがわかってしまう。

異常だと。

 

 

つ、強い

 

 

それが、最近ドンドルマで噂になっている男、クロガネジンヤの異常性を初めて見た瞬間だった。

 

 

 

 

~三人目~

 

 

「暑いな……」

 

 

俺は支給されたクーラードリンクを嚥下しつつそうぼやいた。

ドンドルマから南に下って行き、北エルデ地方を越えて、海のそばにそびえ立つ山、ラティオ活火山。

火山には火薬岩と呼ばれる特殊な火薬の塊ともいえる岩石が採取される。

それは飛竜用の特別な大砲の弾に使われる。

普通の大砲の弾は本当にただの鉄の塊や、鉱石採取の際に出てきたくず石と鉄の化合物だ。

この火薬岩を用いて造られた大砲の弾は貴重品のために滅多な事では使われる事はない。

何故かとういうなら答えは単純だ。

火山の奥地でしか採取する事の出来ない火薬岩はとてつもなく貴重だからだ。

 

 

麓であるにも関わらず、ここも相当暑い……

 

 

火山でのクエストという事で、俺は火に強いイーオス装備でここに来ていた。

ここはまだ麓なのでこの格好でもどうにか活動できるが、これ以上火山に近づけば途端にマグマの猛威が俺たちを襲う。

クーラードリンクで発汗作用を促して、少しましになっているが所詮はそれだけだ。

火山で活動するには、特殊ともいえる作業服を用いて活動をしなければならない。

グラビモスの甲殻を薄く加工し、氷結晶をフルフルの皮で挟んだ物を中に敷き詰めた物を来て、ようやく活動できる、といった感じだ。

しかしグラビモスが下山してくる事は希であり、とても貴重品なのでザザミやギザミの甲殻で代用される事が多い。

そんな余りにも戦闘に不向きな格好をしているために、火山内部でに活動はとても限定された事しかできない。

ほとんどが鉱石採掘のみだ。

モンスターの討伐など、出来るわけがない。

今回のクエストは、山の麓に住み着いたバサルモスの討伐依頼だった。

 

 

せっかく火薬岩を採掘して、火山用の特殊台車(リオレウスやバサルモスなどの素材で造られたある意味貴重な台車)で運んできて、麓でバサルモスに襲撃されて無駄になったために回ってきた依頼だ。

 

 

これでは見分けがつかないな……

 

 

俺はこの火山付近で一番広い平原となっている場所で溜め息を漏らした。

バサルモスは岩のごとき甲殻をしており、生半可な攻撃ではびくともせず、別名を岩竜。

形状が岩に似ているために周りの岩石に擬態しており、その判別はきわめて困難だった。

呼吸でわかりそうなものだが、それも潜られてしまうとほとんど見分けがつかなくなってしまう。

攻撃したりして判別してもいいのだが、俺の装備は片手剣……片手棍棒といえる小鉄塊と、バサルモスの素材から造られたヘビィボウガンのアースイーターだ。

バサルモスの堅い体を剣で切るなど不可能だからこの小鉄塊を使用するのだが、岩の数が多い。

ヘビィボウガンの拡散弾で敵の甲殻を破壊するのがセオリーだが……いかんせん弾には限りがあるので無駄に使えない。

かといって近寄りすぎると突如地面から現れたバサルモスに手痛い攻撃をもらってしまう。

 

 

「おい? 攻撃していいのか?」

 

「へ?」

 

 

俺がどう判別しようか悩んでいると、今回の同伴者の一人である、クロガネジンヤという男がそう言ってた。

目の色、髪の色、肌の色、そして装備までも異様な男で、ある種の不気味さを覚えてしまう男だ。

見た事もない細長い棒のような物を腰にぶら下げて、手には余りにも細長い蒼い棒を手にしている。

 

 

先っぽに金属で出来た刃がついているから槍のようだが……こんな細さで折れないのか?

 

 

いろいろ聞きたい事はあるが、しかしこの男の不気味さがそれを俺にさせないでいた。

 

 

「攻撃ってバサルモスをか?」

 

「当然だろう?」

 

「……どれがバサルモスなのかわかっているのか?」

 

 

先にも述べたがここは火山付近で一番広い場所で、その分岩の形も多彩な物が多く、しかも数が多い。

どうやって判別しようか考えていたのだが、この男にはどこにバサルモスがいるのかわかっているといった感じがあった。

しかしまだここの平原に来たばかりで、まともな調査もしていないはずなのだが……。

 

 

「暑いしさっさと終わらせよう」

 

 

俺がそう疑問を感じているとさっさと少し離れた岩に近づくと、腰を落として槍を構えた。

 

 

『蒼焔……八寸!!!』

 

 

あまりにも聞いた事のない言葉を発すると同時に、その手が見えなくなり、槍がぶれて、目の前の岩に突き刺し、穿った。

 

 

「…………は?」

 

 

あまりの非現実な光景に呆然としてしまう。

何せ岩を槍で貫き通したのだ。

この辺の岩には金属が多分に含まれているためにとても堅い。

なのにそれを物ともせずにあの男は岩を槍で刺したのだ。

 

 

「ガァァァァ!」

 

「うっそ!?」

 

 

しかも、言っていたとおりクロガネジンヤは一発で岩に擬態しているバサルモスを探し当てていた。

背中の一部で、先ほど槍で貫かれた場所から赤い血が流れ出ている。

 

 

『一刺!』

 

 

再び聞いた事もないような言葉を呟くと、再び槍が消えた。

 

 

ブシュウウウ!!!!

 

 

「え?」

 

 

手が見えたと思ったら今度はバサルモスの額から血が流れて、バサルモスは何も言わずに崩れ落ちてしまった。

余りにも信じがたい光景の俺は目を何度も瞬いてしまう。

 

 

『うわまずい、刃が欠けた! ……刺す角度が直角じゃなかったなこの欠け方は……。……やっぱり槍はまだ修行不足かぁ……』

 

 

呆然としていると、クロガネジンヤが槍の先端を見ながらなんかを呟き溜め息を吐いた。

何を言っているのか全く理解は出来なかったが、これだけは言えた。

 

 

溜め息を吐きたいのはこっちだよ!?

 

 

並の鉱石よりも堅いバサルモスを文字通り一瞬で葬り去った。

何という化け物じみた力だ。

これでは……。

 

 

どちらか|怪物(モンスター)かわかったものじゃない……

 

 

余りにも異質なその力。

それが俺とクロガネジンヤという不気味な男との出会いだった。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

俺の名前は鉄刃夜。

現代日本に住んでいたちょっと普通とは言い難い男。

家が刀鍛冶で剣術の腕を買われての裏家業を商う家の跡取り息子。

そしてその裏家業を終えて、船に揺られて日本へと返っていたその時に……この、モンスターがはびこる世界に流れ着いた。

 

 

どうやって、というよりもどうしてこの世界に来たのかはわからないがともかくこの世界に来て早四ヶ月と少し。

一週間ほど前の、俺の家族、飛竜リオレウスのムーナを手に入れようとして卑怯な手段で俺の逆鱗に触れた貴族をぶっ飛ばし……。

その罪から一ヶ月のドンドルマで監視付き生活をする事になった俺は、いったんユクモ村を離れてドンドルマのギルドナイトの宿舎で生活をしていた。

宿舎で生活しているので、食事炊事といった仕事はしなくていいので、買い物に行く必要もないのでクエスト以外引きこもっていてもいいのだが、出歩きたくなるのが心情だろう。

というよりもこの出歩きは俺のやりたい行動の代替行為でしかない。

 

 

あ~~~……鉄打ちて~

 

 

武器の鍛造が出来ず、しかも料理も出来ない。

俺の趣味は武器の鍛造と料理だ。

ユクモ村に造った俺の家にはどちらもすることが可能なのだが、今はこのドンドルマで仮の私生活を行っている。

料理はともかく、鍛造する施設なんぞあるわけがない。

まぁ鍛造道具はきちんと持ってきているんだけど……。

 

 

俺の魂の一つだし?

 

 

鍛造道具は鍛冶士の魂だ。

放置するわけもない。

逆にこの鍛造道具が手元にあるおかげでさらに鉄が打ちたくなってしまっていた。

 

 

放置するわけにはいかず、かといって手元にあっても鍛造できないこのジレンマ……

 

 

はっきり言って生殺し以外の何物でもない。

 

 

「何考え事してるんだ? ジンヤ?」

 

 

そうしてぼけっとしながら街を歩いていると、監視役のフィーアが俺に声を掛けてくる。

ギルドナイト所属ハンターフィーア。

 

 

この世界にはびこるモンスターという怪物を狩るための存在、ハンター。

そのハンターのエリート集団、ギルドナイト。

そこに所属する事を許された凄腕ハンター、フィーア。

俺が住み着いた村、ユクモ村出身の女ハンターだ。

 

 

何度かクエストを一緒にした事もあり、俺の監視役に抜擢された俺の弟子の一人だったりする。

 

 

「何でもない。ただこの生活が疲れただけだ」

 

 

俺はものすごく気怠げにフィーアにそう返した。

好きなことが出来ないのは確かに辛いがそれ以上に今の俺の立場と状況は最悪の一言に尽きた。

それもそうだろう。

何せ……。

 

 

「あれが、貴族に襲撃した男か?」

 

「やばすぎるだろ? っていうか命知らすにもほどがある」

 

「何で死刑になっていないんだ? いくら監視をつけているとはいえ」

 

「ザンマルトにはいろいろ黒い噂があっただろ? それの調査が出来たし、事情が事情だから特別らしい」

 

「事情? あぁ、リオレウスを飼っているって噂か? あれ本当なのか?」

 

「俺の知り合いにギルドナイトに所属しているやつがいてそいつから聞いたから間違いない。それにギルドナイトの家畜小屋が最近増えたって話もあるし」

 

 

街を歩けばこれである。

貴族襲撃の件は街中どころか、この大陸のほぼ全土に伝わっているのである。

隠そうにも俺がムーナで突撃を行ったので隠し通す事も出来ず……。

 

 

「ムーナのためにも、いっそのこと周知の事実にして、もう誰も手出しできないように存在を明白にしておこう」

 

 

というディリートの意見でムーナと俺の存在を大々的に告知してしまったのだ。

そのおかげでムーナにちょっかいを出すやつはいなくなったが、有名人になってしまった。

鬱になりそうになってしまう。

嫌なら部屋に籠もっていればいいのだが、それだと気が詰まるのでこうして出歩くのだが……。

ちなみにムーナはギルドナイトに作られた家畜小屋に正式に迎えられ、俺専用の家畜となっている(この家畜って言い方気に食わないけど)。

最初こそムーナの安否を心配し、ムーナと一緒に寝ていたけど最近は問題なさそうだった。

さすがに貴族に殴りこみをするようなやつにちょっかいを出そうと思わないのだろう。

 

 

……うぜぇ

 

 

「どうした? ジンヤ? 景気の悪そうな顔して?」

 

 

そうして俺がフィーアと共に歩いていると、ハンマーを腰に装備し、なんかグラビモスとか言う大型のモンスターの素材を使った装備を纏った男が、俺に肩を回してきた。

 

 

「何のようだ? マハバ」

 

「つれないな? お前が景気悪そうな顔して歩いているから声を掛けたのに? フィーアって言う美人と一緒にいるんだからもう少し楽しそうにしたらどうだ?」

 

「マハバ。私をからかっているのか?」

 

「そんなことあるわけないだろ?」

 

 

何でか知らないが、少し前にクエストで一緒になって以来、妙に親しく(っていうかなれなれしい?)してくるこの男。

フィーアとも面識があるらしく、こうしてよく俺に声を掛けてくるようになった。

 

 

いや、こいつだけじゃないか……

 

 

「お、ジンヤじゃね~か? どっか行くのか? 飯? 俺もついて行っていい?」

 

「飯だよ。付いてくるなら勝手に付いてこい」

 

「ジンヤ。今度フィーア抜きで私をどこかに連れて行ってくれると言う約束はどうなった?」

 

「そんな約束をした覚えはない」

 

「ジンヤさん! 聞いてください! 今日クエストに行ったときの話なんですけど」

 

「今から飯に行くからそれが終わってから聞いてやる」

 

「お、ジンヤ!」

 

「ジンヤさん、どこいくんですか?」

 

 

とまぁ……何でか知らないが、俺を慕ってくるやつが異常に増えた……。

まぁそれと同じくらいに俺を敵視しているやつも増えているんだが……そいつらは俺にちょっかいを出してこないのでまだこいつらより楽だ。

 

 

命を救ってやったのは確かだがそれだけでここまで慕われるものだろうか?

 

 

よくわからんが言うことは一つだ。

 

 

め、めんどくさい

 

 

「……いつの間にか大人気だなジンヤ」

 

「あぁ? 人気だぁ? 面倒なだけだろうに……」

 

 

何でかふてくされるフィーアに俺は実にうざったそうに(実際うざったい)返事をする。

そして十人近くにふくれあがったハンター達と一緒に、俺は行きつけの店である以前にリーメと共に来たギルドナイトの登録所が経営している店へと入っていった。

 

 

「いらっしゃいませ! あれ、ジンヤさん。こんばんは」

 

「こんばんわ」

 

「今日は随分と……大所帯ですね?」

 

「……言うな」

 

 

店に入って対応してくれたウェイターの子とそんな会話をしながらこの人数で食事が出来るテーブルに案内してもらう。

するとさっきの子とは違う女の子がやってきた。

 

 

「いらっしゃいませジンヤさん! いつもご利用ありがとうございます」

 

「おう」

 

「リーメさんと一緒に来た文字も読めない人がこんなにすごい人だったなんて、思いもしませんでしたよ」

 

「やかましい」

 

 

その子は俺がリーメともにドンドルマへとやってきたときに受付をしてくれた女の子でファルナだった。

その時しか会っていないというのに本当に俺の顔を覚えていたのは少々驚いた。

 

 

まぁ異人ってのもあるだろうな

 

 

「リーメさんってこちらには来られないんですか?」

 

「来てないよ。あいつもあいつで依頼があるからな」

 

「……そうですか」

 

 

なんかもの凄く落胆してるんだが……これはつまりそう言うことでいいのかね?

 

 

青春だね~っていうかリーメも隅に置けないな……

 

 

年寄り臭いことを考えながら俺は、とりあえず運ばれてきた幻獣ミルク(いつも頼むので来たら勝手に出してくれる)を飲み干す。

他の奴らは楽しそうにホピ酒がなみなみとつがれたジョッキを打ち付けて飲んでいた。

 

 

ん? 俺は飲まないのかって? 日本酒以外苦手なのだよ

 

注・お酒は二十歳から飲め

 

 

「なんだ? ギルドナイトの英雄様は酒も飲めないお子様なのかよ?」 

 

 

そうして俺らがぎゃーぎゃー騒ぎながら食事をしていると、後ろの席からそんなヤジが飛んできた。

その言葉に、俺を除いた俺と一緒に来たメンバーが一瞬で静まり返り、その声がしたほうへと顔を向けた。

いや正確には向けようとした。

 

 

「ギルドナイトの隠し玉は酒も満足に飲めないのかよ?」

 

「調子に乗っていても所詮はお子様か」

 

「ちっ。そのお子様のせいでこっちはえらい被害受けているのに」

 

 

後ろだけでなく、ほかのテーブルからも野次が飛んでくる。

そのことに他の連中が露骨に顔をしかめ始めた。

別に気にする必要はないというのに……。

 

 

っていうか貴族に喧嘩ふっかけた俺によくぞまぁこんな事言ってくるな……頭おかしいんじゃないのか?

 

 

貴族に喧嘩売った俺がある意味で一番頭がおかしいのだがそこらは気にしない方向で。

しかし純粋に感心する。

まぁ単に酒が入っていつもよりも感情的になっているというのが真相だろうが。

貴族に喧嘩=死刑確定とまで言われていて、その貴族に喧嘩を売るような馬鹿であるこの俺にここまで露骨に喧嘩をふっかけてくるとは……。

まぁ彼らからしたら眉唾ものなのかもしれない。

実際自身の目で見ないと納得しないのが人間という生物だ。

百聞は一見にしかず、ということわざは本当に的を射ている言葉である。

俺の周りにいるギルドナイトの連中も最初は邪険に扱っていたからな。

 

 

「おい、英雄?」

 

「言い返すことも出来ないのか?」

 

 

何も言い返す事が出来ないのではなく純粋に感心していた俺。

こういった類は放置しておけば黙るので放っておこうと思ったのだが……。

 

 

「おい、貴様ら。その侮辱はどういう意味だ?」

 

 

フィーアがそれに反応しちまったよ……

 

 

俺は心の中で思わず溜息を吐いてしまう。

どうしてこういったバカにこの女は反応してしまうのか。

 

 

「おいおい女に任せるのか?」

 

「英雄なんてのは誇張か? 飲むものが子どもならば言い返すこともできないような小心者かよ!」

 

「それともしゃべれないのか?」

 

 

その言葉に場にいるほとんどのハンターたちが嘲笑し出す。

それに対してフィーアが何か言い返そうとするのだが、その前に俺は手を出して制止した。

 

 

「よせフィーア」

 

「ジンヤ? しかしだな!」

 

「なんだ話せるのかよ?」

 

「てっきり|聾唖(ろうあ)の人間かと思ったぜ?」

 

 

バカにする言葉がどんどんエスカレートしていくのがよくわかる。

しかしそれらも心頭滅却すればどうってことない。

それがただの根拠もなく、やっかみで俺自身に向けられる罵倒ならばだ。

しかしこの次の言葉は聞き逃す事が出来なかった。

 

 

「てめぇがこんなならてめぇの自慢のリオレウスを捕獲しにいっても問題なさそうだな?」

 

 

俺の事を罵倒するなら何とも思わない。

 

 

だが……

 

 

家族の事を罵倒するのは許さない。

 

 

ズダン!

 

 

テーブルに水月を叩きつける。

この場だけでなく、この店の外にも響くような勢いで。

突然の音にその場が静まりかえった。

 

 

「な? なんだよ?」

 

「上等だ」

 

「あ?」

 

「その喧嘩買ったと言ったのだ」

 

「お? やんのか?」

 

 

俺の言葉に周りにいた全員が臨戦体勢に入った。

といっても大概の連中は酒が入っているので動きが緩慢だ。

 

 

「喧嘩と言えば殴り合いだけか?」

 

「あぁ?」

 

「あそこにちょうどいいと思えるのがあると思うのだが?」

 

 

そういって俺が指さしたのは酒場の中央付近にある、上の部分に二つの丸いくぼみがある大樽だった。

 

 

「お前らは俺が気にくわない。俺としても貴様らの人の家族の事を家畜のように扱うその態度が気にくわない」

 

 

俺は先ほど指さした大樽へと向かっていく。

そして片方のくぼみに肘を乗せる。

 

 

「誰でもいい。かかってこい」

 

「上等だ!」

 

「叩きのめしてやる!」

 

 

いかにも三下な台詞をほざきながら次々とこの場にいるハンター達が樽の反対側へと回り肘を乗せて俺と腕相撲をする。

 

 

え? 結果? 聞くまでもないだろ?

 

 

 

 

「はい終了」

 

 

わずか数分足らずでその場で文句を言い出し、さらに腕相撲を仕掛けてきた連中は軒並み地面に沈めてやった。

手のひらからついでに気も流し込んでやったので当分立つ事もままならないだろう。

 

 

はっ、ざまあみろ

 

 

地面に倒れた連中を文字通り見下しながら、俺は内心で罵倒しまくった。

喧嘩をふっかけてきた連中だけでなく、俺にくっついてきた連中でさえも俺の事を唖然と見つめていた。

まさか腕相撲まで強いと思っていなかったようだ。

ただ一人フィーアだけは半ば呆れた表情をしていた。

さすがにフィーアはこの分かりきった結果のことを予想できていたようだ。

 

 

「……できるか」

 

「ん?」

 

 

とりあえず終了したと思って、俺は崩れ落ちた連中を眺めていたのだが、そうしているとそのうちの一人が崩れ落ちた体を奮い立たせて、立ち上がった。

雰囲気的に何か危なげな物を感じ取った俺は一応そいつに注目し、警戒をする。

 

 

「納得できるか!? 腕相撲だけで!?」

 

 

そう激昂すると共に、相手が腰にぶら下がっていた剥ぎ取りナイフをこちらに向けてきた。

さすがに武器を向けてきたことで、他の連中にも動揺が走った。

 

 

「……確かにお前はすごい強いのかもしれない。だからといって何をしても許されるって訳じゃねぇ!」

 

「ほう? それはどういう意味だ?」

 

 

ギルドナイトの連中だけでなく、普通のハンター達もそいつを止めようとしたが、俺はそれを制止した。

こいつから漂う薄暗い殺意は、ただ俺が強すぎる事を憎んでの行為ではないと思ったからだ。

 

 

あまりにもぼろすぎる防具。

今俺に差し向けている剥ぎ取りナイフも、あちこちが刃がこぼれていた。

そして装備の隙間からのぞく肌も傷跡だらけだ。

それもモンスターの噛み傷や、爪のひっかき傷と思しき物がほとんど。

よほどモンスターを狩りまくってきたのだろう。

 

 

 

まるで、モンスターを殺す事が自分の存在意義だと……そう言っているかのようだった……。

 

 

 

「……モンスターを飼うなんて正気じゃない」

 

「飼っているわけじゃねぇ。俺の家族だ」

 

「はっ!? 家族だって? ……本気で言っているのか?」

 

 

声が据わってきた。

本格的にやばい感じの雰囲気になってしまっている。

 

 

「モンスターに村を襲われて、家族を失ったやつだって大勢いいるんだぞ! それなのによくモンスターが家族だなんて言えるな!?」

 

 

そう言う事か……

 

 

その台詞で合点がいった。

つまり、こいつはリオレウスじゃないにしろ、モンスターに家族を殺された人間のようだ。

このモンスターのはびこる世界では珍しい話でもないようだ。

回りに意識を向けると、こいつほどではないにしろ、こいつと同じように鈍い殺気を俺に向けてきている奴らが多数いた。

 

 

「俺の村は十年前にリオレウスに襲われて……俺の……家族は……」

 

 

あ~……殺されたのリオレウスだったか……。ある意味しょうがないか……

 

 

どうやら仇さえもリオレウスだったらしい。

 

 

依頼をほとんどかっさらう俺。

そして俺が飼っているリオレウスのムーナ。

俺という憎むべき存在がいて、そしてそいつが自分の仇敵であるリオレウスを飼っているとかほざく。

その佇まいから、今まで恨みを晴らすためにモンスターを殺しまくってきたのだろう。

だけど、こいつの装備と立ち居振る舞いから判断するに、リオレウスを倒すほどの腕前はないと見える。

金さえ掛ければ、防具は大概の物は買えるので、防具だけでは判断しかねるが少なくともイャンクックが倒せるか否か、というレベルだ。

 

 

仇とも言えるリオレウスが殺す事を出来ず、それを紛らわすために他のモンスターで代用していたら、リオレウスを家族と言い張る男が目の前に現れた。

そのリオレウスは好戦的な性格ではなく、むしろおとなしい。

つまりは殺しやすいという事だ。

しかも自分の手の届く範囲に居座っている。

 

 

仇敵。

憎むべき相手を家族と宣う男。

殺してくれと言わんばかりの仇敵がすぐそこにいる。

そして今までの恨み辛み。

 

 

これだけの条件が揃えば爆発するのも無理はない……。

 

 

「ふむ。まぁお前の事情はわかった。それで?」

 

「それで……だと?」

 

「悪いがお前の事情なんぞ俺は知った事じゃない。お前がその十年前にどんな思いをしたのかもわからない」

 

 

激昂している相手にいう台詞ではないので、周りが瞠目した。

それはそうだろう。

こんなことを言うなんぞ、殺してくれと言っているようなもんだ。

 

 

「お前の憎しみわからんでもない。が、家族を殺させるわけにはいかない。そして貴様は今、俺に刃を向けている」

 

 

ゆっくりと……、本当にゆっくりと、俺はそいつに無表情のまま歩み寄った。

両手を広げて。

 

刺せ、と言わんばかりに。

 

 

「生物を殺し得る得物を人に向けた以上、それを俺に突きつけない限り俺がお前を殺すぞ?」

 

「!? おいジンヤ!」

 

 

さすがに今の発現で見ていられなくなったのか、フィーアが飛び出してきた。

だが。

 

 

「下がっていろフィーア!」

 

 

俺は殺気さえも込めて、フィーアの動きを止めた。

この世界では人殺しは大罪というのはわからないでもない。

何せモンスターがはびこる世界が。

そして村でさえも油断すれば飛竜と言ったモンスターに滅ぼされてしまう。

明日にもモンスターが攻めてきて死ぬかもしれないという状況で、人殺しをするなんてのは大罪以外の何物でもないだろう。

そして目の前にはモンスターに家族を殺された男。

 

 

だが……だからといって人を殺す事の出来る武器を人に向けていい理由にはならない

 

 

そう、こいつは確かにモンスターに、リオレウスに恨みがあるのだろう。

家族を殺されたんだ。

恨みがあるのは当然だし、その恨みを責めるつもりも、諭すつもりも、ましてや間違っているなんて言う気はさらさらない。

けれどこいつはナイフを俺に……人に向けた。

 

 

ナイフは人を殺せる道具……それを人に向けるならば……

 

 

それ相応の覚悟がなければ許せない

 

 

「どうした? 俺を殺したいんじゃないのか?」

 

「お、お前じゃなくお前のリオレスウスを」

 

「なら何故俺にナイフを向けた? 脅しのつもりで向けたのか?」

 

「そ……それは……」

 

 

激情に任せて抜いたというのが本人の理由なのだろうが、そんな物は理由にならない。

 

 

人を殺す覚悟も無いくせに、人に得物を向けるなど……言語道断!

 

 

「どうした!? てめぇの恨みってのはそんな物か!?」

 

「っ!?」

 

 

わざと挑発的な事を言って、迷っていた相手の背中を押してやった。

 

 

「あ、あぁぁぁあぁぁっぁあ!!!!!」

 

 

そして、そいつは走り寄ってきて……

 

 

俺の腹部に……灼熱が走った。

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

!? 刺された!?

 

 

あそこまで促す物だからてっきり避けてカウンターで仕留めるつもりだと思っていた私は動揺した。

それにジンヤの服は何でか知らないがそこらの防具よりも以上に防御力がある。

てっきり弾かれるかと思っていたが相手のナイフが深々と、ジンヤの腹部にめり込んでいった。

 

 

「ジンヤ!?」

 

「ジンヤさん!?」

 

「おいお前、何くらってんだよ!?」

 

 

ジンヤの異常性を知る仲間達も同じような事を思っていたようだ。

しかしその言葉にもジンヤは見向きもせず、ただ自分の腹部を刺した相手の事を見つめていた。

 

 

「あ……あぁ」

 

 

相手もまさかジンヤにさせると思っていなかったのか、恐怖で体が震えている。

そして恐怖の余り動く事も出来ないのか、刺した姿勢から動く事さえ出来なかった。

 

 

「刺し方が甘い……」

 

 

誰もが呆気にとられ沈黙をしている中、その沈黙を破り声を上げたのは刺されたジンヤ本人だった。

腹部を剥ぎ取りナイフで刺されたにも関わらず、その顔には苦渋の色もなく、痛がってもいない……あまりにも平然としすぎていた。

 

 

「急所に外れている上に、刺したならさらにダメージを与えるためにナイフその物を回転させろ」

 

 

そうおもむろに解説をし出すと、広げていた両手をナイフを握っている相手の手に添えると、なんとその状態でナイフを回転させた。

 

 

!? 何考えて!?

 

 

「あ、ああぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「離そうとするな」

 

 

咄嗟に離そうとした相手を叱咤し、添えた手にさらに力を込めた。

回転させた事によって、血が噴き出し二人の手を赤く染めていく。

自身の手が紅くなった事で、怪我をしたわけでもないのに、相手が声を上げる。

 

 

「……これが命だ」

 

「は、離せ!!! 離してくれ!!!」

 

「逃げようとしてんじゃねぇ!!! お前が俺にしようとした事だろう!!!」

 

「だ、だって、本当に刺すつもりは……」

 

 

相手が半狂乱に声を張り上げる。

しかしそれでもジンヤは手を離さなかった。

やがて相手が死ぬ気で手を振り払い、ジンヤから離れた。

互いの手が真っ赤になっている。

腹部からものすごい勢いで血が出ているが、ジンヤは腹部を一瞥すらしなかった。

 

 

「ちっ、たく。忘れ物だ」

 

 

しかもあろう事か、何のためらいもなくナイフを引き抜くと、相手に向かって放り投げた。

目の前に投げられた血まみれになったナイフを、相手はただ呆然と見つめいた。

 

 

「あるところに……人を殺した人間の息子がいた」

 

 

誰もが息をのんで行く末を見守っている中、ジンヤが突然全く関わりのない事を語り出した。

その表情には何の感情も移されておらず、まるで仮面のようだった。

 

 

「人々はその人殺しの息子を、そいつが人殺しの息子と言うだけで差別し、相手にしようとしなかった。

 人殺しの子供である事は事実だったために、そいつ自身も強く言えず、必死に耐えた。

 けどそいつは話せる相手が欲しかった、友達が欲しかった。

 だから頑張って人の役に立とう、認めてもらおうと必死になった。

 けどそれでも人々はそいつを認めなかった。

 近寄るだけで石を投げ、近寄るなと怒鳴った。

 直接的な行動をしないまでも、他の人間もそいつにも暴力を振るっている人間にも何も言わなかった。

 それでもそいつは頑張ったが、それでも認めてもらえず最後には諦めて、自害してしまった」

 

「……」

 

 

突然のたとえ話を、誰も茶々を入れずに真剣に……聞き入っていた。

相手も、目の前のジンヤが語る言葉を、恐怖しながら聞いていた。

 

 

「さて問題だが……この話の中で悪いのは誰でしょう?」

 

 

明らかにこのたとえ話は今の……ジンヤとジンヤのリオレウスのムーナ、そして相手の男の話である事は明白だった。

男もそれがわかっているのか吐き捨てるようにこう言った。

 

 

「……回りの連中が悪かったって言うんだろう!? ふざけるな! 今話しているのは人間の話じゃ……」

 

「同じ事だ。人間がリオレウスに変わっただけだ」

 

「同じ!? 人間とモンスターが一緒だって言うのか!?」

 

「当然だろう? 同じ生き物だぞ?」

 

「ふざけるな!!!!!! 相手は人さえも殺し、喰らってくるモンスターなんだぞ!!! 人間と一緒な訳……」

 

 

 

「自身の欲望のためにモンスターを殺し、その素材で武器防具を造るのを自慢している貴様らと何が違う!?」

 

 

 

「……!?」

 

 

殺気さえもこもったその叫びに、回りの連中も、相手さえも何もいなくなってしまった。

再び静まりかえる酒場で、ジンヤと夜のドンドルマのざわめきだけしか聞こえない。

 

 

「……さて、先ほどの質問の答えだが……答えは、全ての人間が悪い……だ」

 

「……え?」

 

 

その回答に、誰もが驚きの声を上げた。

私も、てっきり人殺しの子供を相手せず、差別した人間が悪いと言うと思っていたのだが……。

 

 

「最初から相手にせず、差別した連中は悪い。だが、そいつらを注意もせず、ただ眺めていただけの連中も結局そいつの意志を見殺しにした。そしてそいつ自身も最後の最後で諦めてしまった……。自分の意志も、今まで頑張ってきた努力も全て自分自身で否定したんだ……だから全ての人間が悪い……」

 

「……」

 

 

意外な答えに……誰もが何も言えずにいた。

ジンヤさえも沈黙し、外のざわめきしか聞こえてこなかった。

 

 

「さっきも言ったが俺はお前が十年前にどういう思いをしたのかはわからん。モンスターが憎いというのしかわからない。だが、ただモンスターというだけで俺の家族を殺すのは許さん……。それでも殺したいというのなら……」

 

 

そこでいったん間をおき、その後とんでもない事をジンヤは口にした。

 

 

 

俺を殺してから俺のリオレウスを殺せ

 

 

 

「!?」

 

 

相手を見つめるその真剣な瞳が……その言葉に嘘がないと……如実に語っていた。

無論本人としてもただ殺されるつもりはないのだろう。

だが、それでも人を殺すというのは……誰もが躊躇する行為で……。

それに誰もが殺されたくないはずだ……。

 

 

なのに……

 

 

殺す事も……殺される事も……ジンヤは全く躊躇しない……するはずもない……。

 

なぜだかそんな事が確信として理解出来てしまった。

腹部の傷は誰もが絶叫を上げるほどの大けがであるにも関わらず、声を上げるどころか顔色一つ変えない……。

ジンヤ……お前は……いったい……。

 

 

 

今までどんな人生を歩んできたと言うんだ?

 

 

 

「ファルナ」

 

「は、はい!?」

 

 

まるでお通夜と化したと言っても不思議じゃないほど静まりきった中で、再びジンヤがその沈黙を破ってウェイターを呼んだ。

呼ばれた相手はジンヤがリーメと共にハンター登録をしたときに受付をした女の子だった。

 

 

「騒がせてすまなかった。少ないが、騒がせ代だ。とっておいてくれ」

 

「え、そんな、受け取れません」

 

「気にするな」

 

 

そう言うと、半ば強引にずっしりと大量に硬貨の入った袋を、ファルナに渡した。

その中身は今日行ったクエストの報酬代金丸ごとなので、私たちがおなかいっぱいに食べてもまだおつりが来るほどの代金だ。

それほどの大金にも躊躇せず渡し、ジンヤは治療も何もせず、店から出ていってしまう。

 

 

「ジ……」

 

 

最初は追いかけようとした私だったが……その背中が拒絶しているように見えて……追いかける事が出来なかった……。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

「あまり面倒ごとを起こさないでくれ……」

 

 

腹部を血まみれにしてギルドナイトの宿舎へと帰ってきた俺は、とりあえず治療を行った後、ディリートに呼び出されていた。

腹部を怪我した理由を聞いて心底呆れていた。

まぁ自分から腹部を刺されるなんて普通はしないからな。

 

 

「リオレウスの問題が片付けられてないからしょうがないだろう?」

 

「前例がないからな……」

 

 

まぁ確かに前例が無いのは仕方がないだろう。

俺としてもこんなに問題が起こるとは思っていなかった。

 

 

「というか、その怪我本当にそれだけの治療でいいのか?」

 

「あぁ。あまり不純物を入れすぎると戦闘に支障が出る。それと相手の男の事だが罪には問わないでやってくれ。刺したのは事実だが、俺が促したし、避けなかったのも俺だからな」

 

 

俺は腹部の怪我は、ただガーゼを当てて包帯を巻いただけで縫う事を拒絶した。

血は腹部の筋肉を締めて止血し、さらに気を巡らせてとりあえず穴だけ塞いだから必要ないからだ。

まぁ本当に薄皮一枚程度で塞いでいるだけなので、あまり動かしすぎると穴がまた空くが。

それと相手の男の処分は無罪放免にしてもらった。

俺が刺せ! とまるでMみたいな発言をしたからあいつは刺したような物だからな。(ちなみに俺はMじゃない。ノーマルだ)

まぁ人にナイフを向けた事は許さないが、先ほどあれだけうろたえていたのだからもうすることはないだろう。

 

 

「……戦闘って明日もクエストに行くつもりか?」

 

「当然だろう?」

 

「却下だ。しばらく安静にしていろ。医師にもそう言われただろう」

 

 

ディリートの言うとおり、確かにギルドナイトの医師には絶対安静と言われたが……如何せん急所にも外れているのでたいした怪我でもないのだ。

だが普通の人間ならば確かに絶対安静だし、一日で直るわけでもないのでそう言われるのも無理はない。

 

 

「しかし暇なんだが……」

 

「いいから安静にしていろ。とりあえず明日は部屋から……」

 

「隊長!!! 緊急事態です!!!」

 

 

そうして二人で問答をしていると、ものすごく慌てて、息を切らせながら一人の男が部屋へと入ってきた。

ノックもなしの出入りに顔をしかめるところだが、相手の慌てようが、それを出来なくさせていた。

 

 

「何があった?」

 

「か、観測班より……緊急連絡で……し、信じがたい事なのですが……」

 

「そんな事はいい。早く報告しろ」

 

「イ、イルファ山脈付近で……ら、ラオシャンロンを確認したと……」

 

「!? 馬鹿な!? 確かか!? 古龍種と言われるモンスターだぞ?」

 

 

ら? なんて言った? ラオ……シャロン? しかも古龍?

 

 

聞き慣れない単語だったが、会話から言ってモンスターのことだろう。

しかも古龍といえば伝説や伝承に出てくる眉唾なモンスターのことではなかっただろうか?

ものすごく早いので断片的にしか聞き取れないが、なんかここに来るとか、人民の避難とか言ってるけど……。

 

 

そんなに凶悪なモンスターなのか?

 

 

相手がどんな存在なのかわからない俺はぼへっと、二人の慌て振り見ながらのんびりと、出された水を飲んでいた。

言語がある程度不自由なく出来るようになったが、早すぎると全くわからない。

 

 

まぁその分日本語が今どうなってるか全くわからないけどね~

 

 

発音が変になっていない事を祈るばかりである。

 

 

「気球は?」

 

「すでに飛ばしましたが……そこまで速度が出ませんので……時間が……」

 

「くそ。少しでも時間が惜しいというのに……。最後に確認された時の位置は?」

 

「まだアルフレア付近でしたが……今朝の報告なので……」

 

「だいぶ近づいていると見るべきか……ジンヤ」

 

「あ?」

 

 

俺に話題が巡ってくると思っていなかったので、若干間抜けな声で返してしまった。

 

 

「隊員に警戒態勢を促せ。それと箝口令もだ。パニックになるのは避けたい」

 

「はっ」

 

 

入ってきた隊員に指示を出して走らせると、今度は俺に詰め寄ってきた。

 

 

またぞろ面倒な事頼む気か?

 

 

「頼む。お前のリオレウスを貸して欲しい」

 

「貸す? どういう事だ?」

 

「ラオシャンロンの位置を確認したい。気球よりもリオレウスの方が現場に急行できるはずだ」

 

「ムーナを貸すのは構わないが……あいつ俺しか背中に乗せようとしないぞ?」

 

 

ここ、ドンドルマに来てから何人かがムーナにまたがろうとしたのだが、あいつ自身が許していない相手には絶対に背を預けようとしなかった。

例外としては試した事はないがレーファにリーメ、フィーアくらいじゃなかろうか?

まぁあくまで仮定の話だが。

 

 

「くっ……すまない。ならリオレウスで偵察に行ってきてくれ……」

 

 

先ほどまで絶対安静と言っていたディリートが苦渋ともいえる表情をしながら、俺にそう懇願してくる。

どうやら冗談抜きで緊急事態のようだ。

 

 

「わかった。すぐに向かおう。帰ってきたときに信号弾で合図をするから間違って大砲で撃ち落とすなよ?」

 

「わかっている。急いでくれ」

 

「俺だけだとどれがラオシャンロンとやらかわからんからフィーアも連れて行くぞ?」

 

「フィーアはまたがれるのか?」

 

「……たぶんだが」

 

「わかった連れて行け。……だがおそらくすぐにわかる」

 

 

それほど異質なモンスターなのか?

 

 

思う事はいくつもあったが、しかしそんな事を言っている時間が惜しいのか、ディリートはすぐさま机に向かい、緊急の仕事を始めた。

さすがに聞くのは憚られたので、俺は部屋を出てすぐにフィーアを探す。

とちょうどいい事に、フロアで俺の事を隊員に聞いて回っていたフィーアを見つけた。

 

 

「!? 見つけたぞジンヤ。お前腹は大丈……」

 

「こいフィーア」

 

 

あきれながらも俺の体を心配してくれるフィーアの腕を問答無用で掴んで、俺はムーナのいる家畜小屋へと向かおうとする。

 

 

「……へっ!? い、行くってどこへ!?」

 

 

すると何か勘違いしたのか、顔を真っ赤にしながら若干の抵抗を始めた。

無論俺からしたら無駄な抵抗以外の何物でもないのだが、まぁ急いでいるのに抵抗されて面倒になったので、俺はいったん手を離して、しおらしくなっているフィーアの脇を抱え、膝の裏に手を入れて抱きかかえると、そのまま家畜小屋へと向かう。

 

 

「が〒☆^%T$#*?!?!?!!??」

 

 

びっくりしすぎて言葉が言葉になっていなかったが、それに構わず俺は先へと急ぐ。

 

 

……どうでもいいけどこいつ、ひょっとして生娘?

 

 

余りにも初な反応に邪推してしまう。

が、今は正直どうでもいいし、興味もないので俺はそのまま強制的に連行した。

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

「い、いきなりだからびっくりしたぞ……。有無を言わさずどこかに連れ出そうとする物だから……」

 

「悪いな。説明が面倒だったから」

 

 

説明が面倒って……ラオシャンロンがでたと言ってくれれば私だって普段通りになれたのに……

 

 

夜。

空を飛ぶリオレウス、ムーナに二人で跨りジンヤの後ろに座らされた私は、ものすごく憮然としていた。

ジンヤに……抱きかかえられて……そのまま家畜小屋に入っていったときは正直心臓が飛び出るほどに驚いたが、すぐにムーナのそばへ行き鞍を乗せているのを見て、私は自分が馬鹿な事を想像している事に気づいたのだった。

 

 

全く……ジンヤのバカ……

 

 

乙女心を弄んだ男が目の前にいるが……どうせ言ってもこいつの事だからわかりそうにもないので、私は密かに心で溜め息を吐いて、気分を直すために空を見上げた。

 

 

それにしても……すごい……

 

 

クエストに向かうときに気球に乗った事が何度かあるので、空を飛ぶ事自体は初めてじゃないが、夜は危険なので基本的に気球が空を飛ぶ事はない。

それもハンターが使うような運搬用の気球はなおさらだ。

しかも今回は気球と違って、リオレウスであるムーナに乗っての空だ。

ドンドルマで生活をするとき、ジンヤがどうにかして夜にムーナで散歩したいし、させてあげたいと隊長にくってかかっていて、三日に一度だけ飛行を許されたのを見ていて、どうしてここまで必死なんだろうと思っていたが、これは格別だった。

 

 

星が綺麗……

 

 

何一つ遮る物のない満点の星空。

夜に、ドンドルマで空を見上げるのとも、小高い丘や山で見上げるのとはまた別格の星空だった。

 

 

「しかしそのラオシャンロンってのはそんなに驚異的なモンスターなのか?」

 

 

そのジンヤの疑問の言葉に、私はゆるんでいた気を引き締めた。

 

 

そうだった、今は偵察任務の最中……

 

 

「そうだ。私も今まで見た事はないが、伝承によれば、それは山のごとき大きさを誇り、その巨大さから歩くだけでも天災に匹敵すると言われている古龍種のモンスターだ」

 

「……山のごとき? そんなでかい生物が歩けるのか?」

 

「だから、私も見た事がない。あくまで伝承の中の話であって……」

 

「……眉唾物だな……。『そもそも、山みたいに大きいと重力による影響で立つ事もままならないだろ? しかもそんなにでかいなら何食ってそこまで大きくなるんだ?』」

 

 

……何を言っているのか全くわからない

 

 

突然聞いた事のない言語……おそらくジンヤの故郷の言語なのだろうが……それで独り言をぶつぶつと呟きだしたので、何を言っているのか理解が出来ない。

風が後ろにいる私に向かって流れてきているのに、ジンヤの言っている事がわからないのは少々口惜しかった。

 

 

ズン ズン ズズン

 

 

「……今の音」

 

「おいおい、本当に山みたいにでかいのか?」

 

「グルルルルル」

 

 

徐々に聞こえてきた足音のような地響きに、私たちは気を引きしめた。

私も、存在は知っているが見た事もないので本当に山のように大きいとは思っていなかったのだ。

しかし、今まで聞いた事もないような地響きが聞こえてくるのである程度本当である事がわかった。

ここは雲にも届かんと言えるようなほどの高度なのだ。

 

 

この高さでも聞こえる事が出来るなんて……

 

 

「あれか!?」

 

 

この高さにも聞こえてくる音に驚いていると、ジンヤが前方の地面を指さした。

私はその指をたどり、月光で照らされたそれを見た……見えて…………しまった。

 

 

「……な、なんだあの巨大さは」

 

 

眼下にいるのは、蒼白色の体表の巨大な山。

別名、岩山龍と呼ばれるその呼び名に違わぬごつごつとした体。

そして私でもわかる……わかってしまうほどに……その身を覆うその力は……あまりに強く、絶望してしまうほどに力強かった。

 

 

「グルルルル」

 

 

それは、うなり声を上げると、なんと後ろ足二本で立ち上がった。

先ほどよりも近くなり、山に阻まれて見えていなかった顔がはっきりと見る事が出来た。

 

 

巨大な一本の角が鼻先に生えており、頭にも棘のような角がいくつも生えている。

そしてその顔も巨大で、ハンターなんて丸呑みしてしまうほどの大きさだった。

 

 

『おいおい……マジかよ……』

 

 

私が呆気にとられていると、ジンヤが思わず、というようにぼそりと呟いていた。

先ほど同様、ジンヤの祖国の言語を話しているみたいで何をいているのかわからなかったが、その声に込められていた感情は、今までジンヤが抱いた事のない感情だった。

 

 

これは……驚愕と絶望?

 

 

ひょっとしたら勘違いかもしれない。

だが、今まで動揺はしても、すぐに立ち直り、命を賭けて戦ってきたこの男が初めて弱音のような物を漏らして私は驚いてしまった。

そして驚いている私に構わず、ジンヤはさらに言葉を紡ぐ……。

 

 

 

 

『なんて魔力だよ……。蒼リオレウスなんてこいつと比べたら微生物レベルじゃね~か……。魔力の塊……正真正銘の化け物だ……』

 

 

 

 

「ガァァァァァアァァァ!!!!!!」

 

 

ジンヤに反応したわけではないのだろうが、ジンヤが口にし終えると同時に、それは巨大な咆吼を上げて、空を、大地を、……自然を震えさせた。

 

 

古龍種、岩山龍 ラオシャンロン。

 

文字通り山のような……今まで見た事もない、巨大な……巨大すぎるモンスターが現れた……現れてしまったのだった……。

 

 

 

 

 

 




ついに登場、めんどくさいだけのモンスターラオシャンロン。
MHP2Gで強力な武器を作る場合この子の素材がえらいいるんだけどめんどくさいだけでマジで作業なモンスターさん。
それをリアルに描く予定ですのでご期待いただければ幸いです。

天災といわれる古龍種、ラオシャンロンの出現。
あまりにも巨大なその姿に絶望する人々。
だが、刃夜は違った。
リオレウスの恨みで刺されけがした腹部をものともせず、闘うことを主張した。
そして、ドンドルマまでの道のりの途中に築かれた、もはや骨董品といってもいいようなほど使われていなかった砦で、人々は街を守るために、天災へと立ち向かう!!!!
そして、刃夜は、己の命をかけた、最強の一撃を放ち……

第三部 二話

「決戦の砦」

天災に……人類が挑む


更新日未定w

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