リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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短めが何発かって感じです。
頑張ったよ……マジデ……

ラスボスだからあんまりあっさり殺すのもアレですしね~

それでも短めなのですが……
面白いと……いいなぁ……






死闘

始まりは……氷柱が敵より飛来してきた……

 

二トントラックほどのサイズは優にあろうかという、もはや柱ですらない、巨大な氷……

 

それを避ければ、その氷の後ろ……俺に見えないようにあった炎が螺旋の線を描いて襲ってきて……

 

さらにその炎に、雷が隠されており、避けた俺を襲う……

 

全てを避けきれない俺は、魔壁を展開してどうにか防ぐが……ひっきりなしに襲ってくるその攻撃……

 

避けることしか出来ず、じわじわと力を奪われていた……

 

 

うぜぇ!!!!

 

 

しかもその全ての攻撃は、どれもどす黒い色をしていて……敵の漆黒の靄がそれをさらに強くしているのか、キリンの雷、クシャルダオラの氷、ナナテスカトリとナナテスカトリの炎を軽々と上回っていた。

しかしかといって全ての攻撃の属性その物が上回っているわけではなく、単に出力の問題だった。

だが、こうまで桁違いの出力の攻撃を繰り出されては、属性なんてもはや関係はなかった。

 

 

「オォォォォォォォ!!!!」

 

 

力の限り、狩竜を……龍刀【朧火】を振るう。

魔を引き裂くこの剣で、俺は敵の魔によって構成された攻撃をどうにかいくつかは無効化していた。

だがあまりにも数が多すぎて全てをさばききることは、難しかった。

 

 

 

 

【ほう。存外に粘るな、人間】

 

「うるせぇ! 見下してんじゃねぇ!」

 

 

 

 

俺は敵に向かって吼えるが……どうしようもなかった。

 

 

威力があって連射数も半端ない。

そして一つ一つの攻撃に避けても別の攻撃で追ってくると言うホーミング機能付き。

そう簡単に避けることはできなかった。

 

 

【ふん。人間は人間らしく地べたにはいつくばっているのがお似合いだな】

 

「やかましい!!」

 

 

敵の挑発に苛立ちを覚えつつ、俺はひたすらに避けて斬って、を繰り返す。

だがこのままではじり貧だった。

しかも……厄介なのが……

 

 

ボコッ

 

 

時折地面が大きく隆起しては……そこからマグマが螺旋状に吹き出し……俺を焦がそうと襲ってくるのだ……。

 

 

ちっ!

 

 

テオテスカトルとナナテスカトリの「炎鱗の護り」のおかげで、即死することはないが、敵の邪によって穢れた魔に浸食されているそのマグマは、漆黒の稲妻を放っており……完全無効は不可能だった。

吹き出すマグマだけではない。

雷の精霊のキリンの「精霊の加護」、氷と風を司るクシャルダオラの「鋼殻の護り」、それらもそれぞれの属性……雷、氷も、敵の攻撃は全て邪で穢れているので完全無効化は不可能だった……。

よって敵の攻撃は避けるか魔壁で受け止めなければならない。

 

 

グラビームとか、ラージャンの元気玉さえも効かなくなった俺が!!!!

 

 

試したことはないが、キリンのお墨付きなのでおそらく俺に有効なダメージを与えられるのは古龍種だけだろう。

 

 

しかし敵の攻撃はそれだけではない……

 

 

 

 

カッ!

 

 

 

 

と、雷が激しく雷鳴したら要注意。

直ぐにその場を離れる。

その刹那……

 

 

ゴガァァァァン!!!!

 

 

激しく地面を灼き、その地面を通して、漆黒の稲妻が大地を走る……。

遙か上空より飛来した……まさに天災からの一撃……

こちらは溜めが必要なのか、連発はしてこないが……その分威力が半端無い……。

念のために言っておくが、これも……というかこれこそまさに邪によって穢れた漆黒の稲妻をその物である。

普通の稲妻と邪によって穢れた魔を併せ持つ一撃……。

普通の人間が喰らったら丸焦げになります。

 

 

まぁ普通の雷喰らっても人間は丸焦げになるか……

 

 

そして最後に……

 

 

 

ヒュオォォォォォ

 

 

 

寒風が吹き荒れる……。

その時にはもう……手遅れである……。

 

 

 

上空百メートルほどの場所に……巨大な氷柱が多数……

 

 

 

それが一斉に……降ってくる……。

しかも俺へと向かって……。

 

 

ゴォッ!

 

 

激しく風を唸らせながら……巨大な氷柱が俺へと迫る……。

狩竜で捌くことは出来ないので……俺は狩竜を地面へと突き立てて……夜月と蒼月を抜刀……二刀流にて速さと手数で、どうにか敵の氷柱を捌く。

 

 

「オォォォォォォォ!」

 

 

斬る、削る、穿つ、流す、吹き飛ばす……

 

 

あらゆる方法で何とか直撃を防ぐ……。

が、最後の巨大……下手なビル1個分はある……はさすがにどうしようもないので、俺は二つの刀を納刀し……狩竜を拾って後方へと下がる……。

 

 

……下がろうとした

 

 

ドッ

 

 

なっ!?

 

 

下がろうとしたその背後に……何かがぶつかった……

 

それは巨大な氷の壁で……いやよく見ると、それはいくつもの氷の柱がまるで囲むかのように乱立していて……

 

そしてそれが先ほどまで俺が打ち落としていたはずの氷柱だと、気がついた……

 

 

囲っていたのか!?

 

 

まさか打ち落とした氷柱が俺を閉じこめる檻のように周りを囲っていると気がつかなかった……

 

何か……黒い靄の物で隠していたのかもしれない……

 

 

 

 

【……愚かな】

 

 

 

 

敵の台詞に苛立ち覚えたが……その通りだった……

 

隠されたとはいえ気がつかなかったとは……

 

また、俺が捌いた氷だけでなく……それ以上に凄まじいまでの氷柱がこのエリアに鎮座していた……

 

極低温下となったこの空間には大量の氷晶が発生していて……

 

しかもそれだけの氷柱が鎮座しているので……霰は腐るほどある……

 

気づかなかったが、俺が捌いた氷……そしてぐるりと俺を囲むその氷柱には……たっぷりと魔力が込められていた……

 

そしてそれは……最後に落ちてきた、極大の氷柱も例外ではなく……それが身動きのとれない俺へと落下……

 

 

したかに思われた……

 

 

 

 

ガギン!

 

 

 

 

ん?

 

 

しかしその巨大な氷柱は俺を囲っている氷の檻に阻まれて落ちてくることはなかった……

 

それを訝しむと同時に……すぐに気がついた……

 

 

 

 

閉じこめられた!?

 

 

 

 

周りを氷の柱が……上はビルほどの大きさの氷で完璧にふさがれてしまった……

 

 

 

 

そして……そろそろ時間……

 

 

 

 

邪の雷が……溜まる時間で……

 

 

 

 

しまっ!?

 

 

 

 

カッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

【滅びよ】

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴガァッアァン!

 

 

 

 

特大の落雷が極大の氷柱へと落ち……それが引き金となり、始まった……

 

雷が落ちたことによってが周りの氷柱と共鳴、共振……

 

空気中の氷晶と霰に、大量の電荷が蓄積される……

 

そしてその氷晶と霰にも当然穢れきった魔力が付与されている……

 

それらが一斉に加速……共鳴しあった……

 

 

 

 

!? 気壁、魔壁全力展開!!!!

 

 

 

 

四方に夜月、蒼月、雷月、花月を突き刺し、その中央に龍刀【朧火】を刺す……

 

そして刃気解放、魔力壁を展開した瞬間に……

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが……白く染まった……

 

 

 

 

~ディリート~

 

 

……

 

 

もはや言葉が出ない、思い浮かばない……。

 

まるで滑空するように、ジンヤが宙を飛びながら火山へと火山装備すらも纏わずに突っ込んだ……。

 

すると一瞬で燃え上がるはずだったジンヤは平然と突っ立っており……。

 

それだけでも皆が目を点にしたというのに、出てきた邪神龍……アルバトリオンが吼えたと思ったら巨大な氷柱が次々とできあがり、ジンヤへと向かう……。

 

そしてその後ろには炎やら雷やらがあり、それがまるでジンヤを追いかけるかのように執拗にジンヤに迫る……。

 

だが敵が化け物ならばジンヤも十分に化け物だった……。

 

その巨大で膨大な数の氷塊を避け、後ろに続く炎も雷も、何か見えない壁に遮られるかのように、ジンヤには命中していなかった……。

 

時折黒い雷が落ちるも、ジンヤはそれさえも予見して普通に躱し、さらに地面から巻き上がる螺旋の炎も、ジンヤは回避している……。

 

 

常々思っていたが……本当に人間じゃないなあいつは……

 

 

そもそもにして火山用装備も装備せずに何故生身で火山内部、溶岩が周りで滾る中動くことが出来るのか?

 

そしてあの圧倒的な威圧感を放つ存在の、煌黒邪神アルバトリオンと同じ空間に立てるのかも不思議だった。

 

この遙か遠く、遙か上空でいる私が身震いしてしまう程の威圧を放っているのだ。

 

ジンヤはそれだけでなく殺気まで放たれてそれを一身に浴びているのだから、今私が受けている威圧の比ではないはずなのだが……。

 

それを受けても立ち向かえ勇気……。

 

そして敵の攻撃をさばく冷静さ……。

 

時に激しく、時に緩やかに……。

 

正に……。

 

 

 

 

神を狩る……狩人……

 

 

 

 

と思えてしまうほどに、ジンヤのその動きは見惚れる物があった。

 

 

 

 

あっけにとられながらも、動きに見とれていた時……ジンヤがいるはるか上空に……先ほどの氷柱とは比較にならないサイズの氷柱が無数に出現した。

 

そしてそれは……一瞬の停滞の後、地面へと降り注いでいく。

 

しかしそれすらもジンヤは全てを冷静に打ち落としていた。

 

だがそれによってジンヤの体が一点へと固定された。

 

そして、この遙か先だからこそわかったことがあった。

 

 

「……囲っている?」

 

 

その氷柱は、ジンヤによって打ち落とされているにも関わらず、まるで磁石に……電磁に引き寄せられているかのように……それはジンヤがいるその場所を氷の柱で閉じこめるように……周りへと落ちていく。

 

最後に、巨大な氷が、ジンヤがいた場所に蓋をして、ジンヤの姿が視認出来なくなった……。

 

その瞬間……空が鳴った……。

 

そして……一瞬空が光ったと思った瞬間に……それは起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

轟雷

 

 

 

 

漆黒の雲に覆われているこの辺り一帯が、稲光によって全て吹き飛ばされてしまったかのような……圧倒的な光の暴力。

 

耳を閉じていても、それは手のひらを突き抜け、そして私たちの体を恐ろしい強さで叩いた。

 

遙か先……ジンヤがいる火口に落ちたというのに、ここまで衝撃波が届き、そして私たちの体を吹き飛ばした。

 

 

ドン!

 

 

ぐっ!?

 

 

思わずうめいてしまうほどの衝撃……

 

音が衝撃となって私たちの体を叩いた……

 

気を失わなかったのが奇跡だった……

 

その証拠にハンターではない研究員や、竜人族の人間は、気を失って倒れている……

 

急いで私はその気を失っている連中を起こした……

 

幸い、すぐに起きてくれた……

 

 

 

だが……

 

 

 

 

それで終わりではなかった……

 

 

 

 

凄まじい轟音と稲光が晴れ、なんとかそれを……目を塞ぎ、耳を塞ぐことによってどうにか耐えた……

 

そしてジンヤがいるはずの先の方の神域へと目を向けた……

 

 

 

そこは……

 

 

 

 

 

 

 

 

白銀の世界だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

な……に……?

 

 

 

 

あまりにも非日常的な光景で、言葉を失った……

 

そこは……神域は紛れもなく火山の奥地で……

 

その獄炎の世界に白銀の霧が……氷の結晶と思しき濃厚な霧が、あの獄炎の世界を覆い尽くしていて……

 

全く見えなかった……

 

その白銀の先……先ほどまでジンヤが見えていたはずのその場所が……圧倒的な氷の霧によって……

 

 

 

 

まるで先ほどの氷全てが……結晶となって、覆っているかのような……それほど濃密な霧だった……

 

 

 

 

そして……そこに一つの火が灯される……

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

再度凄まじい轟音と……白銀を吹き飛ばす……衝撃と爆発が起きる……

 

 

 

 

 

 

 

 

「    」

 

 

何かを言った気がした……

 

自分が言ったのか……他の人間が言ったのか……

 

わからなかった……

 

その時……確かに五感が消えたのだ……

 

 

 

 

そして訪れる……危険……

 

 

 

 

ゴォッ!

 

 

 

 

「うぉっ!?」

 

「な!?」

 

 

この距離を駆け抜けていく、爆風と凄まじい炎熱……

 

それによって気球が転落するほどの揺さぶりが起こった……

 

 

「姿勢制御を!!!!」

 

 

あまりの現実離れしたその状況に固まっていた体が、どうにか危機に直面した事によって、普段通りに体が動いてくれる。

すぐに指示を出したからか……もしくは皆直感的にわかっていたのか……とりあえずどうにか姿勢制御を立て直すことが出来た……。

 

 

……もはや意味がわからない

 

 

ここからあの距離まで……それこそ何キロあるかわかったものではないのだ。

その距離を一瞬にして駆け抜けてきた衝撃と風……。

爆心地であるあの中心地は、果たしてどうなっているのかどうかもわからなかった。

 

 

 

!? そう言えばジンヤは!!!!

 

 

 

あまりの非現実的な状況に、思わず忘れてしまっていたが、あの爆心地にはジンヤが……いたはず……。

 

 

 

無事なのか!?

 

 

 

ジンヤの身を案じる……

 

だがその身の無事を望む心は果たして…………純粋な思いなのか……?

 

それとも、もしもジンヤがいなくなってしまった場合、あの場所にいる存在に、自分たちが立ち向かわなければならないという恐怖からの心配なのか……

 

私には……わからなかった……

 

 

 

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

「……ぁ」

 

 

二度に渡る一瞬の凄まじい重圧が消え、体に対する負荷が消えると……俺はどっ、と膝を突いた。

 

 

……い、生きてる?

 

 

そして膝を突いたその衝撃で、俺は自分の体に感覚があることを思い出し、俺は思わず閉じてしまっていた目を開けた。

体を確認しようとするが……うまく体に力を入れることが出来なかった。

いや、それどころか体の感覚すらも乏しい……。

特に聴覚と視覚が若干いかれている。

壊れてはいないようだが、しかし決して無事ではないようだった……。

 

 

……何が?

 

 

叩かれた衝撃で一時的な記憶の混濁が見られている……。

俺はどうにかおぼつかない感覚の中で頭を振るい、必死に記憶を呼び起こす……。

 

 

ここは……神域という場所で……

 

 

アルバトリオンとかいう煌黒邪神と闘っていた……

 

 

敵の攻撃が厄介で、苛立ちを覚えながら討伐していて……

 

 

俺の周りを囲っていた氷が粉砕したのか……

 

 

落雷……

 

 

そしてその落雷が氷柱内部の魔力と共鳴、増幅し……極大の雷となって俺を灼いた……

 

 

そしてその落雷によって……氷柱が塵になって爆砕……それによって出来た……圧倒的な氷の塵……氷晶が……まるで粉塵爆発のように……地下より出でた一つの小さな火が……灯り……魔力によって爆発した……

 

 

 

 

そうか!!!! 俺は……!!!!

 

 

 

 

ようやく俺は記憶が戻り……勢いよく立ち上がろうとした……

 

 

 

だが……

 

 

 

ガクッ

 

 

 

な……に?

 

 

 

膝を上げることが……出来なかった……

 

それどころか、四肢……いや指に力を込めることすら出来ず……俺は……手を握ることすら出来なかった……

 

 

【無理をしてはいけません】

 

 

その俺に、キリンが語りかけてくる。

だが、そのキリンの声すらも……弱々しい……あまり力が込められていなかった。

まるで……何かを庇ったかのように……。

 

 

まさか……お前……

 

 

よく考えれば、わかることだった……。

あれほどの攻撃だ……。

俺がこうして無事に……形を残していること自体が異常だったのだ……。

確かに神の力、ラオシャンロンの力を使用したとはいえ、今の敵の連続攻撃はそれだけで防げるような攻撃ではなかった。

だからこそ打刀達の刃気までも解放したのだが……それですら足りなかったようだった。

その不足分を、キリンがほとんど庇ってくれたようだった。

そのため、たてがみの首飾りにほとんど意志というか……魔力が残っていない。

後もう少し敵の攻撃が強かった場合、精霊の加護を突き抜けて俺を灼き、下手すれば死んでいたかもしれない。

 

 

すまない……

 

 

感謝することしかできないか……俺はどうにか体を動かして、何とか立ち上がった……。

気と魔で体を何とか多少なりとも治療し……俺は敵へと向き直る。

 

 

【ほぉ……。生きていたか。人間風情が頑張るな】

 

「……」

 

 

尊大に……偉そうにそう言ってくる敵がうざったかったが、だがしかしそれに何かを言い返す余裕もなかった。

 

 

……恐ろしい威力だ

 

 

無駄に広がらないように、氷柱で俺を囲み、その中で電磁による攻撃を行い、それによって爆散した氷晶が、残っていた魔力を使用してまるで粉塵爆発のように発火、爆発。

穢れた魔によって強化されたそれは……あり得ないほどの攻撃力を有していた。

正直、俺が生きているのは奇跡以外の何物でもないだろう。

 

 

さて……どうするか……

 

 

敵の攻撃力は遠距離攻撃であるというのに、十分すぎると言うことは理解した。

強大すぎる遠距離武器を持つ相手には、セオリーとして近寄ってそれを使用させないというのが戦場での基本だが……。

 

 

それが通用する相手では……ないだろうな

 

 

仮に近寄っても、それに躊躇せずに攻撃してきそうな気がする。

恐らく自身も己の攻撃は喰らうのだろうが……それでも俺とは喰らい方の度合いが違うと思われる。

それに遠距離武器がなくなっても、その……天をつらぬくような角や、その四肢の先の爪なんかもあるので、近接戦闘でも問題はなかろう。

 

 

 

 

だが……

 

 

 

 

遠距離攻撃が強いのはわかった……

 

近寄った場合どんな攻撃をされるかも謎だし、まだなにか罠かあるかもしれない……

 

が……

 

 

 

 

今のままでいいわけがない……

 

 

 

 

敵は完全にこちらの間合いの外……

 

それどころか何か、フィールドのような物を張っていて明らかに俺と同じ場所にいつつ、俺とは違う場所にいる……

 

まぁそれは別にいいのだが……こう遠くてはこちらの攻撃が当たりようがない……

 

 

となると……選択肢はただ一つ……

 

 

俺はどうにかある程度治療の終わった体に力を込める……

 

完全に復帰したわけではないが……だがそれでもそこそこの回復は見込むことが出来た……

 

敵までの距離は決して近くはないが遠くもない……

 

一息に近づくは出来ないが、それでもそんなに時間はかからない……

 

 

 

 

とりあえず敵を地上に降ろすか……

 

 

 

 

こちらの攻撃を当てるためにも、まずは高台でふんぞり返っている敵にこっちの間合いまで来てもらわないことにはどうしようもない……

 

それに……

 

 

 

 

偉そうにふんぞり返っているのを見て……さらにバカにされたのでは……腹が立つわ!!!!

 

 

 

 

そう言った諸々の事情により、高台からこっちを偉そうに見下ろしている敵を、同じ土俵に引きずりおろすことにする……

 

周りに突き刺した打刀達を回収し、鞘に納める……

 

 

の……だが……

 

 

 

 

【ではこれはどうかな? 人間】

 

 

 

 

敵の背後に……数え切れないほどの物体が出現した……

 

 

な……に……?

 

 

無数の矢が……雷、炎、氷……全ての属性が形を成して宙に鎮座していて……

 

それが一斉に……俺の方へと向いてくる……

 

そして……一斉に俺へと飛来する……

 

 

!? くっ!!!!

 

 

その瞬間に、俺も後方へと飛び……回避するが、それらは俺を追尾して俺へと迫る……

 

しかも速度が異様に速く……このまま逃げ切るのは不可能だった……

 

 

ちっ!!!!

 

 

俺はすぐさま避けることをやめて、夜月を抜刀……

 

左手に龍刀【朧火】を持ち……ひたすら右手に持って夜月で捌く……

 

 

ギャン ギィン ゴガッ

 

 

夜月と敵の攻撃が激突し、激しく火花を散らしながら、俺は次々に飛来する敵の矢を防ぐ……

 

だが、これほど圧倒的な数では……防ぎようがなかった……

 

 

ガスッ

 

 

ぐっ!?

 

 

右足を氷の矢が掠め、衣服を切り裂き俺の肉を切る……

 

 

バチッ!

 

 

「がぁっ!?」

 

 

雷の矢の一部が俺の身体へと触れ……身体を感電させながら通り過ぎる……

 

 

ゴワッ!

 

 

炎の矢が、俺の身体を……「炎鱗の守り」を超えて熱く熱し……肌を灼く……

 

 

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

吼えた……

 

ただ吼えた……

 

力の限り夜月を振るい……敵の攻撃が身体を痛めつけるのを歯を食いしばってひたすら耐えた……

 

 

 

 

まだだ……

 

 

 

 

地に足を止め……

 

 

 

 

まだだ!!!! もっと……もっと……!!!!

 

 

 

 

右手の夜月を縦横無尽に振るう……

 

 

 

 

もう少し……

 

 

 

 

ただ、内なる力を……「力」と「守」に宿ったその力を……強く……強く……練り上げる……・

 

 

 

 

ガスッ!!

 

 

 

 

「がぁあぁぁ!?」

 

 

 

 

敵の雷の矢をもろに喰らい、悲鳴が口から漏れ出した……

 

だがそれでも俺は耐えた……

 

ただ、ただ……念じて耐える……

 

そして……

 

 

 

 

その時が来た……

 

 

 

 

ボコッ

 

 

 

 

矢でとどめを刺せなかった事に苛立ちを覚えたのか……敵が俺の足下に、凄まじい魔力を込めだした……

 

それを感じ取った瞬間に……俺は四肢に力を込める……

 

 

 

 

【それで終わりか? 失せよ……】

 

 

 

 

そして……足下が炎を巻き上げる……

 

 

 

 

その一瞬前……俺は走り出していた……

 

 

 

 

ダンッ!

 

 

 

 

地面が陥没するほどの勢いで走り出したその力は……俺と敵との距離を、一気に縮める……

 

 

 

 

【む】

 

 

 

 

その速度に驚いたのか……それとも不敵に笑ったのか……敵が何か声を上げていた……

 

だがそんなことは関係ない……

 

ただひたすらに……「力」と「守」を練り上げる……

 

そして敵の矢が俺を傷つけるのもいとわず……俺は無防備にも高く跳んだ……

 

敵の高台よりも遙か上空へと……

 

 

 

 

「……喰らえ」

 

 

 

 

空間破壊すらも可能な……この一撃……

 

それを龍刀【朧火】へと纏わせて……俺は一気に振り下ろした……

 

 

 

 

「覇衝崩撃!!!!」

 

 

 

 

敵のフィールドを破るための衝撃波……

 

 

 

 

敵を引きずり下ろす前に……その自身を|覆い隠す(・・・・)かのようなそのバリアのような物を……破壊させてもらう!

 

 

 

 

神……破壊神と崩壊神の力を圧縮した……その衝撃波は……敵のバリアへと迫り……

 

 

 

 

流された……

 

 

 

 

!? なっ……!?

 

 

 

 

まるで……暴風や水を受け流すための……抵抗を少なくするためにとがらせたそのフィールドによって……

 

 

 

 

【貴様……神たるこの私を攻撃しようというのか?】

 

 

 

 

この結果に驚いていると……敵が怒りを顕わにしながら俺へと声を発す……

 

あまりに思い描いていた……敵のフィールドが破壊できるという事を否定されて……俺は思考が停止した……

 

だが、それに構わず敵は攻撃を行ってくる……

 

 

 

 

宙へと舞い上がった俺を中心にして、薄い氷の球状の檻が出現する……

 

そしてそこには当然……魔力が込められていた……

 

それだけではなく、先ほど爆発する時に使用された氷晶が既にその中では満杯に詰まっており……

 

 

 

 

……何?

 

 

 

 

 

 

 

 

【失せよ。人間】

 

 

 

 

 

 

 

 

その思念と共に……中の魔力が……雷へと変化し……氷晶との摩擦で共鳴、共振し……その球状の中で激しい雷が俺の身体を……精神を攻撃する……

 

 

 

 

「■■■■■■■■!!!!」

 

 

 

 

もはや目の前の白と黒の入り交じった電撃以外……何も見えず、何も感じなかった……

 

一瞬の油断によって形成されたその攻撃は、先ほどの攻撃よりも威力が低いものの、あくまでも先ほどの規格外な攻撃よりも威力が低いというだけで……凄まじい雷が嘶いていた……

 

やがてそれが終わると、氷の檻だった球状も霧散し……俺は所々を黒く焦がしながら地面へと落下した……

 

 

 

 

ドサッ

 

 

 

 

「 …■、うぁ■」

 

 

 

 

もはや声を上げることすら出来ない……。

言ってしまえば虫の息だった……。

魔力が切れたとはいえ、雷の属性を持つキリンのたてがみの首飾りがなければ死んでいただろう……。

だが、それでもいつまでも寝ているわけにもいかないので……俺はどうにか立ち上がった……。

 

 

 

 

【ほぉ。今のは確実に貴様にダメージを与えたと思ったのだが……。存外にしぶといな。人間】

 

 

 

 

明らかに見下しながら、侮蔑混じりに敵がそう言ってくるが……俺はそれに返す余裕がない。

立ち上がるだけで精一杯だった。

だがどうにかこのまま寝てしまいたいという……死への誘惑を断ち切り、俺は立ち上がり、思案を巡らせる……。

 

 

 

 

あの攻撃が防がれたとは……

 

 

 

 

間違いなく神の攻撃だった、あの一撃がまさかあのような攻撃で避けられるとは予想だにしていなかった。

間違いなく……俺の手の内で究極の一撃だったのだが……軽く受け流されてしまった。

しかも手持ちの手札でもっとも強い攻撃を使用したというのに……。

 

 

 

 

……どうすればいい?

 

 

 

 

正直……思い浮かばなかった。

何せ今のは間違いなく最強の一撃だったのだ。

これを防がれては……。

 

 

 

 

……待てよ

 

 

 

 

そこで閃いた……。

確かに最強の攻撃は受け流された……。

だが逆に言えば、受け流されさえしなければ……突破することが可能なのでは?

 

 

……やってみるか

 

 

思いついたこの方法……それでどうなるかはわからないが……他に思いつかないのでやってみることにする。

失望して弛緩させていた体に力を込めて、俺はもっとも攻撃力の高い、刺突の構えを取る。

 

 

 

 

【……ほぉ?】

 

 

 

 

その俺を見て、敵が何か感嘆とも、侮蔑とも取れる吐息を漏らした。

 

 

 

 

【覇と崩の力を破られてなお、我に立ち向かおうというのか?】

 

 

 

 

その言葉に、言葉は返さない。

ただ姿勢を変えず……ただ敵を鋭く睨み、そしてそれ以上の鋭さを持つ刀を……龍刀【朧火】の鋒を敵へと向け続ける……。

 

 

 

 

【良かろう。その貴様が今やろうとしている事が正しいのか否か……】

 

 

 

 

再度敵の背後に、夥しい数の矢が出現する……

 

今度はそれだけでなく、サイズも大きくなり、さらに後方だけでなく……俺を遠方より囲むように、周囲に無数の矢が出現する……

 

 

 

 

【採点でも……】

 

 

 

 

だが俺は焦らなかった……

 

一点突破の集中攻撃……

 

 

 

 

ならば俺がするべき事は一つ……

 

 

 

 

【してやろう!】

 

 

 

 

言下……猛烈な速度で敵の矢が俺を食いかからんと襲ってくる……

 

俺はそれをじっと……見ていた……

 

その総身を気と魔で……覆いながら……

 

 

 

 

狙いは……

 

 

 

 

どこでもいい……

 

いや、必ずどこかに綻びがあるはずだ……

 

それを見抜き……そこへと走ればいい……

 

 

 

 

……どこだ……どこにある?

 

 

 

 

敵の矢が高速で飛来する……

 

だがそれがゆっくりと感じる……

 

それどころか音も、色もない……

 

いや、そんなことは些細なこと……

 

俺がすべきはただ一つ……敵のそれを見つけることのみ……

 

そして……

 

 

 

 

見えた!!

 

 

 

 

ただ一点……

 

敵の眼前……

 

天をも貫かんと猛る、敵の巨大な角の目の前……

 

そこに点があった……

 

 

 

 

「■■■■■■■!!!!」

 

 

 

 

溜めていた力を……解放する……

 

 

 

 

■■■!!!!

 

 

 

 

凄まじい轟音が鳴り響き俺が踏み抜いた地面が沈み……それと同時に一気に敵へと肉迫する……

 

気と魔だけではない……

 

今まで得た全ての魔を……推進力に回したのだ……

 

 

 

 

【何ぃ!?】

 

 

 

 

一瞬で眼前へと迫られて、敵が驚きの声を上げていた……

 

その間抜け面目掛けて……俺は後ろに引いていた左手を……狩竜によって顕現している、龍刀【朧火】を持った左手を振りかぶり……

 

 

 

 

それを突き込んだ……

 

 

 

 

ギィン!

 

 

 

 

敵の目に見えぬ何かと……龍刀【朧火】がせめぎ合い、紫の火花を……魔の火花を散らす……

 

拮抗していた……

 

龍刀【朧火】の力を一点突破させたのでさえも……

 

 

 

 

だが……

 

 

 

 

これで終わりではない……

 

 

 

 

俺はさらに溜めていた……先ほど敗れた「力」と「守」も一挙に解放する!

 

 

 

 

【グッ!?】

 

 

 

 

さしもの敵も三つの力に圧されているようだった……

 

だがそれでも耐えた……

 

その事実に内心舌を巻くが……

 

 

 

 

まだだ!!!!

 

 

 

 

最後の力を……解き放つ……

 

 

 

 

「龍刀【朧火】……」

 

 

 

 

気ではなく……魔を……解放する……

 

 

 

 

「刃魔解放!」

 

 

 

 

その言葉と供に……膨大な魔力が、あふれ出した……

 

 

 

 

【なっ!?】

 

 

 

 

その言葉と同時に……龍刀【朧火】より、凄まじい魔が溢れ、それが突き込んだ龍刀【朧火】の鋒へと集まって……爆発する……

 

やれると思っていなかった……

 

だが考えることもなく……自然と武器を振るっていた……

 

そして……龍刀【朧火】が答えてくれる……

 

 

 

 

■■■■■■■■■■!!!!

 

 

 

 

激しい火花が散っている……

 

そしてその火花に呼応するかのように……敵のバリアにヒビが入る……

 

 

 

 

【……貴様】

 

 

 

 

「出てこい……この引きこもり!!!!」

 

 

 

 

その啖呵と供に、敵のバリアが完全に破砕された……

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしその瞬間に……

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

濃密な邪が……あふれ出した……

 

 

 

 

なっ!?

 

 

 

 

思わず息を呑んだ……

 

破砕した喜びも……敵をこちらと同じ舞台へと引きずり下ろした余韻すらも置き去りにして……

 

 

 

 

【……ほぉ】

 

 

 

 

敵が己のバリアを破砕されたにも関わらず、慌てていなかった……

 

その落ち着き振りが……その言葉が、雄弁に答えを語っていた……

 

 

 

 

バリアではなく……檻であったと……

 

 

 

 

そしてその邪が……気配ではなく形となって現れた……

 

 

 

 

炎に……雷に……氷に……浸食していた邪が実際に視覚出来た……

 

 

 

 

それほどまでに……形がないはずのそれが、見えてしまうほどに……濃密な穢れ……

 

 

 

 

キィィィィィィ

 

 

 

 

龍刀【朧火】が震えていた……

 

マナの塊……命の塊とも言えるラオシャンロンの力が震えていた……

 

その余りにも穢れた物体を見て……

 

それはつまり……

 

 

 

 

命が……怯えているということで……

 

 

 

 

また「力の爪」と「守りの爪」も異様な振動をしている……

 

破壊神と崩壊神ですらも……警戒に猛り、吼えている……

 

 

 

 

もはや言葉にすら出来ない……

 

 

 

 

まさに圧倒……

 

桁違い……

 

 

 

 

故に……神……

 

 

 

 

 

 

 

 

【我が穢れ、我が願い……貴様を喰らって成就させよう】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死が……始まろうとしていた……

 

 

 

 

 

 




よくある話ですよね。
檻に閉じこめられた状態で戦うみたいな?
ドラゴンでクエストするので例えれば……老人が光の魔の杖を振り回していたみたいな?
それは違うかw どっちかっていうと老人で戦う感じですね。
次回はついに本気を出せるようになった煌黒邪神との戦いであります。



穢れし魔

恐るべき……憎念

それを纏いし神……煌黒邪神アルバトリオン

人間が相手をするには余りにも強大すぎる……その相手に……刃夜は……




初めて心の底から恐怖する……


次章 第五部 第八話

「終末」



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