ミッドチルダの英雄(ヒーロー)   作:ロシアよ永遠に

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古代ベルカの曾々々々々々々(略)祖父(ぶっちゃけグランファ)

「まだ遅ぇ!!もっと踏み込みは思い切りよくだ!!!」

 

「はいっ!!」

 

「足を使いこなせ!!近接戦の肝は間合いと足取りだ!!」

 

「はいっ!!!」

 

ST,ヒルデ魔法学院地下

ここに設立されているのは、特務を請け負う生徒用の演習場。その広さは学院敷地内の8割の地下を利用しており、市街戦や森林戦、基礎トレーニング機材等、様々なシチュエーションに合わせた鍛練を積むことが出来る。

その一角のアリーナで、ヴィヴィオは近接戦の鍛練を受けていた。

 

(やるじゃねぇか…!これでまともな鍛練積んでねぇって!?こうもホイホイ躱されるモン…かよっ!?)

 

以前の任務に援軍として現れた先輩であり、特務と魔法学院OB。その黒と紫を基調とした槍が横凪に払われる。しかし相対すヴィヴィオは身をかがめ、頭上を両刃の槍が空を切る。最初の一撃こそ彼女は身がすくんだ物の、徐々に槍の間合いと速度に慣れてきたのか、回避を易々とこなし始めた。さすがの先輩もこの成長速度には舌を巻くが、しかしだからといってこの鍛錬の意味は回避だけではない。

 

「躱してばっかじゃ勝てねぇ!打ち込んでこい!!」

 

「は、はいっ!!」

 

これだ。

回避には特筆すべき点はある。しかし、そればかりに専念していてはならない。相手の攻撃の暇を縫って切り返さなければ延々と終わることは無い。無論、時間を稼ぐことは必要なときもある。しかし逆に急ぎ打ち負かさなければならない任務もあるということを失念してはならない。

 

「…時には早めに相手を打ち負かさねぇと…!」

 

「っ!?」

 

突如として、先輩の振り回す槍に魔力が注がれる。今までに無かったその戦法に、ヴィヴィオは最低限、槍の間合いから外れる。

腰だめに構えた槍、そして放たれる紫の魔力光。何が来るのかわからない以上、警戒は怠れない。

 

「こう…なるぜ!!」

 

頭上からの一閃。ヴィヴィオが反応できたのは、槍が振り下ろされた直後だった。先輩の間合いを予測して、そして踏み込みも無く振り下ろされた槍は、恐らくはヴィヴィオに触れること無く空を切った。その速度から、切り裂かれた空気によって、彼女の前髪がふわりと舞う。

そして振り下ろされた槍を見やる。

切っ先から刀身が真っ二つに展開し、その中央から『新たな刃が形成』されていたのだ。

これは…ヴィヴィオの記憶にある物と酷似していた。

母である、なのはが扱う長年の愛機である、レイジングハート、そのエクセリオンモードA.C.S.。槍状に変形した切っ先から現れる魔力によるストライクフレーム。本来近接格闘戦よりも、突撃からの零距離砲撃を想定している物ではあるが、彼の使うそれはおそらく、物理と魔力、双方における攻撃のための物だろう。

 

「…これで今日は仕舞いだ。」

 

「えっ!?で、でもまだっ!」

 

帽子を押さえながら踵を返し、アリーナへの出口へ向かう先輩。お互いにまだまだ余裕があるはずなのに、どうしてだろうか?必死に呼び止める、が、彼は顔を向けること無く、

 

「お前に風邪引かれたら、なのはさんに俺が怒られちまう。早いとこ着替えるなり何なりするんだな。…あとさっきので解ったが、お前は一定の間合いに慣れてしまうと、不意に弱くなる。その辺を改善した方が良いかもな。」

 

背中越しに手を振って、アリーナから出て行ってしまった。

 

風邪?着替える?

そういえばさっきからお腹とか胸とかが妙に涼しい、というか開放的だ。

視線を下にやる。

 

鍛錬のために着替えてきた体操服、その下に着用していた水色のキャミソール。それが見事なまでに袈裟斬りにされていたのだ。

 

「なっ!なっ!?なななっ!?!?」

 

見る見るうちに顔が紅潮していくのがわかる。さしもの数年前は今ほどでは無いにしても、10という齢になった彼女にとって、肌をさらすと言うことに羞恥心が芽生えてきていた。

少しして、アリーナをあとにするヴィヴィオは、先輩が言っていた意味と、こうなった理由について一考した。

 

(恐らく、先輩が行った攻撃は…魔力槍による攻撃範囲の延長。それで普通の槍の間合いに慣れきった私が反応できなかったんだろうなぁ…。うぅ…情けないし寒いし…まだまだだなぁ…。ハァ…。)

 

『ですが伸び代はまだまだありますよ。次に向かって精錬が大切です。諦めなければその分進めますから。』

 

「そ、そうですね!頑張ります!!…って…あれ?」

 

誰かの声に反応して、ついつい返事をしてしまった。しかし、周囲を見回してみても人っ子一人居ない。薄暗いアリーナの静寂だけが、空間を支配していた。

 

「おかしいなぁ…空耳かなぁ…?」

 

疲れているのだろうと自分に言い聞かせつつ、半ば諦めかけていた自分にエールを送ってくれた謎の声に感謝して、ヴィヴィオはアリーナを後にした。

 

 

 

 

 

 

更衣室にて…

 

「「あ…。」」

 

紅と翠、蒼と紫の瞳が見つめ合う。片や服の前面が切り裂かれて、片や練習着片手に制服姿で、更衣室に入ってきたところだ。

 

「アインハルトさんも、今から練習ですか?」

 

「はい…、ヴィヴィオさんは上がりでしょうか?…その…。」

 

ヴィヴィオの服装が気になってか、彼女は少し顔を赤らめて視線を逸らす。

 

「あ、これですか?先輩に鍛錬を付けて貰ってたら、間合いを取り間違えちゃって…。」

 

面目ない、と言わんばかりに苦笑する。本来ならここで気遣いの一つでもするのが道理だろう。

しかし、ヴィヴィオのこんな姿を見せられない奴が一人居る。

 

「クラウス!今すぐ退室して…」

 

ここまで口にしてふと気付く。

(クラウス)の気配が感じられない。少なくとも更衣室からは。あれ程まで金魚の糞のごとく引っ付き回っていた彼が、である。…まぁ背後霊にも似た物だから、それが普通なのだろうが。

不審に思い、軽くサーチをかける。範囲を更衣室から少し広げたところで、すぐに彼は引っ掛かった。しかし、一つだけのハズが、似たような反応が二つ探知されていた。

 

『ま、まさか…キミは……!?』

 

『ここは淑女の聖域です。殿方は入室してはなりませんよ?』

 

『うぼぁーっ!?』

 

こきゃっ!と言う、小気味よい音と共に、クラウスの反応は忽然と消えた。幽体としての存在はあるものの、意識自体が無くなっているのだろうか、うんともすんとも言わない。

 

『さぁ、これで大丈夫。気兼ねなく着替えて下さいね。』

 

「は、はぁ…。」

 

アインハルトの返事と共に摩訶不思議な気配が消え、反応は気を失った覇王だけ。

 

「な、何だったんでしょうね、今の。」

 

「さ、さぁ…私には…。とりあえず、着替えましょう…。」

 

ヴィヴィオは頷いてシャツに手をかけ、アインハルトは胸元のリボンを解こうとしたときだった。

 

「ヴィヴィオさん…先程の会話…聞こえていたんですか?」

 

さも当然のように話を進めてはいたが、思い返してみれば不自然だ。アインハルトだけに聞こえていたはずのクラウスの声。それがヴィヴィオにも聞こえていたのだろうか?誰かは解らないが、クラウスを気絶させていた声も気になるが、ヴィヴィオの方も気になる。

 

「そういえば…、さっきアリーナを出るときにも、同じような声が聞こえたんですけど、正体は分からず仕舞いなんですよね。」

 

「…はぁ。」

 

「空耳かなぁ…って思ってましたけど…。もしかして私、霊感があるとか?」

 

「彼らが霊かどうかは解りかねますけど…。もしかしたら…クラウスのような存在が、ヴィヴィオさんにも…」

 

「わ、私にも背後霊!?そそそそんなっ!?」

 

本気で怯えるヴィヴィオに、冗談半分なのに申し訳なく感じたアインハルトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで。」

 

『ん?なんだいアインハルト。』

 

何者かによって首をねじ曲げられ、それでいて気を失っていた程度で済ます先祖を横目に、アインハルトは鍛錬の動きを止めた。彼自身は何が起こったのか、気絶させられる前後の記憶はなく、アインハルトも現場を見ても居なければ、ざまぁみろという思いも無くはなかったので言及はしなかった。

先程のヴィヴィオ達二人が使用していたアリーナとは違い、多種多様なトレーニング機材が置かれて居る室内のバーベルをフックに引っ掛け、インターバルを入れる。

 

「その姿、寝食をせずに維持できるものなのですか?」

 

『問題は無いようだ。…三大欲求のうち、その二つはまるで必要ないのか、補給をせずとも不思議と空腹感や眠気は来ない。全く、つくづく謎だね。』

 

「謎の元凶である貴方がそう言うのであれば問題ないのでしょう。心配するだけ損………ん?ちょっと待って下さい。」

 

『全く質問の尽きない子孫だ。悪くは無いけどね。…所で何かな?答えられる範囲なら答えようじゃ無いか。』

 

「三大欲求のうち、睡眠欲と食欲は無い、そう言いましたね。」

 

『あぁ、確かに言ったね。』

 

「じゃあ残りの…そ、その……せ、せせせせ性欲は……?」

 

こう言った情事には初なのか、顔を紅潮させて尋ねるアインハルト。

 

 

『決まっているじゃ無いか。自家発電だよ。』

 

「自家…発電…?」

 

『ふむ、この隠語の意味を知らないと?保健体育で習っただろう?マスターベーション。またの名をオナ「さぁ!!鍛錬の続きです!!張り切っていきましょう私!!煩悩なんか汗と一緒に虚空へ消し去るのが一番です!!」………やれやれ。鍛錬ばかりに気をやって、こう言ったことに疎いのも考えようだな。』

 

ふむ、と顎に手を当てて空中で胡座をかき、いかにも一考していると表すように少し顔をしかめる。

いくら子孫が、覇を以て和を成す悲願のために懸命になってくれているのは、クラウスにとっても喜ばしいことだ。だがしかし、だからと言って自分の人生をそれだけに費やして欲しくないのもまた事実。自分の悲願はその為のものではない。後世の子孫を縛る理由になるなど言語道断。…むしろ、覇を以て和を成すことで、平和な世を築き、自分のように無力に打ち拉がれて大切なものを護れない人が居ない世、それが望みだったのだから。…だからこそ、目の前の子孫の軛を、完全にとは言わないまでも、幾らか軽くすることは出来ないものか?

 

『…やはりあの娘、かな。』

 

何かを思い付いたのか、クラウスの口元が吊り上がる。それは子孫の為を思って策が閃いた、さながら孫を見る祖父のような表情

 

 

 

 

 

 

ではなく、

 

鬼畜のごとく、含みある笑みだった。

 




おまけ


「………。」

「ボクと契約して、魔法少女になってよ!」

「魔法少女?…私は魔女だから、そんなのになれない…。」

「それじゃあ魔女なのに、何で人としての形と意志を保っているんだい?訳が分からないよ。」

「そう言う貴方は、そもそも何なの?猫?狐?犬?」

「ボクはキュゥべぇ!魔法の使者さ!」

「魔法?間に合ってる。…とりあえず珍獣として、管理局に引き渡そう。」

「訳が分からないよ。」

魔女と名乗る少女により、この世界のエントロピー云々と思春期の少女が護られた。
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