リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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神々との戦いが幕を開けた!
すっげー陳腐な台詞でもう中二にもほどがあるwwwwっww


神々の戦とか乙w いやいくらなんでもひどすぎでしょw


ぎゃ~っはっはっはっはっはwwwwww バンバンバン ←机を叩く音w


それでもよろしければお読み下さいw




獄炎の破壊神

神々との戦いが幕を開けた!

すっげー陳腐な台詞でもう中二にもほどがあるwwwwっww

 

 

神々の戦とか乙w いやいくらなんでもひどすぎでしょw

 

 

ぎゃ~っはっはっはっはっはwwwwww バンバンバン ←机を叩く音w

 

 

それでもよろしければお読み下さいw

 

 

 

 

それは……突如として起こった……

 

 

空が裂け、大地が割れ、一部地域では大雨が降り注ぎ、またある地域では干ばつが起こり、そしてある地域では猛吹雪が続いた……

 

 

また多種多様、そしてあらゆる地域のモンスターが過敏に警戒を行い、果てには失踪するという現象も起こっていた……

 

 

それは火山に近い地域ほど顕著だった……

 

 

それは偶然にも……ラティオ火山の火山群が、活発化するのとほぼ同時に起こった事だった……

 

 

しかし人類がそれに気づくのはしばらく後であり……そして気づいた時には全てが遅かった……

 

 

 

 

~古龍観測所観測員 火山調査隊~

 

 

「あっついなぁ……」

 

 

下から吹き上がってくる強烈な熱風が、遙か上空のこの気球まで届き、俺の体を火照らせた。

 

 

「あち~」

 

「熱い熱いいうな。余計熱くなる」

 

「へいへい」

 

 

俺が不平不満ばかり言う物だから、気球の操舵を行っている相棒が文句を言ってくる。

実際いっている事ももっともだったので、俺は途切れていた観測を再開した。

 

 

先日からの火山活動活発化。

それを受けて火山の観察を行っていた気球がいくつか行方不明になり、それの捜索調査を終えるまでは火山での活動は禁止されていたが……しかしそうはいっても各地で起こっているこの異常気象を観測しないわけにもいかず……ギルドナイトからの禁止令を聞きながらも、最低限の観測は行えるように交渉し、こうして火山に一度だけ観測する事を許されていた。

そしてその唯一許された観測の気球の当番に……運悪く当たってしまったのが俺と俺の相棒だった。

 

 

「しっかし本当に活発になっているな。何でだ?」

 

 

相棒も熱いと感じているはずなのに……不満一ついわずに仕事をしているのを見ていると、こいつはすごいなと思ってしまう。

 

 

「先日来た、古龍種テオテスカトルが火山を操っていたって結論が出ただろ?」

 

 

先日ドンドルマにやってきた伝説の存在だった古龍、テオテスカトルが火山を操っていた、という結論が古龍観測所の上層部の結論だった。

 

 

「馬鹿野郎。火山なんていう自然現象を操れる生物がいるわけ無いだろ」

 

 

それはごもっとも

 

 

相棒のその至極もっともな反論に、俺は深く頷いた。

確かに炎を吐いたり、熱線を吐いたりするモンスターは存在する。

リオレウスやグラビモスなんかがまさにそれに該当する。

確かに火を操っているかのように見えるモンスター達だが、あくまでも自分の能力を使って炎の球を飛ばしたり、熱線を吐いているのであって、決して炎その物を操っているわけではないのだ。

そんな生物がいるわけがない。

なのにそれを真面目に会議し、議論し合ってでたその結論に、下っ端である俺たちは端から信じていなかった。

 

 

そう……信じていなかった……このときまでは……

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

「地震か?」

 

「結構大きいぞ!?」

 

 

気球で空に浮いているため、その揺れを体感する事は出来ないが……伊達に観測を行ってきている訳ではないのだ。

長年の経験から、地震の規模は大地の揺れで大体把握する事が出来る……。

だが……

 

 

「お、おい」

 

「こんな揺れ方見た事無いぞ!?」

 

 

この揺れはあまりにも強すぎて……そしておかしかった。

普通の地震はもっと広範囲……それこそ規模によっては大陸中に伝わるほどの揺れをするはずなのに……これはあまりにも規模が小さい……。

その証拠に、一つ二つ先の山は全く揺れている感じがしなかった。

 

 

だが……それに反比例するように、この今揺れている場所は凄まじい……それこそ直接、巨大な何かが地面を揺らしているかのようだった……

 

 

そう思ったその時……

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な振動が……空気を通して伝わってきた。

 

 

「ぐあっ!?」

 

「なんだこれ!?」

 

 

その轟音は……俺たちの鼓膜を突き破らんばかりに揺らし、さらには体をも激しく揺らした。

 

 

あまりの凄まじさに、胃の中身を吐き出してしまうかと思った。

 

 

「な、何なんだ?」

 

 

俺はくらくらする体を頭を何とか起こして……立ち上がり……それを見た……。

 

 

 

 

な……なん……

 

 

 

 

遙か先……とある火山頂上部に……マグマの光を遮り……黒い巨大な何かが……いた……。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

古龍種、テオテスカトル襲来により、未曾有大危機に陥ったドンドルマ。

それを救ったのが俺……クロガネジンヤであると……いうことになっているらしい。

 

 

街の噂では……

 

 

確かにそうかもしれない。

実際テオテスカトルを殺したのは俺なのだが……しかし英雄扱いされるのは嫌だった。

結果として救う事になったのは事実だが……そう言うつもりで戦ったわけではないというのに……。

あのテオテスカトルとの戦闘から数日後。

このドンドルマで俺は治療を受けていた。

 

 

といってもほっとんど傷ないのだが

 

 

テオテスカトルとの戦闘中に俺は敵の炎熱から身を守ってくれていた「鋼殻の護り」を一時的に解除した時に負った火傷は、そのほとんどがテオテスカトルとナナテスカトリの魔力で癒されたために、ほとんど外傷はない。

だが敵の剛力を受け止めた事によって体に負担がかかっていたために、一日はほとんど寝たきりだったが……。

そこは弟子二人がかいがいしく世話をしてくれたおかげで快方へと向かい、今は普段通り動けるが。

また二人の弟子だけでなく……

 

 

「ジンヤさん!」

 

 

そう叫びながら荒々しくドアを開けて俺がいる部屋へと入ってきたレーファが、二人以上に率先して面倒を見てくれた。

どうやってきたのか聞いたら商隊にお邪魔して来たという。

さらにはそれ以降も毎日来ていた。

一日目以降は、ギルドナイトが竜車を出してくれたらしい。

またこっちに来る前にムーナの世話を行ってから来てくれていた。

幸いムーナの火傷もほとんど癒えているらしい。

 

 

とまぁ……俺の身辺周りは問題ない……

 

 

身辺、つまり俺の体と極近しい人間に関しては問題なかった……。

それ以上に幅を広げてみると……

 

 

「ジンヤ様! サイン下さい!」

 

「ジンヤ殿! 是非あなたの強さの秘訣を!」

 

「月刊誌『狩りに生きる』の取材の者です! 是非このドンドルマを救った英雄にインテビューを!!!!!」

 

 

ギルドナイト本部の外の広場では……ひしめくほどの人間がすし詰め状態でいるのが、窓から見える。

俺はそれを見てげんなりした。

 

 

勘弁してくれ……

 

 

だが嘆いたところで何も代わりはしない。

ほとぼりが冷めるのを待つばかり……

 

 

 

 

リィィィィィン

 

 

 

 

ん?

 

 

その時……左腕前腕部に納められている……ラオシャンロンの力が嘶いた。

 

嘶くだけでなく……発光し、それが一筋の光となってとある方向を指し示した……。

 

その先にあるのは……

 

 

…………火山?

 

 

そう思ったその時……。

 

 

カンカンカン!

 

 

警鐘が鳴り響いた……。

それはモンスター襲来など、危険を知らせる物であり……俺にとっては戦闘開始のゴングだった。

 

 

 

 

~ディリート~

 

 

……何なんだ? このめまぐるしい状況は

 

 

思わず心の中で呪詛を吐く。

一つの問題が解決したと思ったら、それ以上の難題が降ってきて、それをどうにかして処理したと思ったら、またそれを遙かに超える難題が降ってきて……さすがの私もそろそろ限界だった。

 

 

「状況は?」

 

 

だがそれを表に出すわけにはいかない。

私は疲れ切ったこの体に鞭を打ち、屹然としながら会議室に入って、部下に状況を確認した。

 

 

「報告します! 本日未明、古龍観測所より出発した火山観測の気球がラティオ火山にてごく狭い地域での巨大な地震を確認。そしてそれに付随するように火山火口より、巨大なモンスターが出現」

 

「報告したということはすでにそのモンスターの種類は確認できているのだろう? 何のモンスターだった?」

 

「そ、それが……」

 

 

ん?

 

 

そこで言いにくそうに言い淀む部下。

普段は何事にも動ぜずにずばっと言い切るタイプの部下なのだが……。

 

 

「どうした?」

 

「いえその……確認したところ……アカムトルムであるという報告が……」

 

 

 

 

「「「「は?」」」」

 

 

 

 

その場……会議室にいる全員が呆気にとられた声を上げる……。

再び出た伝説上のモンスターの名前。

 

黒き神、火山の暴君、覇者……異名は数え上げればそれこそきりがない。

 

火山帯に生息していると言われる、通常のサイズとは一線を介した飛竜。

 

伝説で語られるその姿は……

 

前脚が歩行に適応した進化を遂げて、翼や飛膜は存在しない

 

翼がないため、当然飛行はもちろん滑空する事も出来ない

 

下顎から伸びる豪壮な牙と背面を覆う無数の棘

 

他の飛竜が赤子のように見える程の巨体

 

そしてその巨大な体での行動は、一挙手一投足全てが破壊活動に変わる

 

咆哮するだけで岩をも粉砕し、尻尾を振れば地面が根こそぎ抉れる

 

またその咆吼は全てを粉砕し、討ち滅ぼすと言われている

 

性質や性格、そして生態はその外見や迫力に違わない非常に凶暴、凶悪であると言われている

 

 

「……アカムトルム?」

 

「……はい」

 

 

私が呆然と返すが、報告を上げている部下も戸惑っているように、困惑の表情を浮かべている。

 

 

……とりあえずそれが本当にいると仮定して対策を行うか

 

 

実際いるのだろうが……それを素直に受け入れられるほどではなかった。

 

 

しかし厄介な所に……

 

 

出現したとされる場所……火山奥地にいると言うことで臍を噛む思いだった。

火山奥地は、火山用装備を装着しても防ぎきれない炎熱によって包まれている場所であり、とてもではないが普通の人間が行ける場所ではない。

しかし報告を聞く限りでは今のところ下山してくる様子はなく、火山火口内部へと姿を消したらしい。

古龍観測所には引き続きアカムトルムの警戒と観測を行うとして……仮に下山してきた場合どうすれば対処できるのか……、どうやって倒せばいいのか……議論が紛糾したが、特に有効な対策は出ることはなかった。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

お仕事ご苦労様です……

 

 

帰る前に世話になったディリートに挨拶をしていこうと思ったのだが……しかしディリートは直前に会議が入ったらしく、話せる状況になかった。

会議の内容を聞こうとしたが、現段階ではまだ教えられないとの事なので、俺はそのまま弟子二人とレーファと共に竜車に揺られてのんびりとユクモ村へと帰還した。

 

 

まぁだいたい察しが付くが……

 

 

察しが付く、というよりもキリンが全てを教えてくれたのだが……。

俺は竜車で眠るふりをして、たてがみの首飾りに変身している、キリンとの会話を行った。

 

 

それで? 何が復活したんだ?

 

【飛竜種の原型にして狂気の猛竜、アカムトルムが復活しました】

 

アカムトルム?

 

【飛竜であり、古龍でもある究極とも言える存在です。黒き神……と一部地域では言われているのですが……それには全く誇張がありません。アカムトルムは紛れもなく破壊神であり、神々の末席に列席する存在です……】

 

……ギャグ?

 

【冗談ではありません。あなたが数日前に葬った紅炎王龍テオテスカトルなんぞ間違いなく赤子レベルです】

 

あれを赤子って……

 

 

間違いなく究極の強さを誇っていた紅炎王龍、テオテスカトルが赤子といわれて……俺は溜息しか出てこなかった。

 

 

次から次へとどんどん強敵が出てくるとか……何その少年漫画的な展開?

 

 

それ故に、王道という……(言い訳)

BY作者

 

 

……まさか俺に倒せと?

 

【あなた以外では火山にすら行けませんよ?】

 

 

……だよね

 

 

もうわかりきっていたこの結果に、俺はもはや溜息も出ない。

ただ静かにその現実を受け入れて、俺は作戦を練った。

 

 

話を聞けば、敵の動きはかなり緩慢らしい。

速度で言えばオオナズチ並みに鈍重だと言われた。

だがそれはそれを補ってあまりある、まさに究極の力を秘めているらしい。

幸いと言うべきか……テオテスカトルの力を吸収したことによって、俺は炎どころかマグマの温度すら平気でいられる体にはなったらしい。

その気になればマグマで泳ぐことも出来るとか……。

 

 

どんどん人間離れしていくよな……俺って……

 

 

敵の強さもそうだが、俺の体の変調ももはや許容範囲を軽く超えているような気がしてならない……。

だがそれでもこの力がないと闘うことも出来ないので、目を瞑って闘うしか無く……。

見た目寝ているというのに気分はどんどんと沈んでいき……俺は鬱になりそうだった。

 

 

 

 

夕方にユクモ村へと着き、とりあえず村長やら村のみんなに質問攻めにされそうになった。

噂千里を走る……古龍種を倒したというばかげた噂がこの比較的近いユクモ村に届いていないはずもなかった……。

とりあえずまだ体が本調子でないことを告げて……俺は何とか家に引っ込んだ。

そして真っ先にムーナへと挨拶をする。

 

 

「元気にしてたかムーナ?」

 

「クォルルルル!」

 

 

俺の挨拶に元気よく返事をし、俺へと甘えてくるムーナ。

俺はそれをよしよしと、頭を撫でてやる。

レーファの言うとおりほとんど火傷はほとんど癒えているようだった。

 

 

【今回は、ムーナで行ってください】

 

 

そうしてムーナとじゃれ合っていると、キリンが話しかけてきた。

しかも結構あり得ないことを言っていたような……。

 

 

何故だ?

 

【彼の地は神域。溶岩峡谷は気球では行くことは叶いません。特殊な力場で覆われているので普通の存在では近づくことすら出来ない。だがあなたのリオレウス、ムーナは陽の資格を持つ飛竜。逆に言えばあなたのリオレウスでしかいけません】

 

 

……資格?

 

【それにさすがに神を倒したとあっては色々とまずいことになります。今夜秘密裏にゆくのがよいでしょう】

 

 

俺の疑問をスルーしてたたみかけられた。

だがそれは確かにキリンの言うとおりだった。

何せ一部地域とはいえ神として崇められ、恐れられている存在を、特殊な能力を持っているとはいえ、人間がぶっ飛ばせばどうなるか……想像に難くない。

 

 

「ムーナ……夜の散歩でまた火山に行くが……いけるか?」

 

 

ひそひそと……レーファにリーメ、フィーアに聞かれないように俺はムーナの耳元でひそひそと、ムーナに言う。

 

 

「クォゥ」

 

 

するとムーナも俺の意図をくみ取ってか、小声で返事をしてくれる。

少し前に火山で火傷を負ったから懲りたかと思ったが……どうやら大丈夫だったようだった。

 

 

よし……出陣が決まったのならば、早速準備しますか……

 

 

まぁ恐らく普段通りの格好で行くのだろうが、装備の点検と手入れを行う。

 

何せ……神と闘うのだ。

 

準備はしていくのに越したことはない。

 

 

しっかし……神と闘うって……すげぇことになったなぁ……

 

 

この世界に来てからもう非日常、非常識な存在にはある程度慣れたつもりだったが……やはりつもりでしかなかったようだった。

まぁ手元に神の力を手に入れている俺が言うのは何だが……。

 

 

「……そう言えばジンヤ」

 

「ん?」

 

 

そうして囲炉裏の傍で狩竜を丁寧に布で拭いていると……フィーアが遠慮がちに口を開いた……。

 

 

「? どうした?」

 

「いやその……聞いていい物かどうかわからないんだが……テオテスカトルと闘っているときに持っていたあの蒼い色の大剣はどうしたんだ?」

 

 

…………ぐっ!?

 

 

非常にまずい質問が来ました~

 

 

テオテスカトルと闘っていたときに持っていた蒼い色の大剣……間違いなく龍刀【朧火】である。

俺が所持している武器はこの場にいる三人は全員が熟知している。

テオテスカトルの結界内で顕現し、そのまま結界から出ても持っていたので突如として剣が出現したと思ったのだろう。

 

 

「……あれは……その」

 

「あ、それ僕も気になりました。しかもあれ、ジンヤさんが倒れた時に消えて狩竜になりましたよね? 何なんですか? あれ?」

 

 

俺がどう応えようか悩んでいると、リーメさんから追加口撃が来た。

そう俺はテオテスカトルが消えたとほぼ同時にぶっ倒れた。

力を使い果たして限界が来たのだ。

そしてその時に龍刀【朧火】は霧散して 俺の左腕前腕へと収納されたはずだった。

 

 

ダラダラダラダラダラダラダラ

 

 

漫画だったら恐らく俺の体の周りには汗が流れる擬音が大量に書かれていただろう。

 

 

どうするか……………?

 

 

悩んでも答えが出ない……。

ぶっちゃけどうしようもない……。

 

 

『いっそ見せてやったらどうだ?』

 

 

俺が悶々と悩んでいると、なんと意外なところからアドヴァイスがやってきた。

なんと俺の目の前に横たわっておいてある封龍剣【超絶一門】からだった。

 

 

……おい何言ってやがる?

 

『疑問に思っているのだ。見せてやるのもまた一興だろう?』

 

いやどうなるかわからんし

 

『武器の形状変化など、我らの技術では結構普通だったぞ?』

 

それはあくまで変形であって、俺の狩竜は文字通り変身したんだよ!?

 

 

「……まぁ無理にとは言わないが、体には問題ないんだな?」

 

 

おや?

 

 

封龍剣【超絶一門】の悪魔の囁きに何とか対抗していると、フィーアが呆れたようにそう口にする。

俺はそれに驚きながら顔を上げると、全てをわかっているというか……受け入れているフィーアがいた。

 

 

「体に異常がないならいいさ。無理だけはするなよ」

 

 

……ほぉ

 

 

先日から少し俺のことを訝しんだ目で見ていたはずなのだが……。

どうやらテオテスカトルとの戦闘を見せたのは間違いではなかったようだった。

 

 

「あぁ。ありがとうよ」

 

 

リーメも無理に聞くつもりは無かったのか、溜息を吐いて俺のことを見ていた。

俺は受け入れてくれている二人に笑顔を返す。

 

 

「ごはんできましたよ! ってどうしたんですか? みんなで笑って?」

 

 

そこで唯一蚊帳の外になってしまっていたレーファが会話を聞きたそうにしていたが、特に言う必要もなかったので、お茶を濁した。

そのことに少しふくれっ面になったレーファだったが、最終的にはしょうがないと受け入れてくれていた。

最終的にはグラハムとジャスパーも帰ってきて、夕食会が開始された。

たらふくうまい物を食って、みんなで笑った。

そしてレーファ、リーメ、フィーアを見送り……。

 

 

夜。

 

 

さて……

 

 

もはや深夜といっても過言でない時間帯に、俺はあえて眠らずに、月を眺めていた。

寝間着として使用している、作務衣を着ながら。

一既にグラハムとジャスパーは眠りについている。

何せこの二匹は朝早くから仕事をし始めて、さらに人気が出てきたあの店は結構な修羅場になっているらしい。

最近は二匹に任せきりだが、相当な従業員を抱えているらしい……。

新任のアイルー達に今度挨拶して欲しいと、今日の夕食で二匹から頼まれた。

そんな二匹をねぎらおうと、特別に作ったマタタビ酒を開けて二匹には飲ませた。

二日酔いにならない程度には飲んでいるのでそれで疲れが誘発されたのだろう。

 

 

まぁそれを狙って飲ませたのだが

 

 

二匹が眠っているのを起こさないように着替え、武器を準備する。

 

生涯の相棒、夜月

脇差し、花月に短刀、水月

雷の刀、雷月、魔の炎の刀、蒼月

 

そして竜人族の遺産、封龍剣【超絶一門】

 

そして超野太刀、狩竜

 

 

さらにいくつかのスローイングナイフを持っていく。

そうしてブーツを履き、全ての準備を整えて……俺はムーナの小屋へと向かった。

 

 

「起きてるか? ムーナ?」

 

 

小声でそう呼びかけると、暗がりの中、のっそりと起き上がるでかい黒い陰……。

 

 

月光に輝くその鱗はいつにもまして紅銀に輝いていた。

そして纏う雰囲気も、いつもよりも気合いが入っていた。

 

 

「よし出るぞ。なるたけ音を立てないように飛翔し、いつもの離着陸の場所へと向かう。

 

「クォ」

 

 

ムーナが頷き、二人でなるたけ静音行動を心がけていつも夜の散歩で使う発着陸の場へと向かった……。

そこに……。

 

 

「やっぱり……来ましたね」

 

「……レーファ」

 

 

森に入った瞬間に気配でわかっていた俺は、苦笑しながらその気配……レーファへと近づく。

朗らかな笑顔をしているレーファが、いた……。

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

やっぱり……

 

 

何となくわかっていた。

けど確信はなかった。

けれどそこで桜火竜の紅玉が教えてくれた……。

ジンヤさんがまたどこかに行くって。

 

それも黙ったまま……

 

 

「こんな夜更けにどうしたんですか?」

 

「そらこっちの台詞だぞレーファ? もう寝ないと明日きついぞ?」

 

「それはジンヤさんも一緒じゃないですか?」

 

「俺はいつものことだからいいんだよ。慣れてるから」

 

 

 

 

「……黒き神に挑もうとしているのがいつものことですか?」

 

 

 

 

「!?」

 

 

桜火竜の紅玉が教えてくれた……黒き神へ挑むという事を。

伝説の存在の中でも、神として崇められ、恐れられている存在、黒き神アカムトルム。

一瞬冗談かと思ったけど……桜火竜の紅玉がそんなことをするわけもないので……私は自分の直感に従ってここにきていた。

そしてその直感は違えることなく……ジンヤさんがきてしまった。

 

 

「……また行っちゃうんですか?」

 

「……あぁ」

 

 

ジンヤさんが行こうとしている以上、私が止める事なんて出来なくて……でもそれでも一言言いたくて私はこの場にきていた。

止めるつもりはないけど……出来れば止めたい。

けどそれを聞いてくれるジンヤさんじゃないって……わかってるから……。

 

 

 

 

「……行ってらっしゃいジンヤさん。待ってますね」

 

 

 

 

そのままいなくなってしまうかもしれない。

下手をすれば死んでしまうかもしれない……けど……それでも……私はジンヤさんを信じた。

私のその台詞があまりにも意外だったのか、ジンヤさんは驚いていたけど……すぐに私に笑顔を向けてくれた。

 

 

「おう……行ってくるわ」

 

「ムーナちゃん」

 

「クォ?」

 

 

ジンヤさんにそう言うと、私はムーナちゃんの傍によってそっと耳打ちをした。

 

 

「ジンヤさんのこと……お願いね」

 

 

そう小声で言った。

ジンヤさんだったら聞こえていても不思議じゃなかったけど……それでもどうしても言いたかった。

 

 

「クォ!!!!」

 

 

私の思いを察してか、ムーナちゃんが元気にそう返事をしてくれた。

そんなムーナちゃんの頭を私は優しく撫でる。

 

 

そしてジンヤさんがムーナちゃんに跨って……言葉と笑顔を残して……ジンヤさんはムーナちゃんに乗って飛び立っていった。

 

 

 

 

~???~

 

 

まずいな……

 

 

私は私の対となる存在へと、使者が向かっていることに気がついて思案を巡らせた。

確かに使者は武器を持っている……。

だがそれだけでは勝てぬのだ……。

我ら双璧の竜神には……。

 

だがそれを伝える術はない……

 

我とあやつが同じ空間にいれば、それだけで時空が歪む。

今こうして私が神域にいるとはいえ現界しているのにも問題があるのだ。

ただ行く末を見守ることしか……出来なかった

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

森を越え、山を越え、再びやってきたラティオ火山。

前にテオナナに出会ったその先……もっと奥地へと向かう。

そしてそのたび……どんどんと火山奥地へと近づいていく程に、その圧倒的な力を肌で感じることになる。

 

 

 

 

……あの、すいません。帰っていいですか?

 

 

 

 

思わず本気でそう思ってしまうほどだった。

はっきり言って

 

 

……これほどの気迫を放つ存在がこの世にいていいのか?

 

 

そう真顔で誰かに言いたい気分だ。

これを前にすれなあの圧倒的な巨大さを誇ったラオシャンロンですら可愛い存在だ。

そのラオシャンロンは、ラティオ火山に着いた辺りから、ものすごく嘶いている。

 

 

いや共鳴か?

 

 

もしくは共振。

同じく神に等しい存在として唸っているのかもしれない。

 

 

マジで勝てるのか?

 

 

火山のマグマに関してはほとんど心配しなくていいのは助かったが……しかしそれでも勝てるかどうか……。

そしてあれこれと考えていると無情にも……そこへと訪れた……。

 

 

 

 

もっとも高く、もっとも険しい火山の火口部……そこにそれはあった……。

 

 

 

 

周りを囲む岩壁には、魔力が付与されたマグマが煮えたぎり……もはやマグマ以上の存在と化して熱く燃えたぎっている

 

その中央部……まるで小さな島のような形をしている、熱く燃えた足場が存在する……

 

恐らく……前人未踏の地……

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに……巨大な覇が……鎮座していた

 

 

 

 

 

 

 

 

【待ちかねたぞ……使者よ】

 

 

 

 

特に目を引くのはその顎より生えたその巨大な牙……それだけで樹齢数百年の巨木に匹敵する……

 

背にはいくつもの巨大な棘を生やし……それも下手な木々よりも巨大だった……

 

その四肢に、今まで見てきたどんな爪よりも巨大な鉤爪をいくつも生やす……

 

とげとげしたその体は……どんな甲殻、鉱石よりも堅牢なことが見ただけでわかった……

 

 

 

 

黒き神、火山の暴君、覇王……

 

 

様々な異名を持っているようらしい……

 

だがその全ての異名でも表し切れていない……

 

それほどの何かを秘めている……

 

 

 

 

【我が名は黒き破壊神、アカムトルム。貴様が宿したその四古龍の力と、ラオシャンロンの力……喰らわせてもらう】

 

 

 

 

 

 

 

 

よろしくね、   ちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はその言葉に頷いた

 

 

 

 

だから僕は…………

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

火口内部より、その覇が巨大な咆吼を上げる。

たったそれだけのことなのに……意識が飛びかけた。

巨大すぎる咆吼によってというのも原因の一つだが、それ以上にその声に含まれていた圧倒的な気迫が、意識を刈り取ろうと牙をむく。

幸いにして気を失うことはなかったが、だがそれでもそれを聞いただけで、体中が総毛立った。

ムーナにはあまりにも危険だったので、俺は着陸してもらわずに、上空から飛び降りて俺はこの巨大な火口内部へと降り立った。

 

 

「ムーナ! 下がっていろ! お前では危険だ!」

 

 

ムーナにきつくそう言って、俺はすぐに狩竜を抜刀した。

そして一瞬の迷いもなく……龍刀【朧火】を顕現させる。

 

 

時間制限があるとか……そんなことを言っている場合ではなかった……。

 

 

最強の武器で最強の一撃を繰り出してすら勝てるかどうかわからない存在なのだ……。

出し惜しみをしている場合ではない。

 

 

【口上もなしにいきなり戦闘か? 無粋な……】

 

 

敵がそう俺を侮蔑混じりに言うが……それに応える余裕は皆無……。

ただ敵の隙を見つけるために……目を凝らすが……

 

 

……なんだこれは?

 

 

尊大に立つ、山をも越えた巨大な存在である敵には……一切の隙がなかった。

いや逆だ。

隙だらけなのだ。

であるにも関わらず、俺はこの敵の体に致命傷を与えるどころか……傷をつけるビジョンすら、見ることが出来なかった……。

 

 

【まぁいい。確かに口上など無意味であったな】

 

 

一向に話そうとしない俺に、敵が戦闘態勢に入った。

 

 

四肢に力を込めた……

 

 

それだけだ……たったそれだけで……その身に纏った何かが……数倍の圧力となって俺を襲う……

 

 

【ゆくぞ……】

 

 

敵が……来る……

 

その巨大な体を動かす……速くはない……

 

だが山が迫ってくるその光景は圧巻であり……恐ろしかった……

 

巨大な口を開け、敵は俺に噛みつかんばかりに突進してくる……

 

動作も緩慢で隙だらけ……速度もそこまでではないので避けることも簡単だ……

 

だが……

 

 

 

 

勝てない……

 

 

 

 

そう思えてしまう……

 

 

「ぐっ!」

 

 

俺はそんな震える体を叱咤し、足に力を込めて宙へと飛んだ……

 

そして中空にて気の足場を形成……

 

全力でそれを蹴り、急速に落下し、その背に向かって……間違いなく全身全霊……究極の一撃を……俺の最大の力で振り下ろした……

 

だけど……

 

 

 

 

ゴギン!

 

 

 

 

それは無惨にも……敵の見えない何かによって弾かれた……

 

 

「っ!?」

 

 

敵の体に触れるどころか……まるで見えないで覆われているそれに斬撃が阻まれたかのような、状態だった……

 

今まで攻撃を弾かれたことは何度もあった……

 

だが今回の弾かれた物体は普通じゃない……神器であるラオシャンロンの力……龍刀【朧火】だ……

 

鋼龍の風の鎧も……炎王龍の炎さえも切り裂いた……究極の魔の武器……

 

だが覇王に……それは通じなかった……

 

 

 

 

【……なるほど】

 

 

 

 

その一撃を受けて、敵が何故か納得する……

 

俺はゆっくりと振り返る敵を油断無く見据えながら……その言葉を聞く……

 

 

 

 

【貴様にはそれを振るう資格はあっても、それを使い、扱うための力が決定的に足りていない】

 

 

 

 

「……何?」

 

【我が纏うのは魔と気で編み込まれた究極の鎧。それを突破するには純粋に巨大な力が必要だ。だが貴様には決定的にそれが欠けている】

 

 

確かに、敵が纏っているその透明な物は、今まで見たこともないような、そんな存在だった……

 

推し量ることすら出来ないほどに……巨大な力……

 

 

【この歴然とした差を……どう埋める? 使者よ】

 

 

敵が挑発的にそう宣うが……はっきり言ってどうしようもなかった……

 

俺の手持ちの武器でもっとも強いのは間違いなくこの龍刀【朧火】だった……

 

それが防がれた以上……俺にはどうすることも出来ず……

 

 

 

 

【……まさかもう終わりか?】

 

 

 

 

敵の落胆の声が聞こえる……

 

だがそれに応える気力もなく……

 

余裕もなかった……

 

 

 

 

【……期待はずれだな。まさかこれで終わりとは】

 

 

 

 

 

その声で敵の力が一瞬ゆるむが、それでも貫くことは出来そうになく、攻撃したところで無駄なことはわかりきっていた……

 

俺はあらゆる手段を考えるが……だが答えは出なかった……

 

ほかの武器は通じない……

 

通じるはずがない……

 

現実世界からの武器 夜月 水月

 

気を込めて強化しなければ普通のモンスター相手でもよほどの腕がなければ破壊する恐れがある武器なのだ……

 

眼前の神に通ずるはずもない……

 

今の俺に敵の防壁を破壊できるほどの気を込めることは出来ないのだから……

 

この世界で鍛造した武器 雷月 蒼月

 

これも気での強化が主な運用方法……

 

蒼月は気と魔を込めることも可能だが……それでどうにかなるとは思えない……

 

竜人族の古の武器 封龍剣【超滅一門】

 

これも気と魔で強化が可能……

 

さらにこの武器は古龍種の血を……ナナテスカトリの血を大量に吸っているのでまだ可能性はあるが……

 

だがそれでも龍刀【朧火】には劣る……

 

 

 

 

対局したその瞬間に……全ての決め手が、初めから封じられている……

 

 

 

 

【すぐには殺さん……存分に逃げ回り、疲れ切った貴様を喰らわせてもらおう】

 

 

 

 

……勝つ手段のない……勝てるという希望すら湧いてこない……そんな一方的な戦が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

直感していた……

 

今あの人が危ないって……

 

 

行かなくちゃ!

 

 

だから僕は一切迷わずにその場所へと向かう……

 

 

何が出来るかわからないけど……それでも……僕は……

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

勝てない……

 

 

【逃げるばかりか!?】

 

 

わき上がってくる巨大なマグマを避け、敵の前足から繰り出される爪による斬撃を避け、下手な川よりも巨大な尾より繰り出される凪払いを飛んで回避……

 

攻撃を避けること自体は大して問題ではない……

 

だが、こちらの攻撃は当たっても全く効果がないのだ……

 

であるにも関わらず、敵の攻撃はかすりでもすればそれだけで殺される……

 

勝てる要素は全くない……

 

だがかといって引くわけにも行かなかった……

 

否……引いたところで意味はない……

 

 

引いてこちらの手持ちの得物が変わるのならば引くが、この敵の防御を突破できるような物は……存在していない……

 

俺の体を守護してくれている「精霊の加護」、「霞皮の護り」、「鋼殻の護り」、「紅炎鱗の護り」、「紫炎鱗の護り」全てを龍刀【朧火】に込めて放とうとしたが……その程度であれを貫けるとは思わなかった……

 

純粋な力……つまり俺の気に対する練度を上げれば貫くことも出来るのかもしれないが……一朝一夕で出来るわけがない……

 

俺が修行をしている間……破壊神という異名がつくような生物がじっとしているとは思えない……

 

ギルドナイトだろうと何だろうと対抗できないこの敵を、放置しておくわけにはいかない……

 

だから今ここで倒さなければ……

 

 

 

 

だけど……!!!!

 

 

 

 

攻撃が通らないのであればどうしようもない……

 

全く光明が見えない……

 

 

 

 

どうすればいい……?

 

 

 

 

気がつけばいつの間にか龍刀【朧火】も姿を消し、元の狩竜へと姿を変えていた……

 

それを見て、敵が嘆息した……

 

 

 

 

【ラオシャンロンの力すらも消えたか……】

 

 

 

 

力を使い果たしたと見たのか、敵は俺の力がここまでだと思ったようだった……

 

実際にはまだ龍刀【朧火】を顕現する余力はあった……

 

だが通じない武器を顕現したところで意味はない……

 

俺はただ何も出来ず……己の無力を嘆いて……何も言い返すことも出来なかった……

 

 

【だが単身でこの場に来たのは評価に値する……。その覚悟に敬意を表し……最強の力を持って、貴様を滅ぼそう】

 

 

そう言って……敵は四肢を力強く地面へと打ち付けて……その体を固定した……

 

そして……その身に纏った力を……その口内へと収束していく……

 

 

 

 

ギィイイイイイイイイイ!!!!

 

 

 

 

空間が歪み……それによって生じた、何か……悲鳴を上げているような音が……この火口内部に響いた……

 

正常ならば、耳を塞がずにはいられないほどの不快な音だった……

 

だが……そんな余裕は無かった……

 

いや……あまりに現実離れした光景を見て……俺は思考が停止していた……

 

 

 

 

………………………なんだあれは?

 

 

 

 

龍刀【朧火】ですら切り裂けなかったその防護、そしてもともと敵が持っていた気の力を混ぜて造り、練り上げる……破壊の力……

 

 

 

 

辺り一帯と言った無駄に広い空間を破壊はしない……

 

 

 

 

だが、それが通った後は……完全に破壊される……

 

もはや存在するどころか、概念すらも……空間さえも破壊できるような……力……

 

ラオシャンロンの力で防御したところで……ほとんど持たずに破壊されるだろう……

 

 

 

 

……詰んだ

 

 

 

 

完全に詰まった……

 

勝てない……

 

今度こそ避けることも、防ぐことも出来ずに……完膚無きまでに……

 

 

 

 

【……死ぬがいい。使者よ】

 

 

 

 

そうしてその口内へとため込まれた力が放たれようとした……その時……

 

 

 

 

ボォン!

 

 

 

 

【む?】

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

一発の火球が敵の頭部へと命中し、爆発した。

しかしその程度でやられるような敵ではない。

敵は一旦俺へと向けていたその顔を、火球が飛来した方角へと目を向ける……。

そこには……

 

 

「ゴァァァァァァァ!」

 

 

……ムーナ?

 

 

危険だから確かに下がらせたはずのムーナが……そこにいた……

 

 

その翼を……雄々しくはためかせて……

 

 

 

 

「な……」

 

 

 

 

何をしている!? そう言おうと思った……

 

 

 

 

 

だが……

 

 

 

 

【火竜ごときが、我の邪魔をするでない!】

 

 

 

 

その口に溜められていた物を、一部とはいえムーナへと向けて放たれた……

 

 

「!? やめ……」

 

 

それを言い切る前に……敵のそれは……放たれた……

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!

 

 

 

 

もはや言葉に出来ない……力の奔流……

 

それは渦巻く衝撃波の塊だった……

 

それを放たれたならば、それが通った後は空間すらも存在することが許されない……

 

それをムーナはかろうじて避けた……

 

だが……

 

 

 

ゴォッ!

 

 

「クォォォォォォ!?」

 

 

その衝撃波を直撃しなくても……余波をもらい、ムーナが墜落する……

 

きりもみ崩れ落ちていく……

 

俺はそれに駆け寄った……

 

 

「ムーナ!?」

 

 

赤き地面へと墜落したその体に……以前の面影はなかった……

 

翼の翼幕は所々が破け、赤い血を吹き出し、成長途中だったその鱗と外殻は……無惨にもそのほとんどが砕け散り……ひび割れ……赤い血を流す……

 

即死ではない……

 

だが……明らかな致命傷……

 

 

「馬鹿野郎……何故来た……」

 

 

もはや何もかもが手遅れだった……

 

救うことは出来ない……

 

損傷箇所が多すぎる……

 

俺が気を分けることが可能ならば問題なかったが……敵が後ろにいる以上、そんな余裕は与えてくれないだろう……

 

その余りにも変わり果ててしまったムーナを見て……俺は自分を殺したくなった……

 

俺が呆然とせず、ムーナの飛来に気づいていれば……少なくともこの子は生きられたはずだというのに……

 

 

 

「ク、クォォォ」

 

 

 

もう意識もないのか……ムーナはただ力なくそううめくばかりだった……

 

 

 

そして俺の背後に……ムーナと俺を狙い定めた破壊神がその凶悪な力を向けていた……

 

 

 

【主人と共に死ぬか……それもいいだろうな】

 

 

「……貴様」

 

 

敵の嘲笑混じりのその言葉に……俺は初めて怒りが湧いた……。

俺を侮辱するのはまだよかった。

だが俺のことを……無謀とはいえ救いに来てくれたムーナまでも嘲るとは……。

 

 

 

 

【では……死ぬがいい……使者よ。力なき物など生きるに値しない……】

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉が……俺の怒りを爆発させた……

 

 

 

 

 

 

 

 

力がないなら……生きる価値がないのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

力があれば……何をしてもいいというのか!?

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!

 

 

 

敵の口内より……今度こそ、その破壊の権化の力が……放たれた……

 

 

 

 

俺はそれを……真っ向から受け止めた……

 

 

 

 

 

 

「龍刀【朧火】顕現!」

 

 

 

 

 

そう叫びながら……俺は腰に差している全ての刀を……地へと突き立てた……

 

 

 

 

「刃気解放!!!!」

 

 

 

 

龍刀【朧火】の魔力壁を展開しながらも……全ての刀の刃気を解放し、俺にとっての最強の壁を作り上げる……

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

今まで聞いたこともないような、まるできしみを上げるその音……

 

吹き飛ばされる可能性があったが、どうにか持ちこたえる……

 

龍刀【朧火】のおかげか……どうにか拮抗し、俺とムーナを守ってくれる……

 

 

 

 

 

 

【ほぉ? 我が衝撃波を受け止めるとは……】

 

 

 

 

 

 

だが敵はそれを見てもただ笑っているだけだ……

 

そんなことをされても何の意味もなく……本気を出せば一蹴できると自覚しているからだろう……

 

 

「っ!?」

 

 

それを再認識して……さらに俺の心に怒りが湧いた……

 

だが、その心とは裏腹に、敵の衝撃波を受け止めることで精一杯で、何もすることが出来ない……

 

 

 

 

下策中の下策だった……

 

 

 

 

受け止めず、それをどうにか避けて敵へと接敵すればよかった……

 

 

 

 

だが、俺にはそれが出来なかった……

 

 

 

 

 

 

【よかろう!! その頑張りがいつまで持つか……見届けてやろうではないか!?】

 

 

 

 

 

そう嗤う……

 

 

それに応える余裕は……俺には無かった……

 

 

 

 




絶体絶命!?

さぁどうなる!?



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