リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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誰か、ディリートさんによく聞く胃薬上げてあげて……

もうやめて!

ディリートさんの胃のライフはゼロよ!? (←すがりつく……ディリートの部下)

は☆な△せ!!! (←作者)


ちなみに、彼の書類地獄はまだまだ続きますw



炎国の帝王

~ディリート~

 

 

それは……余りにも突然にやってきた。

 

 

ダンダンダン!

 

 

昨夜に届いた刃夜からの書類に目を通し、それに伴って緊急会議を開き、モンスターが飛来した、もしくはその被害がこのドンドルマにまで及んだ場合、そういった最悪な場合も想定し、対策を決めてそれの対策案をまとめた書類を各方面……監視、気球観測、門番、広場の管理人、商業区、居住区の面々に送り、明け方にようやく布団にはいる事が出来たのだが……。

 

 

(何だ一体?)

 

 

寝ぼけながらも聞こえてくる荒々しいノックの音……。

これほどの大きさで叩かれるという事は相当な事態であるとわかっているので、私は必死に沈んでいた意識を浮上させる。

だが、結局その言葉を聞いて……その努力は半ば無意味だった。

 

 

「隊長! な、謎の飛竜が……ドンドルマの迎撃区に突然降り立ちました!」

 

「…………………………何だと!?」

 

 

その言葉は、ドンドルマにすんでいるのならば誰もが仰天するほどの破壊力を秘めた言葉だった……。

 

 

 

 

~ギルドナイト隊員~

 

 

「状況は?」

 

 

謎のモンスターが飛来した一方を受けて、私は急いで自慢の装備であるモノブロスの甲冑を着込み、己の得物である、大斧の大剣ディシジョンと、街中での暴動などを鎮圧する際に利用する片手剣グレートククリを装備。

そして迎撃区の撃龍槍稼働スイッチが設置されている、高台へと赴き、そこにいる部下にモンスターの様子を聞いた。

 

 

「未だ謎のモンスターに動きはありません」

 

 

どうやらモンスターはここドンドルマの迎撃区に来てから特に目立った動きは無かったようだった。

高めに設置された塀から下の広場の様子を盗み見る。

そこには……

 

 

赤い体毛、赤い鱗……

 

巨大な翼を持ち、飛竜種とは決定的に違い、その体に四肢を持つ……

 

その口から覗く獰猛な犬歯は……ハンターの装備など関係為しに噛み千切るだろう……

 

そしてその額より生えた一対の角……それは獰猛さと気高さを兼ね備えていた……

 

 

……見た事のないモンスターだな?

 

 

最近こそ、ドンドルマでの警備員としての役割が増えてきた私だが、ギルドナイト隊員としては古参のメンバーであり、今まで数々の困難かつ難関なクエストをいくつもクリアしてきたそこそこのベテランである。

しかし、それらの経験……過去行ってきたクエストでは目にした事のない……まるで獅子のようなモンスター。

その身に纏う雰囲気は、飛竜種すらも軽く圧倒……凌駕し、リオレウスなどすらも赤子に思えるほどの気迫を醸し出していた。

 

 

「上層部からの指示は?」

 

「未だありません」

 

 

厄介な時間に……

 

 

このドンドルマは巨大な都市であるために、昼夜においても監視を怠るという事はしない。

だが敵は夜明けと同時にやってきた。

夜と朝の境界線であり、夜に見慣れた目がまぶしい光に晒されるために、もっとも気を引き締めなければいけないのだが……夜と朝の分け目でどうしても気が緩んでしまう。

また余りにも見慣れないモンスターだったために、反応が遅れてしまったのも……無理からぬ事だった。

おまけに広場に降り立っても暴れ回るわけでもなく……ただじっとしているその姿は……不気味でさえ合った。

 

 

上からの指示は無いが……一つ仕掛けてみるか?

 

 

未知のモンスターであるために、慎重に行動を起こすべきだが……しかしこのままにらみ合っているわけにもいかない。

太古の遺産とも言える迎撃区だが、使われていないからといってバリスタや、撃龍槍、大砲の整備を怠ってはいないので、試射なしにどれも直ぐに使用する事が出来る。

 

 

だが……どうする?

 

 

昨夜渡された対策用紙……。

そこにはもしも未知のモンスターがこのドンドルマにやってきた場合……もしくはそのモンスターの被害がこのドンドルマに及んだ場合の対策が事細かに記されていた。

それを受け取り、目を通した以上それに沿った行動をしなければ命令違反となってしまう。

それに無駄に刺激するわけにも行かない。

やはりここは様子見をするのが妥当だろう。

 

 

「!? 隊長! バリスタ班が攻撃を刊行すると今伝令が!!!」

 

「何だと!? いかん、やめさせろ!!!」

 

 

私の指示を仰がずに!!!

 

 

敵がどんなモンスターであれ、不用意に刺激するのはまずい。

しかも敵はこの人間……ハンターすらも大勢住むこの街……ドンドルマへと来て、敵はほとんど行動を起こしていない。

その不気味さが……その雰囲気に反したその静けさだが恐ろしかったのか……バリスタ班は私の制止がいく前に……バリスタを敵へと向けて一斉に発射した。

 

 

バシュ!

 

 

広場を囲むように設置された……二十近くのバリスタ……。

そこから一斉に幾十ものバリスタが、未知のモンスターへと発射された。

あまりにも常識外だった古龍種、ラオシャンロンには全く効果の無かったバリスタ。

だがそれはあくまでも例外だ。

バリスタは間違いなく我々人類に取っては最強に分類される武器の一つなのだ……。

普通のモンスターならば、このバリスタの集中砲火に耐えられるはずもない。

しかもそのバリスタを操っているのは、ドンドルマの精鋭達だ。

一部の乱れもなく、全く狂いのないその軌跡は……熟練の訓練を伺わせる物だった……。

 

 

 

 

 

だが……

 

 

 

 

 

 

ガギャン!

 

 

 

 

「……………なに?」

 

 

 

 

その最強の武器であるバリスタ。

そしてそれを操り撃ち出したのは、ドンドルマの精鋭達。

おそらく史上最強レベルでの攻撃力と精度を兼ね備えたその攻撃は……全てが無惨にも弾かれた……。

 

 

「なっ!?」

 

 

伝令兵と連絡を行っていた私の部下も……驚きの余りに呆然としていた……。

無論私も……。

 

 

 

 

呆然としている余裕など……無かったというのに……

 

 

 

 

【ガァァァァァ】

 

 

 

 

モンスターが低く唸る……。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは……死の宣告だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

フォン

 

 

「……何だ?」

 

 

敵が立ち上がり、唸ったと同時にバリスタ周辺に何か赤い鱗粉のような物が漂う。

突然出てきた意味のわからないその物体に……バリスタ部隊は浮き足立つ。

だが……それは遠目から見れば不吉な物にしか見えず……。

そしてそれと同じ物を……火山内部……否、炭坑で見た記憶が……。

 

 

「!? いかん! 直ぐにバリスタ班を下がらせ……!!!!」

 

 

それに気づいたときには……遅かった。

 

 

 

 

ガチン!

 

 

 

 

敵が開いていた口を凄まじい勢いで閉じ、その口から火花を発生させた。

その瞬間……

 

 

 

 

ボボボボボボボボボボ!!!!!!

 

 

 

 

連続した爆発音が……ドンドルマに鳴り響いた……。

 

 

 

 

「ぐぉぉぉぉぉ!?」

 

 

その爆発の余波は……この高台にまで届き……轟音と爆風が駆け抜けていった。

そしてその爆風で……比較的重い部類に入るモノブロス装備を身に纏っている私が吹き飛ばされた。

それほどの爆風だった……。

そしてそのまま塀に叩きつけられた。

 

 

「がはっ!?」

 

 

凄まじい勢いで叩きつけられて、私の肺から残らず空気が出て行ってしまう。

そしてその叩きつけられた衝撃で、咳き込んでしまう。

だが何とかすぐに立て直し……私は状況を把握しようと……辺りを見渡した……。

 

 

そこには……

 

 

 

 

「なに……?」

 

 

 

 

思わず呆然としてつぶやいてしまった……

 

 

先ほどまで確かにあったはずの……バリスタ……

 

 

そのバリスタがあったはずの場所には何もなく、ただ先ほどの爆発の残り火と……そこから黒煙が立ち上っているだけで…………そこにいたはずの人間は、誰一人として……その姿すら見ることは叶わなかった。

 

 

な、どういう……

 

 

こんな事が出来るのは生物ではない……。

生物であるはずがない……。

 

 

これに立ち向かえと言うのか?

 

 

歴戦の勇士とも言えた私が……呆然とそう思ってしまう。

 

こんな怪物に立ち向かえる訳もない。

 

もしもそんな人間がいるというのならば……

 

 

 

 

それは人間なのか?

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

今日もいい天気ですね~

 

 

ムーナと共に寝たために、藁の中から朝日を浴びて、俺は起床した。

体力、精神力共に良好。

実に清々しい朝であった。

このままラジオ体操でもしたい気分だった。

……ので、した。

 

 

腕を大きく伸ばして、深呼吸。

体をひねって横回し。

腕を大きく回す。

腰を前後に曲げる。

 

 

とまぁ、もっともスタンダードと思われるラジオ体操を行う。

 

 

「おはようございます! ジンヤさん」

 

「おはよう、ジンヤ」

 

 

そうして何となくラジオ体操をしていると、弟子が二人、俺の家へと入ってくる。

俺はそれを出迎えて、いつものように、三人で修行を行おうと思った。

その時……。

 

 

……ん?

 

 

家の外……ドンドルマの方角より、何かがそこそこの速度でこちらへと走ってきている何かを捉えた。

そしてその上には一人の人間が乗っており……。

 

 

……来たか

 

 

「? どうしたんだジンヤ?」

 

 

俺が壁を注視ているのに気づいたフィーアが、修行を一旦やめて俺へと話しかけてくる。

それに気づいたリーメも、手をやめて俺へと近づいてくる。

俺はそれに応えず……嘆息を吐いた。

 

 

「どうやら今日も普通のクエストには行けないようだ……」

 

「「?」」

 

 

俺の独り言に二人が頭に?マークを浮かべる。

その辺りから……ガウシカの蹄の音が二人にも聞こえるくらいの音量になり……俺の家の扉が叩かれた……。

 

 

「ジンヤ殿! ギルドナイトより緊急クエストの依頼です!!!!」

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

「……ドンドルマにテオテスカトルがやってきただって?」

 

 

その報告を、ジンヤの家の庭先で聞いて、私は思わず大声を上げてしまった。

古龍種テオテスカトル。

伝説として語り継がれるその存在は……数百年顕れることもなく……半ばただの伝説であると思われていたモンスターだ。

そんなのが来たという伝令兵。

リーメもあまりに突飛なことについて行けていないのか……目を白黒させてきょとんとしていた。

 

 

「はい。広場に降り立ってから私が出立するまでの間は、特に何もせずに広場でじっと何かを待っていたようにしていたのですが……果たして今どのような状況になっているかは……」

 

 

ガウシカを使い潰すつもりで飛ばしても、ドンドルマからここ、ユクモ村まで優に一時間近い時間がかかる。

となるとその一時間の間に、ドンドルマで何があったのかはわからないのだ。

 

 

「とにかくすぐに出立の用意を! ギルドナイトのディリート隊長が、あなたをお呼びです。是非力をお貸しください」

 

「うん。まぁわかってたことだしな。リーメすまない。今すぐに出張所に向かって気球の用意を頼んできてくれ」

 

「はい。ジンヤさん」

 

「それなら大丈夫です。行きがけに頼んできましたから。もう少しで飛べるようになるはずです」

 

 

どうやら気球を用意するその時間すらも惜しいほどに事態は切迫しているようだった。

ジンヤもそれを明確に察しているのだろう。

一瞬で準備を終えて外へと向かおうとする。

 

 

「すまんが留守を頼む。俺はちょいと古龍種討伐にいってくる」

 

「一人で行くつもりなんですか!?」

 

「当たり前だろう? 悪いがお前ら二人が来たところで何も出来ん」

 

 

ジンヤの象徴的武器である細長い剣を腰の帯に差しながら、ジンヤがリーメにそう答える。

リーメもそれを重々承知しているのだろう。

それ以上反論しようとしなかった。

だけど……私は……。

 

 

「……連れて行ってくれないか?」

 

 

足手まといになるのはわかりきっていた。

だけどついて行きたかった……。

 

 

私がジンヤを……自分の師であると、誇りを持って言えるために……

 

 

以前からのあまりに突飛な現象……ジンヤの戦闘能力や鍛造能力、古龍種との邂逅や討伐……数え上げたらきりがないその異様さに、私は最近ジンヤを訝しんでしまった。

そんな私を……私が訝しんでいると、この男ならば気づかないはずはないのに……それであるにも関わらず、この男は普段通り、いつもと変わらずに私と接してくれた。

 

 

そのジンヤの態度を見て、私は自分が恥ずかしくなってしまった……。

 

 

私はこの男の何処に惹かれたのか……?

 

 

 

 

そして………………………惚れたのか……?

 

 

 

 

こいつの……ジンヤの確固たる自分を……揺るぎない思いの強さに惚れたのではなかったのか?

 

 

 

 

ならばこいつが人外じみていようが……仮に人外であったとしても、ジンヤがジンヤであると言うのならばそれを否定する理由も、私の思いを捨てる理由もないのだ。

それに最近になってようやく気がついた。

だから……

 

 

「見届けさせて欲しい……。お前のその強さを……」

 

 

私が不退転の覚悟でそう言う。

するとさすがジンヤ。

私のその思いを明確に感じ取ったのか、私の事をじっと見据えて……頷いた。

 

 

「絶対に近づいてくるなよ? 遠くから見守ると言うのならば追従するのを許可する」

 

「……ギルドナイト隊員としての名誉と、私自身の信念に誓って」

 

「ぼ、僕も連れて行ってください!」

 

 

私の覚悟を見てか……リーメまでも付いてくると言い出してしまった。

だがジンヤはそれすらも予見していたのか……特に否定せずに頷いていた。

 

 

「お前も一緒だぞリーメ? 遠くから見て戦闘には直接参加するな」

 

「はい!」

 

 

こうして、私たちは本当に早朝に……大急ぎで用意された気球に乗り込み……ドンドルマへと向かった。

 

 

 

 

~ディリート~

 

 

「バリスタ班が独断で攻撃を行って……謎の爆発を受けてバリスタ事消滅しました……」

 

 

……何ということだ

 

 

上げられてきた報告に、私は思わず唸ってしまう。

ドンドルマの中央広場の砲撃区と迎撃区の裏手にある補給物資が備蓄されている通路に、臨時対策本部を設置。

そこで私は他のギルドナイト隊員とやってきたモンスターの対策を会議していた。

そしてその爆発音は、この少し遠くにあるはずのこの対策本部にすら轟くほどの爆音だった。

 

 

昨日確かに全ての部署に対策種類を渡したというのに……

 

 

だが突然来たことと、そのモンスターが何もしないことによる不気味さで……我慢が出来なかったのか攻撃してしまい……その結果がこれだった。

 

 

何故独断行動をした……

 

 

確かに不気味な敵ではあるが、だからといって攻撃していいはずがない。

モンスターである以上、対策を誤っていいはずがないというのに……。

 

 

「……バリスタは命中したのか? 効果は?」

 

 

だが嘆いてばかりもいられない。

冷徹とも言えるかもしれないが、私にはドンドルマの住民を守る義務がある。

とりあえず死者に対する祈りは後回しにして、現状を把握する必要性がある。

 

 

「命中したのですが……バリスタ全機、二十の攻撃を敵は……跳ね返し無傷で……。依然広場で沈黙しております」

 

「!? 馬鹿な!? バリスタの総攻撃を……弾いただと?」

 

「そんな生物がいるのか!?」

 

 

驚くべき伝令兵の返答に、皆が口々に驚きの声を上げる……。

わかりきっていたことだが……これで普通ではないモンスターであることが確定したわけだった。

 

 

……これはジンヤの報告通り……古龍種のテオテスカトルなのか?

 

 

伝説上のモンスター、炎王龍テオテスカトル。

炎熱の支配者として謳われるそのモンスターの強さは想像することすら叶わなかった。

何せ見たことが無いのだ。

長寿命である竜人族の人々ですらその目で見たことが無い。

それがどれほどの力を持ち得ているかなど……計りようがない。

 

 

「申し上げます!」

 

 

そうして頭を悩ませていると、新たな伝令兵が臨時対策本部へとやってきた。

先ほど「王立古生物書士隊」と「古龍観測所」へと送った伝令兵だった。

今広場にいるモンスターの特徴を大まかにスケッチさせ、それをその二つの研究所へと持っていき、果たしてそれが何のモンスターなのか調べてもらったのだ。

 

 

「ご苦労。結果は?」

 

「……スケッチしたモノを見せた結果……、あのモンスターは古龍種、テオテスカトルである可能性が……非常に高いとの……「王立古生物書士隊」と「古龍観測所」共に共通見解です」

 

「……テオテスカトルだと?」

 

「馬鹿な? ……あれはただの伝説ではないのか?」

 

 

その報告に……場が先ほど以上にざわめいた。

古龍種は……数百年一度も観測ないし発見が確認されなかった種類のモンスターで、半ばただの伝説であると思われていたモノなのだ。

だからこそあの広場に降り立ったモンスターが何のモンスターであるか誰もすぐには気づかなかったのだが……。

 

 

「……本当に古龍であるとしたら……どう闘えばいいんだ?」

 

 

ぽつりと……誰かがその呪詛にも似た言葉を言う。

その瞬間に……緊急対策本部は……固まった。

 

 

伝説上の存在であるテオテスカトル

 

 

炎を自在に操り、一夜にして国を滅ぼすことが可能とすらされている究極のモンスター

 

 

その四肢は巨石をもなぎ払い、その火炎はどんな物体ですらも溶解する

 

 

伝説をようやくすればそんな感じの正に怪物だった。

だがバリスタを弾いたというその事実、そして一瞬にしてバリスタ二十機を破壊したその異様な力……。

 

 

……また頼るしかないのか?

 

 

唯一この怪物に対抗できると思われる人間……。

私はこの謎のモンスターが広場に現れたという報告を聞いた瞬間に、ユクモ村へ伝令兵を乗せたガウシカを走らせていた。

 

 

伝説には伝説を…… 伝説がないのならば……伝説を打ち倒した存在を……

 

 

伝説にして天災、歩く災厄と謳われた巨龍……ラオシャンロンを討伐せしめたその人間へと……。

 

 

「報告します! 敵に動きがありました!」

 

「!? 何をした!?」

 

「いえ、特に何か行ったわけではなく……ただ立ち上がって遙か彼方を見据えています」

 

 

……それだけだと?

 

 

今までこちらから仕掛けた……仕掛けさせてしまったバリスタへの反撃以外は、全く動きを見せなかったテオテスカトルが行動したかと思えば、ただ立ち上がり虚空を見据えるだけ。

それを訝しみながらも……念のために高台へと直接赴き確認すると、確かにあらぬ方の空を……鋭くにらみ据えているだけだった。

 

 

? 一体?

 

 

「報告します! こちらに向かってくる気球がいるとのことです」

 

 

そうして高台で敵を観測していたら、新たな伝令が走ってくる。

それを聞いて私は心の中で舌打ちをした。

 

今ドンドルマはちょっとした閉鎖空間になっていた。

この危険なモンスターのいる中へとわざわざこさせるわけにもいかない。

四方に展開している監視塔に、緊急事態を告げる篝火を焚いて、連絡が回せなかった他の村や商隊達に、このドンドルマには近づくなと合図をしていた。

それをしたにも関わらず……気球が一機来てしまった。

 

 

合図が見えていないのか!?

 

 

そんな間の抜けたことでモンスターを刺激するわけにはいかなかった。

最悪打ち落としてでも止めるべきか……。

そう考えたときだった。

 

 

【ゴガァァァァァァァァ!】

 

 

広場にいるテオテスカトルが、凄まじい咆吼を上げた。

それは体だけでなく心さえも震えさせる……それほどの咆吼で……。

ほとんどその場にいた全員が腰を抜かしかけるほどの凄まじさだった。

 

 

そしてそこで私はようやく気がついた……

 

 

テオテスカトルが向いている方向……

 

その方角からやってくる気球……

 

であるにも関わらずさっきの爆発で撃ち落とそうとせず……咆吼……歓喜の叫びを上げたテオテスカトル……

 

 

まさか!?

 

 

「気球の識別マークは……ユクモ村のマークです!!!!」

 

 

来てくれたか……!

 

 

それは気球だからこそのゆったりとした軌道で……広場の直上へと躍り出ていた。

そしてその気球から……なんと人が飛び降りた。

 

 

なっ!?

 

 

高さは監視塔以上の高度だ。

あんな高さから降りたら、人間なんぞが衝撃を受け止めきすことはできずに、つぶれるはずだった。

 

 

だが……その男は違った……

 

 

フワッ

 

 

………………………は?

 

 

なんと驚くべき事に、そいつは飛び降りて、地面へと着地する一瞬手前に……下から柔らかな風が受け止めたかのように、静かに降り立ったのだ……。

 

 

黒い髪を自身が飛び降りている事によって生じた髪をなびかせ、その異様とも言える肌も、風によってはだけた衣服から覗いている……

 

 

手にしたその剣は、今まで見てきたどんな武器よりも細く、ながかった……

 

 

そして何より……その身を包む異様な雰囲気……

 

 

見る者を圧倒する裂帛の気配……

 

 

名を……

 

 

「クロガネジンヤ……」

 

 

天災、ラオシャンロンさえも討ち滅ぼしたその男が……今このドンドルマの広場へと降り立った……。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

……凄まじい気迫だな

 

 

ドンドルマ広場へと降り立った俺は……眼前に鎮座する古龍、紅炎王龍テオテスカトルが纏う、気圧されそうなほどの気迫を感じ……気を引き締めた。

 

 

昨日と違って……まったく驕っていない……

 

 

昨日、紫炎妃龍ナナテスカトリと共に出てきた時にはこれほどの強さを放っていなかった。

人間だからと……脆弱な存在に本気を出す必要は無いと言わんばかりに……。

だが今目の前にいる相手にそんなものはない……。

 

 

油断も気負いもない……

 

 

【待っていたぞ……使者よ】

 

「……そいつはどうも」

 

 

語りかけてきた紅炎王龍に、隙を見せないように極力注意しながら、俺は敵に返事をする。

だが、そんな事で俺を殺すつもりはないのか、テオテスカトルは俺へと言葉を続ける。

 

 

【最初こそ……貴様の力を手に入れさえすればそれでよかった】

 

「……」

 

 

敵が突如として語り出す。

絶好のチャンスでもあったが……俺はそれを……黙って聞いていた。

 

 

【だが貴様を見て……オオナズチと我が宿敵、クシャルダオラを倒したその力ならば、我の餓えを満たすことが出来るかもしれないと、一瞬だが心躍った】

 

「……」

 

【だが、その油断が紫炎を……我が妻を……ナナテスカトリを殺してしまった】

 

 

送られてくる思念に、私怨はない……。

何の感情も乗せずに、敵はさらに語る……。

 

 

【死という概念より、解き放たれて久しかった。その我らに死を与えた男よ……】

 

 

その言葉で……敵の言葉、そして体から凄まじいほどの負の感情が流れ出す!

 

 

【邪を超えるため、ナナの敵を討つため…………そして我自身の欲求を満たすために……全力を持って貴様を討つ!】

 

 

ゴォォォォォォォォ!

 

 

その言葉を放つと共に敵が吼える。

そして今までその身に抑えていた、気を、魔を、怨念を……全て解き放った。

 

 

常人ならば対峙するだけで死ぬほどの気迫……

 

 

心地いいともとれるそのひりひりとした殺気を浴びながら……俺は狩竜の鞘を上空へと打ち上げて、狩竜を抜刀した。

 

 

「望むところだ……」

 

 

落ちてきた鞘を折りたたみ、封龍剣【超絶一門】に干渉しないようにうまくくくりつける。

それによって互いに戦闘準備が完了する。

 

 

 

 

「我、鉄の錬鉄者 鉄刃夜!」

 

【我、炎帝王、紅炎王龍 テオテスカトル!】

 

 

 

 

互いに名乗り上げる……。

 

それは、死闘の合図……。

 

 

【「参る!」】

 

 

 

 

~リーメ~

 

 

それは……もはや想像の埒外……この世の出来事とは思えない程……異常な光景だった。

 

気球から飛び降りて、傷一つ負わないどころか、まるで風が受け止めたかのように着地したジンヤさんの怪奇現象が可愛く見えるほどの……異様な戦い。

 

 

「オォォォォ!」

 

【ガァァァッァァ!】

 

 

敵に向かって、ジンヤさんが駆ける……

 

その進路上に、何もないはずの空間で……大タル爆弾Gですら出せないほどの超火力が……いくつも爆発する……

 

それをジンヤさんはまるで予見しているかのように避け、敵へと近づき……その手にした尋常ではない剣、狩竜で斬りかかる……

 

普段はただ鈍色に光に反射するだけのその剣は……朝の陽光を受けているせいか……淡い紫色に発光しているように見えた……

 

それを敵は真っ向から角で、牙で受け止めて……ジンヤさんを吹き飛ばす……

 

吹き飛ばされたジンヤさんを狙って……先ほどの爆発が断続的に起こり、辺り一帯を震わせる……

 

でもその突如と起こる爆発も、ジンヤさんは避ける、防ぐ、受け止める……

 

また敵がその口から巨大で……この遙か上空を飛んでいるこの場所ですら熱を感じるほどの火炎を吐く……

 

それをジンヤさんは……

 

 

「し ゃ ら く せ えぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

なんと避けもせずに、その紫に光り輝く狩竜を眼前へと突き出して、炎の中を突き進んでいく……

 

その炎によって灼かれた地面、そして石垣の壁は……マグマでも浴びたかのように溶解していた……

 

 

 

 

「…………………………ぁ、ぅ」

 

 

 

 

もう言葉すらも出なかった……

 

僕も、フィーアさんも……ドンドルマにいる……ギルドナイトのハンター達も……誰一人として何も言えず……見守ることしかできなかった……

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

ラオシャンロンの力を解放し、それを纏わせた狩竜で敵の吐き出した炎を突き破りながら前進する。

驕ることをやめ、完全に殺す気できている相手を前にしては、こちらも最強の力で闘わなければまともに拮抗すらも出来ない。

もともと強い敵の力の前では……生身だけの俺など芥子粒のような者だ。

それでもどうにか拮抗出来ているのはラオシャンロンのおかげだった。

また、発動してくれている、「霞皮の護り」、「鋼殻の護り」、「精霊の加護」がなければとっくに敗れているだろう。

 

 

【……何故その力を顕現しない】

 

 

ある程度戦闘し、一瞬互いに手を出し終えたその間に……テオテスカトルが話しかけてくる。

確かに、俺はラオシャンロンの力を解放し、狩竜に纏わせているだけでまだ完全解放してはいなかった。

だが完全解放してしまっては、俺の体が耐えられず、時間制限が課せられてしまう。

未だ打開策が見いだせていないこの状況では……まだ最後の切り札を出すべきではなかった。

 

 

 

 

【……本気を出す気はないと?】

 

「そんな生やさしい生物かよ? お前が。本気は出すがまだ貴様を倒す算段が出来ていないから出していないだけだ」

 

 

 

 

本気を出さないで勝てるほど、俺はまだ腕がない。

それに本気を出して挑んできている相手を前にして……手を抜くという惰性な行為をするつもりは毛頭無い。

 

 

 

だが、敵はそれでは気が済まなかったらしい

 

 

 

【よかろう……ならば全力を出さねばならない状況へと陥らせてくれよう!】

 

 

 

……………何?

 

 

敵がそう吼えた……。

何か……凄まじい事……それこそ今まで手を出さなかった、実質人質となっているギルドナイトの連中や、気球にいる俺の弟子達を攻撃するのかと、一瞬身構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが……ここに至って、そんなことをする……下衆ではなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ゴォォォォォォォォォォォォォ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その咆吼と共に……世界が変わった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ディリート~

 

 

なっ!?

 

 

あまりにも人外じみていて、もはや人間に可能な動きなのか?

 

そしてそれを相手にしているモンスターも生物なのか?

 

そう本気で思えてしまうほどに争っていた二つの存在が停止した。

 

そのそして何か会話を行ったその時……テオテスカトルが吼えた……その瞬間。

 

 

「……………消えた?」

 

 

そう、その二つの存在が一瞬にして消失したのだ。

 

唐突に……。

 

残されたのは、二つの存在が争って、ほとんど見る影もなくなってしまった広場のみ……。

 

 

「……どこへ?」

 

 

見守っていた周りの人間も、突如として消えた二つの存在が何処に行ったのか、わからずにざわざわと騒ぎ出す。

 

 

 

 

 

 

 

だが……その問いに応えてくれる存在は……何処にもいなかった……。

 

 

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

「……う?」

 

 

突如として視界が変わり……いや、その現実の視界を浸食したその炎を見て、そのあまりの禍々しさに、俺は思わず目を閉じてしまった。

そして周りの気配が安定したのを感じて目を開くと……そこは……

 

 

 

 

「……荒野?」

 

 

 

 

それ以外に言葉が思い浮かばない。

 

ある程度平地になっているが、土の色は乾いた黄土色。

 

その大地以外に何もなく……空は燃えているかのように真っ赤な日に染められていた。

 

 

 

 

【紫炎妃龍……ナナテスカトリの究極の力。炎王結界】

 

「結界?」

 

 

 

 

確かに、この空間にはあまりにも現実感がなかった。

巨大な何かに取り込まれた、そんな感じだった。

 

 

 

 

【ここならば周りを気にせず……また何の気兼ねもなしに……戦えるはずだ】

 

 

 

 

確かに周りに何もなく、現実世界に関与していない、異空間のこの場所ならば周りを気にする必要性は一切無い。

 

 

 

 

【この世界を体現しているのはあくまでも紫炎妃龍の力のみ。それ以外に一切の力を使用しない】

 

 

 

 

その通りなのか、俺の体に一切の変調はなかった。

結界とは、自身を守る事にも使えるがその逆も可能で、自身が展開した結界内部に敵を閉じこめた場合、使用者の腕や力量にもよるが相当なアドバンテージを得られる。

だがこの結界にはそれがない。

魔力の妨害もなく……ただこんな荒野に移動した……そう錯覚してしまうほどだった。

 

 

 

 

【余計な邪魔は入らぬ……そしてここならば……互いに全力を発揮できる!!!!】

 

 

 

 

その激昂と共に……敵に変化が生じる。

 

 

身を纏っていたその炎熱は、視覚化できるほどに赤く燃えたぎり……いや、もはや膨大な魔力が炎となって具現化しているといっていい……

 

膨大な魔力によって生み出されたその炎熱は、クシャルダオラの「鋼殻の護り」すらも突き抜けて……俺の体を焦がした……

 

 

 

さらにその魔力の恩恵か……はたまた暴走による弊害か……

 

 

 

四肢の爪、翼爪、そして鬣に金色が混じり、その剛き角は、より堅固に、より巨大に肥大化し……さきほどの視覚化できるほどに濃密な魔炎はテオテスカトルを中心に渦を巻き……その目は血走り……深紅に光り輝いていた……

 

 

 

 

……本気だな

 

 

 

 

それを見て、敵は間違いなく本気で……全力で文字通り殺すつもりで来ている……

 

ならば俺ももはや倒す手段が思いついていないなどと言っていられなかった……

 

 

 

 

「『龍刀』顕現……」

 

 

 

 

左手で狩竜の柄頭を力の限り持ち……俺はその左腕前腕部に宿った究極の魔…………

 

 

 

 

魔をもって、魔を引き裂く最強の力……

 

 

 

 

それを狩竜に纏わせ、練り上げて……力を形に成す……

 

 

 

 

「龍刀……【朧火】!!!!」

 

 

 

 

顕現したその群青の魔の刀を俺は鋭く構える……

 

 

 

 

【貴様は、我ら古龍に死という概念を思い出させた人間……】

 

 

「……」

 

 

【たとえどれほどの力を飲もうとも……天下の獲物を喰らおうとも……貴様ほどの人間を喰らう喜びには劣る……!】

 

 

その口上を上げるたびに……憎しみによって練られた魔が……俺の「鋼殻の護り」を突き抜けて俺の肌を泡立たせる……

 

 

【貴様の存在が……貴様の命が!!!! 我の血を沸かす!!!!!】

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

【貴様を……全力を持って喰らうに値する人間と認めよう! 鉄刃夜よ!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その想いに応え……俺も全身全霊を持って……貴様を斬る!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

互いに互いの想いをぶつけ合う……完全なる真っ向勝負……

 

雪山での死闘……クシャルダオラと同じように、俺たちは全力を持って……力を振るうと宣言する……

 

開始の合図もない……そんな物は必要ない……

 

ただ目の前の相手を潰し、壊し、砕き、穿ち、燃やし、切り裂き……いや、手段などどうでもいい……

 

 

 

 

「ただ……」

 

【貴様を……】

 

 

 

 

 

 

 

 

【「殺す!!!!」】

 

 

 

 

 

 

 

 

そう吼えて……互いが互いに向かって突進した……

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴォォォォォォォ!

 

 

けたたましい燃焼音を響かせながら、敵が俺に突進してくる……俺も突進するが……その速さが俺と敵では比べものにならなかった……

 

 

走ったと思ったら、もう既に目の前に来ていた……

 

 

 

 

なっ!?

 

 

 

 

瞬間移動……そう言ってもいいほどの速度だった

 

これに比べたらクシャルダオラの最強の攻撃だった突進なんぞ、カタツムリに見えるほどの……

 

俺はそれを何とか龍刀【朧火】を前方に掲げて、完全なる楯とすることによってどうにか防いだ

 

 

 

 

ゴガン!

 

 

 

 

両手で前に突き出している龍刀【朧火】に信じられないほどの衝撃が走り……それによって生じた轟音が……俺の体を叩いた……

 

そしてそれを大地に立ってまともに受け止めることなんぞ出来るわけもなく……俺は遙か後方へと吹き飛ばされた……

 

 

 

 

ゴォッ 

 

 

 

 

ぐっ!?

 

 

 

 

ぶつかった衝撃で吹き飛んだ俺が、亜音速になって吹っ飛んでいくほどの衝撃……

 

数百メートル吹き飛ばされてようやく殺しきれる速度になった……

 

だが……

 

 

 

 

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!】

 

 

 

 

体制を立て直す余裕は与えるつもりはないらしく……敵は吹き飛ばした俺を追随し、今度はその爪で、俺へと攻撃を仕掛けてくる……

 

そしてそれもまた超速度で……俺は再び龍刀【朧火】を楯にすることによって回避するしかすべがなかった……

 

 

 

 

ゴゴォン!

 

 

 

 

ラオシャンロンの力を体現している龍刀【朧火】でなければ、打ち砕かれていることが容易に想像できるほどの剛力……

 

ラオシャンロンの体当たりに匹敵する……いや、勢いにおいて言えば確実に凌駕しているほどの威力だった……

 

 

 

 

ミシミシミシミシ

 

 

 

 

「ぐぉぉぉぉ」

 

 

 

 

宙に浮き、それで受け止めてもなお衝撃によって、修行で肉体的には極限まで強化され……さらに気と魔で強化されたこの体が軋み……悲鳴を上げる……

 

だがそれにお構いなく……敵はさらなる突進を敢行する……

 

 

 

 

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!】

 

 

 

 

声にならぬ程の叫び……敵がさらに俺へとその強大すぎる膂力を持って……俺へと攻撃してくる……

 

まさに前衛的な立場の紅炎王龍……テオテスカトルの真骨頂だった……

 

魔によって形成された炎で直接的な攻撃は行わず、ただシンプルに……その魔と力で、自身の最大にして最強の一撃を繰り出す……

 

俺はそれを受け止めるしか出来ず……どんどんと時間が過ぎていく……

 

時間が過ぎる事に、龍刀【朧火】の強大すぎる魔が俺の精神を、体力を削る……

 

 

だがこの敵の究極の打撃とも言える攻撃を防ぐ得物は龍刀【朧火】しかなく……どんどんと追い詰められていく……かに見えた……

 

 

 

 

【ぐぅ……ごぉぉ!?】

 

 

 

 

突如として一旦停止し、敵が呻き悲鳴を上げる……

 

それに伴って……敵が纏っていた……もはや太陽の表面温度ほどはありそうなその魔炎が揺らぐ……

 

どうやら敵も無傷でこの攻撃を行っているわけではなさそうだった……

 

だが……

 

 

【ぐ、ご、ごごごごごぉ……ガァァァァァァッァア!】

 

 

それでも敵はやめない……

 

己の命を削ると知っていながらも……敵はその命を炎と化し……先ほどよりもさらなる強烈な一撃を……俺へと繰り出すために突進してくる……

 

 

 

 

そこに一切の油断も……侮り……驕りも……嘲りもなく……ただ、眼前の敵を……俺を殺すために命を燃やし尽くす!!!!

 

 

 

 

そんな気迫があった……

 

 

 

 

それを見て……俺も腹を据えた……

 

 

 

 

ダン!

 

 

 

 

右足を振り上げ、それを地面へと打ち付ける……

 

 

 

 

ダン!

 

 

 

左足も同様に、高く振り上げ、地面へと打ち付けた……

 

 

 

 

両の足を地面にめり込ませ、突き刺すほどの勢いで踏みしめて、俺は両手を広げる……

 

 

 

 

 

 

 

 

「こい!! 紅炎王龍!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

受けない、避けない……敵を見倣い……ただ己の力の全てを込めて、この超野太刀……龍刀【朧火】を振るのみ!!!!

 

 

 

 

全力で龍刀【朧火】の柄を握りしめる……

 

 

 

 

そして体を大きく捻り……己が得物を後方へと振りかぶる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

全ての力の……ぶつかり合い……

 

 

 

 

 

 

 

 

小細工もない……それどころか技もなく……あるのはただ力のみ……!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれが……激突した……

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてすぐに訪れる……結果……

 

 

 

 

【グッ!?】

 

「ガッ!?」

 

 

 

 

力と力のぶつかり合いに、互いが耐えきれず……互いに遙か彼方へと吹き飛ばされる……

 

 

 

 

互いに数百メートルという距離を飛ばされて……通常では考えられないようなほどの距離が出来る……

 

だがそんなもの無きに等しい……

 

互いが走れば、それは刹那の瞬間に走り抜け……再びぶつかり合うだけの話……

 

 

 

 

受けるのは駄目だ……

 

 

 

 

敵の勢いが強すぎて……最強の武器たる龍刀【朧火】が弾かれた……

 

それはまだ俺が扱い切れていない証……

 

 

 

 

【……どうやら互いに限界のようだな】

 

「……そうだな」

 

 

 

 

今の一撃、そしてそこに至るまでのわずかな時間で……俺たちはほぼ全ての力を出し切っていた……

 

全力の攻撃は……互いに撃てて後一撃……

 

 

 

 

【貴様を殺し、勝って紫炎の恨みを晴らし……天上へと上り詰めて見せよう!!!! 参るぞ!!!! 鉄刃夜!!!!!】

 

 

 

 

敵が態勢を立て直し、再び突進してきた……

 

しかもそれは最後の一撃……

 

敵の後方で爆発が起こっている……

 

それによって気流以上の速度を得ている……

 

それだけでなく、敵の身に纏った炎が、さらなる燃焼を起こす……

 

 

それを見て俺は……

 

 

 

 

座して待つのは性に合わん!!!!

 

 

 

 

敵ほどの速度は出ないかもしれない……

 

だがそれでも全速をもって駆けてぶつかり合う……

 

俺も突進の態勢を取り、敵に向かって走った……

 

 

 

 

まだだ……

 

 

 

 

まだ足りない……

 

 

 

 

敵を打ち破るにはまだ速度が足りない……

 

 

 

 

敵はその身に纏った炎によって、後方に熱帯気流を発生させることによって超常の速さを得ている……

 

そして今回はそれだけに飽きたらず……後方の空気を爆発によって吹き飛ばし、気流と爆発の相乗効果で加速している……

 

命を燃焼しての魔炎による爆発…………正に捨て身の一撃……

 

 

 

 

それに匹敵するには……気と魔で強化された肉体だけでは、まだ足りない!!!!

 

 

 

 

ならば俺も……

 

 

 

 

捨て身の攻撃に移ろう!!!!

 

 

 

 

身に纏っている、火山よりも遙かに温度が高い熱から身を守ってくれている「鋼殻護り」を解除……

 

空気の壁によって遮断しているその空気を使い……加速する……

 

 

 

 

ゴォォォォ!

 

 

 

 

「鋼殻の護り」を解除したことによって……この空間に充満する……マグマでさえも生ぬるい熱が、俺の肌を焼く……

 

アドレナリンが急激に沸騰し、その焦がす痛みを忘れる……

 

 

 

 

今考えるべきは敵を屠る究極の斬撃……

 

 

 

 

それ以外は後から考えればいい!!!!

 

 

 

 

.

 

 

 

 

.

 

 

 

 

.

 

 

 

 

.

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!】

.

 

 

 

 

.

 

 

 

 

.

 

 

 

 

.

獣のごとき咆吼……

 

思考、理性……ありとあらゆる物をかなぐり捨てて……俺たちは……突進した……

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~フィーア~

 

 

突然消えたジンヤとテオテスカトル。

だがそれを探し出すことは私たちには出来ず……ただ呆然と広場にいるだけしかできなかった……。

 

そして……ジンヤが消えて一分にも満たない時間が過ぎた……。

 

 

「!? 出てきた!?」

 

 

消えたときと同じように唐突に……消えた二つの存在が出現した……。

 

 

まるで互いに突進し、通り抜け合った後のように……お互いに背を向け合い……立ち止まっていた……。

二つとも何も言わず……何も行動せず……痛いほどの静寂が場を満たした……。

それを……

 

 

ヒュン!

 

 

ジンヤがその手にした強大な武器が振った音によって、その沈黙が破られた……。

 

 

 

 

? 何だあの武器は?

 

 

 

 

ジンヤが手にしている武器……それは今まで見たこともない、巨大な剣だった……

 

形状こそ、ジンヤが持っている武器、狩竜によく似たフォルム……湾曲した薄い鉄の板のような形……をしているが、全くの別物になっていた……

 

ラオシャンロンの体色をそのまま濃縮したかのように鮮やかな青……

 

細い……細すぎる印象を受けたその剣は、原型を残さないほど極厚な剣となっている……

 

刀身の背の部分……峰付近は鱗のようにでこぼこしており、均一に沿ったその峰に、いくもの角が生えていた……

 

手を守る丸い鉄の板……鍔……元々無かった鍔は八つの漆黒の棘が円形状に生えている……

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそんなもはや変形、変質したと言っても過言ではないその剣……それから発せられる雰囲気は、息を呑むほどだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

 

 

「……勝負あったな」

 

 

 

 

振り抜いた龍刀【朧火】を血振り、俺は後ろへと振り返った……。

 

確かにこの刀で……敵を完膚無きまでに切り捨てた……。

 

であるにも関わらず、この龍刀【朧火】で切られてもなお、存在していられる敵が、恐ろしかった……。

 

 

 

 

「全力を持って打ち合って……負けたんだ。何の恥じることもない」

 

 

 

 

【……】

 

 

 

 

「もう立っているのも辛いはずだ……」

 

 

 

 

【……だが……私はまだ生きている!!!!】

 

 

 

 

吼えて敵が再び突進の態勢を取る……。

 

だがそれは誰の目にも明らかに……無理をしていた……。

 

 

 

 

「……それでもなお、俺を討とうするか?」

 

【貴様を殺す……! そしてそれ以上に、我はやらねば成らん!!!!】

 

 

 

 

力の入っていなかった四肢に力を込めて……敵が屹然と立ち、天に向かって吼えた……

 

 

 

 

【どんな汚い策も使おう! 敵を滅ぼすために命も賭けよう!!!!】

 

 

 

 

吼えて、敵が再度走り出した……

 

 

 

 

その身に、恐ろしいほどの炎を纏って……

 

 

 

 

正に最後の灯火……

 

 

 

 

【我は帝王! 我は炎王!!!! 紅炎王龍、テオテスカトル! 帝王にして炎王である我は、媚びぬ、引かぬ、朽ちぬ!!!!】

 

 

 

 

体を構成している魔力が少しずつ……宙へと霧散していっている……。

 

それでも想いと気迫で……敵は体を維持し続け……俺へと攻撃をしてくる……。

 

 

 

 

強すぎる憎しみが、そう簡単に消えることを許してくれないのか……

 

 

 

 

死を超越したと言っていた……

 

恐らく死という概念を体験したことがなかったのだろう……

 

だからこそ人間が愛する者を失った悲しみを理解できず、敵を侮った……

 

そしてその自身の過ちで……愛する者を死なせてしまった……

 

 

 

 

一撃を持って殺さぬ限り……こいつに安寧の時は訪れない……

 

 

 

 

ならば

 

 

 

 

……介錯仕る

 

 

 

 

俺は再度龍刀【朧火】を後ろへと大きく振りかぶり……そして全身全霊……力の限りを持って、突進してきた敵へと振り抜いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

一陣の風が吹き抜ける……

 

 

 

 

 

 

 

 

体の身中線に垂直になるようにして振り抜かれた龍刀【朧火】が……消失した。

 

限界時間を超えて龍刀【朧火】使っていたことによって、どっと力が抜ける。

 

だがまだ崩れ落ちるわけにはいかなかった……。

 

抜けそうになる膝に力を込めて……俺は後ろへと振り向く……。

 

 

 

 

【……負けたか】

 

 

 

 

そこには、紫の粒子となって霧散している、テオテスカトルがそこにいた。

 

 

 

 

【驕りもなく、侮りもせず……全力を持ってしても貴様を……人間を倒せなかったか……】

 

「……」

 

 

誰かに語りかけるわけでもない、ただの独白……。

 

俺はそれを静かに聞いた。

 

 

 

 

【ふ……負けたというのに……敵を討てなかったというのに、ここまで清々しいのは何故だろうな?】

 

【……全力で勝負が出来たからじゃないですか?】

 

 

 

 

すると、消えかかっている紅炎王龍に寄り添うようにして、うっすらと紫炎妃龍が顕れた。

 

 

 

 

【あなたの願いの一つに、全力で闘う事があった。そしてそれが叶った……だからじゃないでしょうか?】

 

【……そうかもな】

 

 

 

 

消えかかる紅炎王龍に険はなく、今まで見たことが無いほどに穏やかだった。

 

 

 

 

【使者よ。持っていくがいい……】

 

 

 

 

そう言って俺の目の前へと顕れた二つの光の玉……

 

 

 

 

紫と紅

 

 

 

 

【持っていくがいい。炎を御する力と、炎を力に変える力だ】

 

 

 

 

……ありがたく頂戴しよう

 

 

 

 

俺はその光の玉に……左腕をかざした。

 

そしてその二つの力は……俺の腕へと収納される。

 

 

 

 

【さらばだ。我が宿敵よ……】

 

 

 

 

「……あぁ」

 

 

そうして、実に清々しく、紅炎王龍は消えていった。

 

俺は紫の粒子が消えていった虚空を見ながら……つぶやいた。

 

 

 

 

「さらばだ……我が最大の敵よ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獄炎の地、火山。

 

そこには誰にも知られず、また誰も入ることが出来ない……、それどころかモンスターですらも出入りしない……それほどの奥地……

 

 

マグマで流動する以外に特に変化の無いその場所が……震えていた。

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

地面が激しく動き、それが……顕れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ゴォォォォォォォォォ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺り一帯だけでなく……辺り一帯の空間その物すらも揺るがしかねないほどの、咆吼……

 

 

全身に生える黒く……あまりにも巨大な棘……

 

 

山をも貫き、崩す事の出来そうなほどの、巨大で獰猛な一つの牙

 

 

その手に生えた爪は全てを削り、抉り、穿ち、壊す……

 

 

そして……その体を覆った何かは……もはやどんな存在……それこそ神でしか打ち破れないほどの恐ろしさを秘めていた……。

 

 

 

 

 

 

それもそのはず……その黒き覇者は……まごう事なき神だった……

 

 

 

 

 

 

【四古龍が滅びたとは……。使者とはそれほどの力を秘めているのか!? 愉快だ……実に愉快だ!!!!】

 

 

 

 

それは歓喜に震え、さらに吼える!

 

 

 

 

その喜びに呼応し……地面からいくつものマグマが噴出した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

【我、黒き破壊神にして、獄炎の覇者! アカムトルム!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその咆吼が……見えない大砲となって……目の前の巨大な山を吹き飛ばした……。

巨大な……それこそ標高千を超えている山を一撃で吹き飛ばしたのだ……。

 

 

 

 

もはやそれは尋常な威力では、無かった……。

 

 

 

 




刃夜君が阿修羅って怒ってましたね~

……わかる人いるかな?

はい、ついに神様登場~
破壊神アカムトルム~

初めてこいつと対峙したのはMHP2でしたね~
最初はガンチャリオットでいってましたね~こわくてこわくてw
慣れたら双剣でめったぎりにしてたけどw
懐かしい。秋葉原のリアル集会所で見知らぬ方々と討伐したのはいい思い出です……
まぁそんなこんなで……


神々との戦編


が幕を開けた……
刃夜に勝機はあるのか!?


同じもの二回分収録修正

桜葉久遠様 ありがとうございました!
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