リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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また長くなっちまったぜ! いえ~い!!!!

いやマジでまた長くなっちまった……
諸君らが愛してくれた短めの小説は死んだ!!!! 何故だ!?

……坊やだからさ(作者が)

はいすいませんまた長いっす……
前回と同じくらいです。
でも今回どうにか中編は入れなくて済んだ!!!!
まぁ……完全に終わったわけではないんだけどw
楽しんでくれたら嬉しいです!!!!




決戦の砦 後編

~刃夜~

 

 

ラオシャンロンが現れて、そしてそれを俺とフィーアが確認した次の日。

俺はディリートに許可をもらって、俺の鍛冶場があるユクモ村の俺の家へと、ムーナを使用して超特急で帰還していた。

村に近づいた瞬間に、俺は自分が乗っているリオレウスがムーナである事を伝える信号弾を|月火(げっか)に装填して発射する。

 

 

ボン

 

 

色は目立つ赤色。

煙玉に色をつけるために、ドスビスカスの粉末を煙玉調合時に大量に混入している。

これによって赤い煙玉が完成する。

この煙玉は俺が帰ってきたときの合図としてすでに村長他、村のみんなには伝えてある。

だがこの赤色の煙玉には他にも意味があり、その意味を知っているのはごく一部の人間だけだ。

 

 

赤い色の煙玉の意味は……緊急事態

 

 

そして俺はそのままユクモ村を通り過ぎ、俺の家のそばの、ムーナの発着場所へとムーナを向かわせる。

 

 

「ムーナ! すまんが一人で家まで来てくれ!」

 

 

いつもならば家に入るまでリードしてやるところだが、今は時間が少しでも惜しいので、俺はムーナから飛び降りると、直ぐに自分の家へと向かう。

 

 

「キュ!!!」

 

 

俺の言う事をきちんと理解してくれる頼もしき俺の家族は、返事をしてから着地して、走って俺の後を着いてきてくれる。

それを気配でそれとなく察しつつ、俺は結界を解除して塀を跳び越えて自宅へと入り、直ぐに炉へと火を入れる。

 

 

「ジンヤさん!」

 

 

そうして鍛冶場で作業を行っていると、レーファがリオスさんと村長さんを引き連れてやってきた。

ちなみに、レグルの妹レミルがさらわれる事件が以前にあり、その時にレーファに預けていた俺の家の結界を解除する鍵棒で結界を解除された事があったために、今現在はレーファに鍵棒を預けていなかった。

そのために、俺は家に入ったときに結界の封印を一時的に解除し正門を開け放っておいた。

三人は特に問題なく俺の家へと入ってくる。

 

 

「ジンヤさん! お帰りなさい!」

 

「おう、ただいま。レーファ」

 

 

とりあえず俺の帰還を笑顔で向かえてくれるレーファに、俺は同じように笑顔で返事をする。

ユクモ村住民、リオス武具屋の主人の一人娘、レーファ。

このモンスターがはびこる世界で初めてあった人間であり、俺をこの村に連れてきてくれた上に、いろいろと世話を焼いてくれる子である。

 

 

「ジンヤ君。先ほどの信号弾は……」

 

 

そうしてとりあえず帰還の挨拶をしていると、その後ろから一人の老人が歩み寄ってくる。

ユクモ村の村長。

俺がリオレウスの赤ちゃん、つまりはムーナを育てると言ったとき、本来ならば村から追放しなきゃいけないところを、村の郊外に家を建築する事を許してくれた人物だ。

竜人族という特殊な亜人種であり、人間と違って長寿命で頭がいいらしい。

 

 

「何かあったのか?」

 

 

そのさらに後ろから来たのは、褐色肌の屈強な男。

先ほど言ったリオス武具屋の店長であり、かつては伝説の武具職人として知られた人物。

レーファの父親であり、俺の弟子の一人である。

 

 

まぁ弟子といっても、リオスさんだけはあの二人と違って別方向の弟子なんだけど……。しかも|今のところ(・・・・・)正式な弟子では無いんだけどね……

ちなみにあの二人というのは……。

 

 

「ジンヤさん!」

 

 

と思っていたら二人の内の一人が、レーファやリオスさんに少し遅れる形で、俺の家の敷地内へと入ってきた。

そちらに目を向けると、予想に違えることなく一番弟子、リーメがそこにいた。

ユクモ村所属ハンターリーメ。

身長は……十四歳という間違いなく子供のレーファとそう大差の無い小柄な身長で、童顔。

片手剣使いで、俺のクエストに初めて同行した子であり、その時に見た俺の刀、夜月に憧れて俺に小太刀を鍛造させた子である。

ちなみに何故か知らないが俺の事随分と慕ってくれている子である。

 

 

「何があったんですか?」

 

 

全員が全員、俺の信号弾の意味を知っている人物であり、そしてこの四人の力を借りたいと思っている俺としては、直ぐに駆けつけてくれた四人に早速お願いをした。

 

 

「レーファ。再会を喜ぶのは後にして直ぐに川から水をくんできてくれ」

 

「え? は、はい」

 

「リーメはすまないがそこらの家から炭をかき集めてきてくれ。一ヶ月の間家を留守にするからほとんど使いきっちまったから」

 

「す、炭ですか? わかりました」

 

「リオスさんはすみませんが直ぐに家に帰って依然預けて保管をお願いしていた残りのリオレウスの素材を持ってきてください」

 

「わかった」

 

 

時間が惜しいので俺は半ば断れないように強制的……もはやお願いではなく命令といっても過言でない願いの仕方をするが、それでも俺の雰囲気を察してか、誰も文句を言わずに言うとおりにしてくれる。

 

 

「村長さんは申し訳ないのですが、リーメの行動を補佐してそれが終わったら直ぐに村民に避難出来るように準備をしておいてほしいと伝達をお願いします」

 

「避難だと? 確かに今ギルドナイトからむやみに村から出ないようにと連絡をもらっているが……何が起こっているのだ?」

 

 

やはり予想通り、ギルドナイトからは事実を伏せての連絡が回ってきていたようだ。

確かにまだラオシャンロンがドンドルマに到着するまで時間があるとはいえ、少々楽観的というか……対応が緩い気がする。

本来は言ってはいけない事なのだろうが、それでもこの大恩のある村のために俺は今起こっている出来事を述べた。

 

 

「ラオシャンロンが今ドンドルマに向かって来ています」

 

 

 

 

「「「「……はい?」」」」

 

 

 

 

どうやらすんなりとは受け止めてくれないようだ。

さすがにいきなり伝承や伝説でしか出てこないような古龍が出現してドンドルマへ向かっていると言っても信じてくれないだろう。

だが、俺が冗談でも酔狂でもなく、本当の事を言っている事を目で伝える。

俺が何も言わない事、そして目で本当の事を言っているのがわかったのか、ようやく四人も本当の事を言っていると信じてくれたようだった。

皆が慌てて俺が頼んだ用事をこなすために家から出て行く。

それを見て、俺は再び鍛冶場へと入り、現実世界の普段着から鍛造用の衣服へと身なりを整える。

鍛造の時に着るための厚手の作務衣と袴を、俺はこの世界に着て新たにユクモ村の素材で作っていた。

それを着込み、ドンドルマに持って行っていた、鍛造道具を広げる。

 

 

今から作るのは……対ラオシャンロン用の長野太刀……

 

 

あの巨体を相手にするのでは狩竜でも足りない。

狩竜さえも越える究極の長さを持った太刀で、相手をとある攻撃で倒す!

 

 

「ジンヤさん! 水を持ってきました!」

 

「重たい物をすまないレーファ。まだ足りないからすまないがもう一回行ってきてくれ!」

 

「ジンヤさん、炭です!!!」

 

「よくやった! レーファの水汲みを手伝って上げてくれ!」

 

「ジンヤ君。持ってきたぞ」

 

「ありがとうございますリオスさん。そこに置いておいてください」

 

 

礼を言うだけで特に何もお返しをする事が今は出来ないが、それでもみんなは俺の言う事を文句一つ言わずに、俺の願いを実行してくれた。

 

その協力の甲斐もあって、俺は集中して新たな得物を鍛造する事が出来た。

 

狩竜を作り上げた時のようにほぼ不眠不休。

気も枯渇させる勢いで、ひたすらに赤く熱された鋼へと気を込めていく。

狩竜よりも遙かに長く……遙かに堅い長大な刀を……。

他にも対策というか……少々もったいないが、人に譲れるような物でもない物達を、この世界の巨大な矢筒に全てぶち込む。

また、フィーアから預かった鬼斬破は、紐をつけて背中に担ぐ。

 

 

そして……

 

 

ズダン!!!!

 

 

そうして俺は、ラオシャンロン対策のために建造された砦に、ムーナを利用して直行で向かい、面倒だったのでムーナからそのまま飛び降りた。

遠目から見ても、凄まじい轟音が響いていたはずのこの場所は今はただ、シンと、静まりかえっていた。

 

 

「来たのか!?」

 

 

大剣を振りかぶったままの、少々間抜けな格好のまま、レグルがそう叫ぶ。

 

 

「遅いですよ!!!!」

 

 

それに続いてリーメが感極まったかのように、若干涙ぐんだ声を上げる

 

 

「待ちかねたぞ!!!!! ジンヤ!!!!!!!」

 

 

そして最後に、フィーアの声がこのエリアを木霊した。

それに応えるように、俺はゆっくりと膝を突いている姿勢から立ち上がって、正面を見据えた。

 

 

「ガァァァァァ!!!」

 

 

威嚇のつもりなのか、俺を真っ直ぐに見据えてラオシャンロンが低くうなり声を上げる。

それと同時に発せられる、凄まじいまでの魔力の奔流を、俺は若干気圧されながらも、真っ直ぐに受け止めた。

 

 

「さて……巨龍討伐の始まりだ」

 

 

全身に装備した過剰なまでの重武装を持ち直しながら、俺はそう呟いた。

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

来てくれた!!!!

 

 

リーメの言うとおり絶対に来ると信じていたが、それでも実際にこうして目の前に現れてくれるとひどく安心し、溜め息を吐いた。

来てくれた事はもちろん、こいつならばどうにかしてくれるのではないかという安堵感から来た溜め息だった。

 

 

「グルルルルル」

 

 

ズズン! ズン! ズズン!!!

 

 

目の前に現れたジンヤに何かを感じ取ったのか、ラオシャンロンが歩行を再開する。

それどころか先ほどよりも歩く速度が速い。

今までどんな攻撃をしても動きを止めなかったラオシャンロンが自発的に動きを止めた事。

そしてジンヤの存在を確認したその瞬間に歩調を早めたという事が、私たちのジンヤに対する信頼の想いがさらに強くなっていく。

しかし、ジンヤのすごさはそれだけでは終わらなかった。

 

 

『新型装備!!!! 対龍種用超大型砲……名を【超高インパルス砲『アグニ』!!!!】(今命名!!!)』

 

 

なにがしか……おそらくジンヤが装備している武器で、左手で持っている武器の名前を言っているのだろうが、ジンヤの国の言葉を使っている事もあり、私たちには全く理解できる装備ではなかった。

 

モンスターの素材を使用していないのか、とてもシンプルな色で、黒一色。

鉄鉱石を用いて作られたのか、遠目からでわかりにくいが、その質感はあまりにも重厚さを感じさせる物だった。

かなり大きめのサイズで、パワーバレルを使用したヘヴィイボウガンよりもさらに大きい。

全長でジンヤの身長よりもさらに長いのではないだろうか?

その口径も、今まで見てきたどのボウガンの口径よりも大きい。

しかも片手で扱うための措置として、右肩から斜めにベルトで固定するほかにも、左肩に何か特殊な防具を装備していて、後ろの肩胛骨当たりから、何か鉄の棒のような物があって、それが巨大なボウガンの最後部辺りに接続されている。

 

 

「滅龍弾で………………狙い撃つぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

 

 

滅龍弾?

 

 

今まで聞いた事もないその弾の名前を聞いて、私は思わず疑問をそのまま口に出してしまうところだった。

 

 

ドォン!!!!

 

 

普通の弾では考えられないほどの轟音を立てて、ジンヤが左手で構えているボウガンから弾が発射された。

それは口径同様に、普通よりも二回り以上大きな弾だった。

そして、その弾は真っ直ぐにラオシャンロンの背中へと向かっていき……。

 

 

バシシシシシ!!!!

 

 

およそ弾が命中した音とは思えないような着弾音を立てながら、なんと徹甲榴弾でさえ貫通する事の出来なかったラオシャンロンの体内へと、侵入していった。

それだけに至らず……

 

 

「ガァァァァァァァ!!!!」

 

 

なんと、その弾が命中し、体内へと侵入されたラオシャンロンが、痛みに身をよじったのだ。

 

 

なぁっ!?

 

 

巨大な背中を反らせて、その巨大な足が宙へと浮いた。

その光景……初めてラオシャンロンに効果的なダメージを与えた事に呆然としてしまう。

 

 

「ぼけっとするな!!!! 腹下にいるやつ!!!!! 潰されるぞ!!!!」

 

 

あまりにも呆然とするようなその出来事にも、今来たばかりのジンヤはそれが特にすごいという事がわからないのか、大声を上げる。

その声に、私たちはもとより、腹下にいるハンター達が急いで退避した。

 

 

ズズゥン!!!!!

 

 

逸らした背中を元にもどし、歩行時よりも遙か高みに上げられたその巨大な足が着地して、激しい轟音と地響きが起こる。

腹下にいたハンターたちは、ジンヤの怒号のおかげでどうにか潰されずにすんだ。

この場にいる誰もが……思わずといった風に、ジンヤへと目を向ける。

たった一発の弾で、ラオシャンロンを初めて身じろぎさせた……男へと……。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

意外や意外……効果絶大?

 

 

それがこの左手に持つ巨大な砲の中に装填された特殊弾、滅龍弾を撃った俺の感想だった。

こいつは、俺が右手に持つ対ラオシャンロン用の長野太刀を鍛造しているときに、事態を察した村長が、リオスさんに作成を依頼して作られた滅龍弾しか撃つ事を考えていない特殊砲なのだ。

 

 

 

 

~ムーナで砦へと向かう少し前の刃夜~

 

 

「ジンヤ君」

 

 

対ラオシャンロン用の長野太刀と、他数点のラオ対策装備を全身に装備して、いざ出陣しようとしているときに、家に入ってくる老人の声に俺は振り向いた。

そこには、とてつもなく巨大な漆黒の大型砲を担いでいるリオスさんと、それに装填するためのマガジンを携えている村長が目に映ったのだ。

 

 

「どうしました? 俺はすぐにも砦に……」

 

「これを……持って行ってはくれまいか」

 

 

そう言って村長は、自分が手に持つマガジン差し出してくる。

中に込められている弾は、普通のボウガンの弾のサイズよりも二回りほど大きな……どこか怪しい雰囲気を放つ、赤い弾だった。

 

 

「これは滅龍弾」

 

「滅龍弾?」

 

「そう。対古龍のために私たち、竜人族が作った弾丸だ」

 

 

対古龍?

 

 

という事はそうとう特殊な弾丸という事になるだろう。

そもそも古龍と言うのがかなり特殊なモンスターなのだ。

その特殊なモンスター相手の弾が特殊でないはずがない。

 

 

「これは竜種に対して絶大な攻撃力を持っている」

 

「この弾が?」

 

 

村長の台詞に訝しむ俺だが、その言葉には説得力があった。

何せこの弾から、凄まじいほどの禍々しさが発せられていたからだ。

 

 

「だが余りにも強力すぎるために、よほどの事態……ラオシャンロンといった脅威の象徴たるモンスター相手にしか使ってはいけないというのが……私たち竜人族の見解だ」

 

「どういうことです?」

 

「古龍ですら効果があるこの弾を、日常的に使ってしまっては、全てのモンスターを滅ぼしかねないのだよ。まぁ他にも使えるボウガンが少ないということと、あまり大量生産できないという理由もあるが」

 

 

あぁ、なるほど……

 

 

古龍種ラオシャンロンでさえも効果があると言われている弾を、普通の飛竜に使うと簡単に相手を討伐できてしまう。

そのこと自体は喜ばしいのかもしれないが、しかしそんな弾を飛竜相手に使っていては下手をすると絶滅にまで追いやってしまいかねない。

俺の世界でも人類によって絶滅した動物は数え切れない。

それを村長……というか竜人族は危惧しているのだろう。

だが、そうも言ってられない状況になったために、村長は封印されているこの滅龍弾を俺に渡してくれたのだろう。

俺が納得して頷くと、村長が滅龍弾を手渡してくれる。

手応えというか、見た目よりもだいぶ重い弾だった。

それから後ろに控えていたリオスさんが俺の眼前へとやってきた。

 

 

「これはその滅龍弾を撃つために作ったボウガンだ。緊急だったことと、その弾を発射できるという課題のために、結構な重量になってしまっている。が、おそらく君なら使えるだろう。あと、片手でも使えるように、固定用の接続機器と接続防具も作っておいた」

 

 

そう言って渡されるのは、激しく重い……もうボウガンじゃない完全な砲門になっている物だった。

弾道を安定させるためにロングバレル仕様で、ブルパップ方式。

しかも俺が武器を鍛造していた事を考慮して、片手で使えるように固定するための接続アームと、それを接続させるための肩部装甲までセットだった。

肩胛骨辺りに接続し、それが砲門の後ろの方へと接続される。

さっそくリオスさんの手を借りて、肩部装甲を装着し、そこに接続アームを接続した。

 

 

ガチャン

 

 

なんか………………もはやロボットみたいな装備だな…………

 

 

右手に対ラオシャンロン用の長野太刀。

左手に対ラオシャンロン用の巨大ボウガン。

背中に鬼斬破。

後ろ腰に矢筒。

他秘密兵器数点を納めたポーチ。

そして、得物の数というかサイズの都合上、普段の装備達(野太刀『狩竜』、打刀『雷月』、脇差し『花月』、短刀『水月』、単発グレネード『月火』、コンバットナイフ二本、スローイングナイフ一式)は全ておいていく。

念のためというか、守り刀として夜月だけはいつものように左腰に差しているが。

 

 

……重量は現在の装備の方が勝っているが、種類って言うか数は普段のほうが多いんだな

 

 

改めて自分の多様すぎる武器を認識して思わず心の中で苦笑した。

装備の重さで重量が増しているので、多少は安定してボウガンを射撃できるだろう。

 

 

「十日しかなかったために弾もそんなに用意できなかったし、ボウガンに関しても弾が特殊すぎるために砲身が耐えられないかもしれない。だが、威力は折り紙付きのはずだ」

 

 

 

 

~現在の刃夜~

 

 

と、二人に贈り物をいただいてやってきて早速とばかりに使ってみたら……。

 

 

ここまで恐ろしい威力を秘めていたとは……

 

 

魔力壁をほぼ完全に無視しての直接攻撃を行っていた。

|こいつ(ラオシャンロン)の魔力壁を貫通できるほどの弾ならば、そらぁ他のモンスターに使うのを躊躇するのも理解できる。

これを普通の飛竜種に使ってしまっては……弾の生成期間っていうか生産速度にもよるが、あっという間に飛竜種が滅ぶだろう。

まぁ大量生産ができないと言っていたので、作るのに時間がかかる言う事なのだろう。

そんな事を考えつつ続けて何発かぶっ放すが、その時腹に違和感を覚えた。

 

 

何だ……ってしまった……

 

 

違和感を感じた場所へと手をやると、ぬるっとした、実に不快な感触が返ってきた。

腹に違和感を覚えそちらに目を向けると、腹部の一部が真っ赤に染まっていた。

 

 

「ジンヤ!? どこか怪我を!? ってまさか治ってないのか!?」

 

 

俺の腹部の赤いところを見たのか、フィーアが叫びながら駆け寄ってくる。

俺はそれに構わず、【超高インパルス砲『アグニ』】の引き金を引く。

 

 

治す余裕がなかったからな……

 

 

先日の、モンスターに恨みがある男に刺された腹の傷が、まだ治っていないのだ。

普段ならば気を腹部に集中的に回す事で、飛躍的に傷の治療速度が高まるのだが……新しい野太刀を作るのに気を使っていたので、治す事は出来なかった。

 

 

レーファに心配されたっけ

 

 

腹部から血を流しながら鉄を叩く俺を、レーファが必死に止めようとしていたが、それでも緊急事態だったので俺は言葉ではなく、頑として鍛造をやめないという態度で説得したのだ。

レーファも最初こそ渋っていたが、自分も鍛冶屋の娘として何か感じる物があったのか、最後の方は鍛冶場でじっと俺の事を見守ってくれていた。

 

 

帰ったら何かして上げないとな

 

 

心配してくれる妹分に無事に帰ったら何かして上げないといけないと思うのだが……存外何をしていいのかわからない俺だった。

 

 

そう言えば弓の時にもこんな事があった気がするな

 

 

現実世界の妹、弓が相手だったときもこんな事があったなぁと、何故か今この状況でふと思い出した。

元気な妹が今どうしているのかが若干気になったが……

 

 

ズズン!!!

 

 

ラオシャンロンの足音が、俺を思考の海から現実世界へと引き戻した。

痛いというよりも灼熱しか感じない腹部を意識から切り離しつつ、俺は何度も引き金を引いた。

 

 

ドン!!!!

 

 

バシシシシ!!!

 

 

「グァァァァァ!」

 

 

何発か放って、そのたびにラオシャンロンが悲鳴を上げる。

だが、突然俺が持っていたアグニも内部で悲鳴を上げた。

どうやら内部機構が一部いかれたらしい。

重い弾を発射するために火薬量を増やしているのが裏目に出て、内部機構が灼かれたのだろう。

直ぐに使えない事を悟ると、俺は一瞬も迷うことなくアグニを捨てた。

それと同時に、左肩に固定してある肩部装甲を引きちぎって捨てる。

 

 

「ガァァァァア!!!!!」

 

「何勘違いしているんだ!!! まだ俺の|戦闘局面(バトルフェイズ)は終了していないぜ!!!!」

 

 

何となくこれで終わりか? と言っている気がするラオシャンロンに俺はそう返した。

開始の合図として、右手に持っていた新型装備の野太刀を俺は上空へと投げ捨てる。

それから腹部を血に染めながら俺は後ろ腰に提げている、矢筒の中身を血にぬれた手で……指の間にそれぞれ一本ずつ挟んで、左右に三本ずつ手にする。

 

 

「速攻|攻撃(まほう)発動! |打ち捨てられた鉄の逆襲(バーサーカーソウル)!!!!!!」

 

 

変な事を叫びながら、俺は指の間に挟んだそれを、力一杯投擲する!

 

 

ヒュン!!!!

 

 

ガイィン!!!!

 

 

滅龍弾と違って(俺にとっては)特殊な武器でないので魔力壁に弾かれるが、音速に近い速度で投擲しているので、かなりの衝撃……というか威力を伴っているはずだ。

着弾点というか当てる場所もなるべく投げた物と相手が直角になるような箇所(前面の肩や頭)に投げている。

 

 

「ジンヤ! 今投げているのって……お前が鍛造した剣じゃないのか!?」

 

 

俺の腹の傷が心配で駆け寄ってきたはずのフィーアが、腹の傷ではなく今俺が行っている攻撃の異常性に気づいて、驚きの声を上げる。

そう、俺がラオシャンロンに向かって亜音速で投擲しているのは、打刀なのだ。

正しく言えば、複数打った打刀のそこまでできの良くなかった物、「影打ち」の打刀である。

 

御神刀を打つときは一本ではなく複数本刀を打つのが通例で、その内でもっとも良かった物を「真打ち」といって神に捧げ、残りを「影打ち」といって死蔵、もしくは人に譲ったりする。

我が家、鉄家は子供が生まれると代々の当主が、その子の相棒とも言える刀を打つのが習わしで、その時この御神刀を打つとき同様、複数本打つ。

それによって生まれたのが、俺にとっての相棒『夜月』である。

(夕月は夜月の「影打ち」の一振りではない)

 

これと同じようにリーメの火竜刀紅葉を鍛造して余った打刀や、この世界の鉄を使って刀を打ってみたくて打ったが持て余してしまい、死蔵されている打刀たちを俺は投擲していた。

あまり出来が良くないとはいえそれはあくまで結果であって、制作中は魂を込めて、気を込めて鉄を打っているので、そんじょそこらの武器よりも遙かに強い。

それをさらに気を込めて亜音速で投擲しているのだ。

正直、バリスタよりも威力は高いだろう。

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァァ!!!!!!」

 

 

ギャン!

 

ザクゥ!

 

グフゥ!

 

ドムゥ!

 

ゲルググゥ!

 

 

合計で二十本ほどの打刀を、全て亜音速で投擲する。

数秒ほどの間、ラオシャンロンからけたたましいほどの金属がこすれ、ぶつかる音が響き渡っていた(最後の音だけ意味不明だが)。

そのほとんどは亜音速で投げられて、それがラオシャンロンにぶつかる衝撃に絶えきれずに粉砕されていった。

 

 

スカッ

 

 

む、切れたか……

 

 

無我夢中に死蔵されていた打刀投げていると直ぐに弾(打刀)が切れた。

俺はすぐさま刀を入れていた矢筒を捨てる。

そして上から振ってきた野太刀を左手で回収し、次の武器を取り出そうとした時……。

 

 

「待てジンヤ!!!! 一旦攻撃をやめて腹を治療しないと!!!!」

 

 

そう言って俺のそばにやってきたのは、蒼リオレウスの素材が使われているであろう、ガンランスを装備した、フィーアが俺へと歩み寄って背中に装備した鬼斬破を抜こうとしている俺の右手に抱きついてきた。

いつもならば頬を赤く染めそうな行動であるにも関わらず、今がそんな事を気にしている場合で無いからか、その行動は結構大胆だった。

 

 

「何をする?」

 

「何をする? じゃない!!!! どうして怪我が治っていないんだ!?」

 

「……何を馬鹿な事を。あれだけ深く刺された傷が十日足らずで治るかよ」

 

「ジンヤなのに!?」

 

 

いや……ジンヤなのに!? って何それ? え? 俺って|化け物(そういう)認識?

 

 

確かに結構無茶苦茶に暴れているが……弟子の一人にそんな認識をされていたとは……。

 

 

あれ? ちょっとショック?

 

 

それはもう……ものすごく驚愕しながら言ってこられて軽くショックを受けた。

 

 

「ともかく! 今すぐ治療室へ!!! せめて出血だけでも止めないと!!!!! リーメ、治療室へ連れて行って上げて」

 

「はい!!!! ジンヤさん、行きましょう」

 

 

いつの間にか近寄ってきていたリーメが俺の左手を、体全体を使って抑えにかかった。

そしてそのまま通路途中にある穴の中へと足を運ばされる。

弟子二人の見事な連係プレーで、俺は半ば強引に治療室へと連行されそうになった。

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

身体の傷が治っていないのに戦場に来るなんて……どうかしてる!!!!

 

 

そう、普通に考えていくらジンヤが人外に思えるような人間とはいえ、あの腹に負った傷が十日足らずで治るわけがないのだ。

そんな男を頼っていた事に……私は先ほどまでの自分を殴り飛ばしたい気分だった。

 

 

腹の傷があるにも関わらずジンヤはこうして来てくれたのだ……

 

 

ならば、体が無傷な私はジンヤ以上に頑張らないといけない。

私は戦闘開始前にリーメから聞いた伝言で考えていた行動を実行に移す。

 

 

『ジンヤさんが言うには、僕らだけがラオシャンロンに近接攻撃でまともにダメージを与えられるそうです。まとも、といっても本当に微少らしいですけど』

 

 

この言葉で思いついていた攻撃。

本当は体が震えてしまうほどに恐ろしいけど……先ほどの……大タル爆弾を抱えて張り付いての自爆攻撃を行った奴らに比べれば、こんな恐怖など抑えなければいけない。

私は直ぐにエリア終了間際にある、岩橋へと足を進めて坂とはしごを登って、岩橋の上へと立った。

ジンヤが登場し、巨大なボウガンでダメージを与えた事ですでにボウガン部隊は撤退して、最終防衛ラインでの準備へと向かっており、岩橋の上には誰もいなかった。

その寒々しいほどに広々とした岩橋の上で、私はガンランスの弾丸を装填した。

そして、私のいる岩橋の下をラオシャンロンが通過しようとする。

 

 

「行くぞ!!!!!!」

 

 

その背中に向かって、私はガンランスを下に向けて、穂先をラオシャンロンの背中に叩きつける。

 

 

ガギャン!!!!

 

 

金属とモンスターの体がこすれたとは思えないような音が鳴り響いた。

 

 

「くらえ!!!!」

 

 

敵がさらに歩み出して動いてバランスを崩す前に、私はガンランス最大の攻撃、放熱が必要になるほど強力な砲撃……竜撃砲の引き金を引いた。

 

 

ズガン!!!!

 

 

バギャン!!!!!

 

 

叩きつけてすぐに放った竜撃砲だったので砲身が持たず、折りたたむ機構がある部分から、内部から爆発するように折れ砕けた。

いくつかの破片が私へと襲いかかってくるが、運良くその全てがレイア装備の装甲へと当たり、弾かれていった。

 

 

「ガッ!!!」

 

 

ジンヤの攻撃ほどではないにしろ、多少攻撃は効果があったらしく、ラオシャンロンが小さく悲鳴を上げる。

だが、それに喜んでいられるほど、私に余裕はなかった。

 

 

フラッ

 

 

しまっ!?

 

 

砲撃とガンランス「ブルーク」が砕けた事によって完璧にバランスを崩した私は、そのまま転がり落ちて言ってしまう。

しかも私が着地したのは、尻尾側の方……ちょうど後ろ足の上にある腰の部分へと着地したために、そのまま下へと落ちていってしまう。

 

 

 

「フィーアさん!!!!!」

 

 

まずい!!!

 

 

このまま落ちていけば下手をすると全身を地面に叩きつけられた上に、ラオシャンロンに蹴飛ばされる可能性がある。

私は転がり落ちながらもどうにか体勢を立て直し、ラオシャンロンの尻尾の根本にある大きな棘を掴んで、何とかラオシャンロンよりも少し離れた位置に、足から着地した。

が……

 

 

ゴォ!!!!

 

 

凄まじい風切り音を立てて、ラオシャンロンの樹木よりも遙かに太い巨大な尻尾が、唸りを上げて私へと迫ってきていた……。

 

 

くそ!!!!

 

 

着地した衝撃で、体が硬直してしまっているために咄嗟に動けない。

しかしこのままでは巨大な尻尾を叩きつけられてしまう。

 

 

「ちっ!!!! このバカ弟子が!!!!」

 

 

その叫び声がすぐそばで聞こえてきて……後ろへと思いっきり引かれて私はそのまま転がっていく。

勢いが止まって先ほど私がいた方へと顔を向けると……そこには、背中に提げている武器『鬼斬破』を手にしたジンヤがいた。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

ちっ!! 出来もしないくせに馬鹿な事を!!!!!

 

 

フィーアのほとんど捨て身といっても言い攻撃……ガンランスを叩きつけての竜撃砲を見て俺は内心で舌打ちをした。

攻撃の発想は良かったが、その後の事もきちんと考えて行動しているとは思えなかったからだ。

そう思っていると案の定、バランスを崩して転げ落ちていのなる

しかしそこらはさすがエリートハンターのフィーア。

どうにか体勢を立て直して頭から落ちるのを回避した上に、足で蹴飛ばされないように少し離れた場所へと着地した。

が、その場所へとラオシャンロンが尻尾迫る。

 

 

ったく、予想通りだ!!!!!

 

 

「リーメこれ頼む!!!!」

 

「へっ?」

 

 

俺を連絡通路へと引き入れたリーメに、右手に持っていた対ラオシャンロン用長野太刀を渡すと、フィーアへと走り寄ってフィーアの首根っこを掴んで、思いっきり後ろへと引っ張った。

 

 

「きゃ!」

 

 

滅多に聞けないフィーアの女らしい悲鳴を聞きながら、俺は鬼斬破を抜刀した。

迫り来ている尻尾を避けるのは、今の姿勢ではきつい。

 

 

ならば叩っ斬る!!!!!

 

 

尻尾への対処を決めると、俺は直ぐに四肢に力を込めた。

両の掌から鬼斬破へと、ありったけの気を充填する。

 

 

キィィィィィィ!!!!

 

 

微細な振動を発しながら、鬼斬破の刀身が淡く光り輝く。

左から迫り来る尻尾に、全身全霊を込めた鬼斬破の、|左切上(ひだりきりあげ)で迎え撃った。

気を刀身の保護に回さず、ほとんどを威力増大に回し尻尾へと叩きつける!!!!

 

 

ギギィィィン!!!!!

 

 

「ぐっ! がぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

衝撃時何トンになるかもわからない凄まじい衝撃が両腕へと伝わってくる。

正直両腕が折れるんじゃないかと思うほどの衝撃だった。

だがここで負ければ俺が死ぬ事になる。

こんなところで死ぬわけにも行かないので……俺は歯を食いしばって、さらなる力を込めた。

 

 

ピシッ

 

 

そうしてまるで鍔迫り合いのように競り合っている状況が続くと、鬼斬破の刀身にヒビが入った。

さすがに一から俺が鍛えていない刀のために、刀身の強化が完璧でない上に、俺との相性がそこまで良くないのかもしれない。

 

 

しかし! それが敗北の要因にはならない!!!!!

 

 

俺はさらに力を込めて……ただ敵を切り捨てる事のみを考えて、鬼斬破を振るい抜いた。

 

 

ズバッ!!!!!

 

 

 

「ガァァァァアァァァァァァァァァァッァァァァァアァ!!!!!!!!」

 

 

 

以前の……素手でドルランポスを斬った時と同じ心境に近かったからか、あの時と同じような力が発動したのか、もしくは魔力壁にそこそこのダメージがいっていたからか……俺は何とかラオシャンロンの尻尾を切り落とす事に成功した。

 

 

バギャン!!!!!

 

 

だが、振り終えたと同時に鬼斬破が無惨にも、中間から砕け落ちる。

しかし俺が気になったのは……俺の気を引いたのはそんな事ではなかった。

 

 

スゥゥゥ

 

 

なっ!? 尻尾が消えた!?

 

 

そう、鬼斬破の命と引き替えに切り捨てたはずの尻尾が、宙に舞っている最中に透けていき、霧散したのだ。

後には何も残らず、ただ尻尾を斬った断面が見えるだけだった。

 

 

まるで最初から尻尾が無かったかのような、断面が……。

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

尻尾を斬った!?

 

 

目の前で展開されている……あまりにも、もはや超常現象といっても過言ではないその光景に、私は思わず目を皿のように見開いてしまった。

爆弾でも、大砲でもバリスタでも……およそ考え得るモンスターに対しての最終兵器とも言える攻撃が全く通用しなかったこのラオシャンロンの尻尾を、ジンヤはたった一人の力で打ち勝ち、切り落としたのだ。

しかし、驚くのはそれだけでなく、なんとラオシャンロンの斬られた尻尾が消えたのだ。

まるで尻尾など存在しなかったかのように。

 

その事にさらに驚く私たちだが、それを考えている場合ではなかった。

 

 

「ぐっ……つぅ」

 

 

ガクッ

 

 

ジンヤがうめき声を上げるとともに膝をついたのだ。

 

 

「!? ジンヤ!!!!」

 

 

膝を突いたジンヤに、再び命を助けてくれたこの男へと私は駆け寄ろうとした。

振るった武器が……ジンヤが扱う武器が砕けるのを私は信じられない物を見る思いで見ていた。

この男の扱う武器が砕けるなんて想像も出来なかったのだ。

だが、膝を突いて腹部に手を当てて痛みに耐えている姿はどう見ても普通の人間で……。

 

 

そこで私は漸くジンヤを特別視している事に気がついた。

前々からわかっていた……いや、出会ったその時からわかっていたはずなのだ。

この男も……あまりにも超人的な活動をするこの男もただの人間なのだ。

こうして赤い血を流し、痛みも感じる。

だというのに私たちは目の前の脅威であるラオシャンロンを畏れるあまりに、この男の存在に寄りかかってしまった。

もちろん私もその一人で……

 

 

そんな私に、この男に師事する資格があるのか……?

 

 

「ジンヤさん!!!」

 

 

考えるあまりに呆然としていると、後ろからリーメが悲鳴のような声を上げながら、ジンヤへと駆け寄っていく。

その手にはジンヤの新しい武器と思われる、余りにも長大な武器を手にしていて……。

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫だ。ちょっと痛かったから顔をしかめただけだ」

 

「しかめただけって……さっきよりも出血量が増えてませんか!? 直ぐに医務室に行きましょう!!!」

 

 

そう言うと、半ば強引にジンヤの腕を取って肩を貸していた。

ジンヤは痛みに顔をしかめながらも、珍しく肩を預けて広間へと通じる穴へと向かっていく。

私もそれについて行くことしかできなかった。

 

 

 

 

~ディリート~

 

 

ジンヤが来たのか!?

 

 

その報告が届くと共に、私は心の底から安堵してしまった。

しかも上がってきた報告では、なんと初めてラオシャンロンを足止めに成功したという。

改めてあの男の異常さを再認識してしまった。

 

 

だが、それが味方であるというのは心強い……

 

 

伝承や伝説といえる存在を足止めできるような人間が味方であるというのは頼もしい。

だが報告を聞けば、ジンヤも負傷しているらしい。

話で聞く限りでは、先日ドンドルマでの傷が治りきっていないらしい。

確かにジンヤと言うだけである意味での人外という考えが先行してしまうが、それでもあいつは一応人間なのだ。

 

 

……まぁあまり人間とは思えない人間だが

 

 

真偽の程は不明だがランポスの大群に素手で勝つわ、リオレウスを真っ二つにするわ、大剣でガードしたにも関わらずそれを燃やし尽くして火球が飛来する火球を吐いてくるモンスターを討伐するわ……

 

 

本当に人間なのか?

 

 

と思ってしまうのは無理からぬ事だと思う。

だが、それでも今ジンヤは負傷しているのであまり活動できない。

それでもあの男がラオシャンロンを足止めした、初めて痛みを感じさせたという事は非常に大きいことだった。

 

 

「目標が最終防衛ラインへと続く道へと向かっていきます」

 

「一部をのぞき、ハンター達は最終決戦場へと集結せよ。また技術班に、最終エリアの入り口にある撃龍槍の発動準備を行えと伝達せよ!」

 

「はっ!!!」

 

 

私の指示を聞いて、きびすを返していく伝令兵。

彼も、撃龍槍が故障している事を知らない人間の一人であり……。

 

 

いや、砦にいるほとんどの人間が知らないか……

 

 

知っているのは私と今修復を行っている技術班くらい。

実に九割以上の人間が、この砦の最終決戦場入り口にある、左右合計六本の撃龍槍の現状を知らなかった。

一応修理が完了したという報告は上がっているが、それでも治っているかどうかはまさに神のみぞ知るところだった。

何せその巨大すぎる撃龍槍の都合上、連発なんてことは絶対に出来ず、しかも一度に大量の燃石炭を燃やし、蒸気を使用して撃ち出す物なので、そう何度も使える物ではない。

だから試運転もしていない状況で使用する事になってしまった。

 

 

発動すると……祈るしかないのか

 

 

もうすでに私個人で出来る事はほとんど無い。

この十日間ほどで身を削る思いで仕事をこなした。

私も、もう指示を出す事が無くなったので、砦の大門でありドンドルマへと通じる最終エリアへと向かう。

入り口だけでなく、大門にも撃龍槍が設置されている。

そちらは特に問題なく動く事は確認されている。

この大門のほうが壊れていないおかげで、入り口の撃龍槍の故障箇所を洗い流す事が容易になったのだ。

広間を越え、連絡通路を抜けて……大門の上へとでる。

 

 

集まっているな……

 

 

先ほどの指示がすでに伝わり終えており、ほとんどのハンター達がこの最終決戦場へと集まっており、それぞれの武器を構えていた。

構えると言っても、大砲の弾とバリスタを使う都合上、ほとんどハンターがボウガンのハンターでありしかも彼らは岩壁の上にいる。

若干距離が開くが、拡散弾や徹甲榴弾ならば有効射程距離なので大門から見て左側の岩壁の上で、集まったボウガンのハンター達がボウガンの確認を行っていた。

大門下の広場には念のために、接近戦のハンターが集まっている。

接近戦ハンター達は本当に非常用に集まってもらっているだけなので、私の指示が無い限り攻撃を行わないように厳命していた。

バリスタと大砲の弾を使うので、万に一つどちらかでも掠りでもすればそれだけで致命傷になりうる可能性があるのだ。

 

 

だが、万が一……万が一、入り口の撃龍槍が発動しなかった事を考えると……

 

 

本当はそんな事想像もしたくないのだが……それでも最悪の事態を想定しないわけにも行かないので、私は念のために彼らを配置したのだ。

そしてもしも……撃龍槍が発動しなかったら……。

 

 

私は指揮官として彼らに死ねと……命ずる事になるのか……

 

 

「目標! エリア入り口まで迫ってきました!!!」

 

「……わかった」

 

 

双眼鏡でラオシャンロンの姿を捉えたハンターが私にラオシャンロンの位置を伝えてくる。

入り口の撃龍槍は、修理を行った技術班が岩壁内部の部屋で操作を行う。

だからこの場で私たちは見守るしかないのだが……。

それが動く気配は全くなかった。

 

 

ズズン!

 

 

「おい……まだ発射しないのか?」

 

「いや、今発射してもすでに手遅れなんじゃ?」

 

 

大門上に砲撃手が数名控えていたが、彼らがそう口にした。

砲撃手だけでなく、岩壁上のボウガンのハンター達や広間のハンター達も何事かと騒いでいる。

 

 

……だめだったか

 

 

ただ一人、この場で真実をしる私はその落胆が表に出ないように必死に表情を取り繕った。

正直、声を荒げたかったがこの部隊の指揮を預かる者として、そんな事は許されなかった。

 

 

「砲撃手およびボウガン隊! 順次攻撃を敢行しろ!!!!」

 

 

震えが……恐怖という気持ちが声にでないように気をつけながら私はそう怒鳴った。

その声でようやく我に返り、皆が順次攻撃を行っていくが……それでも落胆、そして混乱によって動きに乱れが多く、あまりダメージが与えられているようには見えなかった。

 

 

いや実際効いていないのだろう……

 

 

ここに至るまでの攻撃を喰らっても平然としているモンスターだ。

撃龍槍ならばともかく、普通の攻撃では有効打にならない事など、すでにわかりきっている事なのだ。

 

 

だが……ジンヤは……

 

 

しかしあの男だけは攻撃を行ってひるませる事に成功していた。

正直、今すぐ来て欲しいところだが……やつは今負傷して医務室にいる。

十日前の腹部の傷が治っていないらしい。

普通に考えれば人間があれほどの重傷を負って十日足らずで治るはずがないのだ。

あの男があまりにもありえないことをするからそれにどうしても頼ってしまう。

それが今のように絶望的な状況であればなおさらに……。

 

 

「隊長!!! あの男は今どこに!!!???」

 

 

だが、そうも言ってられないのかもしれな。

何せラオシャンロンは未だに健在で……入り口の撃龍槍が壊れていた事を考えると、この大門の撃龍槍にも不具合がある可能性があるのだ。

 

 

「ガァァァァァ!」

 

 

私が部下の質問の答えに窮していると、ラオシャンロンが首をさげて、なんと後ろ二本足で立った。

 

 

「なっ……」

 

 

驚きと、その巨大さに、私はただ間抜けな声を上げる事しか出来ず……。

他のハンター達も同様だった。

まさか二本足で立つとは思わず……そしてそのあまりの高さに息をのんだ。

そしてもしもこのまま体当たりをされば……。

 

 

大門に致命的なダメージが!?

 

 

止めなければいけない。

その思いが私に口を開かせようとした。

だけど……。

 

 

「ゴアァァァァァァァァ!!!!」

 

「がっ!?」

 

 

至近距離の咆吼は、何故か圧力を伴って私の……私たちの体へと襲いかかり、そして吹き飛ばされた。

ボウガン隊や広場にいる接近戦のハンター達は耳を押さえていた。

耳栓さえも越えて鼓膜を破壊せんばかりに、その咆吼は凄まじかった。

吹き飛ばされた事によって、大門の壁にぶつかっていて息が詰まった。

だがそれでも私は指揮官としての責務を果たすために、体を引きずって撃龍槍の発動起動スイッチへと向かう。

そして、十分に引きつけて……

 

 

くらえ!!!!!!

 

 

これで終わる事を祈りながら、私はそのスイッチ……起動の杭に思い切り拳を叩きつけた。

 

 

ギィィィィィ

 

 

先ほどの入り口付近の撃龍槍と違い、こちらは問題なく稼働し大門が微弱な振動を帯びる。

そして……

 

 

ドン!!!!

 

 

撃龍槍が撃ち出される。

至近距離で、しかも立ち上がっているために避ける事が出来ず、ラオシャンロンに命中した。

 

 

「グアァァァァァァァ!!!」

 

 

さすがに撃龍槍は効果があったようだ。

ジンヤの言う透明な膜を貫通してラオシャンロンに効果があったのか、撃龍槍がラオシャンロンの腹部というか後ろ足の付け根当たりを貫いていた。

たまらずといった感じに、ラオシャンロンが何歩も後ろに下がり、だいぶ大門から距離が空く。

 

だが……それだけだった。

 

 

「仕留めきれない!?」

 

 

最初こそ、初めてラオシャンロンにダメージを負わせた事に喜んでいたハンター達が、それで倒れないラオシャンロンを見て悲鳴を上げた。

確かに撃龍槍でだいぶダメージを与えたとはいえ、それだけだ。

撃龍槍の影響がどれほど出ているのかは謎だが、敵はまだ顕在している。

それどころか撃龍槍、というかこちらに対して今までと違って怒気を剥き出しにしている。

 

 

とてもではないがまだ倒れるような気配は感じられない……。

 

 

「グルルルル」

 

 

ズシン!

 

 

低く唸りながらラオシャンロンはその巨体を、再び大門へと近づけてくる。

撃龍槍が命中したというのに……その歩みに遅滞はなく……。

 

 

ここまでなのか!?

 

 

指揮をしなければならない立場だというのに、言葉がでなかった。

このままいれば大門の崩壊に巻き込まれて、自分が死ぬ可能性もある。

退却指示や、ドンドルマに伝令……最悪の指示ではあるが、出さなければいけないというのに……身体が固まって動けなかった。

 

 

「ガアァァァァァ」

 

 

そうして何もできずに固まっていると、ラオシャンロンが立ち上がったまま止まった。

しかも先ほどまでは遥か遠く……ドンドルマのほうへと向いていた目をこちらへと向けていて……。

 

 

「何だ? 止まって? 俺が怖いのか?」

 

 

え?

 

 

不敵にも……巨龍に対して全く臆することのない声が聞こえてきて、後ろを振り返ると……。

 

 

「ここから先へと行かせるわけにはいかねぇな」

 

 

上半身が裸で……腹部に多少血がにじんだ包帯を巻いた、ジンヤが立っていた。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

「どうしてこんな重傷で来たんですか!?」

 

「……お前らだけで止められるとは思わなかったからな」

 

 

医務室で、リーメに腹に包帯を巻かれながら俺はうるさく説教されていた。

まぁ確かに結構な重傷なのだが……正直動けないわけでもない。

血も出ていたが、それもだいぶ収まっていた。

傷口が開いたために見た目派手だが……死にはしない。

 

 

多分……

 

 

「そ、それはそうかもしれないですけど」

 

「それに焚きつけたのは俺だ。その俺がこの程度の怪我で逃げるわけにもいかんだろう」

 

 

包帯を巻き終えたので、動きに支障がないか確認するために、立ち上がって軽く体を動かす。

特に阻害されている感じはしないので問題ないだろう。

俺は確認が終えると、服を羽織るのも面倒……というか服に血がつくのが嫌で、上半身包帯だけの格好で、医務室の外へと向かう。

 

 

「じ、ジンヤさん! どこに行こうとしているんですか!?」

 

「ん? 最終決戦場だっけ? そこに行くつもりだが?」

 

「そんな無茶な!? 撃龍槍だってあるんです! ジンヤさんが攻撃する必要性なんてもうありません!!!!」

 

 

撃龍槍というのは確かこの砦の最終決戦兵器だっけ? 巨大な鉄の槍を撃ち出すとか言う……

 

 

リーメの言葉に、それとなくその決戦兵器の概要を思い出すが、俺は直ぐにそれを振り払った。

確かに攻撃力はあるだろうが、それだけで退治できるとは思えない。

相手は大気のマナを吸収する事の出来る魔龍なのだ。

しかも尻尾が消えた事を考えると……。

 

 

「行かないわけにはいかないさ」

 

「でも……」

 

 

さらに止めようとするリーメを、俺は静かに首を振って答えた。

そして最後の武器である、新造した対ラオシャンロン用の長野太刀を手に、ゆっくりと医務室出口へと向かう。

そこには先ほどから黙りこくっているフィーアが壁に背を預けて俺を見ていた。

 

 

「珍しいな。お前が何も言ってこないのは」

 

「……いや」

 

 

俺が声を掛けて漸く反応した。

珍しいと言うか、何か深く考え事をしていたようだ。

しかもその暗い表情から見て……。

 

 

なんか無駄に変な事考えているな?

 

 

俺が腹部の傷が開いてうずくまった辺りからこいつの様子はおかしかった。

それから暴走じみた攻撃を行っていたし、何か勘違いというか変な事を考えているのかもしれない。

俺は内心で嘆息しつつ、フィーアの頭に手を乗せた。

 

 

 

「深く考えるな。お前は俺の弟子だ。それ以上でも以下でもない」

 

 

 

「あ……」

 

 

俺のその言葉に目を見開いてこちらを向くが、俺はそれに取り合わずに最終決戦場へと向かう。

気配からして敵はもう大門の直ぐそばへと来ている。

のんびりしている場合ではない。

だが、腹部の傷が痛んで思わず俺は膝を突きそうになった。

その時……。

 

 

ガシッ

 

 

倒れそうになった俺の体を、右側からフィーアが支えてくれた。

 

 

「……死ぬなよ」

 

 

どうやら難しく考える事はやめたみたいだ。

まだいろいろと考えているみたいだが、先ほどと違って袋小路に迷い込んでいたのは脱したようだ。

 

 

「誰に言ってるんだ?」

 

 

俺はフィーアに体を支えられつつ、不敵に笑って見せた。

リーメもその笑顔を見て止められないとわかったのか、俺の左後ろに控えて着いてきている。

どうやらこの二人は俺の事を信じる事にしたようだ。

俺ならばラオシャンロンをどうにかすると……。

そして、死なないと。

 

 

ならば期待に応えるとしよう

 

 

そうしてフィーアに支えられたまま、俺は最終決戦場へとはいり、ライシャンロンと対峙した。

皆がその立ち上がった巨体に呑まれているのか、誰も何の行動も行っていなかった。

諦めていると行ってもいいかもしれない。

という事は最終兵器である撃龍槍も通用しなかったのだろう。

ディリートがバカみたいな表情をして、今来た俺を見つめてきていた。

 

 

さて……今の状況だと、全力の攻撃は一度きり……

 

 

その巨体で、後ろ足で立つという……離れ業というか、意外な事をしているラオシャンロンに内心感心しながら、俺は自身の腹部へと手をやった。

大して回復させる事は出来なかったが、それでも出血は止まった。

どうにかいつも通り攻撃が出来るはずだ。

 

 

それに俺は悲しい事にこういった危機的状況でしか全力を出せないからな……

 

 

ランポスの大群、リオレウス、蒼リオレウス

 

 

今まで最強の一撃を繰り出せたのは全て手負いの状況であった。

楽観的かもしれないが、それでも可能性は高い。

 

 

ならば最後の対決と行こう!!!!

 

 

俺は、覚悟を決めると右手に持っていたそれの鞘を、上空へと打ち上げるようにして、抜き払った。

 

 

「おぉ……」

 

「す、すごい」

 

「……綺麗だな」

 

 

ディリートが、リーメが、そしてフィーアが……思わずといったように溜め息を吐き、その異様な武器を見ていた。

 

 

対ラオシャンロン用長野太刀……。

今回の特殊モンスター、ラオシャンロンを相手するために作った、規格外に長いまさに|超(・)野太刀。

 

刃渡り 一丈一尺一寸(333cm)

 

柄長さ 約二尺二寸 (66cm)

 

全長 約4mという……常人では決して持つ事すらも出来ないような凄まじい野太刀を作り上げたのだ。

ここまで来るともはや人が扱う武器ではない。

身幅も厚く作られており、そして何よりもこの武器にはある特徴があった。

玉鋼と、リオレウスの素材を少々溶かして混ぜ、さらに気を込めやすくするという事を考慮して、腹部から流れる血を多少掛けながら打ったので、刀身がほのかに朱色を帯びている。

柄は今回の攻撃の特殊性の都合上、作っていないので|茎(なかご)が剥き出しの状態だ。

 

 

 

「とくと見るがいい……俺が鍛え上げた得物……刃渡り一丈一尺一寸の野太刀を超えた超野太刀……名を|斬老刀(スサノオ)!!!!!」

 

 

 

ラオシャンロン用に作った、あり得ないほど長い野太刀。

もはや人間が使う武器であるとはとても言えないその武器を持つ俺を……皆が呆気にとられて見つめていた。

俺はそれを眼前へと持ってくると、腰のポーチに入っている秘密兵器へと気を送った。

 

 

「カハァァァァ」

 

 

吐息を一つ……吐く。

そしてそれと同時にポーチに入っている、秘密兵器二つに順次気を送り……それを刀身へと纏わせる。

 

 

ゴオォォ!!!

 

 

腰のポーチから赤い……蛇のような炎が幾重にも出てきて、それらが俺の手を通してそれが伝わり、刀身を赤くそめて、やがて真っ赤になった。

高温の炎に熱せられて、真っ赤になった鉄のごとく……。

 

 

「朧 焦屍剣(しょうしけん)!!!!」

 

 

秘密兵器……ポーチに入れられた二つの宝玉の内一つより、気によって発せられた炎熱を使用した技名を叫ぶ。

朧|焦屍剣(しょうしけん)。

宝玉……蒼リオレウスの紅玉の『気』を使用し、刀身を炎熱で熱したかのような超々高熱によって切断力を増すという……まるで宇○世紀に出てくる某MSの|熱剣(ヒート○ード)のようなもの……。

しかし……

 

 

ジュゥゥゥゥゥゥ

 

 

当然それは剥き出しである……|茎(なかご)も同様であり、当然そこにも熱が生じる。

そのために俺は両手の手の平が焼けた鉄によって肉が焼かれ、焦げ付いた肉の臭いを辺りに漂わせる。

 

 

「何を!?」

 

 

突然刀身が真っ赤に熱せられ、しかもそれを持つ俺の手から何かを灼いているかのような音がすれば当然周りの人間は驚く。

特に俺の後ろに控えている二人の弟子はかなり慌てていた。

 

 

「なんだその剣は!?」

 

「な、何をしているんですか!?」

 

 

何かを喚いているが、俺は一撃限りの必殺技の準備に忙しいために特に相手にしない。

そして次に、もう一つの宝玉へと、気を注いだ。

 

 

バチッ!!!

 

 

今度は時間をおかずに、一瞬にしてそれが如実に現れた。

碧い光が俺の体から発せられ、そしてそれは電磁の音を立てる。

もう一つの宝玉……謎の狼の様なモンスターの尻尾より剥ぎ取った物体である碧玉から、膨大な雷が発せられて、刀身へと伝っていく。

普段は雷月の柄頭にはめられているそれを取り出して持ってきたのだ。

同時に、俺はその刀身を包むような磁力を発生させて、宙へと固定する。

雷が体を痛めつけるが……それも手の平同様、無視をした。

 

 

ジュウウウ

 

ジジジジ バチッ! 

 

 

炎熱から発せられる紅い光と、電磁から発する碧い光。

二つの色の光源となった俺を、皆が異様な物を見ているかのような視線を向けてくる。

だが、そんな事など瑣末ごとでしかない。

 

 

「ガァァァァァァァ!!!!」

 

 

俺のこの攻撃準備に危機を感じたのか、それを妨害するための魔力の奔流を伴った咆吼を上げてくる。

皆がその巨大な口より発せられた咆吼に耳を塞ぐが……俺にとってはそんな物何の意味もなかった。

 

 

山……というのが貴様の別名……

 

 

|斬老刀(スサノオ)を大上段へと構えつつ、俺は敵を……ラオシャンロンを睨みつける。

敵も俺が最大の障害だとわかっているのか、俺の目を真っ向から受け止め、睨み返してくる。

 

 

「剣理殺人刀…………」

 

 

貴様が山だというのならば……

 

 

手の神経が焼き切れているのか、焼ける痛みなど今は必要ないと体が判断したのか……炎熱によって手が焼かれる痛みを全く感じる事がなかった。

俺はその灼かれている手に力を込めて、|斬老刀(スサノオ)を強く握りしめた。

 

 

 

 

 

「参るぞ!!!!  |斬老刀(スサノオ)!!!!  山ごと潰す!!!!!!!」

 

 

 

 

 

そう叫ぶと同時に、俺は大門の上から遙か上空へと飛んだ。

 

 

ドォン!!!!

 

 

大門の一部が陥没するほど足の力で体を宙に飛ばし、俺は眼下にいるラオシャンロンへと目を向ける。

 

 

「ガァァァァァァァア!!!!!」

 

 

敵も俺を迎え撃とうと、俺から決して目をそらさなかった。

電磁によって強化された俺の跳躍を、こいつは眼で追えたという事に成る。

 

 

魔力の恩恵か? 敵ながら恐ろしい……

 

 

その事を賞賛しつつ俺は電磁の力を収束する。

 

 

「磁波鍍装、蒐窮」

 

 

敵は魔力の塊。

砦に集まったハンター達がだいぶ削ってくれたみたいだったが、それでも敵の装甲とも言える魔力壁は未だに厚い。

十日前にラオシャンロンを見たときに、こいつに正攻法は無駄であるというのが嫌でもわかった。

 

 

ならば一点突破の攻撃で急所を狙えばいい!

 

 

そう、何もこいつを八つ裂きにする必要はないのだ。

蒼リオレウスの時のように首を落としたり……もしくはその頭蓋を叩き割れば勝敗は決する!!!!!

つまりは……

 

電磁抜刀による兜割り

 

それがこいつの対策として思いついた、俺の攻撃だった。

敵の頭蓋を破壊すれば致命的な傷となり死ぬ事になる。

兜割りはその性質上、|叩き(・・)斬る事を目的としているので、刃は必要がない。

鉄製の兜を攻撃するならば兜割という十手に類似した武器を使用すればいいのだ。

だから俺はこの武器、|斬老刀(スサノオ)にはある特徴として……切断できるほどの研ぎを行っていなかった。

そのためにこの|斬老刀(スサノオ)は刀というよりも巨大な打撃武器となっているのだ。

 

 

「『雪颪』が崩し……」

 

 

前回の技と違い、今回のは剥き出しの刀によって行う電磁抜刀。

そのために電磁の力を繊細に扱う事は出来ないが……。

 

 

大味とも言える電磁操作の恩恵で、威力に関しては一級品だ!!!!!

 

 

中空にて、俺の跳躍の力と落下の力が釣り合った状態……つまりは一瞬とはいえ浮いた状態になった瞬間に……俺は反発による力を押さえつけていた腕の力を抜き、逆にその力を補助するかのように、その腕の力を振り絞って刀身を切り下げた。

 

 

 

 

「電磁抜刀、威!!!!」

 

 

 

 

その瞬間に、俺は|斬老刀(スサノオ)の電磁作用によって下へと急速落下した。

 

 

キュゥゥン!!!

 

 

電磁の力によって加速した俺の体は真下……ラオシャンロンの頭蓋へと行くはずだった。

しかし……

 

 

「ガァァァァァ!!!!」

 

 

なにっ!?

 

 

しかし敵は俺の攻撃する場所を予測したのか、その巨大な角を俺へと向けて……まるでその角が己の剣であるかのように、俺の|斬老刀(スサノオ)を受け止めていた。

 

 

ギャガァン!!!!

 

 

|斬老刀(スサノオ)と敵の角。

その二つがぶつかったとは到底思えない凄まじい高く轟音が鳴り響き、俺の体を……他のハンター達の体を貫いていく。

そしてぶつかり合った衝撃は当然俺の腕にも届いており、俺は思わず|斬老刀(スサノオ)を手放してしまいそうになった。

だが、手放せば負けるのは明白。

だから俺は再度炎熱によって灼けている|斬老刀(スサノオ)を強く握りしめる!!!

 

 

ギィィィィィィ!!!!!

 

 

|斬老刀(スサノオ)と角がこすれる音があたりを震わせる。

そしてそれとは違う……余りにも微かな音が俺の耳へと届いた。

 

 

ピシッ ピキ

 

 

!? 刀身にヒビが!?

 

 

そう、先ほどの鬼斬破同様、この|斬老刀(スサノオ)の刀身にも亀裂が走っていたのだ。

気を通しやすくすると言う苦肉の策で、血を掛けながら鍛えたその代償だった。

不純物とも言えるその血が、刀身の堅固さをわずかながらに低下させたのだろう。

さらに斬る事によって刀身にかかる負担が少ない普通の刀と違って、この|斬老刀(スサノオ)は完全な打撃武器だ。

普通の刀よりも負担がかかるのは当然の事だった。

 

 

だが!!!!!

 

 

それでも負けるわけにはいかない!!!! 

 

 

|あの村(・・・)の様な……廃墟と化している破壊されてしまった村、街など……。

 

 

俺はもう……見たくない!!!!

 

 

脳裏を走った廃墟と化してしまった村……燃えさかる村……もしもラオシャンロンがドンドルマへと向かえばそれと同じ用になってしまう事は考えなくてもわかる事だ。

だから俺は……

 

 

「負けるかぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

吼えた。

ただ、その力の限り吼えた。

そしてそれと同時に残った気を練り上げて、刀身へと注いだ。

 

 

そして……

 

 

 

バギャアァァァァン!!!!!

 

 

 

先ほど……鬼斬破が砕けた時と同じような音を響かせて、|斬老刀(スサノオ)の刀身……刃渡り半分より少し上の場所から、無惨にも折れ砕けた。

しかし、今回も先ほど同様、相手も道連れにした。

 

 

「クオォォォォォン!!!」

 

 

敵の……成人男性がそのまま角になったといえるような巨大な角が、|斬老刀(スサノオ)と鍔迫り合いをしていた箇所……つまりは根本から無惨にも折れ砕け、敵が悲鳴を上げた。

それと同時に敵が纏っていた魔力壁が霧散し……その巨体が地面へと崩れ落ちた……。

 

 

 

 




ユニーク十万突破記念……いかがでしたでしょうか?

珍しく中途半端とも言える終わり方で終了~(狙ったからいいんだけど)。
いやぁ……それでも長い……読者様に長いと言われたにも関わらず進歩無し!!!!
だめ人間刀馬鹿でありますw
長くってごめんなさい……けどこの長さでないと果たして何話行くんだろう?
この長さでさえ……予想でとんでもない事になっているというのに……
あと斬老刀も長いwww ぶっちゃけこんな長い得物、人間にはもてませんw
それに強度的にもどうなんだろうね……
ただ一丈一尺一寸を書きたかっただけなんですwwww 響きがいいと思うのは私だけでしょうか? 一丈一尺一寸……。狩竜の七尺四寸よりはいいと思うんだ……
一応斬老刀が長いのには理由があり(対ラオだけでなく)、……次の次辺りでわかりますw

あ、それと言う事が一つあります。
「激変する運命 後編」。そして今回の「決戦の砦 後編」。
この二つにて決め技として登場した電磁抜刀ですが……

この作品ではもう登場しない事をここに宣言します!(電磁抜刀はね……)

いやだって……今のままだと、『困ったときの電磁抜刀or村正さん♪』
となってしまいかねない。
元々友人から唆されて(いや言われただけで作者本人も嬉々として書いたけどw)ネタとして行っただけですので、決め技というか必殺技という認識は作者の中ではありません。
だって別に無くても刃夜ならなんとかしそうだしw 攻撃手段の選択の一つですね。
それに今回の相手であるラオシャンロンの別名は「山」ですから……。
村正がわかる人には作者が何故他の電磁抜刀ではなく、『威』を使用したのかおわかりいただけるかと思いますw
まぁそんなわけでこの作品ではもう電磁抜刀は出しません。
大好きだけどねw PCゲーム歴代Top3に入る作品だし

後日談で少々ラオさんと○をして~、それから事後処理して~、んでドンドルマのとある場所で、刃夜とフィーアが○○○して、それをレーファが○○しちゃう~w
書きたいシナリオ上位が目前に!!!!! 頑張ろう!!!!
後書き長くってごめんなさい(>_<)!!!

5/28 一部ネタを修正
黒月古城様どうもありがとうございました!


ハーメルンにて追記
↑黒月古月様にご指摘いただいた箇所が丸々残っていたので削除しました。
まさかゴッド○ンダムのネタがまだ残っていたとは・・・・・・
失礼しました。

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