ミッドチルダの英雄(ヒーロー)   作:ロシアよ永遠に

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ミッドチルダの邂逅(ガール・ミーツ・ガール)

「ドーモ、アインハルト・ストラトスです。長らく出番のみならず、名前すら触れられなかった様な気がする、一応主役です。ですが、『ミッドチルダの英雄(ヒーロー)』と銘打って連載しているワケなのですから、もっともっと私を主題にした話があっても良いと思うんです。それはまぁ?サブの方々にスポットを当てるのも?良いと思いますよ?ですが、これはあくまでも私を主人公に据えた…」

 

「アインハルトさーん、置いて行かれちゃいますよ?」

 

「あ、待って下さいヴィヴィオさん!いま読者の方に挨拶と、これからの事について…」

 

「読者の方…って?それにこれからの事って、まず今日の予定は、アインハルトさんも知っていますよね?ほら、生徒会長が目くじら立てて待ってますから、早く追い付きましょう!」

 

「あっ!ヴィヴィオさん!そんなに引っ張らなくても…!」

 

手を引いて、ぐいぐい引かれていく2人を見守る、常人には見えない二つの影。

 

『平和ですね。』

 

『アァ、ソウダネ。』

 

『今回は私達の出番は無さそうですね。』

 

『アァ、ソウダネ。』

 

『まぁ、そうであることに越したことはないのですが。』

 

『アァ、ソウダネ。』

 

青と紫の目をした碧銀の男性は、その瞳に光を宿さず、ただただ虚ろに、まるで機械人形の如く言葉を発する。

対して隣に立つ、紅と翠の虹彩異色をもつ金髪の女性は、先行く2人の少女を見守りながら、自身が命を落とした時代に思いを馳せる。

 

『さぁ、行きますよクラウス。今日は特務メンバーの管理局見学と会合だそうです。今の時代の警察組織のシステムを詳しく知るチャンスなんですから。』

 

『アァ、ソウダネ。オリヴィエ。』

 

オリヴィエと呼ばれた女性は掌に持つ(リード)を引き、自身の宿主達の後を追う。

 

『ふふっ。こうやって自身の手で貴方のリードを持つことが出来るなんて…幽霊になってみるものですね。』

 

『アァ、ソウダネ。オリヴィエ。』

 

リードの先…それは、クラウスの首に取り付けられた首輪である。見ようによっては何か特殊なプレイをしているかのようだが、何のことはない、文字通りにそうなのだ。そして文字通りにその手綱を握るオリヴィエのその手は、魔力を通して稼働する無機質な義腕ではなく、幼き日に事故で無くしていた正真正銘、自身の腕があった。それはやはり、幽体となったことにも起因しているのだろう。

 

『まぁ、生前から貴方はその不幸体質?みたいなモノを変な方向に活かしていましたよね?私の湯浴みの時に入ってきたり、バナナの皮でスベってエレミアのことを押し倒したり。』

 

『ちょっと待ってくれオリヴィエ!前半はまぁ…ともかく、後半は問題ないだろう!?そりゃまぁ…男が男を押し倒す、とか言うのは、一部の腐った女性に以外には余り眼に宜しくない光景だろうけど…。』

 

『クラウス。それは…本気で言ってるのですか?』

 

『…え?本気って?』

 

『はぁ…もう良いです。』

 

オリヴィエが溜息をつく。それもそのはず。エレミア…以前、圧倒的な力を奮った、インターミドルチャンピオンのジークリンデの祖先に当たる人物なのだが、中性的な外見と、一人称が『ボク』であったため、クラウスと共に過ごす中で終始、彼に男として思われていた。

否、現在進行形で思われている。

 

『それにしても…私の子孫とも言うべき彼女の下着を覗き見るなんて…恥ずかしいと思わないのですか?』

 

『なっ!?覗き見るなんて人聞きの悪い!!あれは彼女が、たまたまバナナの皮でスベって転んで、たまたま見えてしまっただけなんだ!!決して故意ではない!!』

 

それは不幸体質ではなく、ただのラッキースケベという。

 

『色は?』

 

『兎の小さなアップリケが施された、青と白のボーダーだったよ!凄く似合ってるね!』

 

サムズアップする彼の顔面に、生前と変わらぬ威力の鉄拳がめり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

胸の高鳴り。

上昇する体温。

釘付けになってしまう視界。

 

「ようこそ、特務の生徒諸君。…とは言えど3人か。」

 

さらりとした黒髪。

凜々しい眼。

すらりと、しかし決して華奢ではない体躯。

 

「では今日、執務の都合上短い間だが、案内させて貰う…」

 

優しく、

そして絶望から自分を(大袈裟)救ってくれた

会いたかった人

 

「クロノ・ハラオウンだ。30分の間だが、宜しく頼む。」

 

「宜しくお願いします!そしてお久しぶりですクロノさん!」

 

「あぁ、久しぶりだねヴィv…」

 

「どうして30分だけなんですかァーッ!?」

 

「「「!?!?」」」

 

普段余り大きな声を出さないアインハルトだが、いきなりの絶叫に、その場に居た皆がビクリと身体を震わせる。何やら血の涙を流しているようにも見えるが、それは幻覚だろう。

 

「えっと、君は…アインハルトだったか?」

 

「ハッ!?は、はい!そうです!」

 

「君のことはエリカ君から聞いているよ。なんでも、学内屈指の実力者だとか。」

 

「い、いえ。私などまだまだ…」

 

会いたかった男性に褒められて、悪い気はしないものだ。照れに照れて、赤らめた頬を手で挟み、クネクネと小躍りしている。

正直余り見ない、というか見たことのない彼女の奇抜な行動に、ヴィヴィオとエリカも身を退く。

 

「ま、まぁ、時間も惜しい。そろそろ出発としよう。」

 

何処から取り出したのか、バスガイドが観光案内するかのような旗をクロノは取り出して、3人と、そして無意識に幽霊2人を引率していく。

 

「ほら、アインハルトさん。行きますよ?」

 

「…全く、後輩に手を引かれるとは、普段の君では考えられないな?」

 

未だ戻ってこないアインハルトを半ば引き摺りながら、クロノによる管理局の案内は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

案内、とは言えど、学生が行事の一環で執り行う社会科見学とそうは変わらない。まぁ、特務の代表3人と案内の提督の四人で回るという小規模な物だが、禁止区画を除き、大まかに各部署を回っていく管理局観光ツアーST.ヒルデ魔法学院御一行様。途中、教導中の航空教導隊でヴィヴィオが栗毛の女性に手を振ると、何をハッスルさせたのか桃色の砲撃頻度が増して、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。そんな彼女を見かねて、クロノのバインド地獄が彼女を襲ったのは言うまでない。

執務官の統括事務所においては、偶々書類を出しに来ていた金髪の女性が、ヴィヴィオと、そしてクロノと少々談笑。その際、女性がクロノを『お兄ちゃん』とプライベートの呼びをした際には、『至近距離でしがみついて縋り付くように言え!』などと、よく分からない拘り(フェティシズム)を吐露していた。

無限書庫においては司書長と……………もはや言わずとも分かりそうな物なので割愛させて頂く。

 

 

そうこうしているうちに、30分に収まらないようで、しっかりときっかりと収まった30分。

アインハルトにとって至福の一時であったことに変わりなく、30分という枠組みの中でも、その幸せを噛み締めていた。

 

 

が、終わりは必ず来るもの。

 

「どうして30分だけなんd…」

 

「知らんがな。」

 

30分という長いようで、しかし彼女にとっては確かに短い時間だったのだろう、身体を抱き締めながら、再度慟哭するアインハルトに、エリカは呆れながら辛辣な言葉を浴びせる。

 

「はは…済まないね。これからどうしても有給に入れと人事が煩くて。」

 

「確かに、提督職ともなれば、多忙に多忙だろうな。しかも管理局員全員が中々有休を取りたがらない異常者だから、人事部が労働監督署あたりからガサ入れが入った時のために、ある程度有給が溜まった局員には半強制的な有給使用が行われていると、まことしやかに噂になっている位だからな。」

 

「確かになのはママもフェイトママも、公休以外は休みを基本的に取らないみたいですしね~。」

 

それでもなのはは、育ち盛りのヴィヴィオの為に、泊まりがけの仕事を減らせれるように上司に掛け合い、ミッドチルダや近隣世界、或いは本局での教導を中心にするようにしている。その甲斐あってか、遅くなることはあっても、家に帰らない日と言うのは年に指折り数えるくらいしかない。

だが、提督職や執務官ともなれば、遠い次元世界に赴いての任務の執行。更にはその報告書の作成と共に提出。目的の次元世界や任務内容にもよるが、1週間以上家に帰らないなんて事もザラである。

 

「まぁそんなわけだ。僕も偶には貴重な有休消化で家族サービスと言う奴をしなくっちゃあな。」

 

「あ、暫く会ってないですけど、カレルとリエラは元気にしていますか?」

 

「あぁ、この間7歳になったところでね。聖祥大附小学校2年生だって、メールをくれたんだよ。」

 

聖祥大附の良さは、クロノの義妹であるフェイトと、その友人達が通っていたことでよく知っている。何度か家族関係で訪れたこともあったが、校風とその授業にはクロノも良い学校だと思ったし、一緒に訪れていたエイミィには、

 

『クロノ君も、子供が出来たらこう言う学校に入れたい?』

 

『そうだな、確かにそれもアリだろう。でも、僕が結婚してこっちに定住するとも限らないし、そもそもそうなったとしても子供には強制せずに、あくまでも選択肢の一つとして……って、何を言わせるんだ?』

 

『いやいや~、クロノ君がそこまで考えていたとはねぇ。お姉さんとしては嬉しいよ?感心感心!』

 

『君も、そう言ったことで人をからかう前に、自身の相手を見つけたらどうなんだ?』

 

『ん~?私はこれと言った相手もいないなぁ。…もし私が婚期逃して行き遅れたら、クロノ君貰ってくれるかな?』

 

『未婚だったらな。それも選択肢の一つとして考えておくよ。』

 

……などと、軽口をたたき合っていた相手と、まさかその数年後に婚約し、翌年には結婚していようなどとと思いもしなかったが。

ともあれ、選択肢の一つを、自身も、そしてその子供も選び取るなど…。

 

「この間の誕生日は何とか休みを取れたしね。本当に骨が折れたよ。」

 

自身の端末を操作して、投影ディスプレイに写し出したるは、濃い茶の髪をした双子の兄妹。片やクロノと同じように短く整えられ、片や肩までの髪。恐らく短い髪の方がカレル、肩までの方がリエラだろう。

二人とも自身の誕生日だけあって、目の前の大きなホールケーキにご満悦のようで、屈託のない笑顔を浮かべている。

 

「わぁ…二人とも大きくなりましたね~」

 

「だろうだろう?最近以前にも増して可愛さが増してね。これは将来とんでもない男前と美人に成長すると確信しているんだ!この二人の整っていて、そして早くも凜々しさを見せる顔立ち!この前も二人の運動会を見に行ったがね。二人ともかけっこで一位になったんだよ!いやいや、将来はスポーツ選手も目指せるかな。オリンピックも夢じゃないだろう。あと、父の日と言うものに、僕の似顔絵を描いてくれたんだ。いやぁ…絵心もある!下手をすればデザイナーにも…」

 

1を聞かれて10を…いや、100を答えるかの如く、次から次へと自身の子供達の自慢…いや、親バカ振りを披露する。普段の彼からは想像も出来ないほどに目は輝き、饒舌に話も回る。

 

「あの…会長…」

 

「ん?なんだ…ヒッ!?」

 

親バカの話を右から左に聞き流していたエリカの耳に、地獄からの呻き声の如くアインハルトが声を掛ける。それに応じて振り返ってみれば、

何と言うことか!目は虚ろに、顔は青ざめ、口は半開き、そして体はガタガタと震えていた。だが、そんな眼が死んだような彼女の身体から、得も知れぬ負の感情と共に、歪な威圧感がジワリと滲み出る。

一番近くにいたエリカはその気に当てられ、しめやかに失禁!……と思われたが、乙女の貞操概念かそれを踏み留まらせた。

 

「…ハラオウン提督は…既婚者だったのですか…?」

 

「そ、そ、そ、そ、そうだが…?」

 

「…そうですか…。」

 

エリカの肯定が引き金となり、これから阿鼻叫喚の地獄絵図が…と危惧していた。

だが、恐る恐る見た彼女の目は、怒りではなく、ただただ…エリカから見ても見惚れる程に美しくも憂を帯びた様に見えた。

 

「こう言うときは…こう言うんですよね。」

 

「ん?」

 

泣けるぜ…(Story my life)。」

 

(この子はまた変な知識を…)

 

元より、何処かズレた感じの彼女ではあったが、どんどん変な方向へとシフトしていく。そんなアインハルトの将来を心配するエリカは、どこかオカンの様に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

滞りなく管理局との連携を再確認する定時会合を終え、地上本部前に出てきた三人。途中からの案内と、今見送りに来てくれた銀髪ツインテールの局員に一礼して3人は各々帰路に着く。

 

「済まないが…私はこれから稽古の時間でな。本来ならば送ってやりたいのだが…。」

 

「いえ。会長もお疲れ様でした。」

 

「会長、また明日!」

 

「うむ、道草せぬようにな。」

 

そう言って、彼女は黒塗りのリムジンに乗り込んで主要道路へと抜けていった。

 

「さぁ!ヴィヴィオさん!丁度夕暮れです!夕日に向かって走りましょう!」

 

「うぇっ!?ど、どうしたんですか突然!?というかビルに隠れて夕日が見えませんよ!?」

 

「こう言うのはノリですノリ!さぁいきま…」

 

「ああああの…すすすすいません!」

 

恋と気付かぬままの失恋の憂さ晴らしに、いざこれからダッシュ!といったところで、幼い少女の声にアインハルトは呼び止められる。これから良いところなのに!と言う憤慨を、ポーカーフェイスで隠しながら振り返ると、自身より少し小さな少女が立っている。

 

「あの…私に何か?」

 

「え、え、え、えっと…その…」

 

いじらしくも、恥ずかしがってか、中々目的を言い出せないのか、視線を逸らしたりもじもじしたりと、その間20秒。そして意を決したのか、一気に深呼吸し…

 

「あの!サイン下さい!!」

 

「…はい、サイン…ですか?」

 

「その…ダメ、ですか?」

 

「い、いえ!私ので宜しければ!」

 

彼女が差し出す使い古したようなメモ帳に、サインペンで自身の名と…

 

「そういえば…貴女の名前は?」

 

「あ!はい!フーカ、と言います!」

 

ミッドチルダにしては珍しい名前だ。もしかしたら父母が八神司令や高町教導官と同じ世界出身なのだろうか?

そんなことを考えながらも、サインを記して完成する。

 

「これで良いですか?」

 

「はい!ありがとう御座います!!これ、ワシの宝物にします!!」

 

「そんな大袈裟な…」

 

アインハルトの最後の言葉を聞くか否かで走り出すフーカという少女。向かう先には彼女と同い年くらいの銀髪の少女がにこやかに待っており、茶色いポニーテールを揺らしながら駆け寄る。そんな彼女とアインハルトは目が合った。向こうは育ちが良いのか、ペコリとお辞儀。アインハルトも返してお辞儀すると、二人連れ立って、帰宅ラッシュと共に夕日が照らすクラナガンの喧騒へと消えていった。

 

「アインハルトさん…サインを強請られるくらいに名が売れてるんですね?」

 

終始見ていたヴィヴィオは悪戯娘っぽく笑いながらアインハルトに声を掛ける。

 

「名が売れたようなことはしてないんですけど…。」

 

「またまた…!街を救う英雄(ヒーロー)でしょ?」

 

「いえ…実名と顔出しはしていないはずですけど?」

 

「え?」

 

「え」

 

自身の正体を知ってか、サインを強請った謎の少女に疑問を残しながらも、今日の一日は夜を迎えるのだった。




「泣けるぜ…」
生物災害4の某アメリカエージェントの台詞。


まさかの新キャラ登場です。フーカ…一体何者なんだ…(棒)
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